米トランプ政権は6月15日、中国の知的財産権侵害への制裁措置として、1102品目、500億ドル分の中国製品に25%の追加関税を課すと発表した(7月6日に340億ドル分の制裁関税を発動し、残りの160億ドル分は時期を検討する)。
中国は同16日、米国の制裁関税への報復措置として米国産の農産物や自動車、エネルギーなど659品目に25%の追加関税をかけると発表した。対象は約500億ドルで、7月6日に米国が課税を始めたなら約340億ドル分をすぐに発動するという(中国は追加関税の税率、対象規模、発動方式などを米国と同等にしている)。
米トランプ政権は同18日、中国の知的財産権侵害を巡り、新たに2000億ドル分の輸入品に10%の制裁関税を検討するよう指示した。中国に対する圧力強化が目的で、中国の譲歩を引き出そうとしているように見えるが、中国は同19日、対抗措置を取ると表明、一歩も引かない構えを崩していない。
関税引き上げ以外に米トランプ政権は中国の知的財産権侵害を巡り、中国企業の対米投資制限を検討しているという。中国資本が25%以上の企業が対象となり、米国企業の買収を阻止したりするほか、重要な技術の対中輸出も規制するという。
米国と中国の応酬は、ポーカーで掛け金を互いに釣り上げ続けている映画のシーンのようにも見える。だが、そのゲームには金銭以外のものも賭けられている。米国は相手が諦めて譲歩することを期待するが、中国は米国の「脅し」に屈するならメンツを失う。メンツを失ったなら共産党の独裁支配にも影響するだろう。
さらに、譲歩すれば中国は米国の知的財産権を侵害していたと米国の言い分の正当性を認めることになる。ハイテク製品分野を中心に製造業を強化する「中国製造2025」を実現するために、技術的に遅れている中国は米国などの先進国から技術を「移入」しなければならないが、他国の知的財産権を侵害せずに中国製造2025実現は困難だろうから、ここで知的財産権侵害を認めるわけにはいかない。
中国による知的財産権の侵害をやめさせることでは、米国はEUや日本などと共闘できたはずだ。だが米国は一方的な関税引き上げをEUなどにも発動し、中国の知的財産権の侵害を阻止することで共闘することを困難にしてしまった。2つの問題をごちゃ混ぜにしてしまったのは米国外交の失敗だろう。
外交における「米国第一」が、米国が全ての国と敵対する結果として現れている。米国第一の外交が、相手の意図や反応を軽視することに繋がっているのなら、外交における選択肢は狭まる。力づくで相手を従わせるという外交は全ての国に対して有効とは限らず、経済の論理ではなく政治の論理で動く国に対しては逆効果だろう。
2018年6月30日土曜日
2018年6月27日水曜日
蝶々とハンスの遍歴
凄惨な戦闘シーンをスローモーションを多用して描いたサム・ペキンパー監督の映画「戦争のはらわた」で使われているのが、日本では唱歌「蝶々」として知られている曲。だが、歌詞はドイツ語で、その内容は唱歌「蝶々」とは全く異なる。
唱歌「蝶々」はドイツの古い童謡に「菜の葉にあいたら 桜にとまれ」などとの日本語歌詞をつけたものだが、ドイツ語の歌詞は、幼い男の子ハンスが遍歴の旅に出て、大きくなったハンスが故郷に戻ってくるが、すっかり変わっているので誰にも見分けがつかなかったものの、母親だけはすぐにハンスだと気づいたというストーリー。
故郷に戻ってきたハンスが、母親以外には見分けがつかないほどの変貌を遂げていたという歌詞が示すのは、ハンスが旅の間に異郷で時には過酷な体験をしただろうということだ。よそ者を温かく迎え入れてくれる土地ばかりではなかったろうし、生き延びるためには何でもやらなければならなかったハンスは、世間擦れした大人に「成長」して故郷に戻ってきたのだろう。
故郷にとどまって暮らしていれば、体験しなかったことや知らずにいただろうことを旅に出たハンスは体験し、知った。楽しく穏やかな体験ばかりであったなら、ハンスは幼かった頃の面影を宿している青年に成長したかもしれないが、異郷での体験がハンスを変えてしまった。
「戦争のはらわた」でソ連軍と戦うドイツ軍が展開しているのは、クリミア半島の東側のタマン半島という設定だ。そこはソ連領土であり、ドイツ軍ははるばる「旅」に出てきて、ソ連軍の激しい反撃に追い立てられ、ドイツ人らは過酷な体験を余儀なくされた。
独ソ戦でドイツ軍は約500万人が戦死・戦病死(ソ連軍は約1100万人)し、民間人を含めると独ソ両国で3000万人以上が死亡したという。生き残ったドイツ兵もさらに過酷な体験をしただろうし、やっと帰ったドイツの故郷も戦火に見舞われていたかもしれない。過酷な体験をしたドイツ兵はすっかり変わってしまっただろうが、故郷ももう昔のままではなかっただろう。
人間が傷つけ合うことを強調して描いても商業映画として成立すると諸作品で実証したペキンパー映画だが、暴力を肯定することを狙ったわけではない。むしろ、暴力をスローモションなどで強調して描くことによって、争い傷つけ合って生きる人間の悲しさ、哀愁のようなものを浮かび上がらせた。
唱歌「蝶々」はドイツの古い童謡に「菜の葉にあいたら 桜にとまれ」などとの日本語歌詞をつけたものだが、ドイツ語の歌詞は、幼い男の子ハンスが遍歴の旅に出て、大きくなったハンスが故郷に戻ってくるが、すっかり変わっているので誰にも見分けがつかなかったものの、母親だけはすぐにハンスだと気づいたというストーリー。
故郷に戻ってきたハンスが、母親以外には見分けがつかないほどの変貌を遂げていたという歌詞が示すのは、ハンスが旅の間に異郷で時には過酷な体験をしただろうということだ。よそ者を温かく迎え入れてくれる土地ばかりではなかったろうし、生き延びるためには何でもやらなければならなかったハンスは、世間擦れした大人に「成長」して故郷に戻ってきたのだろう。
故郷にとどまって暮らしていれば、体験しなかったことや知らずにいただろうことを旅に出たハンスは体験し、知った。楽しく穏やかな体験ばかりであったなら、ハンスは幼かった頃の面影を宿している青年に成長したかもしれないが、異郷での体験がハンスを変えてしまった。
「戦争のはらわた」でソ連軍と戦うドイツ軍が展開しているのは、クリミア半島の東側のタマン半島という設定だ。そこはソ連領土であり、ドイツ軍ははるばる「旅」に出てきて、ソ連軍の激しい反撃に追い立てられ、ドイツ人らは過酷な体験を余儀なくされた。
独ソ戦でドイツ軍は約500万人が戦死・戦病死(ソ連軍は約1100万人)し、民間人を含めると独ソ両国で3000万人以上が死亡したという。生き残ったドイツ兵もさらに過酷な体験をしただろうし、やっと帰ったドイツの故郷も戦火に見舞われていたかもしれない。過酷な体験をしたドイツ兵はすっかり変わってしまっただろうが、故郷ももう昔のままではなかっただろう。
人間が傷つけ合うことを強調して描いても商業映画として成立すると諸作品で実証したペキンパー映画だが、暴力を肯定することを狙ったわけではない。むしろ、暴力をスローモションなどで強調して描くことによって、争い傷つけ合って生きる人間の悲しさ、哀愁のようなものを浮かび上がらせた。
2018年6月23日土曜日
新しい音楽を試す
音楽は、人間が創造する文化の中で最も簡単に国境を越えるものだろう。以前から欧米の歌手やバンドなどが世界的な人気を得て、発売された新譜が世界で大量に売れたが、最近では欧米以外の国からも世界で演奏活動を行う歌手やバンドなどが増えている。
音楽は人間の情感に直接訴える力を持つので、理解できない外国語の歌でも受け入れることができ、新しい表現でも受け入れることができる(例えば、エレキギターを使ったロックンロールは多くの国の人々にとって全く新しい音楽だっただろうが、世界で受け入れられた)。
一方で、若い人は内外の新しい音楽を積極的に受け入れるが、年齢を重ねるに連れて、いつしか音楽への関心が薄れる人も多いようだ。これは、仕事や家事、子育てなどで忙しくなり、音楽をゆっくり聴く時間や余裕を失うためだろう。そして、音楽から離れている間に世間では新しい歌手や流行が出現し、「取り残された」感も強くなってくる。
フランスの音楽ストリーミング配信会社がイギリス人対象に行った調査によると、新しい音楽を試すことをしなくなるのは平均して30歳6カ月だという。また、新しい音楽を最も積極的に聴こうとするのは24歳だというから、英で音楽への関心が高まるのは、学生の頃ではなく仕事についてからということになる。
新しい音楽を積極的に聞こうとしなくなっても、音楽から離れたわけではない人は、以前に聞いていた音楽を繰り返し聴く。それで十分に満足できるのならば、無理に新しい音楽を試す必要はなくなる。こうして、ますます新しい音楽を積極的に聞こうという関心が薄くなるのか。
10代20代で積極的に音楽を聴き、平均30歳6カ月で新しい音楽を試すことをしなくなるのは、一生楽しむことができるだけの音楽を獲得したからとも解釈できる。年下の世代から「懐メロ趣味」などと揶揄されても、自分が楽しみ、満足できる音楽を獲得したとすれば、音楽で豊かになった人生といえよう。
平均30歳6カ月には別の見方もある。30歳6カ月は、仕事や家事などで忙しくなる年齢であるとともに、新しい歌手などが年下であることが多くなる年齢でもある。新しい歌手などが子供っぽく見え始め、まともに向き合う気が失せたが、音楽への関心を失っていない人にはジャズやクラシックもある。蓄積された音源が膨大にあるのだから、当人にとっては新しい音楽ばかりとなる。
音楽は人間の情感に直接訴える力を持つので、理解できない外国語の歌でも受け入れることができ、新しい表現でも受け入れることができる(例えば、エレキギターを使ったロックンロールは多くの国の人々にとって全く新しい音楽だっただろうが、世界で受け入れられた)。
一方で、若い人は内外の新しい音楽を積極的に受け入れるが、年齢を重ねるに連れて、いつしか音楽への関心が薄れる人も多いようだ。これは、仕事や家事、子育てなどで忙しくなり、音楽をゆっくり聴く時間や余裕を失うためだろう。そして、音楽から離れている間に世間では新しい歌手や流行が出現し、「取り残された」感も強くなってくる。
フランスの音楽ストリーミング配信会社がイギリス人対象に行った調査によると、新しい音楽を試すことをしなくなるのは平均して30歳6カ月だという。また、新しい音楽を最も積極的に聴こうとするのは24歳だというから、英で音楽への関心が高まるのは、学生の頃ではなく仕事についてからということになる。
新しい音楽を積極的に聞こうとしなくなっても、音楽から離れたわけではない人は、以前に聞いていた音楽を繰り返し聴く。それで十分に満足できるのならば、無理に新しい音楽を試す必要はなくなる。こうして、ますます新しい音楽を積極的に聞こうという関心が薄くなるのか。
10代20代で積極的に音楽を聴き、平均30歳6カ月で新しい音楽を試すことをしなくなるのは、一生楽しむことができるだけの音楽を獲得したからとも解釈できる。年下の世代から「懐メロ趣味」などと揶揄されても、自分が楽しみ、満足できる音楽を獲得したとすれば、音楽で豊かになった人生といえよう。
平均30歳6カ月には別の見方もある。30歳6カ月は、仕事や家事などで忙しくなる年齢であるとともに、新しい歌手などが年下であることが多くなる年齢でもある。新しい歌手などが子供っぽく見え始め、まともに向き合う気が失せたが、音楽への関心を失っていない人にはジャズやクラシックもある。蓄積された音源が膨大にあるのだから、当人にとっては新しい音楽ばかりとなる。
2018年6月20日水曜日
変わるCピラー
自動車のデザインには世界的な流行がある。20世紀半ばのアメリカ車がデザインでも世界的な影響力を持っていた頃には、テールフィンやコークボトルラインなどが各国のメーカーのデザインに影響を与えた。
その頃、欧州ではイタリアのカロッツェリア(デザインや少量生産を行う会社)が新しいデザインを競って発表する一方、日本を含め各国の自動車会社と契約して新車のデザイン開発を行うなど影響力を持っていた。
オイルショックにより燃費が重視されるようになって大型のアメリカ車が競争力を失い、小型車シフトが進むと、欧州車や日本車の存在感が高まった。並行して各社のデザイン部門の強化が進み、どこかの国やメーカーがデザイン面で世界的な影響力を持つことはなくなり、相互に影響し合うようになった。
21世紀に入ってからは、丸や四角だったヘッドライトがボディラインに合わせて様々な形にデザインされるようになり、抑揚が強調されたボディラインが増え、機能に関係ない装飾目的のラインや面をボディに加えたり、フェンダーを盛り上げることなどが世界で流行っている。
最新の流行は、Cピラーに変化を加えることだ。3ボックスのセダンが減り、車高が高く車室と荷室が一体化したSUVが世界的に主流になりつつあるが、セダンでもSUVでもCピラーはボディと同色に扱われていた。そんなCピラーが、個性を出すための重要なアイテムになった。
Cピラー全体を黒くしてガラスで覆うデザインは以前にもあったが、流行り始めているのは、Cピラーの一部だけを黒くするデザインだ。これで、後方に向かって下がるルーフラインと、後方に向かって上がるウエストライン(ベルトライン)を強調して見せたりする。
このデザインはトヨタや日産など日本社が積極的に採用しているが、欧米のメーカーからもCピラーに同様のデザインをした新車が発表されている。セダンでもSUVでもシルエットでは各社の車に大きな違いは乏しいので、細部で個性を出すために各社がCピラーをいじり始めた様相だ。
デザイナーにとってCピラーを自由にデザインすることは新しい試みだろうから、様々なCピラーのデザインを世界でこれから見ることができるかもしれない。ただ新車の開発には時間がかかるので、様々なCピラーのデザインの車が世界の路上に溢れる頃には、この流行が飽きられて、目新しさは急速に失せているかも。
その頃、欧州ではイタリアのカロッツェリア(デザインや少量生産を行う会社)が新しいデザインを競って発表する一方、日本を含め各国の自動車会社と契約して新車のデザイン開発を行うなど影響力を持っていた。
オイルショックにより燃費が重視されるようになって大型のアメリカ車が競争力を失い、小型車シフトが進むと、欧州車や日本車の存在感が高まった。並行して各社のデザイン部門の強化が進み、どこかの国やメーカーがデザイン面で世界的な影響力を持つことはなくなり、相互に影響し合うようになった。
21世紀に入ってからは、丸や四角だったヘッドライトがボディラインに合わせて様々な形にデザインされるようになり、抑揚が強調されたボディラインが増え、機能に関係ない装飾目的のラインや面をボディに加えたり、フェンダーを盛り上げることなどが世界で流行っている。
最新の流行は、Cピラーに変化を加えることだ。3ボックスのセダンが減り、車高が高く車室と荷室が一体化したSUVが世界的に主流になりつつあるが、セダンでもSUVでもCピラーはボディと同色に扱われていた。そんなCピラーが、個性を出すための重要なアイテムになった。
Cピラー全体を黒くしてガラスで覆うデザインは以前にもあったが、流行り始めているのは、Cピラーの一部だけを黒くするデザインだ。これで、後方に向かって下がるルーフラインと、後方に向かって上がるウエストライン(ベルトライン)を強調して見せたりする。
このデザインはトヨタや日産など日本社が積極的に採用しているが、欧米のメーカーからもCピラーに同様のデザインをした新車が発表されている。セダンでもSUVでもシルエットでは各社の車に大きな違いは乏しいので、細部で個性を出すために各社がCピラーをいじり始めた様相だ。
デザイナーにとってCピラーを自由にデザインすることは新しい試みだろうから、様々なCピラーのデザインを世界でこれから見ることができるかもしれない。ただ新車の開発には時間がかかるので、様々なCピラーのデザインの車が世界の路上に溢れる頃には、この流行が飽きられて、目新しさは急速に失せているかも。
2018年6月16日土曜日
共同宣言(フェイク版)
軍事力行使も辞さないと緊張を高めていた米朝2国が突然、対話路線に転換し、首脳会談を開催した。首脳会談に北朝鮮からは国内で粛清を繰り返して権力を掌握した独裁者、米国からは選挙を経ているものの、その政治スタイルは強権を振り回す独裁者指向の大統領が参加し、首脳会談の後に次のような共同声明を発表した。
両国は、新たな両国関係の確立と、持続的で強固な平和体制の構築に関連する諸問題について、包括的かつ誠実な意見交換をした。
米国大統領は北朝鮮に安全の保証を与えることを約束し、北朝鮮は自国を含む完全非核化への確固とした揺るぎない約束を再確認した。
新たな両国関係が、地域と世界の平和と繁栄に寄与すると確信するとともに、相互の信頼醸成によって地域と世界の非核化を促進できると認識し、両国は次のことを宣言する。
①両国は、両国民が平和と繁栄を切望していることに応じ、新たな両国関係を確立すると約束する
②両国は、地域と世界において持続的で安定した平和体制を築くため共に努力する
③北朝鮮は地域における完全非核化に向けて努力すると約束し、米国は世界における完全非核化に向けて努力すると約束する
④地域と世界において持続的で安定した平和体制を築くために両国は、地域と世界における完全非核化を呼びかけるとともに、この呼びかけに賛同する核保有国を含めて新たな平和会議を開催する
⑤両国は、武力を誇示した過去の行動を反省し、あらゆる国に対して両国は今後、武力行使の示唆を行わず、また、あらゆる国に対して両国から始める武力行使を行わないと約束する
史上初の両国の首脳会談が、数十年にもわたる緊張状態や敵対関係を克服し、新たな未来を切り開くために重要かつ画期的な出来事だったと認識し、両国は、この共同声明の規定を完全かつ迅速に実行に移すことに全力を尽くす。
(両国が、地域と世界における完全非核化への意向を示したことは世界から驚きと賞賛をもって受け止められた。ただし、両国はともに通常兵器の大量輸出国であるため、通常兵器の拡散は続き、世界で両国の通常兵器により死傷する人々が増え続ける状況に変化はなかった)
両国は、新たな両国関係の確立と、持続的で強固な平和体制の構築に関連する諸問題について、包括的かつ誠実な意見交換をした。
米国大統領は北朝鮮に安全の保証を与えることを約束し、北朝鮮は自国を含む完全非核化への確固とした揺るぎない約束を再確認した。
新たな両国関係が、地域と世界の平和と繁栄に寄与すると確信するとともに、相互の信頼醸成によって地域と世界の非核化を促進できると認識し、両国は次のことを宣言する。
①両国は、両国民が平和と繁栄を切望していることに応じ、新たな両国関係を確立すると約束する
②両国は、地域と世界において持続的で安定した平和体制を築くため共に努力する
③北朝鮮は地域における完全非核化に向けて努力すると約束し、米国は世界における完全非核化に向けて努力すると約束する
④地域と世界において持続的で安定した平和体制を築くために両国は、地域と世界における完全非核化を呼びかけるとともに、この呼びかけに賛同する核保有国を含めて新たな平和会議を開催する
⑤両国は、武力を誇示した過去の行動を反省し、あらゆる国に対して両国は今後、武力行使の示唆を行わず、また、あらゆる国に対して両国から始める武力行使を行わないと約束する
史上初の両国の首脳会談が、数十年にもわたる緊張状態や敵対関係を克服し、新たな未来を切り開くために重要かつ画期的な出来事だったと認識し、両国は、この共同声明の規定を完全かつ迅速に実行に移すことに全力を尽くす。
(両国が、地域と世界における完全非核化への意向を示したことは世界から驚きと賞賛をもって受け止められた。ただし、両国はともに通常兵器の大量輸出国であるため、通常兵器の拡散は続き、世界で両国の通常兵器により死傷する人々が増え続ける状況に変化はなかった)
2018年6月13日水曜日
報復合戦
米国は6月1日、鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を上乗せする対象をEU、カナダ、メキシコにも拡大した。米国は3月23日に日本や中国などに輸入制限を発動したが、EU、カナダ、メキシコなどには適用を猶予し、通商交渉での圧力で譲歩を引き出すことを狙ったが、当てが外れたようだ(EU、カナダ、メキシコは米国の鉄鋼輸入全体の4割を占めるという)。
一方的な輸入制限を課された側は黙ってはいない。カナダは6月1日、安全保障を口実にした保護主義的な政策はWTO協定の違反だとして米国をWTOに提訴した。また、米国産品に報復関税を7月1日から課す方針を既に表明している。
メキシコは6月5日、米国の輸入制限に対する報復措置として追加関税を課す米国産品のリストを公表した。追加関税は、各種鉄鋼製品に最大25%、農畜産品では豚肉、ジャガイモ、リンゴに20%、バーボンやチーズに20~25%となる。また、米国の輸入制限は国際的な貿易ルールに違反しているとしてWTOに提訴する。
EUは6月6日、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定し、7月から最大28億ユーロ(約3600億円)の報復関税を課す。課税対象は米国製のジーンズ、オレンジジュース、バーボン、オートバイ、ピーナツバター、モーターボート、煙草など。EUはまた、WTOで米国を相手に紛争処理手続きに入った(そこで解決の見通しが立たなければ、2段階目の関税措置を発動すると報じられている)。
WTOのルールでは、自国産業の保護目的で高関税を導入した加盟国に、他の加盟国が影響を相殺するために追加関税を課すことが認められているというから、EU、カナダ、メキシコの米国産品に対する報復措置は「正しい」対応といえる。
だが、EUなどの報復措置に対して米国が新たな対抗措置を講じるなら、報復合戦の本格的な開始だ。米国は乗用車への関税上乗せを検討していると報じられたが、それが実行されればEUなども更なる報復措置に動くだろう。まだ、おとなしく米国の輸入制限を見ているだけの日本も、乗用車への関税上乗せを米国が行うなら、今度は何か動かざるを得まい。
各国がそれぞれ関税を高くする報復合戦は、自由貿易が終焉に向かう動きと見える。理念としての自由貿易が「退場」し、各国が関税障壁を高める時代に簡単に戻るとは考え難いが、米トランプ政権が続く間は自由貿易に対して逆風が強まりそうだ。
各国が関税障壁を高める時代には、輸出主導で成長する国は打撃を受ける。日本も大きな影響を受けようが、「内向き」に経済運営をする時代に戻るとみるなら、まだ多くの分野で製造業企業が残っていて産業基盤は強固であり、石油などは自由貿易のままであるだろうから日本は「自給自足」でやっていけるかもしれない。高成長は無理だろうが。
一方的な輸入制限を課された側は黙ってはいない。カナダは6月1日、安全保障を口実にした保護主義的な政策はWTO協定の違反だとして米国をWTOに提訴した。また、米国産品に報復関税を7月1日から課す方針を既に表明している。
メキシコは6月5日、米国の輸入制限に対する報復措置として追加関税を課す米国産品のリストを公表した。追加関税は、各種鉄鋼製品に最大25%、農畜産品では豚肉、ジャガイモ、リンゴに20%、バーボンやチーズに20~25%となる。また、米国の輸入制限は国際的な貿易ルールに違反しているとしてWTOに提訴する。
EUは6月6日、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定し、7月から最大28億ユーロ(約3600億円)の報復関税を課す。課税対象は米国製のジーンズ、オレンジジュース、バーボン、オートバイ、ピーナツバター、モーターボート、煙草など。EUはまた、WTOで米国を相手に紛争処理手続きに入った(そこで解決の見通しが立たなければ、2段階目の関税措置を発動すると報じられている)。
WTOのルールでは、自国産業の保護目的で高関税を導入した加盟国に、他の加盟国が影響を相殺するために追加関税を課すことが認められているというから、EU、カナダ、メキシコの米国産品に対する報復措置は「正しい」対応といえる。
だが、EUなどの報復措置に対して米国が新たな対抗措置を講じるなら、報復合戦の本格的な開始だ。米国は乗用車への関税上乗せを検討していると報じられたが、それが実行されればEUなども更なる報復措置に動くだろう。まだ、おとなしく米国の輸入制限を見ているだけの日本も、乗用車への関税上乗せを米国が行うなら、今度は何か動かざるを得まい。
各国がそれぞれ関税を高くする報復合戦は、自由貿易が終焉に向かう動きと見える。理念としての自由貿易が「退場」し、各国が関税障壁を高める時代に簡単に戻るとは考え難いが、米トランプ政権が続く間は自由貿易に対して逆風が強まりそうだ。
各国が関税障壁を高める時代には、輸出主導で成長する国は打撃を受ける。日本も大きな影響を受けようが、「内向き」に経済運営をする時代に戻るとみるなら、まだ多くの分野で製造業企業が残っていて産業基盤は強固であり、石油などは自由貿易のままであるだろうから日本は「自給自足」でやっていけるかもしれない。高成長は無理だろうが。
2018年6月9日土曜日
金利40%と生活苦
アルゼンチンの中央銀行は政策金利を40%に引き上げた。米国10年国債の利回りは3%ほどだから、米国債を購入するよりアルゼンチンで運用したほうが大きく儲かるはずだから、外国から資金が流入する……とは限らない。
反対に資金が流出していて、アルゼンチンの通貨ペソは下落を続け、暴落とも言える状況だ。金利40%を目当てに外国からアルゼンチンに投資しても、通貨ペソがさらに下落するなら、儲かるどころか逆に損失が出る。通貨ペソで持ち続けても、アルゼンチン国内ではインフレが加速している。
金利を上げても資本流出が止まらないという現実は、アルゼンチン経済が投資家から見限られ、破綻に直面していることを示す。米国が金利を上げ始めたことも資金流出に関係するが、過去に何度もデフォルトを起こしているアルゼンチン政府に対する警戒感は強い。
金利が40%という社会では、十分な預金を持っていれば利子収入だけでも相当の額になるはずだが、自国通貨の暴落とインフレが続くなら、その交換価値はどんどん減ってしまう。何度もデフォルトの経験をしているアルゼンチンの人々が資産を守るためには、ドルなど外国の通貨に早急に交換するしかない。
アルゼンチンはIMF(国際通貨基金)に助けを求め、500億ドル(約5兆4800億円)の融資枠設定で合意した。IMFは寛大な援助者ではないので厳しい条件がつく。支援の条件として2019年の財政赤字をGDP比1.3%にするという財政再建策をアルゼンチン政府は受け入れた。
政府の経済政策の失敗に加え、厳しい緊縮策は人々の生活を直撃する。インフレで生活が苦しくなっているのに、さらにIMFからの支援に伴う緊縮策が上乗せされると、国家経済より先に家計が破綻する人々が増える恐れがある。
前回(2001〜2002年)の経済危機でもアルゼンチンはIMFから緊急融資を受けたが、緊縮策が多くの中間層を直撃し、貧困層へ転落させたと見られている。IMFからの緊急融資がまた必要となったアルゼンチンで、困窮する人々は今度も黙ってはいないだろう。そうした怒りがどこへ向かい、何をもたらすのか。
反対に資金が流出していて、アルゼンチンの通貨ペソは下落を続け、暴落とも言える状況だ。金利40%を目当てに外国からアルゼンチンに投資しても、通貨ペソがさらに下落するなら、儲かるどころか逆に損失が出る。通貨ペソで持ち続けても、アルゼンチン国内ではインフレが加速している。
金利を上げても資本流出が止まらないという現実は、アルゼンチン経済が投資家から見限られ、破綻に直面していることを示す。米国が金利を上げ始めたことも資金流出に関係するが、過去に何度もデフォルトを起こしているアルゼンチン政府に対する警戒感は強い。
金利が40%という社会では、十分な預金を持っていれば利子収入だけでも相当の額になるはずだが、自国通貨の暴落とインフレが続くなら、その交換価値はどんどん減ってしまう。何度もデフォルトの経験をしているアルゼンチンの人々が資産を守るためには、ドルなど外国の通貨に早急に交換するしかない。
アルゼンチンはIMF(国際通貨基金)に助けを求め、500億ドル(約5兆4800億円)の融資枠設定で合意した。IMFは寛大な援助者ではないので厳しい条件がつく。支援の条件として2019年の財政赤字をGDP比1.3%にするという財政再建策をアルゼンチン政府は受け入れた。
政府の経済政策の失敗に加え、厳しい緊縮策は人々の生活を直撃する。インフレで生活が苦しくなっているのに、さらにIMFからの支援に伴う緊縮策が上乗せされると、国家経済より先に家計が破綻する人々が増える恐れがある。
前回(2001〜2002年)の経済危機でもアルゼンチンはIMFから緊急融資を受けたが、緊縮策が多くの中間層を直撃し、貧困層へ転落させたと見られている。IMFからの緊急融資がまた必要となったアルゼンチンで、困窮する人々は今度も黙ってはいないだろう。そうした怒りがどこへ向かい、何をもたらすのか。
2018年6月6日水曜日
同じ質問
サスペンスドラマでは、容疑をかけられているが否認し続けている人に対して主人公の捜査員が、何気ない会話の中で相手の気が緩んだタイミングで、以前に何度も聞いたことをさり気なく聞き直し、うっかりボロを出したのを逃さず、真相に辿り着くというシーンがある。
実際にも捜査員は、容疑をかけられている人や関係者に同じ質問を繰り返し行うことがあるという。確認を繰り返して、記憶が曖昧な部分を明確化させるためではあるが、嘘をついたり何かを隠している人の場合には、何度も答えているうちにボロを出すことがあるからだ。
取材記者も、同じ内容の質問を「確認のため」と繰り返したり、言い方を変え、タイミングや視点を変えて繰り返すことがある。これは、相手が言いたがらないことを引き出すためのインタビュー・テクニックの一つだ。相手が一度言ったことを「はい、そうですか」と素直に信じるようでは取材記者失格だ。
ありのままを正直に話している人なら、同じ質問に対して同じ返答しか出てこないだろう。だが、事実と異なることを言っていたり、何かを隠蔽したりしている人なら、何度も同じことを聞かれると、以前に言ったことと辻褄が合わない部分が出てきてしまう可能性がある。
記者会見でも同じ質問が繰り返されることがあり、明かしたくないことがある人にとっては厄介だ。強気に押し通すことができない人なら、記者会見の中で言うことが変わってしまう。最近の例では「怪我をさせろと言ったのか」と問われた運動部のコーチは最初は全否定したものの、同じような質問に答えるうちに、やがて記憶が定かではないことを認め、最後には「過激なことは言ったが一言一句覚えていない」と、否定も肯定もしないのが精一杯だった。
否定も肯定もしないと疑惑を持続させる。明確に否定しないのだから疑惑が深まったと取材陣はみなす。同じ質問に対して曖昧な返事を重ねると、取材陣からの追求ポイントが絞られてきて、何かを隠蔽している人は追い詰められた気持ちにもなろう。
「同じ質問ばかりだから」と記者会見を終わらせようとした司会者は以前、通信社の記者だったという。取材経験があるから、同じ質問が繰り返されることへの警戒感が呼び起こされたのだろう。核心に迫る同じ質問が続くのを見ていて、決定的なボロが出る前に会見を終わらせようと焦ったか。
実際にも捜査員は、容疑をかけられている人や関係者に同じ質問を繰り返し行うことがあるという。確認を繰り返して、記憶が曖昧な部分を明確化させるためではあるが、嘘をついたり何かを隠している人の場合には、何度も答えているうちにボロを出すことがあるからだ。
取材記者も、同じ内容の質問を「確認のため」と繰り返したり、言い方を変え、タイミングや視点を変えて繰り返すことがある。これは、相手が言いたがらないことを引き出すためのインタビュー・テクニックの一つだ。相手が一度言ったことを「はい、そうですか」と素直に信じるようでは取材記者失格だ。
ありのままを正直に話している人なら、同じ質問に対して同じ返答しか出てこないだろう。だが、事実と異なることを言っていたり、何かを隠蔽したりしている人なら、何度も同じことを聞かれると、以前に言ったことと辻褄が合わない部分が出てきてしまう可能性がある。
記者会見でも同じ質問が繰り返されることがあり、明かしたくないことがある人にとっては厄介だ。強気に押し通すことができない人なら、記者会見の中で言うことが変わってしまう。最近の例では「怪我をさせろと言ったのか」と問われた運動部のコーチは最初は全否定したものの、同じような質問に答えるうちに、やがて記憶が定かではないことを認め、最後には「過激なことは言ったが一言一句覚えていない」と、否定も肯定もしないのが精一杯だった。
否定も肯定もしないと疑惑を持続させる。明確に否定しないのだから疑惑が深まったと取材陣はみなす。同じ質問に対して曖昧な返事を重ねると、取材陣からの追求ポイントが絞られてきて、何かを隠蔽している人は追い詰められた気持ちにもなろう。
「同じ質問ばかりだから」と記者会見を終わらせようとした司会者は以前、通信社の記者だったという。取材経験があるから、同じ質問が繰り返されることへの警戒感が呼び起こされたのだろう。核心に迫る同じ質問が続くのを見ていて、決定的なボロが出る前に会見を終わらせようと焦ったか。
2018年6月2日土曜日
革新から伝統へ
ローリング・ストーンズが欧州ツアーを始めた。5月17日のダブリン(アイルランド)から7月8日のワルシャワ(ポーランド)まで、英国内を中心に14回のライブが予定されている。動画投稿サイトには、観客が客席から撮影した多くの動画が各地のライブ翌日には投稿されていて、様子を知ることができる。
巨大なスマホ画面のような縦長のスクリーンが4面設置され、正面から通路が伸びてセンターステージにつながるというセットは昨年の欧州ツアーと変わっていないようで、演奏が適当にラフなのは、いつもと同じか。ラフといっても、それで数万人の観客をグルーブさせる力を持っているのも、いつもと同じ。
さすがにステージの端から端まで走ることはなくなったが、ミック・ジャガーの動き回るステージパフォーマンスは健在だ。若い頃に比べると声は低くなり、息が続かなくなっている印象も受けるが、年齢を考えれば、それも自然なことか。
昨年のツアーでは久しぶりの新譜「ブルー&ロンサム」からブルーズナンバーを数曲演奏していたが、今年はお馴染みのナンバーが主となっている。演奏可能な50曲ほどの中から、その日の演奏曲目を選んでいるというが、変わるのは数曲だけで、演奏曲目はほぼ固定している。
長年にわたり演奏曲目のほとんどが毎回同じだから、マンネリと批判されても仕方がない。だが、ファンは世界各地でストーンズを聞き、見るために集まる。ストーンズが放ったヒット曲の数々、ロックのスタンダードになるだろう曲の膨大さを考えると、無理に新しい曲を演奏せずとも、お馴染みの曲を聞くだけでもファンは満足し、楽しむことができる。それが長く活動してきたストーンズの強みだ。
お馴染みの曲目では演奏もほぼ毎回同じだ。アレンジを変えたりはせず、ライブならではの即興も控えられ、キースが弾くギターソロのフレーズもほぼ同じ。演奏と照明や映像をシンクロさせる構成のステージショーになってしまったので、興に乗ったからとてミュージシャはもう勝手な演奏はできないのかもしれない。20世紀は遠くなりにけり、か。
若かりしころのストーンズは革新者であった。ブルーズやR&Bなど米国の黒人音楽を世界に広めるとともに独自の音楽を創造し、また、様々な規範を逸脱して自由に生きることが可能だと示して見せた。今の彼らは、かつての彼らのイメージをなぞっているだけに見える。言い換えれば、伝統となった彼らの音楽を保守している……が、それでいい。彼らは世界に多大な貢献をしたのだから、ファンはお馴染みの曲を楽しめばいい。ストーンズだって楽しんでいるはずだ。
なお英ロンドンでの5月22日のセットリスト=①Street Fighting Man、②It's Only Rock' N' Roll (But I Like It) 、③Tumbling Dice、④Paint It Black、⑤Ride Em On Down、⑥Under My Thumb、⑦Fool To Cry 、⑧You Can't Always Get What You Want、⑨Honky Tonk Women、⑩Before They Make Me Run、11)Slipping Away、12)Sympathy For The Devil、13)Miss You、14)Midnight Rambler、15)Start Me Up、16)Jumpin' Jack Flash、 17)Brown Sugar、18)Gimme Shelter、19)(I Can’Get No) Satisfaction。
巨大なスマホ画面のような縦長のスクリーンが4面設置され、正面から通路が伸びてセンターステージにつながるというセットは昨年の欧州ツアーと変わっていないようで、演奏が適当にラフなのは、いつもと同じか。ラフといっても、それで数万人の観客をグルーブさせる力を持っているのも、いつもと同じ。
さすがにステージの端から端まで走ることはなくなったが、ミック・ジャガーの動き回るステージパフォーマンスは健在だ。若い頃に比べると声は低くなり、息が続かなくなっている印象も受けるが、年齢を考えれば、それも自然なことか。
昨年のツアーでは久しぶりの新譜「ブルー&ロンサム」からブルーズナンバーを数曲演奏していたが、今年はお馴染みのナンバーが主となっている。演奏可能な50曲ほどの中から、その日の演奏曲目を選んでいるというが、変わるのは数曲だけで、演奏曲目はほぼ固定している。
長年にわたり演奏曲目のほとんどが毎回同じだから、マンネリと批判されても仕方がない。だが、ファンは世界各地でストーンズを聞き、見るために集まる。ストーンズが放ったヒット曲の数々、ロックのスタンダードになるだろう曲の膨大さを考えると、無理に新しい曲を演奏せずとも、お馴染みの曲を聞くだけでもファンは満足し、楽しむことができる。それが長く活動してきたストーンズの強みだ。
お馴染みの曲目では演奏もほぼ毎回同じだ。アレンジを変えたりはせず、ライブならではの即興も控えられ、キースが弾くギターソロのフレーズもほぼ同じ。演奏と照明や映像をシンクロさせる構成のステージショーになってしまったので、興に乗ったからとてミュージシャはもう勝手な演奏はできないのかもしれない。20世紀は遠くなりにけり、か。
若かりしころのストーンズは革新者であった。ブルーズやR&Bなど米国の黒人音楽を世界に広めるとともに独自の音楽を創造し、また、様々な規範を逸脱して自由に生きることが可能だと示して見せた。今の彼らは、かつての彼らのイメージをなぞっているだけに見える。言い換えれば、伝統となった彼らの音楽を保守している……が、それでいい。彼らは世界に多大な貢献をしたのだから、ファンはお馴染みの曲を楽しめばいい。ストーンズだって楽しんでいるはずだ。
なお英ロンドンでの5月22日のセットリスト=①Street Fighting Man、②It's Only Rock' N' Roll (But I Like It) 、③Tumbling Dice、④Paint It Black、⑤Ride Em On Down、⑥Under My Thumb、⑦Fool To Cry 、⑧You Can't Always Get What You Want、⑨Honky Tonk Women、⑩Before They Make Me Run、11)Slipping Away、12)Sympathy For The Devil、13)Miss You、14)Midnight Rambler、15)Start Me Up、16)Jumpin' Jack Flash、 17)Brown Sugar、18)Gimme Shelter、19)(I Can’Get No) Satisfaction。
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