ノーベル賞の各賞はスウェーデンが受賞者を決めるが、平和賞だけはノルウェーのノーベル委員会が選考し、受賞者を決め、オスロの市庁舎で授賞式が行われる。2010年に平和賞を受賞した中国の劉暁波氏は民主運動家で、当時服役中だった。劉暁波氏への平和賞授与に中国政府は猛反発し、ノルウェー産サーモンの輸入規制や政治交流の停止などを行い、両国関係が正常化したのは2016年だった。
ノルウェーは日本とほぼ同じ面積だが人口は525万人(2022年)。EU加盟を1994年の国民投票で否決しており、「EU加盟により得られる利益に懐疑的な国民世論、EU加盟による自国農業及び漁業への影響に対する懸念等が理由。最近の世論調査でも依然として加盟反対派が過半数」だが「EUとの協力関係は緊密で広範囲に及び、大部分のEU指令を国内に適用」(外務省)。NATOの原加盟国。
EEAには加盟しているノルウェーはEU単一市場にアクセスする権利を持ち、石油や天然ガスなど輸出の3分の2がEU向けとされる。ノルウェーの名目GDPは4837億ドルで世界32位だが1人当たりGDPは8万6611ドルで世界6位だ(7位が米国で8万5812ドル。2024年、IMF)。主な輸出品は原油・天然ガス、水産物、非鉄金属で輸出先はEU諸国が上位を占め、輸入先はスウェーデン、中国、ドイツ、米国などとなる。
ノーベル賞の科学3賞は評価が定まった業績を挙げた人に対して授与されるが、平和賞は国際紛争など進行中の事象に関係する人や団体が受賞者になることがあり、疑問や反発が生じたことは度々あり、立場が異なる側から批判が出やすい。平和とは「戦いや紛争が発生していない状態」だから平和は政治によって維持されたり破壊されたりし、また、戦いや紛争が発生していなくても鋭い緊張状態にある地域も多いので、平和賞の受賞者の選定は政治的に解釈される。
平和賞は「国家間の友愛、常備軍の廃止あるいは削減、和平会議の開催と促進に最大あるいは最善の貢献を行った」人々に授与すべきとのアルフレッド・ノーベルの遺言に基づく。各国が推薦した候補の中からノルウェーのノーベル委員会が選考して受賞者を決める。
米トランプ大統領はノーベル平和賞を欲しがっていると見られていたが、報道によると6月にトランプ大統領は、米国の仲介によるDRCとルワンダの和平協定など世界各地の紛争を仲介してきたとし、「4、5回はノーベル平和賞をもらうべきだった」と述べ、「私は受賞できない。なぜなら、彼らはリベラルにしか授与しないからだ」と主張した。
パキスタンやイスラエルはトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦すると表明した。トランプ氏に「恩を売る」絶好の機会だ。だが、各地の紛争を仲介する一方でイラン爆撃なども行うトランプ大統領に平和賞が授与されるか不明だ。今年のノーベル平和賞が授与されなかった時、トランプ大統領は「選考が公平ではなかった」としてノルウェーに高い関税を課すかもしれないな。ノルウェーの水産物の大消費国は米国だから。