2022年1月29日土曜日

生態系と環境保護

 帰化植物とは、外国から渡来して野生化し、既に生態系の一部になった植物を指す。外来生物は外国から人為的に持ち込まれたりして野生化した動植物で、日本の生態系を乱して有害な変化を与えかねない存在とされる。生物多様性条約の締約国には外来種の導入防止や撲滅などが義務づけられ、日本でも法規制が行われた。

 外来生物法では特に特定外来生物の輸入や飼育、譲渡、移動などが禁止され、見つかった特定外来生物は殺処分されたりする。カミツキガメなど人間に危害を加える可能性があったり、農作物を食い荒らしたりする生物が駆除の対象になることは当然とも思えるが、この法律の狙いは「生態系等に係る被害の防止」と広い(同法の生態系等には農林水産業や人間の安全も含む)。

 こうした条約や法令は、生態系を保護し、環境保全につながるイメージがあって抵抗なく受け入れられた。しかし、外来生物を含めて人間や農林漁業に害を及ぼす動植物の駆除は従来から行われてきたことであり、新たな法規制で生態系の保護を持ち出したことによって、各国の固有の生態系は保護されなければならないとのイメージを広めた。

 ガラパゴス諸島などのような特別な生態系を維持するためには規制によって外来生物の侵入や移入を防ぎ、固有種を保護しなければならないだろう。だが、帰化植物など各種の帰化生物が既に定着しているのが地球上の大半の生態系だ。人間が世界各地に移動・移住して混じり合って生きていることが容認されるのだから、動植物が世界各地で混じり合って生きることも容認されても不思議ではないのに、生態系では混じり合って変化することは否定的に捉えられる。

 人間も動植物も世界で移動し、拡散して生存範囲を広げてきた歴史があるのだから、地球の各地の生態系は固定したものではなく常に変化してきた。おそらく、そうした変化が遺伝子の変化と多様性をもたらした。動植物には地域により固有種があるので、それは現代では保護の対象になるのだろうが、各国の生態系を固有のものと見なし、それらの生態系も保護しなければならないとする思考には歪みがある。

 歪みとは、環境を固定したものとし、それを維持することが「正しい」とする短絡だ。人間の寿命から見れば、数十年から100年単位の変化は環境破壊にも見えようが、億年単位の地球史からすると微微たる変化に過ぎない。もちろん、人類が人間の寿命に合わせた時間感覚で自然を含めた生存環境を管理し、できるだけ快適に暮らそうとするのは間違ってはいないが、人間の都合に合わせて自然環境を変えるとの思考であることの自覚が希薄だ。

 動植物など人間以外の生物は環境に適応して生きるしかないが、人間だけが環境を変える。地球史において環境は常に変化してきたが、環境保護という思想は、変化し続ける環境を人間に都合の良い環境に変えることを正当化する。環境保護を言いたて、実は人間が思うままに環境に変えてきたし、変えようとしている。

2022年1月26日水曜日

1000年に1度

 トンガの海底火山の噴火の規模は「1000年に1度の出来事」とも言われる。この海底火山は高さが約1800m・幅20kmにもなるもので、小中規模の噴火を繰り返してきたが、海面下に直径5kmのカルデラがあり、その地下に900〜1000年かけてマグマが蓄積されて圧力が高まり今回の大規模な噴火に至ったという説だ。

 今回の噴火では噴煙は高さ20km〜30kmに上がり、噴煙の半径は40分後に200kmに達し、最大で350kmに広がったとされ、数km3から10km3くらいの噴出物が出て、トンガの島々に大量の火山灰を降らせた。噴火の爆発音(音は空気の振動)は約2400km離れたニュージーランドでも聞こえたといい、海底火山の海面に出ていた山頂(島)の大部分が失われた。

 噴火に伴って津波が発生し、「津波の高さは最大で15mになり、多くの島が被害を受けた」とトンガ政府。噴火に伴うカルデラの陥没や海底地滑りなどが津波を引き起こしたと見られ、太平洋の島々やチリ、米国西岸などでも津波が観測された。海底火山から噴出された巨大な噴煙(火山ガス)が海水を一気に押し広げたことも津波の要因の一つかもしれない。

 日本でも津波(海面潮位の変化)が観測されたが、それは海水の波動ではなく大気の波動が伝わったもので、海水の波動より速く伝わり、日本の気象庁は潮位の変化が観測されてから慌てて津波警報を出した。噴火による爆発的な噴煙の膨張が気圧を変化させ、大気の波動として世界に広がったとされる。

 今回の噴火による地球規模の環境変化が懸念されているが、過去には地球環境を激変させた超大規模な噴火が起きていた。東北大の研究グループによると、生物の大量絶滅は史上5回起き、恐竜が絶滅した6600万年前は天体衝突が原因だったが、ほかの4回は大噴火が原因だったという。

 約2億5000万年前のペルム紀末には、シベリアのバイカル湖の北で直径約2000kmに及ぶ大規模噴火が200万年以上続き、地球の海洋生物の96%と陸生生物の70%がこの時期の20万年足らずで絶滅したとの研究がある。大気中の温室効果ガス濃度が上昇して地球温暖化が進行し、大量絶滅したという。

 200年ほど前の1815年にはインドネシアのタンボラ山が大噴火を起こし、地球全体で気温低下をもたらし、農作物は不作となり、食糧不足から世界各地で飢饉となった。マントルが対流するプルームテクトニクスと地殻が移動するプレートテクトニクスによって、大規模噴火は今後も世界各地で起きる。今回の大規模噴火は地球史から見れば珍しくもない出来事だろうが、現生人類にとっては自然の巨大な力を実感した稀な出来事だ。

2022年1月22日土曜日

トランプ氏の今

 現職の大統領だった頃のトランプ氏の言動は詳しく報じられ、ツイッター投稿の内容が毎日と言っていいぐらいニュースで取り上げられた。再選を果たせなかったトランプ氏が米国大統領ではなくなってから1年。トランプ氏の言動が久々に伝えられたが、相変わらず一方的な主張を行っていた。

 トランプ氏はアリゾナ州で大規模な集会を開き、集まった熱心な支持者に向けて、2020年米大統領選の勝者は自分だと持論を展開し、「我々は選挙に勝った。大差で勝った。彼らはこのままでは済まされない」、2020年の大統領選は「いかさまの選挙だった。至るところに証拠がある」と主張したという。

 トランプ氏は、1年前に起きた連邦議会占拠事件の真相を追及する下院特別委員会には選挙不正の調査を要求し、議会襲撃の民主党による責任追及を「政治犯の迫害」だとし、「米国の自由に対する前例なき攻撃だ」ともしたが、支持者らに議会へ向かうよう呼び掛けた自身の責任には触れなかったと報じられた。

 久々のトランプ語録をもう少し並べると、「ワシントンの政治家たちに我々の生活をコントロールさせるのはもうたくさんだ。命令にはうんざりだ」「過激な民主党は米国を共産主義国に変えたいと望んでいる」と断じ、投票権保護に向けた法案について「選挙不正のための法律だ」「共和党候補を当選させないための法律だ」とした。 

 バイデン大統領への攻撃は痛烈で、ロシアや北朝鮮の行動は「1年前には起きていなかった挑発行為だ」「彼らは米国をもはや恐れていない。我々に敬意を抱いていない」とし、米軍のアフガニスタン撤収をめぐる混乱は「米国の歴史上で最悪かつ最も不名誉な瞬間だった」とした。さらに経済政策や新型コロナウイルス対策などを「完全に失敗した」と批判し、「24年はさらに重要な年になる」と強調した。

 議会襲撃から1年の日にバイデン大統領は演説し、「この神聖な場所で民主主義が攻撃された」「米国の憲法は深刻な脅威にさらされた」とし、「何が真実で何がウソであるか明確にする必要がある。前大統領が2020年の選挙に関するウソを作り上げ、広めたというのが真実だ」「彼は敗北を受け入れられない」とトランプ氏を批判していた。

 さらにバイデン大統領は「米史上初めて、前大統領は選挙で負けただけなく、平和的な政権移行を阻止しようとした」とし、トランプ氏が議会占拠に対して「数時間にわたり何の行動も取らなかった」「前大統領と彼の支持者は、国民の投票や選挙を抑圧することが唯一の勝利への道と判断した」と批判、さらにトランプ氏は「権力に価値を置き、国益よりも利己を重視している」と糾弾した。

 共和党に有力な大統領候補が見当たらず、トランプ氏への支持が今なお高いことから共和党はトランプ氏を無視できない。トランプ氏に人々が期待するのは、言葉だけの民主主義などではなく、現状を変えることだ。確かにトランプ氏は大統領だった4年間に多くの政策変更(チェンジ)を行った。それらの政策変更は賛否が大きく分かれるものが多かったが、米国を変え世界を変えた。

2022年1月19日水曜日

恐れと可能性

 恐れとは「恐れ怖がる気持ち」で、畏れ・怖れとも書くと辞書にある(怖れは恐れと同じように使われるが、畏れは神仏や上位の人に対する敬意や尊敬を表わす時に使われる)。虞れは「いやな事が起こるのではないかという心配」で、豪雨の虞れがあるなどと使われる。おそれの表記は新聞用語では「恐れ」に統一している。

 天気予報で「明日は大雪になる恐れ」「関東地方では大雨になる恐れ」「台風が未明に九州に上陸する恐れ」などの言い方は珍しくなく、防災情報などでも「潮位変化による災害の恐れ」「津波警報を発表している地域では、被害の恐れ」とか「豪雨により土砂崩れの恐れ」などと、恐れが多用されて警戒が呼びかけられる。

 自然災害に人は無力であることが多く、各種の自然災害に苦しめられてきた。気象や防災情報を提供する側も自然災害には無力で、的確なタイミングで適切な情報を提供できていないとの批判が高まって以来、気象や防災情報で「〜〜の恐れがある」と事前に人々に警戒を強く呼びかけることが増えた。

 この「恐れがある」は頻繁に天気予報などで使われるようになり、その言葉を素直に信じる人々は不安をもつ。だが、自然災害に対して人々ができることは避難することだけだったりするので、不安ばかり増大する。最近は温暖化による自然災害の頻発や大規模化が喧伝されるので、いっそう不安は増すばかりか。

 だが、例えば、「大雨になる恐れがある」とは「大雨になる可能性がある」ということだが、確率が示されることはほぼない。大雨になる可能性が90%なら、ほぼ間違いなく大雨になると多くの人は受け止めるだろうが、その可能性が50%なら受け止め方は人によって異なり、20%なら傘を持たずに出かける人がいるかもしれない。

 気象や防災情報を提供する側が「大雨になる恐れがある」と言う時には確かな根拠があるはずで、それは経験則だけではなく大雨が起きる確率を計算しているはずだ。大量の観測データを集めて高性能コンピューターで分析して予報を作成しているのだろうから、「恐れがある」の確率(可能性)を示すことができるはずだ。

 確率が明示されず、不安を高める情報提供は社会統治にも活用される。今回のパンデミックで政府や自治体は、感染拡大のたびに「新規感染者は過去最多になる恐れ」などとの予想を撒き散らし、営業制限や外出自粛などを打ち出し、不安に駆られた人々は従ったりする。恐れを、可能性ではなく恐怖と解釈する人々は多いらしい。

2022年1月15日土曜日

探せば見つかる

 デルタ株より感染力が強いというオミクロン株に感染した人には無症状や軽症の人が多いという。報道によると、沖縄県では療養中の感染者675人(4日時点)のうち92.3%が無症状か軽症、東京都で感染が確認された115人(7日時点)の21%は無症状で79%が軽症、愛知県では542人(12日時点。感染疑い含む)のうち98.2%は軽症・無症状だった。

 米国で1日当たりの新規感染者が140万人を上回り、欧州諸国で同20万人、30万人を超すなどオミクロン株の強力な感染力が可視化され、日本でも各地で感染者が急増し、警戒感が高まった。無料PCR検査が全国で始まり、陰性証明を求める人や感染の不安に動かされた人などが殺到している。

 軽症の人には発熱のほかに、せき、のどの痛み、倦怠感、鼻水・鼻づまり、頭痛、関節痛などが見られるという(人によって何の症状が現れるのか異なる)。これらはパンデミックの前なら風邪の症状とされたのだが、今では新型コロナウイルス感染か?との疑いが先に立ち、無料PCR検査場へ群がる。

 これらの症状が現れても寝込むほどでなければ以前なら、市販の風邪薬を服用して自分で治す人が多かっただろう。だが、オミクロン株の感染拡大が大きく報じられるようになり、人々は風邪ではなくオミクロン株の感染を疑う。疑いは不安を増幅し、無料PCR検査などで陰性とされるまで安心できない。

 風邪気味の人や感染拡大の報道に不安を覚えた人々が無料PCR検査場に詰めかけ、大量の検査が行われるようになると、無症状や軽症だが新型コロナウイルスに感染している人が次々に発見されるだろう。感染者が日々増えているとの報道が連日続き、風邪気味や不安を感じた多くの人が更にPCR検査場に押しかけ、更に感染者が発見されて、感染拡大が大きく報じられるという循環になる。

 オミクロン株の感染力が強く、無症状や軽症の人が多いとすると、大量の無料PCR検査が全国各地で行われたなら相当数の感染者(陽性)が発見されるのは当然だ。つまり、探せば見つかる。探せば探すほど多く見つかる。こうなると、感染者数が増えることに大騒ぎすることには意味はなく、医療の逼迫状況などを注視すべき状況に移行したと認識を変えたほうがいい。

 オミクロン株による重症者や死者が少ないことから新型コロナウイルス感染症は既存のインフルエンザと同様になりつつあるとの予想が英国などでは現れ、新型コロナウイルスとの共存へ前進したと受け止める人もいるようだ。感染力が強いオミクロン株による感染拡大が続くと集団免疫の獲得が近づくのかは不明だが。

2022年1月12日水曜日

こんな程度

 昨年の第72回紅白歌合戦・第2部の平均世帯視聴率は関東地区で34・3%となり、2部制となった1989年以降で最も低く、記録に残る視聴率としても最低になった(第1部は31・5%)。ここ10年ほどは30%台後半から40%台前半だったので、さらに一歩後退というところか。

 瞬間最高でも40%台に1度も届かなかった。過去には80%台、70%台を続けたこともある紅白歌合戦だから30%台の視聴率は低く見えるが、テレビ離れの中では「悪くない」数字か(番組制作にかける巨費に見合うかどうかは定かではない)。世帯視聴率ではなく個人視聴率では第1部23.4%、第2部24.8%だったが、こちらも前年より下がった。

 視聴率が下がった要因について様々な指摘が出ているが、長寿番組が時代の変化に対応できず、新たな視聴者を獲得できなくなるのは珍しくない。凝った演出だったそうだが、歌番組に特別感がなくなった中で、演出で歌番組が長時間、視聴者を惹きつけるのは無理だろう(動画サイトで内外の歌手やバンドをいつでも見ることができる時代となり、テレビで歌番組は減った)。

 歌も変化した。口パクはすっかり定着し、口パクしながらキレッキレのダンスを見せるのが流行りとなり、大勢が揃って動き回る。以前は1人の歌手が中央で歌い、複数のバックダンサーが視覚的に盛り上げたが、今はバックダンサーと歌唱が一体化した。口パクをしないのは演歌歌手が代表格だが、こちらが歌うのは昔のヒット曲が多い。

 高齢化が進む日本でテレビ各局は世帯でも個人でもないコア視聴率を独自に設定し、指標にしているという。その対象範囲は各局により異なるが、おおよそ幼児と60歳以上などを対象外としたファミリー層。おそらくNHKもファミリー層を意識して番組編成しているだろうから、紅白歌合戦の構成や演出もファミリー層を狙っただろう。

 その結果が34.3%の視聴率。特別感が希薄となった紅白歌合戦を特番の歌番組と見ると、上々の数字かもしれない。それに他局に視聴者が流れたのではなく、紅白歌合戦の占有率は上がっていたというから、テレビ離れの中で健闘したともいえそうだ。つまり、今の時代に紅白歌合戦の視聴率は、こんな程度なのだ。

 大晦日に家族が茶の間に集まって年を越すという過ごし方に、多くの歌手が入れ替わり歌うという紅白歌合戦はチョイ見できて適していたのだろう。マンネリ化が強みの紅白歌合戦は、若者に人気の出演者を増やし、凝った演出や構成でもマンネリ臭を払拭できまい。マンネリに徹することもできたはずだが、過去の高視聴率の呪縛にとらわれた紅白歌合戦は、あがき続ける。

2022年1月8日土曜日

集団免疫が近い?

 集団免疫とは「人口の一定割合以上の人が免疫を持つと、感染患者が出ても他の人に感染しにくくなることで、感染症が流行しなくなる状態」(厚労省サイト)。ただ、感染症の種類によって、集団免疫を得るために必要な免疫を持つ人の割合は異なり、新型コロナウイルスのワクチンに「集団免疫の効果があるかどうかは分かっておらず、分かるまでには時間を要する」(同)。

 ワクチン接種が各国で進んでいるが、ワクチン接種者の感染事例も各国で報告され、ワクチン接種が増えたとしても、感染症が流行しなくなる集団免疫の獲得は困難との見方が有力だ。ワクチン接種が進んだことで重症者や死者の割合が低下しているとデータは示しているのでワクチンの効果はあるのだろうが、オミクロン株によるとされる感染爆発が世界で顕著になった。

 新型コロナウイルスに感染することによって得ることができる抗体を持つ人が増えた時に集団免疫が得られると仮定するなら、オミクロン株による世界での感染爆発は集団免疫の獲得に向けての大いなる前進かもしれない。だが、新型コロナウイルスにおいて集団免疫が、そもそも存在するのか不明だ。

 たった1日の新規感染者が米国では100万人以上も確認され、フランスでは33万人以上、英国で20万人以上、イタリアで約19万人、スペインで7万人以上などと感染爆発が報じられ、インドで9万人以上、アルゼンチンで8万人以上、オーストラリアでも5万人近くの感染者が1日あたりで確認されるなど感染爆発は世界中で起きている。

 世界の累計感染者数は1月7日に3億人を超えた。最多は米国で約5840万人、次いでインドが約3510万人、ブラジルが約2230万人、英国が約1410万人、フランスが約1129万人、ロシアが約1040万人、トルコが約978万人などと続く(日本は174万人だが、感染爆発の気配が漂う)。

 デルタ株の感染が持続しているところへ、感染力が強いというオミクロン株の拡散が加わって今回の感染爆発が起きていると見える。感染者が増えることで集団免疫を得ることができると期待したいが、さて、人口の何%が感染すれば集団免疫が得られるのかは不明だ。もし、人口の7割、8割の人が感染する必要があるなら集団免疫の獲得は遥かに遠い将来の話になる。

 もし人口の5割が感染すれば集団免疫を獲得できるとしても、米国の人口は約3.3億人なので1.6億人以上の感染者が必要だ。英国は約6800万人なので必要な感染者は3400万人、フランスは約6500万人なので感染者が3300万人ほどに達すれば集団免疫が獲得できる計算だ。これらはワクチンによる免疫獲得を考慮しない試算だが、集団免疫の獲得がまだ先の話であることは確かそうだ。

2022年1月5日水曜日

100年前は1922年

 100年前の1922年。10月に日本はようやく、シベリアからの撤兵を完了した。1918年8月から7万人以上を派遣し、各国が撤兵した後も駐留していたが、具体的な成果がなく、3千人以上が戦死したシベリア出兵に国内世論は批判的だった。日本軍は「無駄で無益な戦争」を厳しく検証することもなく、戦前はその研究がタブー視されたという。

 ロシア革命への干渉を狙い米国と英仏もシベリア出兵を行ったが、反革命軍の敗退などで1920年6月までに撤兵した。だが満州やシベリアの支配を狙った日本は出兵を継続して占領地を拡大したものの、極寒の地でロシアのパルチザン相手に苦戦し、多くの日本兵と居留民が殺害された尼港事件なども起こった。

 3月には京都で全国水平社の創立大会が開催され、全国から3千人が集まった。結びの言葉「人の世に熱あれ、人間に光あれ」で知られる宣言を採択し、差別に対して「救ってもらう」のではなく、差別される人々が結集・団結し、自分達の行動で差別の解消を目指すことを打ち出した。

 4月には浦賀水道付近を震源とするM6.8の地震があり、東京と神奈川で最大震度5を観測した(翌23年9月にM7.9の関東大震災が発生した)。7月には、有島武郎が北海道・狩太農場400町歩を小作人に無償提供した。また、この年は雪が多く、2月に北陸線の親不知駅ー青海駅間で列車が雪崩に直撃され、90人が死亡した。

 この年、アインシュタインが来日して相対性理論ブームが起き、アインシュタイン全集が売れた。電灯普及率は70%に達し、オールバックが流行、子供服が普及し、未成年者飲酒禁止法が公布された。労働者消費組合運動が活発となり、第3回メーデーで「聞け万国の労働者」が初めて歌われたのもこの年だった。

 2月にワシントン軍縮会議が終了し、五カ国条約で英米日の主要艦保有量比率は五・五・三にすることなどが決められ、四カ国条約で太平洋諸島の現状維持を合意、九カ国条約で中国の領土保全・門戸開放・機会均等を確認するなど、軍拡に歯止めをかけ、アジアや太平洋の緊張緩和に前進したかに見えた。

 イタリアでは10月、黒シャツ姿のファシスト党員4万人がローマに進軍し、国王が党の最高指導者ムッソリーニに組閣を命令、ムッソリーニが首相となり、11月に国王と議会がムッソリーニに独裁権を与えた。11月にはトルコでムスタファ・ケマルがスルタン制廃止を宣言し、オスマン帝国は滅亡した。エジプトのルクソールでツタンカーメンの墓が発掘されたのもこの年。