2018年5月30日水曜日

日大経済圏の中で生きる

 「悪名は無名に勝る」という広報戦略だったとすれば、今回の大学の対応は見事だった。テレビのニューズ番組やワイドショーで連日、時間をとって報じられ、新聞や週刊誌などでも大きなスペースで書き立てられたので、テレビの露出時間や新聞などの露出スペースを広告費に換算するなら、たいそうな金額になるに違いない。

 意図的な広報戦略があったと理解すると、なぜ大学側が次々と「火に油を注ぐ」ような対応を行っていたかも納得できる。今風にいうなら、炎上させ、わざと適切な対応を怠り、次々にネタを投入して炎上を持続させ、「いったい、どんな教育をやっている大学なんだ?」との興味を集めることに成功した。

 この大学はHPによると、2019年に創立130年を迎え、「教育理念『自主創造』を合言葉に、新時代を切り拓く人材の育成につとめて」いるそうだ。大学の他に短大、11高校、5中学、1小学校、1幼稚園、1認定こども園、4専修学校を持つ巨大な教育企業体で、大学の学生数は8万人弱(通信教育と短大含む)。

 記者会見で学長は「本学の学生数と生徒数は約12万人の規模」と言っているから、学生や生徒、教員らを相手にする消耗品などの商売だけでも巨大な経済圏となる。大学を頂点とする巨大な教育経済圏の中で、集められる授業料だけでも莫大な金額になるだろう。

 外部からの批判に耳を塞ぎ、指導者たちがひたすら保身と責任回避と弁解につとめ、学長が記者会見で日大経済圏の内部に向けて話すのも、彼らが日大経済圏の内部で生き続けるしかないことを自覚しているからかもしれない。どんなに社会から批判されようと日大経済圏の中にいれば食べていける……。

 悪質なタックルを行った学生は、日大経済圏から離れることを意識し、社会に向き合わざるを得ないと気がついたのだろう。だから彼は、社会に向けて話をした。日大経済圏の内部でだけ許される論理ではなく、現在の社会で許容される論理を理解し、自分の行ったことを客観的に見ることができた。

 この大学には人権侵害防止ガイドラインもあり、「教職員と学生・生徒等の間では、指導・評価等を通した権力関係が構造的に形成されがちです。また、教職員間においても、組織運営の必要から指示命令関係が形成されます。このような関係は、時として強制支配的に濫用される危険があることを大学は認識し、その防止に努めます」とある。どうやら、アメフト部には適用されないらしい。

2018年5月26日土曜日

シェアリングと共産主義

 中国で自転車のシェアリングサービスが急速に普及し、ライドシェア(自動車の相乗り)の配車サービスなども広まっているという。一方でシェア自転車が増えすぎ、どこにでも乗り捨てられた結果、放置された自転車がいたるところに山積みになって社会問題化しているとも伝えられた。

 シェアリングサービスが中国で受け入れられたのは便利だからだが、所有という概念の否定でもある。自転車を使いたいときにスマホで探し、近くにあるシェア自転車を利用して、使い終わったところで乗り捨て、安価な料金はスマホで決済できる。いつでも使用できるのだから、自転車を個人が所有する必要性はない。

 所有と使用の分離は目新しいものではない。晴れ着などのレンタルや貸し別荘、レンタカーなど必要な時に借りるというサービスは日本でも広く行われていて、図書館での図書貸し出しや住宅の賃貸など、所有せずに使用するという経済活動は一般的だ。しかし、シェア自転車などの普及は目立ってはいない。

 なぜ中国でシェアリングサービスが急速に普及しているのか。第一は、スマホ普及とともにモバイル決済が急拡大したことだろう。第二に、膨大な人口(自転車や自動車などを持たない人の膨大な使用ニーズが潜在していた)。第三に、使いたい時に使いたい場所で使うことがスマホにより可能になった。

 何かを求めている人がいるときは、商売の絶好のチャンスである。求められているサービスや商品を、求められている将にその時に提供するのだから、商機を逃さない。使いたい時に使うことができるサービスは利用者にとって便利であるから歓迎されるが、提供者は自転車などを広く配置しておかなければ商機を逃すことになるから、自転車が街中に溢れることになる。

 中国でシェアリングサービスが普及した背景に、共産主義体制であることも関係しているかもしれない。現在でも中国では土地は公有(国有)であり、私有財産よりも公権力が上位にある(個人の権利が軽視されるのも、個人が権利を所有することを認めないからか)。所有( 私有)という概念がそもそも希薄だったから共産主義体制の中国でシェアリングサービスが受け入れられやすかった。そう考えると中国でのシェアリングサービスの爆発的普及が納得しやすい。

 豊かな先進国では私有(所有)が一般的である。住宅、自動車、家電、衣服など大量のモノを個人は所有し、また、さらなる所有を欲望することが当然とされ、それにより大量生産が支えられている。私有財産の拡大を目指して励むというのが資本主義社会における生活だが、必要なモノは行き渡っている。

 シェアリングサービスの拡大は高度資本主義の豊かな社会にとって、一つの未来像かもしれない。所有(私有)に頼らない経済活動を活性化させることは、拡大再生産の行き詰まりの打開策ともなろう。誰もが豊かになれるわけではなくなり、生活のミニマム化が進む中で、私有と利用を分離し、共有経済を発達させることは共生社会の基礎となる。

2018年5月23日水曜日

重商主義の誘惑

 重要主義の時代には、富を自国に集めて蓄積するために国家が経済・通商を支配しようとした。自国に流入する富を増やし、自国から流出する富を減らすためには、輸出を増やすことを奨励する一方、輸入を制限するのが真っ先に思いつく方法だった。

 だが、各国が次々に輸入を制限し始めると、自国からの輸出が停滞してしまう。そこで自由貿易を制限せずに、自国に流入する富を増やす方向に国家の経済政策は変化した。それは、国際競争力の強い産業を育成・保護して輸出を増やすとともに、輸入品との競争から自国の産業を保護することだった。

 これが、16〜18世紀に欧州の主権国家の多くが行った経済・通商政策だが、やがては行き詰まるものでもあった。ある国が輸出を奨励して輸入を制限すると他国も同じように行動し、ある国が国際競争力が強い産業の育成・保護に注力するなら他国も同じように行動する。

 重商主義では、どこかの1国がうまく利益を増大させたとしても、それは長続きしない。他国も対抗して動いたり、政策を模倣するので、1国だけが利益を独占することは難しい。だが国家は自国に富を集めて蓄積することを放棄してはいない。資本が巨大になり、国家の統制に服さなくなった現在も国家は、重商主義の誘惑に惑わされる。

 重商主義が成功する条件は、その国に①産業基盤が確立されている、②国際的に大きな政治力を有する、③他国を圧倒する軍事力を有する、④国際競争力が強い産業を有する、⑤巨大な金融力などが必要だ。つまり、突出した大国だけが重商主義を主張することができよう。重商主義が成功するには、他国に強制する力が必要であり、自国に富を流入させるには、他国から富を流出させなければならないからだ。

 現代において突出した大国は米国であり、トランプ政権は様々な品目で輸入の制限を打ち出し、多くの貿易協定を自国有利に見直すため再交渉を始めた。重商主義と見なされても不思議はない政策だが、それが成功するかどうかは怪しい。短期的には相応の効果はあるかもしれず、任期中の成果にはできるかもしれないが。

 重商主義の時代はとうに過ぎ去り、自由貿易を基盤に国際経済が形成されて久しい中で経済におけるボーダーレス化は進展し、商品や資本、情報、人間が国家の制約を脱して流動する時代になった。重商主義への回帰が国家主義の表れの一つだとすれば、グローバリゼーションに対する主権国家の抵抗の最終章かもしれない。

2018年5月19日土曜日

溢れ出る溶岩

 米ハワイ島のキラウエア火山で噴火活動が活発化し、噴煙を上げ、地面にできた亀裂などから溶岩がゆっくりと流れ出て、住宅や道路に迫る様子がニューズ映像で報じられた。地震も頻発し、高濃度の二酸化硫黄が放出されていて、付近の住民に避難命令が出た。

 ハワイで最も活発な火山であるキラウエア火山は噴火活動を長く継続しており、世界的にも有数の活発な火山とされる。キラウエアの活発な火山活動が長く続くのは、地下でマグマからの大量のエネルギー供給が続いているからだ。

 地球内部のマントル内では巨大な上昇・下降流であるプルームが生じており、高温のマントルが上昇するホットプルームで、大規模なものが地表に達すると巨大で激しい火山活動を発生させ、地球の気候に大きな影響を及ぼすと考えられている。ハワイ島の地下には小規模なホットプルームがあるとされ、それがハワイの火山活動を長く続けさせている。

 ハワイ諸島のように地下に小規模なホットプルームが存在し、火山活動を活発化させている場所をホットスポットと呼ぶ(小規模というのは地球スケールで見た比較)。ハワイ諸島が誕生したのも火山活動によるもので、海底で噴き出した溶岩が堆積して火山島を形成した。

 地下深くのホットスポットの位置はほとんど動かないと考えられているが、地表のプレートは動いている。ハワイ諸島からアリューシャン海溝まで火山島や海底火山(海山)が点々と連なっているのは、ホットプルームからマグマが地表へ到達するルートができて火山島を誕生させるが、その火山島が太平洋プレートとともに移動したことを繰り返した結果だと見られている。

 キラウエアがあるハワイ島は40万年以前に誕生したという。こうした火山島は活発な火山活動により海底から海面高く立ち上がるが、やがてプレートの移動によりホットスポットから離れるにつれて火山活動が停滞し、海水による侵食のほうが勝るようになると次第に削られていき、海面から姿を消すことにもなる。

 環境保護などの運動には、現在(あるいは少し以前)の状況を基準として、変化を悪いものとする発想が含まれる。しかし、地球は常に変化しており、環境的に何が基準となるべきなのか、地球史からは「正解」はない。溶岩や有毒ガスの噴出など人間にとって不都合な環境破壊も、地球環境としては自然な状態の一つである。

 人間の時間軸と地球の時間軸は全く異なる。人間の時間軸で人間は生存環境を好都合なものにしようと考えるが、人間の生存環境も人間も地球の変化に対して無力だ。地球の時間軸からすると環境破壊などというものは存在せず、宇宙の時間軸からも環境破壊は存在しないだろう。

2018年5月16日水曜日

ギブソンのギター

 プロのギタリストは数多くのギターを所有しているだろうし、ライブでは曲によってギターを使い分けることも珍しくない。どんなギターでも弾きこなすのはプロだから当然なのだろうが、一方で、ギタリストには特定のギターと結びついたイメージがあることも多い。

 そうしたイメージは、全盛期のライブの広く流布した映像でギタリストがいつも同じギターを使っていることから生じたりする。ギターといってもモデルにより、ネックの太さや形状は様々で、重さやボディバランスも異なるので、ギタリストは好みや相性でギターを選ぶ。ライブではそれぞれ演奏しやすいギターを使うので、それが愛器だとファンから見なされる。

 ギブソンでは例えば、ジョニー・ウィンターの愛器はファイヤーバード、アルバート・キングやレスリー・ウエスト、マイケル・シェンカーはフライングⅤ、アレン・コリンズはエクスプローラー。SGを使ったギタリストはフランク・ザッパやカルロス・サンタナ、ピート・タウンゼントらと多いが、使い続ける人は少ない印象がある(クリーム時代のエリック・クラプトンはサイケデリックなペイントのSGを使用)。

 エレキギターを代表するモデルでもあるレスポールも多くのギタリストが使うが、有名なのがジミー・ペイジ。レッド・ツェッペリンのライブでは腰の位置に下げてレスポールを弾く姿が印象的だった。ほかのギターに比べて重いのが敬遠されたのか、最近はストラトキャスターを使う人のほうが多いようだ。

 セミアコのES-335はBBキングらブルーズ・ギタリストの多くが使用するが、チャック・ベリーも愛用した。ソリッドギターの音もフルアコの音も出すことができるがフルアコよりボディが薄く使いやすいので、ロックやジャズなどにも愛用者が多く、最近ではキース・リチャーズが黒いモデルを使用している。

 ギブソンのフルアコの代表はES-175だろう。多くのジャズ・ギタリストが使っている。他にもL-5やスーパー400などジャズのギタリストが使うフルアコの多くはギブソンという印象だ。また、ギブソンはハミングバードをはじめとするアコースティック・ギターも製造、多くのミュージシャンに使われている。

 その米ギブソンが経営破綻した(負債は最大5億ドル)。ギター専業から事業を多角化するため企業買収を重ねたが、失敗した。不採算事業から撤退し、ギターなどの事業に専念するというから音楽ファンとしては、経営の迷走を冷ややかに見つつも応援したくなる。ただ、ギターを買って応援してあげたいが、ギブソンのギターは気楽に買うことができる価格ではない。

2018年5月12日土曜日

始まったアメグジット

 英国がEUから離脱することを意味するブレグジット(Brexit)という造語はすっかり定着したが、最近、アメグジット(Amexit)という造語を見かけることが増えてきた。これは、米国が国際社会への関与を減らし、孤立主義と保護主義へ向かうことを意味する。

 それは具体的な行動として現れ始めた。米国はTPPから離脱し、NAFTAなどの見直しを始めるとともに、鉄鋼などの関税を引き上げ、パリ協定から離脱したほか、韓国や日本に駐留米軍経費の負担増を求め、欧州各国には防衛費の増額を求めるなど費用面から米国の世界での軍事負担軽減を要求している。

 「世界の警察官をやめる」と明言したのはオバマ大統領だが、それは、アフガニスタンやイラクに軍事介入して「勝った」ものの、撤退ができずに駐留が長引き、経済的かつ政治的な負担となったことの反省だと解釈された。だが、対ISテロ戦争で米国が前面に出なかったように、もう米国は世界での軍事的関与を縮小、限定した。これは軍事面でのアメグジットの始まりだろう。

 経済的にも軍事的にも圧倒的な世界1である米国に、余裕がなくなってきたから、国際的な関与を減らし、孤立主義と保護主義へ向かい始めたと理解するなら、アメグジットは衰退する大国・米国がたどる道であり、歴史の必然だ。それは、米国はアメグジットを選択したのではなく、アメグジットしか選択肢がないことを意味する。

 問題は、米国の関与が減る国際社会で何が起きるのかということ。中東ではサウジやイラン、トルコなどが自己主張を強め、アラブ世界は解体しつつある。アジアでは中国が経済的・軍事的に存在感を強め、事実上のパクス・チャイナが進行し、結果としてアメグジット状況になりつある。ロシアは中東などでの影響力拡大を狙い、EUは現状維持に精一杯で世界に対する影響力は希薄になった。

 米国が「世界の支配者」でなくなることは歓迎すべきことだ。自国第一主義を振り回す米国に各国は悩まされるだろうが、アメグジットで各国と対等になった米国に遠慮は不要で、各国も自国第一主義で米国と交渉するようになる。アメグジットで米国が失うものは多いが、「格下げ」に米国民の大国意識が納得できるかも課題だろう。

 一方、米国は人権や自由、民主主義など普遍的とされる理念を世界各地での関与・介入の口実にしてきた。アメグジットが進行すれば、そうした普遍的理念を米国が振り回すことも減るかもしれない。しかし、米国やEU以外に国際社会で普遍的理念を主張する国はないのが現実だ。アメグジットが国際社会からの普遍的理念の撤退をも意味するのなら、政治的な普遍性の解体という歴史的な場面に我々は立ち会っていることになる。

2018年5月9日水曜日

北朝鮮のラストチャンス

 南北が首脳会談後に発表した「板門店宣言」で具体的に決めたことは、▽双方の当局者が常駐する南北共同連絡事務所を開城に設置▽民族共同行事を積極的に推進し、和解と協力の雰囲気を高める▽南北赤十字会談を開催して離散家族・親戚再会など諸問題を協議(離散家族・親戚の再会を行う)。

 軍事的緊張状態の緩和へ向けては、▽あらゆる空間で一切の敵対行為を全面的に中止▽軍事境界線一帯で拡声器(宣伝)放送やビラ散布など敵対行為を中止▽黄海の北方限界線一帯で偶発的な軍事衝突を防止し、安全な漁業活動を保証。

 平和体制構築のための具体的な合意は乏しいが、▽終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制を構築するため、南北米3者または南北米中4者会談の開催を推進。また、▽不可侵合意を再確認▽段階的に軍縮▽完全な非核化を通して核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認、と緊張緩和ムードを盛り上げた。

 宣言に忠実に北朝鮮が今後、軍事的な緊張を高める行動を一切やめて、韓国との交流を増やして「開国」へ向かうならば、今回の南北首脳会談は歴史的に高く評価されるだろう。最高指導者の金正恩氏が韓国の経済的発展にならって、軍事強国を目指す路線の転換を決断したなら世界にとっても歓迎すべきことだ。

 今後、南北で多方面の対話や交流、協力が活発化する可能性はあるが、路線転換を簡単には信用すべきでないと過去の北朝鮮の行動が教えている。北朝鮮の「真意」を知るには、軍事関係の具体的な緊張緩和に向けた行動の積み重ねを見なければならず、数年を要するだろう。

 北朝鮮の狙いが、経済制裁の解除にあるとすれば緊張緩和に積極的に取り組むだろうが、核やICBM開発のための時間稼ぎであるなら、北朝鮮の判断でいつでも状況を変更できる(板門店宣言をひっくり返す理由を北朝鮮はいつでも見つけるだろう)。

 緊張緩和へ向けての動きが高まっていると見せることに成功した首脳会談で南北は、外交での存在感を示した。軍事力行使も選択肢にあると力で脅した米国に、北朝鮮は脅しで反撃していたが、態度を変更した。力ではなく言葉が外交では重要だと示したのが今回の南北首脳会談だったのか、北朝鮮の言葉はやはり信用できなかったとなるか……北朝鮮にとって国際的な信用を得るラストチャンスだろうことは確かだ。

2018年5月5日土曜日

46歳と成熟

 井伊直弼は安政7年(1860年)3月3日、雪の降る中、桜田門外で襲われ、殺害された。井伊直弼は42歳の時に幕府の大老に就任し、治安を維持・回復するために強権を行使したことから、尊王派などに深く恨まれ、襲撃へと繋がった。殺害された時は44歳だった。

 三島由紀夫は1970年11月25日、市ヶ谷駐屯地で自衛隊員にクーデターを促す演説を行った直後に割腹自殺した。多くの小説などを発表し、ノーベル文学賞候補になるなど国際的にも評価が高い作家だった。死んだのは45歳だったが、「楯の会」を結成したのは43歳の時だった。

 第35代米国大統領のジョン・F・ケネディは1963年11月22日、米テキサス州ダラスで狙撃されて死亡した。46歳だった。大統領選に勝利したのは43歳の時で、キューバ危機の回避は45歳の時だった。第44代米国大統領のバラク・オバマが上院議員に当選したのは43歳の時で、大統領に就任したのは47歳の時。

 歴史を振り返ると、46歳で亡くなった人には天智天皇(中大兄皇子)、淀君、由井正雪、土佐藩で藩政改革に参与した吉田東洋、新島襄、二葉亭四迷、中上健次らがおり、外国人ではフランシスコ・ザビエル、シラー、シューマン、ボードレール、ルナール、サキ、スピノザ、ジョージ・オーウェル、スティーブ・ジョブズらがいる。

 40数年の生涯で人は歴史に名を残すことができるのだと、これらの人々は示している。もちろん、歴史に名を残す人はごく少数であり、圧倒的多数の人々は歴史上では無名に終わる。歴史に名を残した人と歴史的には無名のままで終わった人を比べても意味はないだろうが、人の人生を何が分けるのか。

 第一には、本人の意欲と努力だろう。何をなすべきかを自覚し、努力することが欠かせないが、努力した人が必ず成功するとは限らないのは歴史の厳しさだ。第二に、運やチャンスが現れた時に、つかむことができるか。第三に、能力を発揮することができるポジションに立つことができるか。

 40数年生きてきたからといって、誰もが成熟するとは限らない。歴史に名を残さず、年齢相応の成熟を見せなくても、それも一つの人生で、無為に生きた人生と傍目には見えても、本人には納得できる人生もあるだろう。

 一方で、40数年の人生を色あせたものに見せる人もいる。例えば、46年生きてきて、酒に溺れ、自分の娘ほどの女の子に迷う人生を生きるタレント。タレント事務所に過保護にされて生きてきた男の人生のツケだろうが、芸能史には汚名として名が残った。

2018年5月2日水曜日

強固な男性優位社会

 セクハラ(セクシャルハラスメント)は言葉や行為による性的嫌がらせを行うことであり、パワハラ(パワーハラスメント)は地位や権力で優位にある者が言葉や行為による抑圧や嫌がらせを行うこと。セクハラも地位や権力で優位にある者が行うことが珍しくなく、どちらも力関係の優劣が背景にある。

 日本はまだ男性優位の社会であり、地位や権力も男性が女性より優位にあることが多いので、セクハラやパワハラを行う主体は男性が多い。身体に対する傷害なら被害者の特定は容易だが、言葉によるセクハラやパワハラは精神的な傷害であり、当事者の認識に関係し、また、「証拠」の保存の困難さもあって客観的な認定は簡単ではない。

 そんな日本でも、セクハラやパワハラは許されざる行為であるとの認識は定着しつつあるようだ。だから、セクハラやパワハラを行ったと批判された人間は、指摘されてから、無自覚だった自己の行為を反省するか、セクハラやパワハラに相当する行為ではなかったと反発したり弁解したりする。

 米国ではハリウッドの大物プロデューサーの長年にわたるセクハラ行為や性的関係の強要が暴かれ、タブーが打ち破られたのか、大物俳優や政治家らの同様の行為の暴露が続いた。被害を受けた人たちによる告発の動きは拡大し、「#MeToo」とSNSなどで様々な事例が明るみに出されるようになった。

 そうした告発の動きは日本では広がらず、男性優位社会は強固に見える。セクハラやパワハラに限らず、組織や権威などに対して告発する者が冷ややかに見られることもある日本だから、告発するには余程の覚悟が必要か。告発した側の尊厳や人権が傷つけられたり、不利益を被ることもある。

 日本が、政治家や高級官僚の半分以上が女性で、新聞社やテレビ局の幹部も大半が女性という女性が権力を持つ女性優位社会だったなら、男性によるセクハラやパワハラは大幅に減るだろう。それでもセクハラやパワハラがあるとすれば、地位や権力で優位にあることと関係するから、今度は女性が「加害者」になるのだろうか。

 そうなると、男性記者に対して女性の高級官僚が「○◯に触っていい?」「抱きしめていい?」「予算通ったら浮気するか?」「手縛ってあげる」などと言ったと男性が告発する……女性優位社会で男性は、セクハラやパワハラに怒り、そんな社会を変えようと積極的に動くのだろうか。