北朝鮮が核実験やICBM実験を停止し、北部にある核実験施設の廃棄を決定したと報じられた。平和と経済成長を実現するために国際社会との対話に取り組む意向だとされ、緊張緩和への自主的かつ具体的な動きだと歓迎する向きもあったが、北朝鮮は「核兵器開発を完了したため、もはや核実験やICBMの発射実験を行う必要がなくなった」と、核兵器の保有は続けることを主張している。
北朝鮮は2018年2月に開催された平昌冬季五輪に選手団を参加させ、続いて、韓国との首脳会談、さらには米国との首脳会談を決め、冷却化が取りざたされていた中国とも、金正恩委員長が訪中して習近平国家主席と会談して関係修復を図るなど、北朝鮮が一連の「平和攻勢」で主導権を取っているように見える。
北朝鮮が緊張緩和へ向けて路線修正を行ったとすれば歓迎すべきことだが、その路線修正がどこまで信用できるのかは不明だ。対話路線に転じたとしながら、ひそかに核兵器やICBMの開発を続けてきた過去が北朝鮮にはあるので、今回の路線修正も核兵器やICBMの高度化のための時間稼ぎにすぎないとの疑いは残る。
そうした中、核実験施設が使用不能になったため北朝鮮は核実験を続けることができなくなり、対話路線へ転換(あるいは、時間稼ぎのため対話路線を偽装)せざるを得なくなったとの可能性が具体的に示された。核実験施設が使用不能になったことを北朝鮮はうまく利用していることになる。
中国の地震学者によると、北朝鮮北東部の万塔山の地下にある豊渓里核実験場で2017年9月に核実験が実施されたが、その直後に起きたM4.1の地震により、爆発場所から440メートルに渡って山の内部の岩が崩落、山中に空洞ができたという。この崩落により万塔山の地下施設が使えなくなるとともに、放射能漏れの恐れがあるともした。
豊渓里核実験場では、北朝鮮が行った6回の核実験のうち5回が実施された。昨年9月には水爆を用いたとする実験を北朝鮮は実施したが、その後に地震が頻発し、最大ではM6.3の地震も起きていた。これらの地震が自然現象なのか、地下核実験の影響によるものなのかは不明だ。
ただし、核実験により山の内部で一部に崩壊があったとしても、付近一帯にトンネル網を北朝鮮は構築しているので、核実験場として使用不能であるとは断定できないと米国の専門家は疑問を呈する。核実験停止を宣言しても北朝鮮は、実験場への外国人の立ち入りは認めないだろうから客観的な検証はできない。
2018年4月28日土曜日
2018年4月25日水曜日
中国における主権在党
2018年3月に開催された中国の全国人民代表大会(全人代)では、国家主席の任期制限を撤廃する憲法改正が承認され、習近平氏が国家主席を3期以上務める可能性が現実となるなど、習近平氏への権力集中が明確となった。同時に、中国共産党が中国政府の上に位置する流れも強まった。
改正憲法の第1条には「中国共産党の指導は中国の特色ある社会主義の最も本質的な特徴だ」との文言が追加されたという。習近平指導部は「党が一切を指導する」として、軍や行政、社会を党が一元的に管理する政治体制を構築すると新聞は伝えた。
中国共産党が中国の「一切を指導する」とは、党の独裁統治を強化するということだ。政治や社会、経済、歴史などに限らず中国の全てに対する共産党の指導なるものが強化されることを「一切」という言葉は意味する。中国の主権は、人民にではなく中国共産党にあるとの宣言だとすれば、主権在民ならぬ主権在党だな。
全人代が閉幕した翌日、中国共産党や政府などの機構改革案が報じられた。それは、▽党員の人事を掌握する党中央組織部が、党員以外の公務員の管理を一元的に行うなど、政府機能の多くを党に集約▽党中央組織部に国家公務員局を編入し、党員以外の公務員も含めて採用や賞罰、研修、福利厚生などを統一的に管理▽党中央宣伝部が報道・出版、映画部門を直接管理。
▽党の中央外事工作指導小組や中央財経指導小組などを委員会に昇格させ、関連分野におけるトップレベルの政策立案や調整などを担当▽中央外事工作委員会は中央海洋権益保護工作指導小組の職務も引き継ぎ、外交と海洋権益の確保に関して一体的に指導する▽党中央統一戦線部に国家宗教事務局を編入し、国家民族事務委員会も統戦部が直接指導、宗教・民族政策を党が一元的に担当。
なぜ中国共産党が今になって独裁統治を強化するのか。推測するに、締め付けを強化しなければ中国共産党の統治が持たなくなっているからだろう。経済的に豊かになり、自由世界の情報が大量に流入するようになった中国社会では、「革命は遠くなりにけり」で共産党の独裁統治への共感は希薄化していよう。
反対に、社会が開放されるほどに共産党の独裁統治への批判が高まる可能性がある。さらに、封印したはずの過去の共産党の「誤り」を記憶している人々がいるので、自由で開放された社会になれば、封印した共産党の過去が暴かれよう。中国共産党は、民主化などの「ソフトランディング」を放棄し、独裁統治を続けることを選択、そのためには締め付けを強化するしかないのだろう。
共産党は独裁統治を、プロレタリア独裁の政治形態として正当化する。プロレタリア独裁を正当化すると、その前衛党である共産党の独裁を正当化し、さらに共産党の指導部の独裁を正当化、ついには指導部を指導するトップの個人独裁を正当化する。多くの政敵を失脚させた習近平氏は個人独裁を強化して生き延びようとし、その個人独裁を強化するために共産党の独裁の強化が必要だったとすれば、独裁を許容する政治思想のいびつさが明確になる。
改正憲法の第1条には「中国共産党の指導は中国の特色ある社会主義の最も本質的な特徴だ」との文言が追加されたという。習近平指導部は「党が一切を指導する」として、軍や行政、社会を党が一元的に管理する政治体制を構築すると新聞は伝えた。
中国共産党が中国の「一切を指導する」とは、党の独裁統治を強化するということだ。政治や社会、経済、歴史などに限らず中国の全てに対する共産党の指導なるものが強化されることを「一切」という言葉は意味する。中国の主権は、人民にではなく中国共産党にあるとの宣言だとすれば、主権在民ならぬ主権在党だな。
全人代が閉幕した翌日、中国共産党や政府などの機構改革案が報じられた。それは、▽党員の人事を掌握する党中央組織部が、党員以外の公務員の管理を一元的に行うなど、政府機能の多くを党に集約▽党中央組織部に国家公務員局を編入し、党員以外の公務員も含めて採用や賞罰、研修、福利厚生などを統一的に管理▽党中央宣伝部が報道・出版、映画部門を直接管理。
▽党の中央外事工作指導小組や中央財経指導小組などを委員会に昇格させ、関連分野におけるトップレベルの政策立案や調整などを担当▽中央外事工作委員会は中央海洋権益保護工作指導小組の職務も引き継ぎ、外交と海洋権益の確保に関して一体的に指導する▽党中央統一戦線部に国家宗教事務局を編入し、国家民族事務委員会も統戦部が直接指導、宗教・民族政策を党が一元的に担当。
なぜ中国共産党が今になって独裁統治を強化するのか。推測するに、締め付けを強化しなければ中国共産党の統治が持たなくなっているからだろう。経済的に豊かになり、自由世界の情報が大量に流入するようになった中国社会では、「革命は遠くなりにけり」で共産党の独裁統治への共感は希薄化していよう。
反対に、社会が開放されるほどに共産党の独裁統治への批判が高まる可能性がある。さらに、封印したはずの過去の共産党の「誤り」を記憶している人々がいるので、自由で開放された社会になれば、封印した共産党の過去が暴かれよう。中国共産党は、民主化などの「ソフトランディング」を放棄し、独裁統治を続けることを選択、そのためには締め付けを強化するしかないのだろう。
共産党は独裁統治を、プロレタリア独裁の政治形態として正当化する。プロレタリア独裁を正当化すると、その前衛党である共産党の独裁を正当化し、さらに共産党の指導部の独裁を正当化、ついには指導部を指導するトップの個人独裁を正当化する。多くの政敵を失脚させた習近平氏は個人独裁を強化して生き延びようとし、その個人独裁を強化するために共産党の独裁の強化が必要だったとすれば、独裁を許容する政治思想のいびつさが明確になる。
2018年4月21日土曜日
人道が理由にされる
「国連憲章が承認している戦争は二つしかない。一つは『自衛戦争』です。もう一つは『国連が委託した戦争』。悪い奴がいてどうにもしょうがないから罰しようと思うけど、国連軍は存在しないので、国連加盟国の中の有志を募って頼むわけです。征伐してくれと」(加藤周一著『語りおくこと いくつか』)。
だが、2003年のイラク戦争は「明らかに国連安全保障理事会が委託決議案を出していません。アメリカにサダム・フセインの撃った弾が落ちているわけじゃないから自衛とは言えない。将来、サダム・フセインという人の攻撃があるかもしれないから先制攻撃するというのは、国連憲章によれば合法とは言いにくい」(同)。
戦争とは、国家などの政治的集団が武力を行使して争うことで、中長期に渡って続くものだ。だから、例えば、ある勢力により数時間のミサイル攻撃が行われたが、攻撃された側の反撃が限られ、それ以上の戦闘行為に発展せずに終息したものなら、武力行使があったことは確かだが、戦争とはみなされない。
ただし、そうした武力行使が容認されているわけではない。国連憲章は第2条で「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」としている。
戦争も限定的な武力行使も国際的に禁じられているのが現代だが、問題は、ある国家の内部で非人道的な行為が行われているときに、国際社会は何ができるか(=何ができないか)ということの明確な決まりがないことだ。だから、人道を理由に、ある時は軍事的に介入し、ある時は無視することになる。
国際社会は、1970年代にカンボジアで虐殺が行われているときにも、1990年代前半にボスニア・ヘルツェゴビナで虐殺など民族浄化が行われているときにも、1994年にルアンダ国内で虐殺が行われているときにも、無力だった。国際社会が動くには、事実の正確な把握が必要だが、入国を制限されたなら、国際社会は断片的な情報しか得ることができない。
戦争の時に禁止される行為は、いわゆる国際人道法によって明確化されつつあるが、ある国の内部で行われる非人道的な行為に対して国際社会は、国家主権の壁に阻まれる。「人間には倫理的に耐えられることの限界がある。その限界はどこにあるか」(同)。平時における国際人道法が必要なのだが、ここにも国家主権の壁が立ちはだかる。
だが、2003年のイラク戦争は「明らかに国連安全保障理事会が委託決議案を出していません。アメリカにサダム・フセインの撃った弾が落ちているわけじゃないから自衛とは言えない。将来、サダム・フセインという人の攻撃があるかもしれないから先制攻撃するというのは、国連憲章によれば合法とは言いにくい」(同)。
戦争とは、国家などの政治的集団が武力を行使して争うことで、中長期に渡って続くものだ。だから、例えば、ある勢力により数時間のミサイル攻撃が行われたが、攻撃された側の反撃が限られ、それ以上の戦闘行為に発展せずに終息したものなら、武力行使があったことは確かだが、戦争とはみなされない。
ただし、そうした武力行使が容認されているわけではない。国連憲章は第2条で「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」としている。
戦争も限定的な武力行使も国際的に禁じられているのが現代だが、問題は、ある国家の内部で非人道的な行為が行われているときに、国際社会は何ができるか(=何ができないか)ということの明確な決まりがないことだ。だから、人道を理由に、ある時は軍事的に介入し、ある時は無視することになる。
国際社会は、1970年代にカンボジアで虐殺が行われているときにも、1990年代前半にボスニア・ヘルツェゴビナで虐殺など民族浄化が行われているときにも、1994年にルアンダ国内で虐殺が行われているときにも、無力だった。国際社会が動くには、事実の正確な把握が必要だが、入国を制限されたなら、国際社会は断片的な情報しか得ることができない。
戦争の時に禁止される行為は、いわゆる国際人道法によって明確化されつつあるが、ある国の内部で行われる非人道的な行為に対して国際社会は、国家主権の壁に阻まれる。「人間には倫理的に耐えられることの限界がある。その限界はどこにあるか」(同)。平時における国際人道法が必要なのだが、ここにも国家主権の壁が立ちはだかる。
2018年4月18日水曜日
公表されている事実
化学兵器禁止条約に基づいて設立された国際機関の化学兵器禁止機関(OPCW)は、英国のソールズベリーで起きたロシアの元情報部員の男性とその娘に対する暗殺未遂で、現場で採取されたサンプルを分析し、不純物がほとんど含まれない高純度の有毒な化学物質だったとの調査結果を発表した。
この暗殺未遂で英国は、旧ソ連軍が開発した神経剤「ノビチョク」が使用されたと特定し、ロシアに対して事件の説明を求めた。ロシアは関与を否定したが、英国は納得せず、ロシア外交官23人を国外追放する対抗措置を実施した(ロシアも23人の英外交官を追放)。
英国の主張を米仏独などは支持し、NATOやEUも英国との連帯を表明した。米国はロシア外交官ら60人を国外追放し、シアトルのロシア領事館を閉鎖した。欧米20カ国以上から国外退去命令を受けたロシア当局者は100人を超えた(ロシアも対抗措置として欧米各国の外交官に国外退去を命じた)。
ノビチョクはソ連時代に対NATO用に開発された化学兵器で、毒性がVXガス(マレーシアで金正男氏殺害に使われた)より5~8倍高いとされる。既存の治療薬では効果がなく、ノビチョク用の解毒剤はないともされるが、重体だった元ロシア情報部員は急速に回復しているという(娘は既に退院)。治療の成果で回復したのか、接触したのが致死量ではなかったのかは詳らかになっていない。
公表されている事実は、①英国内で元ロシア情報部員が重体に陥った、②自宅玄関のドアから高純度のノビチョクが検出された、の2点。英国政府は、ロシアが関与した可能性は非常に高いとしてロシア外交官を追放し、国際社会に同調を求めたわけだが、公表されている事実だけではロシアの関与を断定するには根拠が弱いとも見える。
米国をはじめ各国がロシアに対する強硬な外交制裁に同調したのだから、おそらく英国はロシアが関与したという決定的な証拠をつかんでいて、相手国を限定して知らせたのだろう。決定的な証拠を公表すれば、国際社会からもっと広範な支持を得られたであろうに公表しない(できない)のは、情報提供者の安全に関わるか、英国の情報網が探知されるからか。
旧ソ連が開発したノビチョクが使用されればロシアが真っ先に疑われる。もしロシアが関与したなら、多くの国が保有しているだろう他の神経剤を使用せずにノビチョクを使用したのはなぜか謎が残る。ノビチョクだと英国が特定できたのは、ノビチョクに関する詳細なデータを持っていたからだ。ノビチョクはロシアの専有物なのだろうか。
この暗殺未遂で英国は、旧ソ連軍が開発した神経剤「ノビチョク」が使用されたと特定し、ロシアに対して事件の説明を求めた。ロシアは関与を否定したが、英国は納得せず、ロシア外交官23人を国外追放する対抗措置を実施した(ロシアも23人の英外交官を追放)。
英国の主張を米仏独などは支持し、NATOやEUも英国との連帯を表明した。米国はロシア外交官ら60人を国外追放し、シアトルのロシア領事館を閉鎖した。欧米20カ国以上から国外退去命令を受けたロシア当局者は100人を超えた(ロシアも対抗措置として欧米各国の外交官に国外退去を命じた)。
ノビチョクはソ連時代に対NATO用に開発された化学兵器で、毒性がVXガス(マレーシアで金正男氏殺害に使われた)より5~8倍高いとされる。既存の治療薬では効果がなく、ノビチョク用の解毒剤はないともされるが、重体だった元ロシア情報部員は急速に回復しているという(娘は既に退院)。治療の成果で回復したのか、接触したのが致死量ではなかったのかは詳らかになっていない。
公表されている事実は、①英国内で元ロシア情報部員が重体に陥った、②自宅玄関のドアから高純度のノビチョクが検出された、の2点。英国政府は、ロシアが関与した可能性は非常に高いとしてロシア外交官を追放し、国際社会に同調を求めたわけだが、公表されている事実だけではロシアの関与を断定するには根拠が弱いとも見える。
米国をはじめ各国がロシアに対する強硬な外交制裁に同調したのだから、おそらく英国はロシアが関与したという決定的な証拠をつかんでいて、相手国を限定して知らせたのだろう。決定的な証拠を公表すれば、国際社会からもっと広範な支持を得られたであろうに公表しない(できない)のは、情報提供者の安全に関わるか、英国の情報網が探知されるからか。
旧ソ連が開発したノビチョクが使用されればロシアが真っ先に疑われる。もしロシアが関与したなら、多くの国が保有しているだろう他の神経剤を使用せずにノビチョクを使用したのはなぜか謎が残る。ノビチョクだと英国が特定できたのは、ノビチョクに関する詳細なデータを持っていたからだ。ノビチョクはロシアの専有物なのだろうか。
2018年4月14日土曜日
それぞれの「成果」
北朝鮮がトランプ政権に対し、朝鮮半島の非核化に関して米朝首脳会談で協議する意向を直接伝えてきたと報じられた。「北朝鮮の非核化」と「朝鮮半島の非核化」は意味するものが大きく異なる。朝鮮半島の非核化は、北朝鮮とともに韓国(在韓米軍)の非核化も意味し、その検証を北朝鮮は求めようが、米国は応じないだろう。
核実験とミサイル発射を繰り返して緊張を高めてきたのは北朝鮮だから、緊張緩和を目指すなら、北朝鮮の非核化とその検証方法が首脳会談のテーマになるはずだ。だが、核兵器やミサイルは北朝鮮にとって対米交渉の切り札だから、簡単には手放すはずがない。まず朝鮮半島の非核化という高い要求を米国に突きつけ、主導権を握ろうとしている。
米国との首脳会談を北朝鮮が望んでいると韓国が米国に伝え、すぐにトランプ政権が受け入れたと伝えられている。本当に北朝鮮が米国との首脳会談実現を期待していたのか、拒絶されることを見越して平和を望む姿勢を装っただけなのか判断できないが、米国との首脳会談を行うなら北朝鮮側は何らかの成果を得なければならないだろう。
国連による制裁決議が強化されている中で、北朝鮮の一方的な言い分を米国が容認する可能性はほぼない。緊張緩和へ向けて北朝鮮の非核化などの具体的な対応を表明することが北朝鮮に求められる。しかし、核兵器やミサイルを放棄したなら北朝鮮は、ただの貧しい低開発国になり、米国など大国と対等な立場には立てない。
北朝鮮にとって米国との首脳会談は、北朝鮮と米国が対等であるとイメージづける最高の舞台だ。北朝鮮にとって米国との首脳会談は、実際に行われることが最大の成果であろう。だから、互いに言いっ放しに終わったとしても構わない。むしろ、北朝鮮が一歩も譲らず、一方的な主張を行ってプロパガンダの場とすることで、成果があったとするかもしれない。
米トランプ政権は、北朝鮮を国際舞台に引っ張り出すチャンスを逃さなかった。何らかの譲歩を北朝鮮に飲ませればトランプ政権の成果であり、互いに言いっ放しで物別れに終わったとしても、平和に向かうチャンスを拒否したとして北朝鮮をさらに批判することができる。米国にとって北朝鮮との首脳会談は、成功してもしなくても、行ったことが成果になる。
互いに譲歩するつもりがなく、互いに言いっぱなしで終わっても良いとする首脳会談だから、米国と北朝鮮はともに、開催するだけで成果があったとするだろう。和解に向けての第一歩とするのか、さらなる対立を正当化するステップとするのか、おそらく首脳会談の前に決まるだろう。
核実験とミサイル発射を繰り返して緊張を高めてきたのは北朝鮮だから、緊張緩和を目指すなら、北朝鮮の非核化とその検証方法が首脳会談のテーマになるはずだ。だが、核兵器やミサイルは北朝鮮にとって対米交渉の切り札だから、簡単には手放すはずがない。まず朝鮮半島の非核化という高い要求を米国に突きつけ、主導権を握ろうとしている。
米国との首脳会談を北朝鮮が望んでいると韓国が米国に伝え、すぐにトランプ政権が受け入れたと伝えられている。本当に北朝鮮が米国との首脳会談実現を期待していたのか、拒絶されることを見越して平和を望む姿勢を装っただけなのか判断できないが、米国との首脳会談を行うなら北朝鮮側は何らかの成果を得なければならないだろう。
国連による制裁決議が強化されている中で、北朝鮮の一方的な言い分を米国が容認する可能性はほぼない。緊張緩和へ向けて北朝鮮の非核化などの具体的な対応を表明することが北朝鮮に求められる。しかし、核兵器やミサイルを放棄したなら北朝鮮は、ただの貧しい低開発国になり、米国など大国と対等な立場には立てない。
北朝鮮にとって米国との首脳会談は、北朝鮮と米国が対等であるとイメージづける最高の舞台だ。北朝鮮にとって米国との首脳会談は、実際に行われることが最大の成果であろう。だから、互いに言いっ放しに終わったとしても構わない。むしろ、北朝鮮が一歩も譲らず、一方的な主張を行ってプロパガンダの場とすることで、成果があったとするかもしれない。
米トランプ政権は、北朝鮮を国際舞台に引っ張り出すチャンスを逃さなかった。何らかの譲歩を北朝鮮に飲ませればトランプ政権の成果であり、互いに言いっ放しで物別れに終わったとしても、平和に向かうチャンスを拒否したとして北朝鮮をさらに批判することができる。米国にとって北朝鮮との首脳会談は、成功してもしなくても、行ったことが成果になる。
互いに譲歩するつもりがなく、互いに言いっぱなしで終わっても良いとする首脳会談だから、米国と北朝鮮はともに、開催するだけで成果があったとするだろう。和解に向けての第一歩とするのか、さらなる対立を正当化するステップとするのか、おそらく首脳会談の前に決まるだろう。
2018年4月11日水曜日
振り上げた拳
中国による知的財産侵害への制裁措置として米トランプ米大統領はさらに強硬策を打ち出し、関税対象額の1千億ドル積み増しを検討すると発表した(4月5日)。3日に公表した制裁措置の対象輸入品は約1300品目、対象額500億ドルだったが、中国が報復措置を発表したことに刺激されたようだ。
強硬な態度では中国も負けておらず、中国商務省の報道官は「われわれは貿易戦争を恐れもしない」とすぐに反撃、「中国はいかなる代償も惜しまず、断固として反撃する」とし、「中国は多国間の貿易体制を守り、グローバルな貿易と投資の自由化を推し進める」と自由貿易の旗手を装って見せた。
米国の中国からの輸入額全体は5100億ドル(2017年)とされるので、米国が3日に発表した500億ドルはほぼ1割に相当する。約1300品目に25%の関税を課すとしたが、実施は未定だ。企業などの意向を踏まえて最終決定するとしているので、実態は制裁措置を見せているだけだ。
だが、米の3日の発表に対抗して中国は4日、米国産の大豆、牛肉、自動車、飛行機など106品目に25%の関税を課すとし、関税の対象額は500億ドルと米国の発表した金額に合わせた。真っ向から歯向かわれたことに怒ったのかトランプ政権は制裁を拡大、5日の追加制裁1000億ドル積み増しの発表へと繋がった。
今年、輸入制限のために高関税を課す動きを始めたのは米国が最初だった。3月23日から安全保障を理由に鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税を課した。EUなどを猶予対象としたものの、中国や日本などに適用した。中国は報復措置として、4月2日から米国から輸入する果物など120品目に15%、豚肉など8品目に25%の関税を上乗せした。
米国が中国に求めるのは巨額の貿易赤字の削減と知的財産権侵害の是正だが、国際ルールと国内ルールを都合よく使い分ける中国にとっては現状維持がベスト。報復合戦が実行されると状況が変化するので、現状維持を願う側の失うもののほうが多いだろうが、中国は政治が優先する体制だから、引くに引けなくなるだろう。
報復合戦が実行されれば米中とも国内で少なからぬダメージを受けるだろうが、米中ともに振り上げた拳を、体面を保ちながら、どう降ろすのかという難問に直面する。相手側が引くべきだと互いに考えるだろうが、米中とも強面で知られる政権だけに、簡単には融和的姿勢に転換できないだろう。拳を振り上げることが現代の外交で、どんな効果や意味を持つのか、いいテストケースではある。
強硬な態度では中国も負けておらず、中国商務省の報道官は「われわれは貿易戦争を恐れもしない」とすぐに反撃、「中国はいかなる代償も惜しまず、断固として反撃する」とし、「中国は多国間の貿易体制を守り、グローバルな貿易と投資の自由化を推し進める」と自由貿易の旗手を装って見せた。
米国の中国からの輸入額全体は5100億ドル(2017年)とされるので、米国が3日に発表した500億ドルはほぼ1割に相当する。約1300品目に25%の関税を課すとしたが、実施は未定だ。企業などの意向を踏まえて最終決定するとしているので、実態は制裁措置を見せているだけだ。
だが、米の3日の発表に対抗して中国は4日、米国産の大豆、牛肉、自動車、飛行機など106品目に25%の関税を課すとし、関税の対象額は500億ドルと米国の発表した金額に合わせた。真っ向から歯向かわれたことに怒ったのかトランプ政権は制裁を拡大、5日の追加制裁1000億ドル積み増しの発表へと繋がった。
今年、輸入制限のために高関税を課す動きを始めたのは米国が最初だった。3月23日から安全保障を理由に鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税を課した。EUなどを猶予対象としたものの、中国や日本などに適用した。中国は報復措置として、4月2日から米国から輸入する果物など120品目に15%、豚肉など8品目に25%の関税を上乗せした。
米国が中国に求めるのは巨額の貿易赤字の削減と知的財産権侵害の是正だが、国際ルールと国内ルールを都合よく使い分ける中国にとっては現状維持がベスト。報復合戦が実行されると状況が変化するので、現状維持を願う側の失うもののほうが多いだろうが、中国は政治が優先する体制だから、引くに引けなくなるだろう。
報復合戦が実行されれば米中とも国内で少なからぬダメージを受けるだろうが、米中ともに振り上げた拳を、体面を保ちながら、どう降ろすのかという難問に直面する。相手側が引くべきだと互いに考えるだろうが、米中とも強面で知られる政権だけに、簡単には融和的姿勢に転換できないだろう。拳を振り上げることが現代の外交で、どんな効果や意味を持つのか、いいテストケースではある。
2018年4月7日土曜日
様々な輪廻転生
チベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマ14世の後継者の選出をめぐり、各派の高僧が集まって、選出方法の議論を始める計画があると報じられた。これは後継者指名に中国政府が介入する恐れがあり、それを防ぐためだ。中国政府はパンチェン・ラマ11世を独自に指名し、ダライ・ダマ14世が指名した後継者を監視下においている。
伝統的な選出方法(「輪廻転生」制度)では、ダライ・ラマ死去後に生まれ変わりを探すのだが、年単位の時間を要する。その間に中国政府が独自にダライ・ダマ15世の指名を強行する可能性が高く、また、ダライ・ラマ14世が「輪廻転生制度を廃止すべきだ」と発言していることから、新たな後継者選出制度を検討すると見られる。
死んで肉体が滅びても霊魂は様々の形でこの世に何度も帰ってくるという輪廻転生の発想は、古くから世界各地にある。輪廻転生が事実であるかどうかは検証不能だが、古くから広く共有されてきたのだから、ある種の実感(あるいは願望)に基づいているのかもしれない。
検証不能であるから輪廻転生は、①霊魂は動植物を含め多様な生命の間で生まれ変わる、②霊魂は人間の間でのみ生まれ変わる、の2説に大別される。どちらが正しいのか、あるいは、どちらも間違っているのか誰にも判別できないが、チベット仏教の最高指導者の霊魂は後者であるらしい。
生まれ変わりを主張する人の中に、前世の記憶があるとする人もいる。もちろん、そのような前世の記憶は検証不能だから、否定も肯定もできない。つまり、どうとでも前世を主張できるのだから、自分の前世は歴史上の有名人であると誰でも主張できる。中には、前世は宇宙人だったと主張する人もいるそうだ。
先日、ある若いアメリカ人が自分の前世はカフェのテーブルだと言い出した。人が集まっていて、ワイワイガヤガヤと賑わっているのが好きだから、前世はカフェのテーブルだったに違いないと言う。カフェのオーナーではなくテーブルを選ぶところが彼女の控えめな人柄を反映している。
輪廻転生の範囲を生命体に限らないとなれば、前世の可能性は限りなく広がる。日本には物質にも霊が宿って妖怪になるという考えがあるので、前世がカフェのテーブルという発想もありかもしれない。ただ、霊が宿ったテーブルは閉店後のカフェ店内でいたずらをしそうだな。
伝統的な選出方法(「輪廻転生」制度)では、ダライ・ラマ死去後に生まれ変わりを探すのだが、年単位の時間を要する。その間に中国政府が独自にダライ・ダマ15世の指名を強行する可能性が高く、また、ダライ・ラマ14世が「輪廻転生制度を廃止すべきだ」と発言していることから、新たな後継者選出制度を検討すると見られる。
死んで肉体が滅びても霊魂は様々の形でこの世に何度も帰ってくるという輪廻転生の発想は、古くから世界各地にある。輪廻転生が事実であるかどうかは検証不能だが、古くから広く共有されてきたのだから、ある種の実感(あるいは願望)に基づいているのかもしれない。
検証不能であるから輪廻転生は、①霊魂は動植物を含め多様な生命の間で生まれ変わる、②霊魂は人間の間でのみ生まれ変わる、の2説に大別される。どちらが正しいのか、あるいは、どちらも間違っているのか誰にも判別できないが、チベット仏教の最高指導者の霊魂は後者であるらしい。
生まれ変わりを主張する人の中に、前世の記憶があるとする人もいる。もちろん、そのような前世の記憶は検証不能だから、否定も肯定もできない。つまり、どうとでも前世を主張できるのだから、自分の前世は歴史上の有名人であると誰でも主張できる。中には、前世は宇宙人だったと主張する人もいるそうだ。
先日、ある若いアメリカ人が自分の前世はカフェのテーブルだと言い出した。人が集まっていて、ワイワイガヤガヤと賑わっているのが好きだから、前世はカフェのテーブルだったに違いないと言う。カフェのオーナーではなくテーブルを選ぶところが彼女の控えめな人柄を反映している。
輪廻転生の範囲を生命体に限らないとなれば、前世の可能性は限りなく広がる。日本には物質にも霊が宿って妖怪になるという考えがあるので、前世がカフェのテーブルという発想もありかもしれない。ただ、霊が宿ったテーブルは閉店後のカフェ店内でいたずらをしそうだな。
2018年4月4日水曜日
もっと権力を縛る憲法
現行の日本国憲法は立派なものなのだが、現実との乖離があり、それが憲法の地位を揺るがし、緊張感をもたらしている。第九条で「戦争の放棄」「戦力の保持及び交戦権の否認」を定めているが、現実には自衛隊という強力な軍事組織が存在しており、自衛隊の存在を憲法に書き込むべきだとの主張が常につきまとう。
かつて存在した「自衛隊を解散して日本は非武装になるべきだ」との主張は、現行の憲法との整合性は保たれる主張だが、現実離れしており、掲げていた社会党も、連立政権に参画して現実に向き合わざるを得なくなり、自衛隊は合憲だと転換せざるを得なかった。だが、第九条は変わっていないから、現実との乖離は続いている。
憲法第九条と現実との乖離は、憲法が「国家権力を縛る」ことを損なっている。近代憲法は、主権者である人々の権利と自由を守るために 国家権力を制限するものだが、国家権力が有する暴力措置の最たるものである軍事組織が実在するのに、その存在について現行憲法には明確な規定がない。例えば、軍事組織が国内で治安出動してもいいのか悪いのか憲法には何も書かれていない。
軍事組織が圧倒的な政治力を持つようになり、戦線の拡大に歯止めが効かなくなって、無謀な戦争に突入した結果、人々が苦しみ、国土が外国軍に占領され、国家の独立が失われたという歴史が日本にはある。あのような軍事組織の暴走を許さないためには、憲法で軍事組織に対する縛りを明確にすることが不可欠だ。
現実に存在する軍事組織の行動に対する制約を憲法に明記することは、いわゆる平和憲法の価値を損なうものではなく、現実的な国家的規範としての憲法の効力を高めるものであろう。議論すべきは、憲法で軍事組織をどう規定し、その行動の制約をどのように書き込むかということだ。
いわゆる護憲派は現行憲法を聖典と祭り上げて一切の変更を拒否する一方、いわゆる改憲派は自衛隊を「普通」の軍隊に位置付けたり、国家権力に対する憲法の制限を緩和することを目指しているようだ。改憲という言葉は中立的なものだが、現在の日本では改憲=復古的な国家主義への志向とみなされる。もっと民主主義を強め、もっと主権在民を強めるための改憲があるはずだ。
憲法に自衛隊に関する制約を明記するのは、現実との乖離を解消して国家権力に対する憲法の拘束力を強める。軍事組織が暴走したことがある日本の歴史を踏まえるなら、実在する軍事組織を憲法で縛っておくことの重要性は大きい。
かつて存在した「自衛隊を解散して日本は非武装になるべきだ」との主張は、現行の憲法との整合性は保たれる主張だが、現実離れしており、掲げていた社会党も、連立政権に参画して現実に向き合わざるを得なくなり、自衛隊は合憲だと転換せざるを得なかった。だが、第九条は変わっていないから、現実との乖離は続いている。
憲法第九条と現実との乖離は、憲法が「国家権力を縛る」ことを損なっている。近代憲法は、主権者である人々の権利と自由を守るために 国家権力を制限するものだが、国家権力が有する暴力措置の最たるものである軍事組織が実在するのに、その存在について現行憲法には明確な規定がない。例えば、軍事組織が国内で治安出動してもいいのか悪いのか憲法には何も書かれていない。
軍事組織が圧倒的な政治力を持つようになり、戦線の拡大に歯止めが効かなくなって、無謀な戦争に突入した結果、人々が苦しみ、国土が外国軍に占領され、国家の独立が失われたという歴史が日本にはある。あのような軍事組織の暴走を許さないためには、憲法で軍事組織に対する縛りを明確にすることが不可欠だ。
現実に存在する軍事組織の行動に対する制約を憲法に明記することは、いわゆる平和憲法の価値を損なうものではなく、現実的な国家的規範としての憲法の効力を高めるものであろう。議論すべきは、憲法で軍事組織をどう規定し、その行動の制約をどのように書き込むかということだ。
いわゆる護憲派は現行憲法を聖典と祭り上げて一切の変更を拒否する一方、いわゆる改憲派は自衛隊を「普通」の軍隊に位置付けたり、国家権力に対する憲法の制限を緩和することを目指しているようだ。改憲という言葉は中立的なものだが、現在の日本では改憲=復古的な国家主義への志向とみなされる。もっと民主主義を強め、もっと主権在民を強めるための改憲があるはずだ。
憲法に自衛隊に関する制約を明記するのは、現実との乖離を解消して国家権力に対する憲法の拘束力を強める。軍事組織が暴走したことがある日本の歴史を踏まえるなら、実在する軍事組織を憲法で縛っておくことの重要性は大きい。
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