テレビやインターネット、新聞、雑誌などに大量の通信販売の広告が溢れている。それらの広告を出した後、各社は、どのような商品が売れるか、どのような見せ方が効果的か、どのような説明が効果的かなどを常に検証して、顧客のレスポンスがいい商品や訴求法へ改良を続けている。
通販会社にとって、顧客からの注文が増える商品や訴求法が「正解」であるが、それは広告を出して顧客の反応を試してみなければ分からない。過去の経験から各社は、売りたい商品を選び出し、見せ方や説明などを工夫し、これで売れるだろうと広告を出すが、売れ筋は常に変化している。
通販は、「これで売れるだろう」との仮説に基づいて広告を出し、顧客からのレスポンスという結果を検証して、修正を加えて新たな広告を出す。仮説と検証を繰り返す商売だ。仮説は言い換えると、見込みだ。これは売れる、これは当たると見込むことは商売人なら皆行うだろうが、結果に基づいて素早く修正することを皆が行っているわけではない。
政治の世界でも、仮説と検証は重要だ。主権者は、良い結果をもたらすだろうと見込んだ政党に政権を任せ、その結果を検証して次の選挙での判断材料にする。ただ現実には、各党の政権運営能力に差があって、政権を任せることが可能な政党の選択肢は限られ、選挙で政権交代を繰り返すことは実現していない。
政党は、主権者の支持を見込んで公約を策定し、選挙で勝って政権を担ったなら、現実政治の中で公約の実現可能性を検証し、次の選挙で修正した公約を提示する。ただ現実には、政党の公約に継続性は希薄で、選挙ごとに公約を制定したり、選挙直前に急いで公約を制定したりする。政党には仮説(公約)はあるが、検証が乏しいように見える。
仮説と検証が厳しく行われているのが科学の世界だろう。仮説が観察結果や実験結果により裏付けられたり否定されたりして、やがて新たな仮説が提示され、それも検証されるという繰り返し。仮説も検証も広く共有されることが前提なので、表現は合理的な説明となる。
仮説を立てることは誰にでもできるが、主観に偏ったり、過大な期待を含めたり、善悪や正邪などの価値観に影響されていたりと仮説の質はまちまちだ。正しい仮説(適切な仮説)であってこそ、検証する意味がある。正しい仮説とは、客観的な検証に耐えることができるものと見ると、仮説は提示された瞬間から試されている。
2020年1月29日水曜日
2020年1月25日土曜日
分断して統治する
英国は植民地において、少数民族を支配者側に登用し、多数民族を被支配者とすることで反感を少数民族に向けさせたり、宗教を利用して対立を煽ったり、社会に存在する差別を利用して被差別者を優遇することで多数派の反感を被差別者に向けさせたり等々、植民地の人々を分断させて統治したとされる。
植民地を支配している英国人に反感を向けさせないようにするため、植民地の人々の中に存在する様々な対立を煽って先鋭化させた。植民地の人々は、社会にあった認識しやすい対立に問題意識を誘導されて分断され、植民地支配を終わらせて独立を目指すという大きな動きに結集することは遅れた。
分断して統治するという手法は植民地にだけ存在するわけではない。古くは古代ローマ帝国が拡大した領土の中で、支配した部族・民族を対立・離反させて分断し、敵意を互いに向けさせ、ローマ帝国には向けさせないようにして支配を容易にしたと伝えられる。
現代でも、国内に存在する様々な対立(政治的な主張や経済的利害、地域的利害、宗教、民族などに基づく対立)を権力の握る人々が利用して、対立・分断を生じさせる光景を各国で見かける。人々が分裂して対立している状況は、権力を握る人々への批判を鈍らせる効果を持つ。分断して統治する手法は現代国家においても有効だ(マスメディアは分断をネタにし、分断を嘆いて見せる)。
先進国の国内においても人々を分断させ、対立させる要因は数多く存在する。中産階級が解体されて非正規雇用が増大し、所得格差が大幅に拡大する中で政治的主張や経済的な利害、地域的利害、宗教、民族などによる人々の細分化が促され、互いに批判・攻撃し合う。自己主張を強める人々が他者への攻撃を強めると、権力に対する共闘の機運は薄れる。
そんな分断策の一つに世代を対立させることがある。日本でも、高齢者層と若年層の対立構図がメディアで説かれ、年金制度などを取り上げて若年層が不利益を被っていると煽られる。そこでは若年層の不利益が強調されて、社会制度が高齢者層に有利に構築されているなどと若年層の不満は高齢者層に向けられるよう仕向けられる。
世代間の負担と受益のバランスは、その対象範囲の設定次第でどんな構図でも描くことができる。例えば、現代の整備されたインフラや社会制度などは高齢者世代の負担により構築されたもので、その恩恵を若年層は大きく受けているのだが、そんな全体を見た検証は世代間の対立を煽る議論では無視され、若年層の不公平感だけが強調されたりする。
世代間の協調を促進して各世代が一緒に社会の課題の解決を目指すのではなく、世代間の対立を煽って分断することで利益を得ているのは誰か。分断を強調して国内で人々を対立させ、人々を連帯させないようにするのは統治の基本なのだろう。権力を担う人々は、分裂を嘆いてみせたとしても、人々が分断され対立する状況を実は歓迎しているように見える。
植民地を支配している英国人に反感を向けさせないようにするため、植民地の人々の中に存在する様々な対立を煽って先鋭化させた。植民地の人々は、社会にあった認識しやすい対立に問題意識を誘導されて分断され、植民地支配を終わらせて独立を目指すという大きな動きに結集することは遅れた。
分断して統治するという手法は植民地にだけ存在するわけではない。古くは古代ローマ帝国が拡大した領土の中で、支配した部族・民族を対立・離反させて分断し、敵意を互いに向けさせ、ローマ帝国には向けさせないようにして支配を容易にしたと伝えられる。
現代でも、国内に存在する様々な対立(政治的な主張や経済的利害、地域的利害、宗教、民族などに基づく対立)を権力の握る人々が利用して、対立・分断を生じさせる光景を各国で見かける。人々が分裂して対立している状況は、権力を握る人々への批判を鈍らせる効果を持つ。分断して統治する手法は現代国家においても有効だ(マスメディアは分断をネタにし、分断を嘆いて見せる)。
先進国の国内においても人々を分断させ、対立させる要因は数多く存在する。中産階級が解体されて非正規雇用が増大し、所得格差が大幅に拡大する中で政治的主張や経済的な利害、地域的利害、宗教、民族などによる人々の細分化が促され、互いに批判・攻撃し合う。自己主張を強める人々が他者への攻撃を強めると、権力に対する共闘の機運は薄れる。
そんな分断策の一つに世代を対立させることがある。日本でも、高齢者層と若年層の対立構図がメディアで説かれ、年金制度などを取り上げて若年層が不利益を被っていると煽られる。そこでは若年層の不利益が強調されて、社会制度が高齢者層に有利に構築されているなどと若年層の不満は高齢者層に向けられるよう仕向けられる。
世代間の負担と受益のバランスは、その対象範囲の設定次第でどんな構図でも描くことができる。例えば、現代の整備されたインフラや社会制度などは高齢者世代の負担により構築されたもので、その恩恵を若年層は大きく受けているのだが、そんな全体を見た検証は世代間の対立を煽る議論では無視され、若年層の不公平感だけが強調されたりする。
世代間の協調を促進して各世代が一緒に社会の課題の解決を目指すのではなく、世代間の対立を煽って分断することで利益を得ているのは誰か。分断を強調して国内で人々を対立させ、人々を連帯させないようにするのは統治の基本なのだろう。権力を担う人々は、分裂を嘆いてみせたとしても、人々が分断され対立する状況を実は歓迎しているように見える。
2020年1月22日水曜日
米中の妥協
米中は貿易交渉を巡る「第1段階の合意」文書に署名した。この合意は①知財保護、②技術移転の強要禁止、③農産品の非関税障壁の削減、④金融サービス市場の開放、⑤通貨安誘導の抑止、⑥輸入拡大、⑦履行状況の検証の7項目から成る。
この合意が実行に移されると中国は、中国における知的財産の保護と執行を強化し、外国企業に技術移転の圧力をかけることを禁じ、証券や保険・銀行・電子決済などの分野で米国企業の活動を拡大させる等を行う。さらに中国は今後2年間で、米国からのモノやサービスの輸入を2000億ドル(約22兆円)以上増やす。
増やすという2000億ドルの内訳も決められ、工業製品777億ドル、農産品320億ドル、エネルギー524億ドル、サービス379億ドルとされる。これから中国は大量に米国からの輸入を増やし、対米黒字の削減に努めている様子を米国にはっきりと見せなければならなくなった。
こうした数字の設定は自由貿易の精神にそぐわないだろうが、自由貿易なんて自国の利害に合わせて出したり引っ込めたりできる標語だと見るなら理解できよう。次々と関税を高める米国相手に自由貿易の旗手を演じて見せた中国だったが、自由という言葉との不調和感がつきまとっていたので、中国に似合いの管理貿易に落ち着いたか。
この合意では米国に中国が一方的に押し切られた格好で、メンツは丸潰れだ。中国からの輸入品に次々と関税を課し、輸出で稼ぐ中国経済にダメージを与えて中国に譲歩させた米国の戦略が功を奏したと見える。社会主義市場経済であるという中国は、政治では諸外国と妥協はしないが、経済では交渉次第で妥協もする柔軟さを持っているらしい。
半年前の前回の貿易協議は決裂した。その理由は明らかにされていないが、まとまりかけた合意内容が米国に妥協しすぎだと中国共産党内部から強い批判が出て、中国は大幅修正を要求せざるを得なくなったが米国は受けいれず、暗礁に乗り上げたとの噂。今回の合意も中国の大幅譲歩に見えるから、中国共産党内の調整に半年かかったらしい(あるいは、米国が妥協したか)。
この合意内容を中国が着実に実行に移し、ついでに国内市場の開放を進めつつ政府統制色を薄め、構造改革も行うなら世界各国は歓迎するだろう。だがね、この合意が書かれているとおりに実行されるかどうかは別問題。「上に政策あれば下に対策あり」というお国柄だというから中国政府だって対策は秘めていて、米国や国際社会に対する面従腹背に見られても動じないだろう。
この合意が実行に移されると中国は、中国における知的財産の保護と執行を強化し、外国企業に技術移転の圧力をかけることを禁じ、証券や保険・銀行・電子決済などの分野で米国企業の活動を拡大させる等を行う。さらに中国は今後2年間で、米国からのモノやサービスの輸入を2000億ドル(約22兆円)以上増やす。
増やすという2000億ドルの内訳も決められ、工業製品777億ドル、農産品320億ドル、エネルギー524億ドル、サービス379億ドルとされる。これから中国は大量に米国からの輸入を増やし、対米黒字の削減に努めている様子を米国にはっきりと見せなければならなくなった。
こうした数字の設定は自由貿易の精神にそぐわないだろうが、自由貿易なんて自国の利害に合わせて出したり引っ込めたりできる標語だと見るなら理解できよう。次々と関税を高める米国相手に自由貿易の旗手を演じて見せた中国だったが、自由という言葉との不調和感がつきまとっていたので、中国に似合いの管理貿易に落ち着いたか。
この合意では米国に中国が一方的に押し切られた格好で、メンツは丸潰れだ。中国からの輸入品に次々と関税を課し、輸出で稼ぐ中国経済にダメージを与えて中国に譲歩させた米国の戦略が功を奏したと見える。社会主義市場経済であるという中国は、政治では諸外国と妥協はしないが、経済では交渉次第で妥協もする柔軟さを持っているらしい。
半年前の前回の貿易協議は決裂した。その理由は明らかにされていないが、まとまりかけた合意内容が米国に妥協しすぎだと中国共産党内部から強い批判が出て、中国は大幅修正を要求せざるを得なくなったが米国は受けいれず、暗礁に乗り上げたとの噂。今回の合意も中国の大幅譲歩に見えるから、中国共産党内の調整に半年かかったらしい(あるいは、米国が妥協したか)。
この合意内容を中国が着実に実行に移し、ついでに国内市場の開放を進めつつ政府統制色を薄め、構造改革も行うなら世界各国は歓迎するだろう。だがね、この合意が書かれているとおりに実行されるかどうかは別問題。「上に政策あれば下に対策あり」というお国柄だというから中国政府だって対策は秘めていて、米国や国際社会に対する面従腹背に見られても動じないだろう。
2020年1月18日土曜日
民意を示す
国家権力を握っている人たちは民意が明確に示されることを嫌い、恐れる。自分たちの意のままに権力を行使することが、民意が示されることによって制約され、時には自分たちが民意に反していると明らかになったりして、権力を担う正当性が失われると退場に追い込まれたりするからだ。
スペインからの分離独立を求めるカタルーニャでは住民投票が過去2回行われ、圧倒的多数が独立に賛成したが、スペイン政府は独立を認めず、カタルーニャの自治権を停止し、最高裁判所は住民投票に関与した州政府幹部らに禁固刑を言い渡した。住民投票を否定することで民意を無かったことにする手法だ。
英国のEU離脱に反対するスコットランドでは2014年、住民投票で英国からの独立を問い、英国残留支持が55%となった。だが、英国のEU離脱が現実となり、2回目の住民投票を求める声が高まっているという。英ジョンソン首相は住民投票実施に反対で、スコットランドの人々の民意を聞かないことで連合王国の統一を守ろうとしている。
台湾では総統選挙で現職の民進党・蔡英文総統が得票817万票(得票率57%)で親中国の国民党候補に圧勝し、立法院議席でも113議席中61議席の過半数を民進党が獲得した。台湾は中国の一部だと主張する中国共産党政府は台湾での選挙に様々な方法で影響力を行使したと見られているが、「一国二制度」の実態が香港で露わになったこともあり、台湾の独立状態を支持するとの民意が示された。
その香港は「一国二制度」により中国の特別行政区とされ、行政長官や立法会(議会)の選挙では立候補に制限があり、中国共産党政府に批判的な人物は立候補できない仕組みだ。「一国」=中国共産党政府の独裁という仕掛けだから、自由選挙などは論外となり、民意を問う住民投票は、おそらくスペインよりも遥かに過酷かつ強力に封じ込まれるだろう。
だが香港の人々は区議会議員の選挙を民意を示すために利用して見せた。18ある区議会には政治的な権限がないが、立候補に制約が少なく、全479議席のうち452議席が直接選挙で選ばれる。2019年11月に行われた選挙では民主派が388議席を獲得し、親中派は完敗となった。抗議デモで示されたのも民意であり、自由選挙に擬した区議会議員選挙で示されたのも民意だった。
台湾と香港で相次いで、中国共産党が独裁する政府に対して否という民意が示された。スペインも英国も中央政府に不都合な民意は聞かない姿勢だが、中国は共産党政府が統御できない民意の存在を否定する。だが、政府にコントロールされる民意というものに何の価値があるのか。政府の言いなりに動く民意はプロパガンダの補助役でしかない。
スペインからの分離独立を求めるカタルーニャでは住民投票が過去2回行われ、圧倒的多数が独立に賛成したが、スペイン政府は独立を認めず、カタルーニャの自治権を停止し、最高裁判所は住民投票に関与した州政府幹部らに禁固刑を言い渡した。住民投票を否定することで民意を無かったことにする手法だ。
英国のEU離脱に反対するスコットランドでは2014年、住民投票で英国からの独立を問い、英国残留支持が55%となった。だが、英国のEU離脱が現実となり、2回目の住民投票を求める声が高まっているという。英ジョンソン首相は住民投票実施に反対で、スコットランドの人々の民意を聞かないことで連合王国の統一を守ろうとしている。
台湾では総統選挙で現職の民進党・蔡英文総統が得票817万票(得票率57%)で親中国の国民党候補に圧勝し、立法院議席でも113議席中61議席の過半数を民進党が獲得した。台湾は中国の一部だと主張する中国共産党政府は台湾での選挙に様々な方法で影響力を行使したと見られているが、「一国二制度」の実態が香港で露わになったこともあり、台湾の独立状態を支持するとの民意が示された。
その香港は「一国二制度」により中国の特別行政区とされ、行政長官や立法会(議会)の選挙では立候補に制限があり、中国共産党政府に批判的な人物は立候補できない仕組みだ。「一国」=中国共産党政府の独裁という仕掛けだから、自由選挙などは論外となり、民意を問う住民投票は、おそらくスペインよりも遥かに過酷かつ強力に封じ込まれるだろう。
だが香港の人々は区議会議員の選挙を民意を示すために利用して見せた。18ある区議会には政治的な権限がないが、立候補に制約が少なく、全479議席のうち452議席が直接選挙で選ばれる。2019年11月に行われた選挙では民主派が388議席を獲得し、親中派は完敗となった。抗議デモで示されたのも民意であり、自由選挙に擬した区議会議員選挙で示されたのも民意だった。
台湾と香港で相次いで、中国共産党が独裁する政府に対して否という民意が示された。スペインも英国も中央政府に不都合な民意は聞かない姿勢だが、中国は共産党政府が統御できない民意の存在を否定する。だが、政府にコントロールされる民意というものに何の価値があるのか。政府の言いなりに動く民意はプロパガンダの補助役でしかない。
2020年1月15日水曜日
「知る」こと
神の存在を「信じる」人は多いが、それらの人が全て神の存在を「感じる」かどうかは定かではない。おそらく神の存在を「感じる」人は神の存在を「信じる」人よりも少ないだろう。神の存在を「知る」人はさらに少なく、皆無かもしれない。
同様のことは、死後の世界や幽霊、超能力、霊感、UFOの存在など多くの事柄についても言える。存在が曖昧だから「信じる」ことや「感じる」しかなく、確実に存在していると「知る」ことは困難だ。陰謀論の多くなども「信じる」人が広め、「信じたい」人が受容しているように見える。
「信じる」「感じる」は個人の精神の中で起きることだ。集団として「信じる」「感じる」ことはない。「信じる」個人が集まって宗教集団を形成することは珍しくないが、そうした集団が巨大化して集団として強力な力を持ったとしても、「信じる」個人の集まりであることは変わらない。
「知る」は個人の精神の中で起きることだが、「知った」ことは共有できる。科学的な真理や仮説の多くは個人の研究者などが発見したり、解明したものだが、世界で共有される。誰かが「知った」ことを共有することは、誰かが「信じる」ことや「感じる」ことを共有するより、はるかに容易だ。
「知る」ことは知識の問題、「信じる」ことは信念の問題、「感じる」ことは感覚あるいは感情の問題ーーと論じるのが加藤周一氏だ(『科学と文学』)。「知る」ことと「信じる」ことと「感じる」ことは、知識、信念、感情の問題であると同時に、その典型的な表現は科学、宗教、抒情詩(文学)になるとする。
さらに、「知る」には科学的な知識と日常生活における常識的な知識があり、「信じる」には不確かな知識を表現する場合と、価値判断を表現する場合があり、「感じる」には対象に対する感情を表現する場合と、個人の感覚を表現する場合があると論じる。
「知る」「信じる」「感じる」は人間の精神活動の大半を占める。だが、この3つの違いを意識している人は少ないかもしれない。自分が「信じる」「感じる」ことは当然、他人も共有できると無邪気に思い込んでいたりする人は、共有できない他人の存在を理解できず、批判したりする。
同様のことは、死後の世界や幽霊、超能力、霊感、UFOの存在など多くの事柄についても言える。存在が曖昧だから「信じる」ことや「感じる」しかなく、確実に存在していると「知る」ことは困難だ。陰謀論の多くなども「信じる」人が広め、「信じたい」人が受容しているように見える。
「信じる」「感じる」は個人の精神の中で起きることだ。集団として「信じる」「感じる」ことはない。「信じる」個人が集まって宗教集団を形成することは珍しくないが、そうした集団が巨大化して集団として強力な力を持ったとしても、「信じる」個人の集まりであることは変わらない。
「知る」は個人の精神の中で起きることだが、「知った」ことは共有できる。科学的な真理や仮説の多くは個人の研究者などが発見したり、解明したものだが、世界で共有される。誰かが「知った」ことを共有することは、誰かが「信じる」ことや「感じる」ことを共有するより、はるかに容易だ。
「知る」ことは知識の問題、「信じる」ことは信念の問題、「感じる」ことは感覚あるいは感情の問題ーーと論じるのが加藤周一氏だ(『科学と文学』)。「知る」ことと「信じる」ことと「感じる」ことは、知識、信念、感情の問題であると同時に、その典型的な表現は科学、宗教、抒情詩(文学)になるとする。
さらに、「知る」には科学的な知識と日常生活における常識的な知識があり、「信じる」には不確かな知識を表現する場合と、価値判断を表現する場合があり、「感じる」には対象に対する感情を表現する場合と、個人の感覚を表現する場合があると論じる。
「知る」「信じる」「感じる」は人間の精神活動の大半を占める。だが、この3つの違いを意識している人は少ないかもしれない。自分が「信じる」「感じる」ことは当然、他人も共有できると無邪気に思い込んでいたりする人は、共有できない他人の存在を理解できず、批判したりする。
2020年1月11日土曜日
温暖化という葵の御紋
オーストラリア南東部で大規模な森林火災が続いている。昨年9月から多数の森林火災の発生が相次ぎ、懸命な消火活動も火災の勢いを止めることができず、焼失面積は1000万haを超え、住宅2000棟以上が焼失し、死者は26人にもなっている。乾燥と強風が森林火災を拡大させたという。
この大規模な森林火災について米ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、豪モリソン首相を「気候変動と同国の極限環境条件の関連性を最小限に評価してきた。同首相は炭鉱の閉山要求を『無謀』だとして冷笑し、経済的利益と強力な圧力団体への忠誠を優先してきた」などと批判する記事を掲載した。
森林火災が拡大する中で昨年12月、モリソン首相は休暇をとってハワイに行っていたことがオーストラリア国内で強く批判されていたので、NYTのモリソン首相の対応遅れ批判は妥当なように見える。だがNYTの批判は、モリソン首相が温暖化抑制政策に消極的なことに向けられ、大規模な森林火災と結びつけて地球温暖化アピールに利用してみせた。
世界各地で気温が上昇傾向にあることは各種の気象データで示されている。だが、気温上昇が森林火災や山火事を起こすとしたなら、地球の全域でもっと多くの森林火災や山火事が起きるはずだ。だが、大規模な森林火災や山火事が発生する場所は北米西部や欧州南部、豪など特定の地域に偏っている。乾燥状況や強風などが関わっている気配だ。
温暖化で森林火災や山火事が増えたと主張されると、つい、樹木や雑草などが自然発火するイメージにつながる。だが、例えば木材は「約180℃を超えると木材成分の熱分解が始まり、可燃性ガスを放出し始め」「約250℃程度に達した状態で、火源を近づけると引火」し、「約450℃に達すると、火源が無くても発火」する(法科学鑑定研究所サイトから)。立木なら水分量はもっと多く、また、気温が100度を超えたというニュースはない。
燃焼には可燃物と酸素、点火エネルギーが必要となる。森林火災や山火事を発生させる点火エネルギーの代表は落雷だが、インドネシアやアマゾンなどでは農地開発目的の多くの火入れが森林火事や山火事を引き起こしているという。今回のオーストラリアの大規模な森林火災でも人為的な放火が疑われている。
豪ニューサウスウェールズ州の警察が、意図的に火災を起こしたとして24人を検挙したと報じられた。昨年11月以降、火災関連で少年40人を含む183人に対し、警告から刑事訴追までの法的措置を取った(うち53人は火気厳禁の指示に従わず、47人は火のついた煙草やマッチを地面に捨てた)。栽培している大麻を守ろうと森林火災に向けて「迎え火」をし、それが新たな森林火災を招いて逮捕された人もいる。
NYTは、気候変動を軽視するモリソン首相を批判するが、今回の大規模な森林火災の発火の検証は行わない。温暖化により乾燥状態がひどくなる可能性はあるが、森林火災や山火事を発生させた点火エネルギーは何だったか具体的に調査・検証することで温暖化との関係がはっきりするだろう。気候変動と安易に結びつけて考えるから事実検証が等閑になり、温暖化という「葵の御紋」を振りかざして御高説を垂れてしまうと見える。
この大規模な森林火災について米ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、豪モリソン首相を「気候変動と同国の極限環境条件の関連性を最小限に評価してきた。同首相は炭鉱の閉山要求を『無謀』だとして冷笑し、経済的利益と強力な圧力団体への忠誠を優先してきた」などと批判する記事を掲載した。
森林火災が拡大する中で昨年12月、モリソン首相は休暇をとってハワイに行っていたことがオーストラリア国内で強く批判されていたので、NYTのモリソン首相の対応遅れ批判は妥当なように見える。だがNYTの批判は、モリソン首相が温暖化抑制政策に消極的なことに向けられ、大規模な森林火災と結びつけて地球温暖化アピールに利用してみせた。
世界各地で気温が上昇傾向にあることは各種の気象データで示されている。だが、気温上昇が森林火災や山火事を起こすとしたなら、地球の全域でもっと多くの森林火災や山火事が起きるはずだ。だが、大規模な森林火災や山火事が発生する場所は北米西部や欧州南部、豪など特定の地域に偏っている。乾燥状況や強風などが関わっている気配だ。
温暖化で森林火災や山火事が増えたと主張されると、つい、樹木や雑草などが自然発火するイメージにつながる。だが、例えば木材は「約180℃を超えると木材成分の熱分解が始まり、可燃性ガスを放出し始め」「約250℃程度に達した状態で、火源を近づけると引火」し、「約450℃に達すると、火源が無くても発火」する(法科学鑑定研究所サイトから)。立木なら水分量はもっと多く、また、気温が100度を超えたというニュースはない。
燃焼には可燃物と酸素、点火エネルギーが必要となる。森林火災や山火事を発生させる点火エネルギーの代表は落雷だが、インドネシアやアマゾンなどでは農地開発目的の多くの火入れが森林火事や山火事を引き起こしているという。今回のオーストラリアの大規模な森林火災でも人為的な放火が疑われている。
豪ニューサウスウェールズ州の警察が、意図的に火災を起こしたとして24人を検挙したと報じられた。昨年11月以降、火災関連で少年40人を含む183人に対し、警告から刑事訴追までの法的措置を取った(うち53人は火気厳禁の指示に従わず、47人は火のついた煙草やマッチを地面に捨てた)。栽培している大麻を守ろうと森林火災に向けて「迎え火」をし、それが新たな森林火災を招いて逮捕された人もいる。
NYTは、気候変動を軽視するモリソン首相を批判するが、今回の大規模な森林火災の発火の検証は行わない。温暖化により乾燥状態がひどくなる可能性はあるが、森林火災や山火事を発生させた点火エネルギーは何だったか具体的に調査・検証することで温暖化との関係がはっきりするだろう。気候変動と安易に結びつけて考えるから事実検証が等閑になり、温暖化という「葵の御紋」を振りかざして御高説を垂れてしまうと見える。
2020年1月8日水曜日
懐メロ番組でも口パク
歌謡曲のファンだがJ-POPには興味がないという友人は、歌謡曲をたっぷり聴くことができる懐メロ番組のファンだった。酒を飲みながら往年のヒット曲を聴いていると、気持ちがのんびりして来て、「こいつ、すっかり老けたな」とか「歌がうまい。やっぱり、圧倒的な歌唱力はプロならではだ」などと勝手なことを言いながら楽しんでいた。
その友人が怒っている。酒を飲みながら見るので、細かいところは気にしていなかったそうだが、ふと、ある女性歌手は歌がうまく、若い頃とほとんど変わらない歌唱であることに気づき、「大したものだ」とTV画面をよく見ると、何か違和感がある。「口パクだ」と友人は、すっかり興醒めしてチャンネルを変えたという。
懐メロ番組に口パクが必要なのかと友人は問う。出演させなければ視聴率に影響する……なんて懐メロ歌手はいないだろうし、過去にヒット曲を出した歌手は大勢いるから出演者の選択にも苦労はなさそうで、頭数を揃えるために「もうプロレベルで歌えない」懐メロ歌手を無理に引っ張り出す必要もないだろうと友人。
友人が怒るのは、口パクが大嫌いだからだ。音響設備が設置できない場所で歌うという演出なら口パクもやむを得ないだろうが、歌番組のステージで、しかもバックには生バンドが控えている状況での口パクに友人は「視聴者に対する裏切りだ。まともに歌えない連中は番組に出すな」。
ダンスを見せるために口パクにする歌手・グループ(最近はアーティストと呼ぶらしい)が最近は多くなったが、幼さが残る少女をアイドルに仕立て、歌は口パクでごまかす手法が流行っていた時代があった。いずれも、歌唱を聞かせることより見せることを優先する演出だ。まあ、じっくり聞かれると「つまらねえ歌だ」とバレるから、ダンスや見た目の可愛らしさでごまかすしかなかったか。
懐メロ番組にも口パクが以前から存在していたのではないかと友人は疑い始めた。懐メロ番組は年末と盆=大半の人が長期休暇の最中に放映され、ながら見する視聴者が多いだろうし、出演する往年の人気歌手の多くに現在でも熱心なファンが多いとも思われず、じっくりと見る番組ではなかろうから口パクが気づかれにくかったかと友人。
「昔のように声が出なくってもいい。それが許されるのが懐メロ番組だ」とし、「輝いていた往年の姿はYouTubeでいくらでも見ることができるのだから、懐メロ番組に出演する歌手は“現在”の姿を晒してほしい」と友人はぼやく。でも現在活躍する歌手・グループが出演する10年先、20年先の懐メロ番組は口パクが主となり、ヨタヨタしたダンスを視聴者は見せられるんだろうから、現在の懐メロ番組はまだ許容範囲かと友人は複雑な心境だ。
その友人が怒っている。酒を飲みながら見るので、細かいところは気にしていなかったそうだが、ふと、ある女性歌手は歌がうまく、若い頃とほとんど変わらない歌唱であることに気づき、「大したものだ」とTV画面をよく見ると、何か違和感がある。「口パクだ」と友人は、すっかり興醒めしてチャンネルを変えたという。
懐メロ番組に口パクが必要なのかと友人は問う。出演させなければ視聴率に影響する……なんて懐メロ歌手はいないだろうし、過去にヒット曲を出した歌手は大勢いるから出演者の選択にも苦労はなさそうで、頭数を揃えるために「もうプロレベルで歌えない」懐メロ歌手を無理に引っ張り出す必要もないだろうと友人。
友人が怒るのは、口パクが大嫌いだからだ。音響設備が設置できない場所で歌うという演出なら口パクもやむを得ないだろうが、歌番組のステージで、しかもバックには生バンドが控えている状況での口パクに友人は「視聴者に対する裏切りだ。まともに歌えない連中は番組に出すな」。
ダンスを見せるために口パクにする歌手・グループ(最近はアーティストと呼ぶらしい)が最近は多くなったが、幼さが残る少女をアイドルに仕立て、歌は口パクでごまかす手法が流行っていた時代があった。いずれも、歌唱を聞かせることより見せることを優先する演出だ。まあ、じっくり聞かれると「つまらねえ歌だ」とバレるから、ダンスや見た目の可愛らしさでごまかすしかなかったか。
懐メロ番組にも口パクが以前から存在していたのではないかと友人は疑い始めた。懐メロ番組は年末と盆=大半の人が長期休暇の最中に放映され、ながら見する視聴者が多いだろうし、出演する往年の人気歌手の多くに現在でも熱心なファンが多いとも思われず、じっくりと見る番組ではなかろうから口パクが気づかれにくかったかと友人。
「昔のように声が出なくってもいい。それが許されるのが懐メロ番組だ」とし、「輝いていた往年の姿はYouTubeでいくらでも見ることができるのだから、懐メロ番組に出演する歌手は“現在”の姿を晒してほしい」と友人はぼやく。でも現在活躍する歌手・グループが出演する10年先、20年先の懐メロ番組は口パクが主となり、ヨタヨタしたダンスを視聴者は見せられるんだろうから、現在の懐メロ番組はまだ許容範囲かと友人は複雑な心境だ。
2020年1月4日土曜日
自分で状況を変える
中国ファーウェイCFOの孟晩舟副会長は2018年12月にカナダで、米国の要請により逮捕された。容疑は、米国が経済制裁を科すイランに製品を違法に輸出したり、違法な金融取引に関わったこと。米国は引き渡しを求めるが、カナダの裁判所は孟氏の保釈を認めた。検察側は、孟氏が中国に逃げると主張したが、裁判所は退けた。
保釈には1千万カナダドル(約8億5千万円)の保釈金、滞在地はバンクーバー、パスポートは取り上げられ、常に身体にGPSの追跡装置を装着するなどの条件がつけられた(後に孟氏は1300万カナダドルの大邸宅への転居を認められた)。懸念された中国への逃亡を防ぐことがカナダではできている。
保釈中だったゴーン氏が密かに日本を脱出し、レバノンへ逃亡することに成功した。孟氏とゴーン氏は高額の保釈金、滞在地の制限、パスポート取り上げなどは同じだったので、GPS追跡装置の装着が逃亡を防ぐポイントだったと見える。日本の司法などにもGPS追跡装置の導入が今後検討されるなら、それはゴーン氏の「功績」か。
外国における不当な逮捕だとの感情は2人に共通していただろうが、逃亡の意志はゴーン氏のほうが強く、また、富裕層に様々な便宜を提供する組織とのつながりもゴーン氏のほうが緊密だったようだ。また、孟氏の場合は米中の対立が背景にあるから、巻き込まれた「被害者」でいることができる(中国に逃げたなら、ただの逃亡犯になる)。
ゴーン氏も「被害者」に見られることを望んでいる。レバノンでの最初の声明で「もはや私は有罪が前提とされ、差別がまん延し、基本的な人権が無視されている不正な日本の司法制度の人質では」ないとし、「日本の司法制度は、国際法や条約のもとで守らなくてはいけない法的な義務を目に余るほど無視して」いると批判、「不公正と政治的迫害から逃れた」と安堵と勝利をうたう。
日本の司法制度を批判し、貶めることがゴーン氏には必要だった。高額の報酬を隠していたことや特別背任、外国への不正送金による所得隠しなどで逮捕されたゴーン氏には、裁判で争っても有罪となる確率が高く、日本にいると長い懲役刑が待っているだけだった。日本から逃亡して自分を「被害者」に仕立て、自分の強欲から焦点を逸らしたゴーン氏は今後も、日本の司法制度を批判し、貶め続けることが必要になる。
ゴーン氏は、自分で動いて状況を変えた。自分に不利な状況から逃れ出て、欧米メディアを利用することで情報発信の主導権を握り、問題の設定を日本の司法制度にすり替えて「被害者」を演じる……不都合な状況を自分で変えると同時に、法の支配が国によって解釈次第で変形する現実を利用した。日本人が学ぶべきものは、国際社会におけるゴーン氏のしたたかな生き方だな。
保釈には1千万カナダドル(約8億5千万円)の保釈金、滞在地はバンクーバー、パスポートは取り上げられ、常に身体にGPSの追跡装置を装着するなどの条件がつけられた(後に孟氏は1300万カナダドルの大邸宅への転居を認められた)。懸念された中国への逃亡を防ぐことがカナダではできている。
保釈中だったゴーン氏が密かに日本を脱出し、レバノンへ逃亡することに成功した。孟氏とゴーン氏は高額の保釈金、滞在地の制限、パスポート取り上げなどは同じだったので、GPS追跡装置の装着が逃亡を防ぐポイントだったと見える。日本の司法などにもGPS追跡装置の導入が今後検討されるなら、それはゴーン氏の「功績」か。
外国における不当な逮捕だとの感情は2人に共通していただろうが、逃亡の意志はゴーン氏のほうが強く、また、富裕層に様々な便宜を提供する組織とのつながりもゴーン氏のほうが緊密だったようだ。また、孟氏の場合は米中の対立が背景にあるから、巻き込まれた「被害者」でいることができる(中国に逃げたなら、ただの逃亡犯になる)。
ゴーン氏も「被害者」に見られることを望んでいる。レバノンでの最初の声明で「もはや私は有罪が前提とされ、差別がまん延し、基本的な人権が無視されている不正な日本の司法制度の人質では」ないとし、「日本の司法制度は、国際法や条約のもとで守らなくてはいけない法的な義務を目に余るほど無視して」いると批判、「不公正と政治的迫害から逃れた」と安堵と勝利をうたう。
日本の司法制度を批判し、貶めることがゴーン氏には必要だった。高額の報酬を隠していたことや特別背任、外国への不正送金による所得隠しなどで逮捕されたゴーン氏には、裁判で争っても有罪となる確率が高く、日本にいると長い懲役刑が待っているだけだった。日本から逃亡して自分を「被害者」に仕立て、自分の強欲から焦点を逸らしたゴーン氏は今後も、日本の司法制度を批判し、貶め続けることが必要になる。
ゴーン氏は、自分で動いて状況を変えた。自分に不利な状況から逃れ出て、欧米メディアを利用することで情報発信の主導権を握り、問題の設定を日本の司法制度にすり替えて「被害者」を演じる……不都合な状況を自分で変えると同時に、法の支配が国によって解釈次第で変形する現実を利用した。日本人が学ぶべきものは、国際社会におけるゴーン氏のしたたかな生き方だな。
2020年1月1日水曜日
100年前は1920年
第1回の国勢調査が行われたのは100年前の1920年。人口は5596万3053人と現在の半分以下で、15歳未満が36.5%、15〜64歳58.3%、65歳以上5.3%と「若い」社会だったが、平均寿命も男42.06歳、女43.20歳と現在のほぼ半分。世帯数は1112万世帯だが、世帯の平均人数は約5人と現在のほぼ倍だった。
5596万人というのは内地人口で、外地人口は2102万人だった(当時は台湾や朝鮮、樺太の南半分、千島列島なども日本の領土)。内地では54.9%が第1次産業に従事していたが、現在は5%を切っている。現代では第3次産業の就業者が人口の7割以上になるが、当時は24.2%とこの100年で日本の社会は大きく変貌した。
当時は革命の「祖国」ソ連の国際的な影響力が強く、各国で労働者や社会主義者らによる活動があったが、警戒感が高まり米国ではパーマー司法長官による「赤狩り」で全米70都市で1万人が逮捕され、移民など数千人が国外追放になった。さらに、マサチューセッツ州で起きた武装強盗殺人事件の容疑者として伊移民の製靴工サッコと魚行商人バンゼッテイが逮捕された(1927年に処刑。1977年に無罪認定)。
米国ではこの年、議会が婦人参政権を承認した一方、KKKが南部で勢力を伸ばし、加州で排日土地法が施行されるなど、白人以外を排他する動きが顕在化した。白人を中心とする国家観と多民族国家とする国家観の衝突は現在の米国にも引き継がれている。
第一次大戦の反省から国際連盟が設立されたのも、この年。戦争を防ぎ、平和を維持することが目的だったが、米国は上院が加盟を否決したため参加せず、機能を十分に発揮できなかったと現在ではみなされている。発足時の常任理事国は日本、イギリス、フランス、イタリアの4カ国(後に加盟したドイツとソ連が加わった)。
日本ではこの年、3月に株価暴落で東京・大阪の株式取引所が休業するなど、第一次世界大戦後の過剰生産による戦後恐慌が始まり、4月に株価再暴落で全国の株式取引所が1カ月休業し、銀行に取り付け・休業・合併が相次ぎ、取り付けで支払停止する地方銀行が続出した。
早稲田と慶応が初の私立大学として設立が認可されたこの年、他の私大の設立も続いて認可された。電話の需要が急増し、童謡のレコードが売れ、安来節や八木節がはやった。賀川豊彦の「死線を越えて」が100万部を越すベストセラーとなり、上野公園では1万余人が参加し、日本初のメーデーが挙行された。
5596万人というのは内地人口で、外地人口は2102万人だった(当時は台湾や朝鮮、樺太の南半分、千島列島なども日本の領土)。内地では54.9%が第1次産業に従事していたが、現在は5%を切っている。現代では第3次産業の就業者が人口の7割以上になるが、当時は24.2%とこの100年で日本の社会は大きく変貌した。
当時は革命の「祖国」ソ連の国際的な影響力が強く、各国で労働者や社会主義者らによる活動があったが、警戒感が高まり米国ではパーマー司法長官による「赤狩り」で全米70都市で1万人が逮捕され、移民など数千人が国外追放になった。さらに、マサチューセッツ州で起きた武装強盗殺人事件の容疑者として伊移民の製靴工サッコと魚行商人バンゼッテイが逮捕された(1927年に処刑。1977年に無罪認定)。
米国ではこの年、議会が婦人参政権を承認した一方、KKKが南部で勢力を伸ばし、加州で排日土地法が施行されるなど、白人以外を排他する動きが顕在化した。白人を中心とする国家観と多民族国家とする国家観の衝突は現在の米国にも引き継がれている。
第一次大戦の反省から国際連盟が設立されたのも、この年。戦争を防ぎ、平和を維持することが目的だったが、米国は上院が加盟を否決したため参加せず、機能を十分に発揮できなかったと現在ではみなされている。発足時の常任理事国は日本、イギリス、フランス、イタリアの4カ国(後に加盟したドイツとソ連が加わった)。
日本ではこの年、3月に株価暴落で東京・大阪の株式取引所が休業するなど、第一次世界大戦後の過剰生産による戦後恐慌が始まり、4月に株価再暴落で全国の株式取引所が1カ月休業し、銀行に取り付け・休業・合併が相次ぎ、取り付けで支払停止する地方銀行が続出した。
早稲田と慶応が初の私立大学として設立が認可されたこの年、他の私大の設立も続いて認可された。電話の需要が急増し、童謡のレコードが売れ、安来節や八木節がはやった。賀川豊彦の「死線を越えて」が100万部を越すベストセラーとなり、上野公園では1万余人が参加し、日本初のメーデーが挙行された。
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