2020年12月30日水曜日

トランプ氏の最後っ屁

  米議会が可決した9000億ドル(約93兆円)の新型コロナウイルス対策法案にトランプ大統領は署名し、同法案は成立した。署名を拒否するとトランプ大統領は言い、現金給付額の1人最大600ドルは少ないとして2000ドルに引き上げるよう主張していたのだが、政府予算の期限切れが迫り、1200万人分の失業給付の特例措置が失効したことなどから態度を一変させて同法案を成立させた。

 退任間際のトランプ大統領に議会も人々も振り回された格好だが、大統領選での敗北を認めていないトランプ氏が静かにホワイトハウスを去るかどうか定かならず、といって居座ることはできないので、大統領でいる間に何をやるか予測がつかず、イタチの最後っ屁めいた奇策の乱発があるかもしれないと懸念する向きもいるそうだ。

 大統領選の「不正」を裁判で争うことが困難な情勢になってからトランプ氏は恩赦や減刑を連発している。その対象は、娘婿の父親や元側近、支持者ら自分に近い人物だ。ロシア疑惑関連で有罪になった連中が獄中から「救出」されたりしている。さらにトランプ氏は、自分や家族に対する予防的な恩赦を検討しているとの噂も根強い。予防的な恩赦は、大統領退任後にも罪に問われないためとか。

 自分や家族に対する予防的な恩赦を検討しているとすれば、①法に抵触する行為が存在したと意識している、②法に抵触した行為が存在したかもしれないと懸念している、③自分を標的にした報復的な法の適用が行われると心配している、などの理由が推察できる。ホワイトハウスを去れば司法当局に影響力を及ぼすことはできないだろうから不安は増すばかりか。

 トランプ大統領の誕生は米国の民主主義の不安定さの反映だとの見方があるが、誰でも大統領になることができることを示したのだから米国の民主主義は健全だ。問題は、政治家の適性を有しない人物や政治家にしてはならない人物をも普通選挙では当選させることであり、主権者の選好を制限する仕組みが弱いのは民主主義の弱点で、優れた人物だけを選出する仕組みは民主主義にはない。

 トランプ大統領は既存の政治システムの部外者であり、政治家として不適当な人物でも大統領職は務まると実証したが、国内外で大いに既成の秩序を掻き乱した。それは変化を促進させ、ある種の新風を国内外の政治に吹き込んだが、既成秩序の崩壊を促し、特に国際秩序の不安定化を可視化させ、中国をはじめ帝国主義的な拡張政策を隠さない諸国の出現を許した。

 トランプ大統領の功績は様々あるだろうが、歴史的な評価は、現在進行中の国際秩序の変化が一段落ついた後になるだろう。米国は衰退したからトランプ氏を大統領に選んだのか、まだ活力があるからトランプ氏を大統領に選んだのか不明だが、トランプ氏のような人物でも大統領になることができるのは米国政治の懐の深さであることは間違いない。

2020年12月26日土曜日

日本を覆う第3波

 国内で確認された新型コロナウイルス感染者数が21万人、死者数は3100人を超えた(24日現在)。東京など首都圏では感染拡大の勢いが止まらず、東京5万4018人、神奈川1万8227人、埼玉1万2482人、千葉9712人と増えた。1都3県で計9万4439人となり、日本全体の44.8%を占める。接触感染や飛沫感染は人口密度が高いほど増えるだろうから、治療薬がない状況で大都市での感染拡大は当然か。

 感染者数が多い順に全国を見ると、東京5万4018人、大阪2万8167人に続いて、神奈川1万8227人、愛知1万4936人、北海道1万2618人、埼玉1万2482人と1万人を超えた。さらに千葉9712人、兵庫8767人、福岡7852人、沖縄5101人と続き、京都4110人を加えた11都道府県で17万5990人となり、日本全体の83.5%。

 人口が多い都市部や観光客が多い道県で感染者が増えているようにも見えるが、茨城・栃木・群馬や岐阜・三重・滋賀など大都市周辺県でも感染者が増え、さらに広島や岡山、長野、熊本、石川、鹿児島などでも増えている。感染者が最も少ないのは鳥取79人で、100人以下は鳥取だけになった。1000人未満は24県だが、石川や滋賀、鹿児島は900人台でクラスターが発生すれば、すぐに1000人台に乗る。

 感染経路を徹底的に解明することを続ければ感染拡大を抑止する効果的な対策が見えてくるだろうが、感染者の大幅増加のなかで濃厚接触者を細かく追うことができなければ、感染経路を追うことは難しい。増える感染者の対応に保健所も医療機関も手一杯となり、感染経路不明が増えるなら、その地域で何が効果的な対策なのかが見えなくなる。

 「Go to トラベル」中断で全国的な人の移動は抑制されようが、多くの人が留まる都市部での感染拡大抑止における効果は限られよう。だから繁華街などでの飲食店の営業時間短縮などを行政は要請するが、感染経路不明が増えれば、居酒屋などの利用客をさらに減らしたところで、どれほど感染減少の効果があるのか不明だ。

 北海道での感染拡大で可視化された第3波は、すぐに首都圏や大阪、愛知などで猛威を振るい始め、地方にも広がっている。PCR検査数の増加と感染者数の増加には相関関係がありそうだが、そうした検証は乏しい。軽症者や無症状者が圧倒的に多いとされる一方、死者も重傷者も増えているというので、地域によっては医療崩壊も懸念されるようになった。規制に強制力を持たせる法改正も議論され始めた。

 人々の外出や企業活動を制限して、人と人が接触する機会を極力少なくすることで第1波を何とか乗りきった日本だが、その代償は大手企業も含め大幅な赤字決算の続出で、街中には廃業した個人商店が珍しくなくなった。失業した人は増え、政府の援助に頼るしかない人々や企業が膨れ上がる。借金まみれの日本が無尽蔵に金をばら撒けば、いつかはツケを社会が払わなければならなくなる。このパンデミックは人々の健康だけではなく、社会のあり方も脅かしている。

2020年12月23日水曜日

「裸の王様」考

 1人の子供がパレードの王様を見て、「何にも着ていないよ!」と叫んだ。王様は「ばか者には見えない」特別な布地で仕立てた衣装をまとっていて、お披露目として大通りを行進していた。家臣にも王様本人にもパレードを見ている人々にも、その特別な衣装は見えなかったのだが、ばか者と呼ばれることを恐れて皆、何かが見えているふりをしていたのだ。

 これはアンデルセンの童話「裸の王様」だ。特別な布地で仕立てたという衣装は誰にも見えておらず、王様の姿は誰からも裸にしか見えていなかったのだが、誰もが王様の衣装が見えていると装った。自分の目で見た現実よりも、ばか者であると見なされることを恐れ、存在しない衣装が見えているとした。おそらく多数の人は、王様は特別な衣装を着ているとの権力からの設定に追随しただけだろう。

 ばか者と見なされるのを恐れるのは、ばか者が社会で低位に置かれるからだ。ばか者の定義は人により様々で、主観に左右されるから、ばか者だと誰もが認める人物はそう多くはないだろう。だから、ある特別な布地が見えるかどうかが、ばか者の判定基準になると人々は、ばか者にされたくないから、特別な布地で仕立てた衣装が見えていることを演じる。

 特別な布地で仕立てた衣装を着たという人が一般人なら、人々は見て、すぐに「何も着ていないじゃないか」と大笑いしただろう。特別な衣装を着たというのが王様だから人々は、どう振る舞うのが社会的に適切かを考え、いつものように王様の行動を称賛することにしたのだ。支配される人々の心理とは、権力に従うことを最優先する。

 そうした心理が希薄な子供だから、王様が何も着ていない現実を指摘することができた。童話では、子供の叫びを聞いて人々はざわめき始め、何も着ていないのかと見たままの現実を受け入れ、ついには皆が「何も着ていらっしゃらない!」と口々に言い始め、その中で王様のパレードは続いたと結ぶ。王様が裸であると言い始めた人々が大笑いしたなら、王様の権威は失墜しただろう。

 権力は様々な「衣装」をまとい、人々の目には強大な存在に見えていよう。それらの「衣装」の全てに実態があるとは限らず、ばか者には見えない布地で仕立てられた「衣装」もありそうだ。ばか者には見えない布地という設定を人々は、その布地が見えない者はばか者だと受け取る。何かが見えているように装うのは、権力との付き合い方だと人々は承知している。

 見た現実を多くの大人は解釈して受け入れる。事実よりも解釈のほうを重視する人は珍しくなく、その解釈がネットやテレビや新聞、雑誌などの受け売りだったりもする。解釈は誰かの主観であるのだが、解釈に事実を混ぜ合わせていたりするので、解釈が客観的なものであると混同したりする。現実を見たままに、「何も着ていないよ!」と指摘できる大人になるのは簡単ではない。

2020年12月19日土曜日

否定して貶める

 議論において、相手の発言がどんなに承服し難かったとしても、感情的になって相手に対する人格攻撃などに堕することは、その議論に負けたことに等しい。反則負けである。とはいえ、人は感情に支配される生き物なので、相手を感情的にさせることも議論のテクニックの一つか。

 相手の発言に存在する事実の誤認や解釈の偏りなどを指摘しつつ自説を主張し、相手を説得するのが、冷静かつ理性的な議論のスタイルなのだろう。だが、それには、自説に固執せず、客観的に自説も検証するという暗黙の前提を議論の参加者が共有している必要がある。

 そういう前提は、特に政治などに関する議論では希薄だ。むしろ、自説に固執し、自説に対する客観的な検証を許さず、相手の主張を否定し、さらには相手をも否定することで自説の「正しさ」をアピールしようとしたりする。相手の主張や相手を否定することと、その人の主張が正しいかどうかは無関係だが、政治などが関わる議論においては、その種の発言は珍しくない。

 むしろ、相互の主張に相応の根拠や正当性があるのが政治などに関する議論だ。自説に固執しないという政治家や活動家、運動者は非常に少ないだろうから、議論は相互の主張を一方的に言い合うだけになる。自説を客観的に検証したり、相手の主張に理解を示す姿勢は、議論を闘争とみなす政治などにおいては弱みになろう。

 相手の主張を否定することが自説の正しさになるというのは二者択一の場合だけである。AかBかの選択肢しかない場合、Aが否定されると、残るのはBだけになる。しかし、現実には政治の場においても「正解」は揺れ動いていて確かならず、さらに複数の「正解」があったりする。相手の主張を否定したとしても、否定した人の主張が正しいと自動的にはみなされない。

 対立する相手を貶めて自己の主張の正当性をアピールするという政治などにおける議論スタイルは特殊なものだ。だが、同様の議論(というより、互いに一方的に言い合い、否定し合う)スタイルは広く見られる。おそらく、客観的な検証に耐えることができない自説に固執するという未熟さのため、批判に耐えられないから相手を否定するしかないのだろう。

 批判と否定は異なる。批判に対する耐性が低く、批判を否定と受け止める人が、相手を否定することで反撃するのかもしれない。そうした議論は実は議論の否定もあり、議論の拒否でもある。そうした議論から発展的な見解が生まれることはまずないだろう。

2020年12月16日水曜日

情報の生態圏

 生態圏とは、生物が存在する領域であり、一般には生物圏と同義とされる。生態学は生物の生活を調べ、生物と環境条件の関係や生物と個体間や集団、他の生物との関係、物質やエネルギーの循環などを明らかにする学問だ。生物は地上にも地下にも海中にも生存しており、それぞれの生物にはそれぞれの生存空間=生態圏がある。

 例えば、地上といっても、アリが這い回る地面もあれば、その上の人間や多くの動物が活動する空間もあり、森林もあれば樹上もあり、砂漠もあれば草原もあり、鳥類が活動する空中もあれば河川や湖沼もあるように生態圏は生物によって異なり、様々な生態圏が地上には存在する。人間の生態圏に限っても様々な環境がある。

 様々な人間の生態圏は、生存を維持するという基本的な自然条件の制約はあるはずだが、猛暑でも極寒でも人間は住み着き、乾燥地帯にも湿潤地帯にも住む。多くの商品が大量に広範に流通するようになったので環境要因による生活への制約は小さくなり、人間の生態圏は拡大している。だが、実際には都市生活の利便性という魅力は大きく、世界で多くの人々は都市に集まる。

 生態圏という発想を個人に当てはめ、個人が活動する領域として見ると、それぞれに異なる生態圏があり、そこで暮らす生活実感は相当に異なるだろう。例えば、山間部の集落で暮らす人と都市生活者では生活条件が異なるので必要とする情報は異なり、そこに個人の心情や関心、価値観、政治的主張などが加わるので、さらに個人の生態圏で求められる情報は広範なバラツキを生じる。

 都市生活者の間でも個人の生態圏は様々で、求められる情報は大きく異なるだろう。日本の政治に関心がある人と芸能にしか関心がない人、スポーツに関心がある人、経済や企業動向に関心がある人では、求める情報が異なる。さらに、日本の政治に関心がある人でも自民党支持者と共産党支持者では、求める情報が違うだろう。それは、新たなことを知るための情報ではなく、すでに保有する信念などを補強するために求める情報だからだ。

 新聞やテレビなどに情報源が限られていた時代から、数多くの情報メディアが存在する時代になり、SNSなどには真偽定かならぬ「情報」があふれている。情報は、人々がただ受け取るだけだったのが、自分で選んで取りに行くものに変化した。だが、自己の価値判断に合わせて情報を選んで受け入れる人々は、自己の価値判断を揺るがすような情報は拒絶する(拒絶できる)。やがて情報源は固定し、人々には各自の情報の生態圏が形成される。

 米国の大統領選におけるトランプ支持者と反トランプの人々の対立に顕著に見られたように、人々はそれぞれの情報の生態圏を生きている。自己の信念や信条などを補強する情報を得ようとすれば、それに適するメディアを選べばよく、自己の価値観に反する情報を提供するメディアは拒絶する。その結果が分断の激化ともなるが、共通する情報=共通する認識が乏しいのだから、溝は簡単には埋まらない。

2020年12月12日土曜日

エビデンス

  犯罪行為が行われている状況を目撃した人が、後に、見た状況を話すことは捜査や裁判で重要な証拠として扱われる。目撃したのが1人だけだったとしても、証言の信憑性が疑われるわけではなく、むしろ、たった1人の目撃者としてその証言が重要視され、犯罪立証の決め手になったりもする。

 一方、科学において1人だけの証言は、そのままでは事実とはみなされない。複数の研究者が観測や実験を行い、同じ結果が得られてから初めて最初の人の証言が事実であるとされる。例えば、STAP細胞ができたとの実験結果が発表されたが、世界で追試が行われたものの誰もSTAP細胞をつくることはできず、批判され、STAP細胞ができたとの論文は撤回された。

 論文に記載されていない何かの条件が作用してSTAP細胞が偶然にできた可能性はあるが、他の人が再確認できない事象は科学的には事実とされない。共有できる事象が科学的な事実であり、たった1人だけが確認して他の誰も確認できない事象は科学的には事実と認められない。科学的な事実とは、主観が完全に排除されて、客観性だけで構成される。

 犯罪の目撃証言はたった1人のものであっても信用され、実験結果や観察結果など科学的な事象は1人の証言だけでは信用されず、複数が同じ結果を共有して初めて事実とされる。犯罪の目撃はただ1回のものであるが、科学的な事実は再現可能であったり再確認可能であることが要求される。

 英語のエビデンス(evidence)は英和辞書によると、①信ずべき根拠、証拠、(法律)証拠物件、証言②しるし、兆候、形跡、痕跡。だから、目撃証言も科学的な事実もエビデンスなのだが、日本ではエビデンスは科学的な根拠・証拠の意味で使用される傾向がある。これを利用して、目撃証言と同様な他者に確認されない事象をエビデンスとして、科学的な装いをさせる言い方がある。

 「GoToトラベル」事業が感染を拡大したとの野党の追及に菅首相は「GoToトラベルが感染拡大の主要な原因であるとのエビデンスは、現在のところ存在しない」とした。確かにGo to事業と感染拡大を直接に関連させるデータを集めて分析し、立証するのは簡単ではなく、困難と言ってもいい。しかし、Go to事業と感染拡大には相関性が感じられるのも事実で、それは医師などからも指摘されている。

 自分に都合の悪い事実を嘘だとするのが政治家だ。政治家がエビデンスと言い始めたのは、エビデンスなるものが政治的な言語に変化したからだろう。自説に都合がいい科学者の言説を政治家が利用する話法だ。科学者の主張でも、検証されずにいるものは仮説に過ぎない。仮説はエビデンスにはなり得ない、ただの一つの主張に過ぎない。

2020年12月9日水曜日

分断を生きる

 米国には政治信条、経済的格差、人種、宗教、倫理観などによる様々な分断が存在し、違いを認め合って共存する社会を謳う一方で大統領選では人々の対立が先鋭化し、激しく批判しあったり、罵りあったりする光景が繰り返される。今回の大統領選では、選挙後の混乱に備えて自衛用の武器を購入する人が増えたとも報じられ、分断が深刻だとされた。

 多様な人々が暮らす自由な社会では人々が持つ価値観も多様になり、個人の自己主張が尊重される社会では様々な主張が対立するのは不思議ではない。そうした自己主張が非妥協的な様相を帯びると、互いに攻撃しあう。自己主張の激しい対立は社会の分断を可視化したと見えるが、そうした分断は自由な社会であることの反映でもある。

 穏健な主張も過激な主張も、現体制を擁護する主張も否定する主張も、暴力を肯定する主張さえも許容されるのが自由な社会だ。暴力が行使された場合には法規制が伴うが、言葉による主張にとどまっているなら、どんな過激な主張も許容されるのが自由社会の原則だ。そうした社会で、分断の存在は個人の自由な意思表示が活発に行われていることの反映であろう。

 分断を批判するのは、社会が一つにまとまっているほうが良いとの思い込みが前提になっている。一つにまとまっている社会を賛美するのはファシズム体制だ。例えば、中国などの独裁国家では社会に存在する分断(=人々の自由な主張)は強権で抑圧され、社会から分断は排除され、分断が社会に存在しないように「演出」される。

 分断が可視化される社会が病んでいるのか、分断が可視化されずに隠蔽される社会が病んでいるのか。分断の存在を問題視しすぎると、自由な社会や民主主義社会を軽視し、権威主義体制や独裁体制をうっかり賛美しかねないぞ。社会の自由度と分断の可視化程度が比例するとするなら、分断の可視化を深刻がる必要はない。

 バイデン前副大統領は「勝利宣言演説」で、分断ではなく結束を目指す大統領になると語った。トランプ氏支持者に「暴言をやめて冷静になり、もう一度向き合い、双方の主張に耳を傾けるべきだ」「互いを敵とみなすのはやめなければいけない。私たちは敵ではない。私たちは米国人だ」と呼びかけた。もっともな言葉だが、こんな言葉で状況が変わるはずはなく、人々はそれぞれの主張を続け、分断は可視化され続ける。米国が自由な社会だからだ。

 和をもって尊しとする社会なら、社会の分断は憂うべき状況だろう。だが、人々が同調圧力を感じて鬱陶しい毎日を送っている和を強要される社会よりも、人々が自己主張をし合っている社会のほうが風通しは良さそうだ。人々が自由に主張することで権利を獲得してきた歴史のある社会では、人々の多様な主張の衝突は主権者意識の反映でもあり、人々は分断を生きる。

2020年12月5日土曜日

感動を与える

  感動とは、美しいものや素晴らしい出来事などに強く心を揺さぶられた時の感情だ。心を揺さぶられた対象への絶賛であり、対象を肯定する最上級の表現でもある。日常的に生じる、ありふれた感情ではないから感動は特別な高揚感を伴って記憶されたりもする。

 この感動という言葉が日常語へと変わりつつあるようだ。「感動した」とか「感動を与える」などの言葉を聞いたり見かけることが多くなった。これは、特別に美しく素晴らしい出来事が増えたからだとも解釈できるが、日常的な感情を表す言葉として簡単に感動という言葉が使われるようになったとも解釈できる。

 「感動した」とは対象に対する評価でもあるから、感情が大きく動きやすい人は感動という言葉を乱発する。感動という言葉が日常語になったのは、現代人(若者?)の感情が動かされやすくなり、対象に対する評価が甘くなっているためと考えると、感動する対象が増えたのではなく、ちょっとした感情の動きにも感動という言葉を使うようになったと解釈できる。

 一方で「感動を与える」との発言を聞くことも珍しくなくなった。スポーツ選手が、活躍する決意を示す時などに使われたりする。いい選手であったとしても、「意図的に感動を与えられるなんて、いやだよ」と言いたくなることもある。感動を与えるという大きな責任を選手が感じているようにも見えないから、おそらく流行り言葉なのだろう。

 感動を与えるとは、見る人々の感情をコントロールすることである。スポーツ選手は深く考えて言っているのではなく、「頑張ります」が変化した表現として使っている気配だ。活躍できなかったスポーツ選手が「感動を与えられず、すみません」などと謝罪した場面を見たことがないので、感動を与えられなかったとしても責任が追及されることはないから、安直に「感動を与える」と言う。

 感動という言葉が日常語になったのは人々が感動を求めているからだが、感動というより強い刺激を求めているのだろう。自分の感情を強く刺激する何かを求めたり期待する。手っ取り早いのがスポーツで、感動が量産され、観客は手軽に熱狂できる。

 人々が日常生活において感動(強い刺激)を求める社会とは、平穏で安定した社会だ。内戦状態とか交戦国の社会などでは日常生活に強い刺激がありすぎるだろうから人々は日常的に緊張を強いられ、感動など特に求めないだろう。政治による強い刺激が存在する社会で人々は無感動に生きるのかもしれない。

2020年12月2日水曜日

Go to ロックダウン

 日本では全国で感染が拡大して新たに確認される感染者は連日2千人以上になり、累計の感染者数は15万人を超えた。軽症者や無症状者が多いとされるが、重症者も増えており、死者数は2200人を超えた。北海道で感染者が急増して第3波が襲来していると報じられていたが、まもなく東京、大阪、愛知などでも感染が拡大していることが明らかになった。

 感染者は東京で4万人、大阪で2万人、愛知で1万をそれぞれ超え、この3地域で全国のほぼ半分を占めるが、東京など首都圏1都3県の合計も7万人と全国の半分近い。大都市に限らず各県でも感染は拡大しており、感染者が100人未満は鳥取、秋田の2県だけに減った。感染者ゼロを続けていた岩手県でも感染者が連日増え、200人以上になった。感染者数が1千人を超える県は全国で珍しくなくなった。

 日本でも各国からの入国者は制限されているので、第3波のウイルスが外国から持ち込まれた可能性は少ないだろう。第3波は、感染者が多い首都圏などから各地への人の移動を増やした「Go to トラベル」の影響が大きいと見られ、更に「Go to イート」「Go To イベント」を含め人の活動活発化が感染拡大につながったのなら、新型コロナウイルスと共存する経済活動とは相当に困難なものであると見えてくる。

 全国で都道府県など自治体はそれぞれ警戒ステージを引き上げ、対応を強化した。飲食店に営業時間短縮などを要請し、マスク着用や3密回避などを人々に呼びかける一方、重症者の増加による病床の逼迫などに直面して医療崩壊を回避しようと懸命だ。だが、第3波が地域的な現象ではなく全国的な現象だとすれば、どこかの地域で押さえ込んだとしても効果は限られ、すぐに別の地域で感染拡大が始まろう。

 地域的な対策ではなく全国的な対策が必要となれば政府が動くしかなく、治療薬やワクチンが不在といえる現在、感染拡大を抑制する方法は人々の接触機会を減らすことしかない。それで、「Go to トラベル」「Go to イート」などを取りやめ、人々に外出自粛や企業にリモートワーク拡充などを求めるのだが、要請だけでは効果が限られるとすれば、強制力を行使するしかない。「Go to ロックダウン」とか「Go to 緊急事態宣言」になりかねない状況だ。

 欧州各国ではすでに「Go to ロックダウン」が現実化した。フランスは全土で外出制限を実施し、飲食店などを閉鎖した。ドイツも飲食店や娯楽施設を閉鎖し、イタリアは全土で飲食店の夜間営業を制限、人々の夜間外出を禁止した地域がある。スペインは全土で夜間外出を禁止し、英国はイングランドでロックダウンを実施した。オーストリアは飲食店の営業を禁止して夜間外出を禁止、ポルトガルは人々に在宅を要請し、ベルギーはスーパーを除く商業施設の営業を禁止した。

 第3波の感染拡大にも日本政府の動きは鈍く見える。企業決算では大幅な赤字が続出していて、厳しい外出制限で営業活動を停止させれば回復不能に陥りかねないダメージを企業に与えかねず、財政的な余裕もないので日本政府はロックダウンを躊躇する。「Go to〜」キャンペーンだけが第3波の原因ではないだろうが、「Go to ロックダウン」に追い込まれるとするなら皮肉だ。

2020年12月1日火曜日

ドキュメント「パンデミック11月」

 日本でも世界でも感染拡大が続いている。世界における新型コロナウイルスの感染者数は30日に6251万人、死者数は145万人を超えた。米国とインド、ブラジルの3国で世界の感染者の46%、死者の40%を占めるが、感染者数が100万人を超えた国も続出するなど、感染拡大の勢いは加速しているように見える。日本でも10月30日に10万人を超えた感染者数が11月30日には14万9145人と1カ月で5割も増加した。

 <11月> 1日=世界の感染者が4600万人超す(米国で907万人、インドで813万人、ブラジルで551万人、ロシアで160万人、フランスで137万人、英国で98万人超す)。死者が世界で119万4千人超す(米国で23万千人、ブラジルで15万9千人、インドで12万1千人、メキシコで9万1千人超す)。日本の国内の感染者が10万2千人超す。

 2日=世界の感染者が4634万人超す(米国で915万人、インドで818万人、ブラジルで553万人、ロシアで162万人、フランスで145万人、英国で101万人、メキシコで92万人超す)。死者が世界で119万8千人超す(米国で23万千人、インドで12万2千人超す)。ドイツが全土で飲食店の営業禁止など部分的なロックダウン。ベルギーは全土で厳しいロックダウン。スイスのジュネーブ州は大半の商店や飲食店の営業を禁止するなど規制強化。

 3日=世界の感染者が4687万人超す(米国で929万人、インドで826万人、ブラジルで555万人、ロシアで164万人、フランスで146万人、英国で103万人超す)。死者が世界で120万6千人超す(米国で23万1千人、ブラジルで16万千人、インドで12万3千人、メキシコで9万2千人超す)。オーストリアは夜間外出禁止や飲食店閉店など部分的ロックダウン。日本の国内の感染者が10万3千人超す。

 4日=世界の感染者が4737万人超す(米国で930万人、ロシアで166万人、英国で105万人、メキシコで93万人超す)。死者が世界で120万9千人超す。米国での新規感染者数が初めて10万人超す。日本の国内の感染者が10万4千人超す。

 5日=世界の感染者が4803万人超す(米国で948万人、インドで831万人、ブラジルで559万人、ロシアで168万人、フランスで159万人、英国で107万人超す)。死者が世界で122万4千人超す(米国で23万3千人、ブラジルで16万1千人、メキシコで9万3千人、英国で4万7千人超す)。英国がイングランドで1カ月間のロックダウン。デンマークで家畜のミンクから変異した新型コロナウイルスが見つかる(北ユラン地域の7カ所を封鎖)。日本の国内の感染者が10万5千人超す。

 6日=世界の感染者が4862万人超す(米国で960万人、インドで841万人、ロシアで169万人、フランスで164万人、英国で109万人、メキシコで94万人、イタリアで86万人超す)。死者が世界で123万3千人超す(米国で23万4千人、インドで12万4千人、英国で4万8千人、イタリアで4万人超す)。イタリアは全国で夜間外出禁止、地域により部分的なロックダウン。仏パリは夜間の宅配サービス・持ち帰りを禁止。日本の国内の感染者が10万6千人超す。

 7日=世界の感染者が4899万人超す(米国で964万人、ブラジルで561万人、ロシアで172万人、英国で112万人超す)。死者が世界で123万7千人超す(米国で23万5千人超す)。ギリシャは全土封鎖措置を再導入。日本の国内の感染者が10万7千人超す。

 8日=世界の感染者が4960万人超す(米国で976万人、インドで846万人、ブラジルで563万人、ロシアで174万人、フランスで170万人、英国で114万人、メキシコで95万人超す)。死者が世界で124万7千人超す(米国で23万6千人、ブラジルで16万2千人、インドで12万5千人、メキシコで9万4千人超す)。日本の国内の感染者が10万8千人超す。

 9日=世界の感染者が5039万人超す(米国で996万人、インドで855万人、ブラジルで566万人、フランスで183万人、ロシアで176万人、英国で117万人、メキシコで96万人超す)。死者が世界で125万6千人超す(米国で23万7千人、インドで12万6千人、メキシコで9万5千人、英国で4万9千人超す)。マレーシアはマレー半島の8州に活動制限令。WHOは年次総会への台湾のオブザーバー参加を中国の反対で認めず。日本の国内の感染者が10万9千人超す。

 10日=世界の感染者が5061万人超す(米国で999万人、ロシアで178万人、英国で119万人超す)。死者が世界で125万9千人超す。日本の国内の感染者が11万人超す。

 11日=世界の感染者が5143万人超す(米国で1016万人、インドで859万人、ブラジルで567万人、フランスで185万人、ロシアで180万人、英国で121万人、イタリアで102万人、メキシコで97万人超す)。死者が世界で127万2千人超す(米国で23万8千人、インドで12万7千人超す)。イタリアはトスカーナ州など5州で行動制限を強化。日本の国内の感染者が11万2千人超す。

 12日=世界の感染者が5212万人超す(米国で1040万人、インドで868万人、ブラジルで574万人、フランスで191万人、ロシアで182万人、英国で123万人、メキシコで98万人超す)。死者が世界で128万4千人超す(米国で24万1千人、ブラジルで16万3千人、インドで12万8千人、メキシコで9万6千人、英国で5万人超す)。日本の国内の感染者が11万3千人超す。

 13日=世界の感染者が5273万人超す(米国で1055万人、インドで872万人、ブラジルで578万人、ロシアで184万人、英国で125万人超す)。死者が世界で129万3千人超す(米国で24万2千人、ブラジルで16万4千人、メキシコで9万7千人、英国で5万1千人超す)。ロシアは首都モスクワでバーやレストランなどの深夜営業を禁止。米ニューヨーク州は飲食店の営業規制を再び強化。米国の新規感染者数が18万人超す。日本の国内の感染者が11万5千人超す。

 14日=世界の感染者が5338万人超す(米国で1073万人、ブラジルで581万人、ロシアで186万人、英国で129万人、メキシコで99万人超す)。死者が世界で130万2千人超す(米国で24万4千人超す)。日本の国内の感染者が11万7千人超す。

 15日=世界の感染者が5366万人超す(米国で1079万人、インドで877万人、ロシアで188万人、英国で131万人超す)。死者が世界で130万7千人超す(インドで12万9千人超す)。日本の国内の感染者が11万8千人超す。

 16日=世界の感染者が5437万人超す(米国で1103万人、インドで884万人、ブラジルで586万人、ロシアで191万人、英国で134万人、メキシコで100万人超す)。死者が世界で131万7千人超す(米国で24万6千人、ブラジルで16万5千人、インドで13万人、メキシコで9万8千人、英国で5万2千人超す)。スウェーデンは9人以上の集会を禁止。日本の国内の感染者が11万9千人超す。

 17日=世界の感染者が5475万人超す(米国で1108万人、ロシアで193万人、英国で136万人超す)。死者が世界で132万1千人超す。オーストリアが外出や店舗営業を原則禁止。トルコは店内飲食を禁止し、週末の外出時間を制限。

 18日=世界の感染者が5562万人超す(米国で1140万人、インドで891万人、ブラジルで591万人、フランスで208万人、ロシアで195万人、英国で139万人超す)。死者が世界で133万8千人超す(米国で24万9千人、ブラジルで16万6千人、インドで13万人、メキシコで9万9千人、英国で5万3千人超す)。日本の国内の感染者が12万3千人超す。

 19日=世界の感染者が5624万人超す(米国で1152万人、インドで895万人、ブラジルで594万人、フランスで211万人、ロシアで197万人、英国で141万人、メキシコで101万人超す)。死者が世界で134万9千人超す(米国で25万人、ブラジルで16万7千人、インドで13万1千人超す)。日本の国内の感染者が12万6千人超す。

 20日=世界の感染者が5683万人超す(米国で1157万人、ロシアで199万人、英国で143万人超す)。死者が世界で135万8千人超す(米国で25万1千人、ブラジルで16万7千人超す)。トルコは飲食店や商業施設の営業時間短縮と週末の部分的ロックダウン。日本の国内の感染者が12万8千人超す。

 21日=世界の感染者が5756万人超す(米国で1191万人、インドで905万人、ブラジルで602万人、フランスで216万人、ロシアで202万人、英国で145万人超す)。死者が世界で137万2千人超す(米国で25万4千人、ブラジルで16万8千人、インドで13万2千人、メキシコで10万千人、英国で5万4千人超す)。イランは首都テヘランで店舗の営業禁止。米カリフォルニア州は夜間外出を禁止。日本の国内の感染者が13万1千人超す。

 22日=世界の感染者が5814万人超す(米国で1208万人、インドで909万人、ブラジルで605万人、フランスで217万人、ロシアで204万人、英国で147万人、メキシコで102万人超す)。死者が世界で138万人超す(米国で25万5千人超す)。日本の国内の感染者が13万3千人超す。

 23日=世界の感染者が5864万人超す(米国で1224万人、インドで913万人、ブラジルで607万人、フランスで219万人、ロシアで207万人、英国で149万人、メキシコで103万人超す)。死者が世界で139万6千人超す(米国で25万6千人、ブラジルで16万9千人、インドで13万3千人、メキシコで10万1千人、英国で5万5千人超す)。カナダはトロント市と近郊でロックダウン。タイは非常事態宣言の期限を延長。フランスは対策を2021年1月まで3段階に分けて緩和。日本の国内の感染者が13万4千人超す。

 24日=世界の感染者が5905万人超す(米国で1228万人、ロシアで209万人、英国で151万人、メキシコで104万人超す)。死者が世界で139万2千人超す(イタリアで5万人超す)。スウェーデンは8人を超える公共の場での集まりを禁止。韓国はソウルなどで規制を強化。日本の国内の感染者が13万5千人、死者が2千人超す。

 25日=世界の感染者が5975万人超す(米国で1259万人、インドで922万人、ブラジルで611万人、フランスで220万人、ロシアで212万人、英国で152万人超す)。死者が世界で140万9千人超す(米国で25万9千人、ブラジルで17万人、インドで13万4千人、メキシコで10万2千人超す)。独が飲食店の営業禁止を延長 。日本の国内の感染者が13万7千人超す。

 26日=世界の感染者が6039万人超す(米国で1277万人、インドで926万人、ブラジルで616万人、フランスで222万人、ロシアで214万人、英国で153万人、メキシコで106万人超す)。死者が世界で142万1千人超す(米国で26万2千人、インドで13万5千人、メキシコで10万3千人、英国で5万6千人超す)。欧州の主要国はクリスマス期間中に対策を緩和する方針。日本の国内の感染者が14万人超す。

 27日=世界の感染者が6087万人超す(米国で1281万人、ロシアで216万人、英国で156万人、メキシコで107万人、ドイツで100万人超す)。死者が世界で143万人超す(米国で26万2千人、メキシコで10万3千人、英国で5万7千人超す)。米国の新規感染者数は20万5500人。日本の国内の感染者が14万2千人超す。

 28日=世界の感染者が6164万人超す(米国で1308万人、インドで935万人、ブラジルで623万人、フランスで224万人、ロシアで219万人、英国で157万人超す)。死者が世界で144万2千人超す(米国で26万4千人、ブラジルで17万1千人、インドで13万6千人、メキシコで10万4千人超す)。日本の国内の感染者が14万5千人、死者が2100人超す。

 29日=世界の感染者が6224万人超す(米国で1324万人、インドで939万人、ブラジルで629万人、フランスで226万人、ロシアで222万人、メキシコで109万人超す)。死者が世界で145万2千人超す(米国で26万6千人、ブラジルで17万2千人メキシコで10万5千人、英国で5万8千人超す)。日本の国内の感染者が14万7千人超す。

 30日=世界の感染者が6251万人超す(米国で1329万人、ロシアで224万人、英国で160万人、メキシコで110万人超す)。死者が世界で145万6千人超す。日本の国内の感染者が14万9千人超す。