2023年12月27日水曜日

共和国憲法(後)

〔日本共和国憲法〕ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


第六章 地方自治

〔道州制〕

第八十九条 日本国は、三道(北海道、四国道、九州道)六州(東北州、関東州、北越州、東海州、関西州、中国州)から成る。三道六州の構成、組織、運営に関する事項は、法律でこれを定める。

〔道州の自治〕

第九十条 三道六州の日本国からの独立は認めない。三道六州は日本国政府を支え、その指示を受けつつ、住民の福祉向上のために地方自治を遂行する。

〔道州の議会、直接選挙、住民投票〕

第九十一条 三道六州には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。

(2)三道六州の長、その議会の議員および法律の定めるその他の吏員は、その道州の住民が直接これを選挙する。

(3)前項の規定により選出された長、議員、吏員は、法律の定める住民投票において過半数の賛成により、解職することができる。

〔道州における住民投票〕

第九十二条 三道六州において、特定の事項に関して、住民の五分の一を上回る要求があれば、住民投票を行わなければならない。

(2)前項の住民投票で示された結果を、三道六州の長およびその議会と議員は、尊重しなければならない。

〔道州の権能〕

第九十三条 三道六州は、その財産を管理し、事務を処理し、行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

〔地方自治の基本原則〕

第九十四条 地方公共団体の組織および運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める。

〔地方公共団体の議会、直接選挙〕

第九十五条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。

(2)地方公共団体の長、その議会の議員および法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が直接これを選挙する。

〔地方公共団体の権能〕

第九十六条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

〔特別法の住民投票〕

第九十七条 三道六州のいずれか、または、一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その道州、または、その地方公共団体の住民の投票において過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。


第七章 自衛権

〔自衛権〕

第九十八条 われら日本人は自由と権利を守り、日本国の独立、主権、領土を保持するために自衛権を有する。

(2)日本国が自衛権を行使するには、参議院ならびに衆議院において、各々過半数の賛成による議決を必要とする。

〔侵略戦争の禁止〕

第九十九条 われら日本人は、正義と秩序を基調とする国際平和を希求し、征服や支配を目的とする、国権の発動としての侵略戦争と、武力の行使を行わない。

(2)前項の目的を達するため、征服・支配を目的とする軍事同盟には加わらない。

〔地域防衛軍と国防軍〕

第百条 われら日本人と日本国が有する自衛権に基づき、地域防衛軍と国防軍を設置する。

(2)地域防衛軍は陸軍を主体とする。道州ごとに地域司令部を置き、地域司令部の長は定期的に、少なくとも年一回、道州議会に活動実態を報告しなければならない。

(3)国防軍は空軍と海軍を主体とする。統合司令部を首都に置き、防衛大臣は定期的に、少なくとも年一回、参議院に、国防軍ならびに地域防衛軍の活動実態を報告しなければならない。

(3)国防軍ならびに地域防衛軍に属する何人も、国会並びに地方議会の議員になることはできない。また、国防軍ならびに地域防衛軍に属する何人も、中央政府並びに地方政府の意思決定に参加することはできない。

(4)国防軍ならびに地域防衛軍は、日本人に対して武力を行使してはならない。

〔地域防衛軍と国防軍の予算〕

第百一条 地域防衛軍の予算は、国と道州で折半する。国防軍の予算は国が負担する。

〔防衛会議〕

第百二条 大統領を長とする防衛会議を設置する。防衛会議で定められた方針に基づき、統合司令部が、国防軍ならびに地域防衛軍の指揮をとる。

〔武力攻撃への対応〕

第百三条 日本国が他国により武力攻撃を受けたとき、または国籍不明の武力を行使されたときは、大統領が非常事態を宣言する。

(2)非常事態が宣言された後は、防衛会議の方針に基づき、統合司令部が国防軍ならびに地域防衛軍の指揮をとり、日本国に対する武力の行使を停止させる行動を行う。

(3)非常事態が宣言された後は、参議院は、国防軍ならびに地域防衛軍の行動を、事後的に検証する。

(4)非常事態が宣言された後は、防衛会議の方針に基づく国防軍ならびに地域防衛軍の行動は、法律の制約を受けない。ただし、非常事態が終了した後に、参議院に検証委員会を設置し、国防軍ならびに地域防衛軍の行動の妥当性について、検証委員会は調査し、報告しなければならない。

(5)非常事態が宣言された時に、防衛会議の方針に基づく国防軍ならびに地域防衛軍の行動により、財産権侵害等の不利益を被った日本人は、非常事態が終了した後に、法律の定めにより、日本国に損害賠償を請求することができる。

〔非常事態時における戦争犯罪行為の禁止〕

第百四条 日本国が他国により、または国籍不明の武力を行使されたときに、日本国内において日本人に対して、法律に定める戦争犯罪行為を他国人は行ってはならず、戦争犯罪行為を行ったとき、その他国人は、法律の定めにより、損害賠償を行わなければならない。

〔地域防衛軍と国防軍の活動〕

第百五条 地域防衛軍ならびに国防軍は、国連から要請があった時にのみ、日本国の国境内ならびに周辺公海を離れて活動することができる。

〔地域防衛軍と国防軍の忠誠義務〕

第百六条  地域防衛軍ならびに国防軍に所属する日本人は、この憲法ならびに日本国を尊重し擁護する義務を負う。また、地域防衛軍ならびに国防軍に所属する日本人は、いかなる政治的な行動にも関与してはならない。

〔外国の軍隊の日本駐留の制限〕

第百七条 日本国内において他国の軍隊が駐留することは、参議院ならびに衆議院で、各々過半数の賛成による議決を必要とする。駐留できる期間は最長三年間で、それを超えて他国の軍隊が日本国内に駐留するには、三年ごとに参議院ならびに衆議院で、各々過半数の賛成による議決を必要とする。

(2)日本国に駐留する他国の軍隊ならびにそれに所属する軍人は、日本国の法律を遵守する義務を負う。

(3)日本国に駐留する他国の軍隊は、相当額の対価を日本国に払わなければならない。


第八章 天皇制

〔天皇の地位、国民主権〕

第百八条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。

〔皇位の継承〕

第百九条 皇位は世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

〔天皇の国事行為と内閣の責任〕

第百十条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負う。

〔天皇の権能と委任〕

第百十一条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない。

(2)天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。

〔摂政〕

第百十二条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名で国事に関する行為を行う。その場合には、前条第一項の規定を準用する。

〔天皇の国事行為〕

第百十三条 天皇は、内閣の助言と承認により、国事に関する次の行為を行う。

 一、皇室の伝統を保持、継承するための儀式を行うこと。

 二、栄典を授与すること。

 三、外国の王室と交遊すること。

 四、外国の大使および公使を接受すること。

 五、日本国のために殉じた人を追悼すること。

〔皇室の財産授受〕

第百十四条 皇室に財産を譲り渡し、または皇室が財産を譲り受け、もしくは賜与することは、国会の議決に基づかなくてはならない。


第九章 最高法規

〔基本的人権の本質〕

第百十五条 われら日本人に、この憲法が保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であり、これらの権利は、現在および将来の日本人に、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

〔最高法規、条約・国際法規の遵守〕

第百十六条 この憲法は、日本国の最高法規である。

(2)この憲法の条規に反する法律、命令、詔勅および国務に関するその他の行為の全部または一部は、その効力を有しない。

(3)日本国が締結した条約および確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

〔憲法尊重擁護の義務〕

第百十七条 国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員および天皇または摂政は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。


第十章 改正

〔憲法改正の手続き、公布〕

第百十八条 この憲法の改正は、まず、各議院の総議員の過半数の賛成で、国会に特別委員会を設置して、改正条文案を作成しなければならない。作成された改正条文案は、各議院の総議員の過半数の賛成を経たあとに、国民に提案して承認を経なければならない。この承認には特別の国民投票において、過半数の賛成を必要とする。

(2)憲法改正の国民投票では、主権者である日本人は投票をしなければならない。

(3)特別委員会の委員は、衆議院、参議院、内閣、最高裁判所、各道州の代表をもって構成しなければならない。

2023年12月26日火曜日

共和国憲法(中)

〔日本共和国憲法〕ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


第三章 行政

〔行政権〕

第五十九条 行政権は、内閣に属する。

〔内閣の組織・資格・国会に対する連帯責任〕

第六十条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣ならびに大統領およびその他の国務大臣で組織する。

(2)内閣総理大臣ならびに大統領およびその他の国務大臣は、文民でなければならない。

(3)内閣は、行政権の行使について、国会に対して連帯して責任を負う。

〔内閣総理大臣の指名〕

第六十一条 内閣総理大臣は、衆議院議員の中から衆議院の議決で指名する。この指名は、他のすべての案件に先立って行う。

(2)内閣総理大臣は内政に関する事項をつかさどる。

〔大統領の指名、大統領の任期、兼職の禁止〕

第六十二条 大統領は、参議院議員を含む文民の中から参議院の議決で指名する。

(2)大統領は外交および防衛に関する事項をつかさどる。

(3)大統領は参議院ならびに衆議院の会議に出席する義務を負わない。

(4)大統領の任期は六年とし、任期は一期のみとする。

(5)大統領は、参議院議員を含め、兼職はできない。

〔国務大臣の任免〕

第六十三条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。ただし、その半数までは衆議院議員の中から選ぶことができる。

(2)大統領は、外交を担当する国務大臣ならびに防衛を担当する国務大臣を、参議院議員の中から選び、任命する。

(3)内閣総理大臣ならびに大統領は、任意に国務大臣を罷免することができる。

〔衆議院の内閣不信任、参議院の大統領問責決議〕

第六十四条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、または信任の決議案を否決したときは、内閣が決定する特定の事項に関する国民投票を行うことができる。

(2)内閣は、参議院で大統領の問責決議案を可決し、または信任の決議案を否決したときは、内閣が決定する特定の事項に関する国民投票を行うことができる。

(3)内閣は、国民投票で示された結果を、尊重しなければならない。

〔内閣総理大臣の欠缺〕

第六十五条 内閣総理大臣が欠けたとき、または衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は総辞職をしなければならない。

〔総辞職後の内閣の任務〕

第六十六条 前一条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続き、その職務を行う。

〔大統領の欠缺〕

第六十七条 大統領が欠けたとき、参議院はあらたに大統領を指名しなければならない。

〔内閣総理大臣ならびに大統領の職務〕

第六十八条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務について国会に報告し、ならびに行政各部を指揮監督する。

(2)大統領は、内閣を代表して議案を国会に提出し、外交関係および防衛関係について国会に報告し、ならびに外交関係および防衛関係の行政各部を指揮監督する。

〔内閣の職務〕

第六十九条 内閣は、他の一般行政事務のほか、次の事務を行う。

 一、法律を誠実に執行し、国務を総理すること。

 二、外交関係を処理すること。

 三、条約を締結すること。ただし、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。

 四、法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること。

 五、予算を作成して国会に提出すること。

 六、この憲法および法律の規定を実施するために、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。

 七、大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除および復権を決定すること。

〔法律・政令の署名・連署〕

第七十条 法律および政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

(2)外交および防衛に関する法律および政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、大統領が連署することを必要とする。

〔国務大臣の訴追〕

第七十一条 国務大臣はその在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。ただし、これがため、訴追の権利は害されない。

(2)外交および防衛に関わる国務大臣はその在任中、大統領の同意がなければ、訴追されない。ただし、これがため、訴追の権利は害されない。


第四章 司法

〔司法権・裁判所、特別裁判所の禁止、裁判官の独立〕

第七十二条 すべて司法権は、唯一の最高裁判所および法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

(2)特別裁判所は設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行うことができない。

(3)すべて裁判官は、その良心に従い独立して、その職権を行い、この憲法および法律にのみ拘束される。

(4)衆議院で三分の二で議決したときは、衆議院内に、特定の事案についてのみ起訴権を有する特別検察官を任命することができる。

〔裁判所制度〕

第七十三条 下級裁判所は、刑事、民事、行政、経済、労働、交通、軍事の分野別に各々二審制を構築する。

(2)最高裁判所に判断を求めることができるのは、憲法判断を求める場合と、第二審後に新たな証拠が発見された場合である。

(3)下級裁判所のうち第一審は各々道州に属し、第二審と最高裁判所は国に属する。

〔裁判所の規則制定権〕

第七十四条 最高裁判所は訴訟に関する手続き、弁護士、裁判所の内部規律および司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。

(2)検察官は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。

(3)最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

〔裁判官の身分の保障〕

第七十五条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関が行うことはできない。

〔最高裁判所の構成、国民審査、定年、報酬〕

第七十六条 最高裁判所は、その長たる裁判官および法律の定める員数のその他の裁判官で構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣で任命する。

(2)最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙のときに国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行われる衆議院議員総選挙のときに更に審査に付し、その後も同様とする。

(3)前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は罷免される。

(4)審査に関する事項は、法律でこれを定める。

(5)最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達したときに退官する。

(6)最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は在任中、減額することはできない。

〔下級裁判所の裁判官、任期、定年、報酬〕

第七十七条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣で任命する。その裁判官は任期を十年とし、再任されることができる。ただし、法律の定める年齢に達したときには退官する。

(2)下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は在任中、減額することはできない。

〔法令等の合憲性審査権〕

第七十八条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則、処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

〔裁判の公開〕

第七十九条 裁判の対審および判決は、公開法定で行う。

(2)裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序または善良の風俗を害する恐れがあると決した場合には、対審は、公開しないで行うことができる。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪、または、この憲法第一章で保障する日本人の権利が問題となっている事件の対審は、常に公開しなければならない。


第五章 財政

〔財産処理の権限〕

第八十条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて行使しなければならない。

〔課税の要件〕

第八十一条 あらたに租税を課し、または現行の租税を変更するには、法律または法律の定める条件によることを必要とする。

〔国費の支出と国の債務負担〕

第八十二条 国費を支出し、または国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。

〔予算の作成と国会の議決〕

第八十三条 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。

(2)国が負担する債務の額は、毎会計年度の予算において歳入全体の二十五%を上回ってはならない。また、国が負担する債務の累積額は、当該予算の前年度の国民総生産額を上回ってはならない。

(3)毎会計年度の予算において、見込まれる税収額の百五十%を超える歳出額を計上してはならない。

〔予備費〕

第八十四条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。

(2)すべて予備費の支出について内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

〔皇室財産・皇室の費用〕

第八十五条 すべて皇室財産は国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。

〔公の財産の支出または利用の制限〕

第八十六条 公金その他の公の財産は、宗教上や政治上の組織もしくは団体の使用、便益もしくは維持のため、または公の支配に属しない慈善、教育もしくは博愛の事業に対し、これを支出し、またはその利用に供してはならない。

〔決算、会計検査院〕

第八十七条 国の収入支出の決算は、すべて毎年、会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

(2)会計検査院が検査して、改善をもとめた事項に関して、国会の過半数の議決により承認されたときは、内閣は、次の年度に継続して、その事項に関する予算を計上することはできない。既に予算が成立したとき、内閣はその事項に関する予算執行を停止しなければならない。

(3)会計検査院の組織および権限は、法律でこれを定める。

〔財政状況の報告〕

第八十八条 内閣は、国会および国民に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。


2023年12月25日月曜日

共和国憲法(前)

 以前に別サイトで公開していた「日本共和国憲法私案」は、当該サイトの閉鎖とともに公開は終了した。だが最近、もう一度読みたいとの知人からのリクエストがあったので、当時の私案を再掲する。加えたい条項や再構築したい条項などがあるが、かつての掲載当時のままで3回に分けて再掲載する。


日本共和国憲法(試案)ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 〔改正の骨子〕

 ■衆参の機能を分け、衆議院は内政を担当し、参議院は外交、防衛を担当する。

 ■衆議院から首相(内政担当)を選出し、参議院から大統領(外交・防衛担当)を選出する。

 ■議員の通算任期に制限を設ける。

 ■解散権をなくし、代わりに国民投票を導入する。

 ■赤字予算を続けることに制限を設ける。

 ■裁判制度を分野別の二審制にする。その上に最高裁判所を設置する。

 ■道州制を導入する。

 ■現実に存在する軍事力(自衛隊)に関して、憲法で規定する。

 ■国防軍と地域防衛軍を設ける。

 ■天皇制を政治から切り離す。象徴天皇制は維持する。

 ■国による全機関に情報公開を義務づける。

 ■日本国憲法は日本人の間に定着していると考え、継承すべきものは継承する。


〔日本共和国憲法〕ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(目次)

第一章 日本人の権利および義務 (第一条〜第三十三条)

第二章 立法 (第三十四条〜第五十八条)

第三章 行政 (第五十九条〜第七十一条)

第四章 司法 (第七十二条〜第七十九条)

第五章 財政 (第八十条〜第八十八条)

第六章 地方自治 (第八十九条〜第九十七条)

第七章 自衛権 (第九十八条〜第百七条)

第八章 天皇制 (第百八条〜第百十四条)

第九章 最高法規 (第百十五条〜第百十七条)

第十章 改正 (第百十八条)

第十一章 補則 ()


〔日本共和国憲法〕

 われら日本人は日本国の主権を有し、思想・表現・信仰などの自由を有し、個人の尊厳と社会的な統合・安定を尊重しつつ、社会的・経済的・政治的正義の実現を目指す。 われらの日本国は、独立した不可分の、非宗教的かつ民主的な共和国である。日本国の政治は日本人により、日本人のために行われる。日本国の政治は、日本人の厳粛な信託によるものであり、その権威は日本人に由来し、その権力は日本人の代表者が行使し、その福利は日本人が享受する。 われら日本人は、1945年に終戦した戦争について、近隣諸国に多大な被害を与えたことを真摯に反省するとともに、そうした戦争を遂行した政治体制および軍事体制を否定する。そうした政治体制および軍事体制とは隔絶した民主的な日本国を形成し、維持していくことを決意する。 われら日本人は、自由を愛する諸国民とともに、平和で公正で安定した世界の実現のために努力する。われら日本人は、征服・支配を目的とするいかなる戦争も行わず、諸国民の自由に対しても、日本国の武力を行使しない。


第一章 日本人の権利および義務

〔日本国の主権者〕

第一条 われら日本人は、日本国の主権を有し、日本国を統治する。

〔日本人たる要件〕

第二条 日本国で生まれた人は日本国籍を有する。日本国以外で日本人の両親から生まれた子供は日本国籍を有する。日本国在住の外国籍の両親から生まれた子供は、その子供が十八歳になった時に日本国籍を選択することができる。二重国籍は認めない。

〔基本的人権の享有〕

第三条 われら日本人は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が日本人に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の日本人に与えられる。

〔自由・権利の保持と公共の福祉〕

第四条 この憲法が日本人に保障する自由及び権利は、日本人の不断の努力によって、保持しなければならない。また、日本人は自由及び権利を濫用してはならず、公共の福祉のために利用する責任を負う。

〔個人の尊重〕

第五条 われら日本人は、個人として尊重される。生命、自由および幸福追求に対する日本人の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

〔法の下の平等〕

第六条 われら日本人は、法の下に平等であって、民族、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的・経済的・社会的関係において、差別されない。

(2)貴族の制度は認めない。

(3)栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。栄典の授与は、現にこれを有し、または将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

〔日本人の公務員選定罷免権、公務員の本質、普通選挙の保障、投票の秘密〕

第七条 公務員を選定および罷免することは、日本人固有の権利である。

(2)すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。

(3)公務員の選挙については、成年者による普通選挙とする。

(4)すべて選挙における投票の秘密は、侵してはならない。選挙人は、その選択に関し、公的にも私的にも責任を問われない。

〔請願権〕

第八条 すべての日本人は、損害の救済、公務員の罷免、法律・命令または規則の制定・廃止・改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有する。すべての日本人は、かかる請願を行ったことによる、いかなる差別待遇も受けない。

〔国および公共団体の賠償責任〕

第九条 すべての日本人は、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国または公共団体に、その賠償を求めることができる。

〔奴隷的拘束および苦役からの自由〕

第十条 すべての日本人は、いかなる奴隷的拘束も受けない。また、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

〔思想および良心の自由〕

第十一条 思想および良心の自由は、侵してはならない。

〔信教の自由〕

第十一二条 われら日本人は信教の自由を有する。いかなる宗教団体も、国から特権を受けたり、政治上の権力を行使してはならない。

(2)われら日本人は、宗教上の行為・祝典・儀式・行事に参加することを強制されない。

(3)国およびその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならず、宗教的活動に対して公金を支出してはならない。

〔集会・結社・表現の自由、通信の秘密〕

第十三条 集会、結社および言論、出版その他一切の表現の自由は保障する。

(2)検閲は行ってはならない。通信の秘密は侵してはならない。

〔居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍離脱の自由〕

第十四条 われら日本人は、公共の福祉に反しない限り、居住、移転および職業選択の自由を有する。

(2)われら日本人は、外国に移住し、または国籍を離脱する自由を侵されない。

〔学問の自由〕

第十五条 われら日本人は、学問の自由を有する。

〔情報公開〕

第十六条 われら日本人は、日本国のすべての機関で作成された、すべての書類を見る権利を有する。

(2)特別な理由により、書類の内容を秘匿しなければならないときは、その機関は、秘匿すべき理由を明示し、内閣の承認を得なければならない。

〔婚姻、個人の尊厳と両性の平等〕

第十七条 婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

(2)配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚ならびに婚姻および家族に関するその他の事項に関して、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

〔最低生活の保障、国の社会保障義務〕

第十八条 われら日本人は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

(2)日本国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障および公衆衛生の向上・増進に努めなければならない。

〔教育を受ける権利、教育義務〕

第十九条 われら日本人は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

(2)われら日本人は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる権利を有する。義務教育は無償とする。

〔勤労の権利、勤労条件の基準、児童の酷使禁止〕

第二十条 われら日本人は、勤労の権利を有する。

(2)賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める。

(3)児童は、酷使してはならない。

〔勤労者の団結権、団体行動権〕

第二十一条 勤労者の団結する権利および団体交渉その他の団体行動をする権利は、保障する。

〔財産権の保障、財産権の内容、正当補償〕

第二十二条 財産権は侵してはならない。

(2)財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律で定める。

(3)私有財産は、正当な補償の下に、公共のために用いることができる。

〔納税の権利〕

第二十三条 われら日本人は、法律の定めるところにより、納税の権利を有する。

〔法的手続きの保障〕

第二十四条 われら日本人は、法律の定める手続きによらなければ、その生命もしくは自由を奪われたり、その他の刑罰を科せられない。

〔裁判を受ける権利〕

第二十五条 われら日本人は、裁判所において裁判を受ける権利を有し、奪われない。

〔逮捕に関する保障〕

第二十六条 われら日本人は、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、かつ、理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

〔抑留拘禁に対する保障〕

第二十七条 われら日本人は、理由を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留または拘禁されない。

(2)われら日本人は、正当な理由がなければ拘禁されず、要求があれば、その理由は直ちに、本人およびその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

(3)われら日本人は、起訴されないままで長期に拘禁されたときは、日本国に、法律の定めるところによる損害賠償を請求できる。

(4)抑留または拘禁において、公務員による取り調べ状況は記録されなければならない。公開の法廷で要求があった場合は、公開しなければならない。

〔住居侵入・捜索・押収に対する保障〕

第二十八条 われら日本人は、その住居、書類および所持品について、侵入・捜索・押収を受けることのない権利は、第二十六条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、かつ、捜索する場所および押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

(2)捜索または押収は、権限を有する司法官憲が発する格別の令状により行う。

〔拷問および残虐な刑罰の禁止〕

第二十九条 公務員による拷問および残虐な刑罰は、絶対に禁止する。

〔刑事被告人の権利、証人審問権、弁護人依頼権〕

第三十条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

(2)刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、また、公費で自己のために強制的手続きにより証人を求める権利を有する。

(3)刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。これを被告人が自ら依頼することができないときは、国でこれを附する。

〔不利益な供述の不強制、自白の証拠能力、自白のみによる処罰の禁止〕

第三十一条 われら日本人は、自己に不利益な供述を強要されない。

(2)強制、拷問もしくは脅迫による自白、または不当に長く抑留もしくは拘禁された後の自白は証拠とすることができない。

(3)われら日本人は、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、または刑罰を科せられない。

〔刑罰法規の不遡及、二重処罰の禁止〕

第三十二条 われら日本人は、実行の時に適法であった行為や、既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。また、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。

〔刑事補償〕

第三十三条 われら日本人は、抑留または拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、その保障を日本国に求めることができる。


第二章 立法

〔国会の地位、立法権〕

第三十四条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

〔両院制〕

第三十五条 国会は衆議院および参議院の両議院で構成する。

〔両議院の組織〕

第三十六条 両議院は、すべての日本人を代表する選挙された議員で組織する。

(2)両議院の議員の定数は、法律で定める。

〔両議院の機能〕

第三十七条 衆議院は内政に関する事項を審議し、参議院は外交・防衛に関する事項を審議する。

〔議員および選挙人の資格〕

第三十八条 両議院の議員とその選挙人の資格は法律で定める。ただし、民族、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産、収入によって差別してはならない。

(2)この憲法で保障する日本人の自由と権利を否定する日本人は、両議会の議員になることはできない。

〔衆議院議員と参議院議員の任期〕

第三十九条 衆議院議員の任期は二年とし、通算九期まで務めることができる。参議院議員の任期は六年とし、三年ごとに半数を改選する。参議院議員は通算三期まで務めることができる。

〔両議院の議員の任期制限〕

第四十条 衆議院議員および参議院議員で通算二十年を超えて国会議員の地位にあるものは、両議会議員としての被選挙権を失う。

〔選挙に関する事項の法定〕

第四十一条 衆議院議員は、地方割りにした選挙区から選出される。参議院議員は、全国一区の選挙区から政党別の比例代表制により選出される。

(2)衆議院議員を選出する選挙において、当選した立候補者よりも多い票を得た立候補者を落選させてはならない。

(3)選挙区、投票の方法、その他両議院の議員に関する事項は、法律で定める。

〔両議院議員兼職の禁止〕

第四十二条 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

〔議員の歳費〕

第四十三条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

〔議員の不逮捕特権〕

第四十四条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

〔議員の発言・表決の無責任〕

第四十五条 両議院の議員は、議院で行った演説、討論、表決について、院外で責任を問われない。

〔常会〕

第四十六条 衆議院の常会は、毎年一回召集する。参議院の常会は常に開催する。

〔臨時会〕

第四十七条 内閣は、衆議院の臨時会の招集を決定することができる。衆議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

〔国民投票〕

第四十八条 両議院は、国民投票が行われたとき、そこで示された結果を、尊重しなければならない。

〔議員の資格争訟〕

第四十九条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。ただし、議員の議席を失わせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

〔定足数、表決〕

第五十条 両議院は、各々その総議員の三分の二以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。

(2)両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

〔会議の公開、会議録、表決の会議録記載〕

第五十一条 両議院の会議は公開とする。ただし、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。

(2)両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、かつ、一般に頒布しなければならない。

(3)出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の評決は会議録に記載しなければならない。

〔役員の選任、議院規則、懲罰〕

第五十二条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。

(2)両議院は、各々その会議その他の手続き、内部の規律に関する規則を定め、また、院内の秩序を乱した議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

〔法律案の議決、衆議院の優越〕

第五十三条 内政に関する法律案は、衆議院で可決したとき法律となる。外交・防衛に関する法律案は、参議院で可決したとき法律となる。

(2)内政および外交・防衛に関係する法律案は衆議院および参議院で審議する。衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。

(3)前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。

(4)参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、六十日以内に議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

〔予算〕

第五十四条 毎会計年度の予算案の内政に関する予算案は、衆議院で可決したときに成立する。毎会計年度の予算案の外交・防衛に関する予算案は、参議院で可決したときに成立する。

(2)毎会計年度の内政および外交・防衛に関連する予算案は、先に衆議院に提出し、その議決の後、参議院で審議する。参議院が衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、または参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、三十日以内に議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

〔条約の国会承認〕

第五十五条 条約の締結は、参議院の議決をもって国会の承認とする。

(2)条約の締結に際して、衆議院が審議参加の議決を行ったときは、先に参議院で可決した後、衆議院での承認を求める。衆議院が参議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、または衆議院が、参議院の承認した条約を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に議決しないときは、参議院の議決を国会の議決とする。

〔議院の国政調査権〕

第五十六条 両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭および証言、記録の提出を要求することができる。

〔国務大臣の議院出席〕

第五十七条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとに関わらず、いつでも議案について発言するために議院に出席することができる。また、答弁または説明のために出席を求められたときは、出席しなければならない。

〔弾劾裁判所〕

第五十八条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。

(2)弾劾に関する事項は、法律で定める。

2023年12月23日土曜日

極右と宗教

 極右とは「極端な右翼思想。また、その思想をもつ人や団体」とされるが、右翼思想は国や地域により異なり、日本では、戦前との連続性を持ち天皇崇拝を維持して時には街宣活動を行う団体や人々が右翼とされるが、欧州ではイスラム圏などからの移民を排斥・制限することを主張する団体や人々が極右とされる。

 米国では様々な保守主義があって右翼の定義はぼやける。多くの国からの移民が建国したという歴史があり、移民した人々がそれぞれの母国の伝統などを引き継いだ保守意識を維持する一方、建国の理念以外に共有する価値観が乏しい。かつては反社会主義などを掲げる団体や人々がイデオロギー的要素により右翼とみなされたが、共産諸国の崩壊とともにイデオロギーによって立つ右翼の存在はかすんだ。

 保守主義と右翼の境界線はぼやけている。各国それぞれの伝統的な価値観を引き継ぐのが保守主義で、伝統的な価値観を守るために時には攻撃的にもなるのが世界における右翼とされる団体や人々の共通項と見える。攻撃的な振る舞いは排他性の現れと見え、右翼に対する共感や評価を妨げ、排他性が他からの右翼に対する排他性を招く。

 ガザへの容赦ない侵攻を続けているイスラエルのネタニヤフ氏が首相として2022年12月に組閣した第6次政権は、極右とされる宗教政党との連立だ。直前の総選挙で極右政党が躍進して議席を増やし、イスラエル建国来、最も宗教色が濃い右派政権とされる。イスラエルにおいて右翼や極右はユダヤ教との距離によって判断される。

 連立に加わった極右政党「宗教シオニズム」は、ヨルダン川西岸地区を神からユダヤ人が授かった「約束の土地」として入植地の建設を宗教的な義務とし、ヨルダン川西岸の併合や入植活動の推進を支持し、国内におけるユダヤ人の権利拡大やイスラエル国家に忠誠を誓わないアラブ人の追放なども主張するユダヤ人ファーストの政党だ。パレスチナ人に対する排他性と攻撃性を隠さない。

 他にもユダヤ教の宗教政党は連立に参加しているが、「宗教シオニズム」が最も強硬で極右とされる。伝統的な価値観ではなくユダヤ教という宗教に忠実であろうとするのは、イスラエルが世界各国からの人々が集まって建国されたという歴史が影響する。伝統的な価値観が乏しいイスラエルにおいて右翼や極右はユダヤ教の信仰を拠り所とするしかなく、パレスチナの地に人工的に建国され、パレスチナ人やアラブ人の敵意に囲まれた状況で、ユダヤ教に頼って右翼や極右は排他性を強める。

 総選挙で極右を含む宗教政党が議席を伸ばしたのは、イスラエル社会で右傾化が進んでいる反映だ。イスラエルの軍や治安部隊とパレスチナ人の衝突などが相次いでいたこともあり、和平推進を訴えてきた左派政党が議席を失うなど、イスラエル社会はパレスチナ人との平和共存に期待しなくなっていた。そこに今回の紛争が起きた。極右の宗教政党はパレスチナ人をイスラエルから排除する機会ととらえ、連立政権にも社会にも平和共存を見限った雰囲気があるとすれば、大量殺戮は簡単には止まらないだろう。

2023年12月20日水曜日

鈍感だったマスコミ

 1枚2万円のパーティー券を企業や団体、個人に大量に買わせて、主催した政党の派閥や政治家が多額の政治資金を得るという仕組みは、企業や団体などからの政治献金規制を迂回するルートとして定着していた。この仕組みはパーティー券収入を主催者が収支報告書に正確に記載し、パーティー券収入の一部を環流された議員も収支報告書に正確に記載することで透明性が保たれる。

 だが、各派閥のパーティー券収入から議員への還流が闇に隠され、裏金として使われていたことが明らかになった。大半の議員側がキックバックを受けていたという安倍派の収支報告書の不記載・虚偽記載罪の時効にかからない5年間(2018~22年)の総額は5億円規模とされ、岸田派でも収支報告書に記載していなかったパーティー券収入の金額は5年間で数千万円になると報じられた。

 派閥は所属議員に当選回数や役職などによってパーティー券販売でノルマを課し、ノルマを上回ってパーティー券をさばいた議員に超過分をキックバックしていたが、派閥も議員側もキックバック分は収支報告書に記載せず、裏金となっていた。時効にかからない5年間の金額だけで億円単位になるのだから、パーティー券販売による過去の裏金の総額は百億円を超えるかもしれない。

 派閥から所属議員にパーティー券のノルマを超過した金額が政策活動費の名目で流れたといわれる(政策活動費は政党から政治家個人への寄付という政治献金で、使途を公開する義務がない金だ)。報道によると、政策活動費は2021年までの20年間で主要政党で約456億円に上り、うち自民が約379億円だったという。さらに、ノルマ超過分は派閥に収めず、そのまま裏金にしていた議員もいるというからパーティー券をめぐる闇は深い。

 裏金づくりの背景を「政治は金がかかる」と説明する声も漏れ伝わるが、正確には「選挙は金がかかる」だろう。国会議員には文書通信交通滞在費(1人当たり月額100万円。現在は調査研究広報滞在費に名称変更)、会派に対して立法事務費(1人当たり月額65万円)が支給されていて、使途は公開されずに自由に使うことができる。議員の政治活動をサポートするには十分すぎる金額だろう。議員の地元の後援会活動を維持することなどに金がかかっているのだ。

 派閥や政治家の資金集めパーティーは盛大に行われ、マスメディアの政治部記者らは取材を兼ねて参会していただろうに、パーティー券収入を使った裏金づくりに気づかなかったか、気づいていても問題意識を持たずに報じてこなかった。時効にかからない5年間の金額だけで億円単位になる不正にマスメディアは鈍感だった。これは、日本のマスメディアの政治権力を監視する能力はかなり貧弱だということを示している。

 日々の出来事を追うことはマスメディアの主要業務だが、速報性に有利なSNSなどの普及もあって、マスメディア各社の独自性を発揮できるのは調査報道しかない。政治家や派閥などの収支報告書の細かな検証を行う取り組みが各社でシステム化されていたなら、もっと早く裏金づくりが暴かれていたかもしれない。収支報告書がデジタルデータ化されればAIを活用して精査することは簡単になり、複数の収支報告書や決算書などを突き合わせることもAIがやってくれるようになる。

2023年12月16日土曜日

ユートピア

 モンテスキューの『ペルシア人の手紙』の第10番目の書簡から第14番目に至る部分(古代人がエチオピア沿岸に住んでいると信じていたトログロディート人の話)について渡辺一夫氏は次のように述べる(『風刺文学とユートピア』=加藤周一氏との対談。1966年。一部修正あり)。

「トログロディート人は法も社会もない生活をして、利己主義だけで生きている間は悲惨事が続き、滅亡しかけた。しかし、次に素朴な共和制となり、正しい個人主義に目覚めて、やがて社会連帯とか相互扶助などの考えを持つようになり、社会理念と法とによって生き、幸福で繁栄した国をつくるようになった。ここいらにモンテスキューのユートピア思想のようなものを感じる」

「その次の段階になると、人々は自分たちの幸福繁栄を当たり前なものと感ずるようになったばかりか、自分たちが自ら考えて、自分たちの生活を正しく美しく善くする努力を払うのが面倒になってくる。つまり、法を生かして使ったり、生きた法を考え出したりするよりも、誰か王様のような人から命令されて動くほうがはるかに楽だと思うようになった」

「そこで人々は、この国の平安を刻苦して作り上げてきた人々の生き残りの老人に向かって、王様になって自分たちに命令してくれ、そのほうがどれだけ楽か判らないと頼んだ。老人はびっくりするとともに、たいへん悲しみ、自分が死んで皆の先祖に再び会った時に、皆がそんな情けない心根になったことを告げたら、どんなに憤慨もし、悲嘆にくれもするだろうと、泣きながら話した」

 渡辺氏は「人間が自分たちの幸福のために苦心して作ったものを使いこなせなくなり、その奴隷になって、そこに幸福を求めようと望むようになったら、変なことになると教えてくれる。ユートピアが人間性の必然的な動向から破局へ進んでゆくことをモンテスキューは描こうとしていた」とする。

 トログロディート人の話からは、民主主義や法の支配や個人の権利などが制度として存在しても、人々が使いこなすことができなくなると空洞化し、命令されることを人々が望むようになったら機能しなくなることを連想させる。皆が豊かになることが「自分たちが自ら考えて、自分たちの生活を正しく美しく善くする努力を払うのが面倒になる」ことにつながるとすれば、豊かさの社会的な弊害だろう。

 ユートピアは今では「理想郷」「空想的社会」あるいは「どこにも存在しない場所」などの意味で使われる。だが、個人にとってのユートピアは実在することもあろう。大金持ちにとっては現実社会はユートピアに近いだろうし、支配されることに満足する奴隷のユートピア(=奴隷の幸福)もあるかもしれない。王様を得たトログロディート人は奴隷のユートピアに満足するのかな。

2023年12月13日水曜日

銀河系外から来た宇宙線

 宇宙空間を光に近い速度で飛び交っている高エネルギーの宇宙線は、原子核や素粒子などの極めて小さな粒子。地球外から大気に飛び込んでくる高エネルギーの粒子(放射線)が一次宇宙線(陽子が約90%、残りの大半はヘリウムの原子核)。一次宇宙線が大気中の原子核に衝突して生じるのが二次宇宙線(中間子・電子・γ線などの放射線)で、地上に到達する宇宙線は二次宇宙線。

 高エネルギーの宇宙線は太陽系外に起源を持つとされ、「飛来する宇宙線は10の8乗eVから10の20乗eV(可視光の1億倍から1垓倍のエネルギー)という幅広いエネルギーでやってくる」「最も高いエネルギーで到来する一次宇宙線の粒子1個のエネルギーは、電球1個が1秒間に放つエネルギーにも値し、放射性原子核起源の放射線の100兆倍、加速器実験で人工的に作り出せる最高エネルギー粒子の1000万倍のエネルギーにもなる。このようなエネルギーにまで粒子を加速するメカニズムが宇宙のどこに存在するのかは解明されていない」(宇宙線研究所HP)。

 太陽系外から来る宇宙線は、超新星爆発による衝撃波と銀河系内の磁場によって加速を続ける宇宙線と、銀河系内の磁場では閉じ込めることができない10の15乗eV以上の高エネルギーの宇宙線があり、後者は銀河系外から飛来したと考えられている。「比較的エネルギーの低い宇宙線は多数到来するが、太陽系内や銀河系内の強力な磁場によって進路を曲げられて発生場所の情報を失う。最高エネルギーの宇宙線は強力な磁場にも進路をほとんど曲げられることなく到来するが、大変稀少」(同)。

 太陽も宇宙線の発生源だ。太陽フレア(太陽表面で起きる大規模な爆発)などがあると大量の宇宙線と電磁波が地球にもやってきて、電磁波が地表の電子機器などに大きな影響を与えたり、人工衛星を破壊したり、長距離ケーブルの電線で火災を発生させたりなどする。太陽の周辺では水素原子はプラズマ状態になっていて、太陽フレアなどで吹き飛ばされた粒子がエネルギーを得て宇宙線となる。

 eVとは電子ボルト。素粒子や原子核、原子、分子などの運動エネルギーを表す単位で、1eVは1個の電子が真空中で1ボルトの電位差で加速されたときに得る運動エネルギーの大きさ。蛍光灯が光るときのエネルギーは2eV程度。10の20乗eVという膨大な運動エネルギーをもつ宇宙線は極めて少なく、その検出が大きなニュースとなった。

 大阪公立大学などの国際研究グループは、観測史上2番目に高いエネルギー(2.44×10の20乗eV = 244エクサeV)を持つ宇宙線の検出に成功した。この粒子は南西の方角から飛来したといいい、1991年に米国で検出された粒子(320エクサeV)に次ぐ高いエネルギーを持っていた。244エクサeVは計算上、1グラムあれば地球が破壊されるほどと報じられた。

 「巨視的なエネルギーをもつ宇宙線の発生源は、宇宙最大の爆発現象であるガンマ線バーストや、活動銀河核中心の超巨大ブラックホールやそこから吹き出すジェット、宇宙最強の磁場を持つ強磁場中性子星といった宇宙における極限物理現象を起源に持つと予想されている」(同)が、今回検出された宇宙線が到来した方向には候補となる有力な天体が見つからず、未知の天体現象や、暗黒物質(ダークマター)の崩壊など標準理論を超えた新物理起源の可能性も示唆されると解説された。

2023年12月9日土曜日

首都圏から移住者

 コロナ禍で企業はリモートワークの拡大を余儀なくされ、社員皆が出社しなくても業務が回ると実証されたことで、そのままリモートワークが拡大定着するかと見られた。だが、対面での情報交換や意思疎通が大事だとの再評価も出てきて、新型コロナウイルス感染症が5類移行し、コロナ禍前の日常に復帰するとともにリモートワークの拡大に勢いが見られなくなったという。

 過密な首都圏への人口流入がコロナ禍で頭打ちとなり流出傾向が見られるとの報道もあったが、首都圏からの人口流出の動きは定着せず、コロナ禍前の日常に復帰するとともに首都圏への人口流入が以前のように起きているという。就職や就学などの利便性や歓楽の場に富む首都圏の人口誘因力は強力だ。

 地方の都市や郡部では人口流出が続いているし、高齢化も進む。それは購買力の低下をもたらし、地方の鉄道やバスは赤字続きとなり、地方の商業施設は赤字続きで閉店が相次ぎ、農業や漁業や中小企業などでは後継者難から事業継承が見通せず先細りするばかりとなる。地方では人口減少が購買力低下となって現れ、停滞感を後押しし、若者らの流出を加速させている。

 こうした中で地方の都市や郡部の自治体が最優先で取り組むべき課題は、人口を増やすことだ。移住者を増やすための試みは方々で行われていて、それなりに効果を上げている自治体もあるが、首都圏からの地方への人口分散が進んでいるなどとは言えない。政府にも本気で首都圏からの人口分散を進める気がないと見られ、このままでは地方の都市や郡部の過疎化は止まらず、疲弊は進む。

 地方の都市や郡部が人口を増やすためには、人口の多い場所から移住者を引っ張ってくることだ。具体的には過密な首都圏から移住者を集めることだ。そのため、首都圏とは異なる自然環境や子育て環境などの魅力をアピールするとともに、就業・就学・医療などの環境を整え、都市生活者の生活レベルの低下が少ないことを保証することが必要になる。

 従来の地方の都市や郡部の移住者獲得策は、地方の魅力を訴求することに重点が置かれ、移住者の具体像が曖昧だった。田舎暮らしへの憧れと移住が混同されると、自然豊かな環境での暮らしに憧れる人=移住者との限定されたイメージにとらわれ、例えば、首都圏とのつながりを維持したまま移住したいとか、移住しても都市生活の利便性を手放したくないーなどの需要に真摯に向き合うことが少なくなったりする。

 リモートワークの定着は、地方の都市や郡部への移住に追い風となる。首都圏の会社に勤めながら、地方の都市や郡部で生活するという移住者を支えるのは強固なインターネット網だ。地方への移住希望者が首都圏にどれだけ存在するかを調査し、その人たちの具体的な要望に応えて地方の住環境を整備することが、地方の都市や郡部の自治体が行うべき首都圏からの移住者獲得策だ。

2023年12月5日火曜日

議会の自浄能力

 米国の下院は12月1日、共和党のジョージ・サントス議員を除名する決議案を下院議員311人の賛成で可決した(民主党議員の大半に加え共和党議員も105人が賛成。定数435人の3分の2以上による賛成が必要だった)。除名された下院議員は米国史上6人目で約20年ぶりだと報じられた。

 サントス氏は多くの経歴詐称の疑惑に加え、選挙資金を私的に流用していたなど金銭をめぐる疑惑も多く、20以上の罪状で起訴されていたが、辞任を拒否していた。下院倫理委員会の報告書によると、サントス氏は選挙資金を高級ブランド品の購入や美容のためのボトックス注射の費用、クレジットカードの支払いや借金の返済など私的に流用したほか、コロナ禍の失業給付金を不正受給していた。テレビ広告などに使うとサントス氏は選挙資金を集めていた。

 サントス氏は35歳。ブラジル出身の母親の祖父母はウクライナ系ユダヤ人でホロコーストを逃れてブラジルに移ったとし、自身はニューヨークで有名私立大学を卒業後、ゴールドマン・サックスなどで働いたとの経歴を掲げていたが、これらが全てウソであるとマスメディアに暴かれた。母親にユダヤ系の血筋はなく、大学に在籍記録がなく、職歴は作り話だった。虚偽を指摘されてサントス氏は「履歴書に装飾を施したに過ぎない」などと述べたという。

 サントス氏は虚名癖(実際以上の評判や名声を得ようとする習性)があったのか、有名大学を優秀な成績で終え、大手金融会社で仕事をし、ユダヤの血筋で動物保護NGOを設立して犬や猫の保護に尽力し、大学の頃はリーグで優勝したバレーボールチームでスターだったと誇る一方、幼少期は貧しい暮らしで、母親は世界貿易センターで働いていたが9.11の惨禍を生き延びたなど、人々の興味をひく事柄を並べ、目立つとともに同情を集めた。だが、それらのほとんどがウソだった。

 遠く離れて見ている分には、異国のサントス氏の転落劇は笑える。こんな人物が議員に当選して国政に関与する国における民主主義が形骸化していることは明らかで、主権者はもっとしっかりしろと言いたくなる。とはいえ、民主主義国における国政選挙が人気投票に陥ることは珍しくなく、程度の差はあれ、候補者の多くが「履歴書に装飾を施し」ていることは暗黙の了解事項だろうから、サントス氏と同類の人物は探せば見つかりそうだ。

 もしサントス氏と同様の経歴詐称と選挙資金流用を米国議会の議員の大半が行っていたとすれば、サントス氏の除名決議案の賛成票ははるかに少なかっただろう。サントス氏の行為が除名に値するとなれば、他の多くの議員も除名に値することになるからだ。サントス氏の除名決議案に賛成票を投じた議員は、サントス氏と同様の行為を自分はしていないと主張できるからサントス氏の除名決議に賛成した。

 日本では、自民党の多くの派閥でパーティー券を利用した裏金づくりが行われ、多くの議員も裏金づくりを続けていたと報じられている。政治資金規正法を無視し、多くの自民党議員が裏金づくりを公然と行っていたのだから、政党に自浄作用は働かず、国会で自民党議員の誰かを処分すれば次々と連鎖して処分されるのだから、自民党は誰一人として処分はさせず、守るしかない。

 自民党の全議員がサントス氏なのかもしれないから、国会で自民党の誰か1議員の除名決議などできない。議会で多数を占める政権与党で組織的に行われていた裏金づくりを調査する倫理委員会は日本には不在で、第三者委員会を設置して事実関係を解明することは自民党が拒否するだろう。サントス氏は1人の悪行だったから議会はサントス氏を除名して「正義」を保つことができたが、政権与党の大半の議員が裏金づくりに関与していたとあって、日本では議会の自浄能力は発揮されそうにない。

2023年12月2日土曜日

意思疎通に障害

 外国語のカタカナ表記の増殖が止まらないのは、第一に米国などからの新しい概念の流入が増殖している、第二に、そうした新しい概念などを適切な日本語に翻訳する人が減ったーためだろうが、概念規定が曖昧なままで言葉を使う人が多いことも影響している。曖昧なままで済ますのは、意思疎通が雑であることを示す。

 外国語のカタカナ表記の氾濫の弊害は①言葉の意味が曖昧になり、②言葉の理解の共有がおざなりになるーことだ。言葉の理解の共有ができていない状況は、各自が一方的な主張を述べている状況と似る。つまりコミュニケーション(意思疎通)が上辺だけで、成り立っていない。これは、外国語のカタカナ表記を多用する人は一方的な主張を述べているだけだということを示す。

 外国語のカタカナ表記の氾濫を厳しく批判していた加藤周一氏の言葉を引用する(「<漢字文化圏>の歴史と未来=一海知義氏との対談。2000年。加藤周一対話集④所収。一部修正あり)。

「日本に入っている漢語は、大部分は古典中国語と同じ意味です。母国語は外国語と違うから、外国語で意味がわかったなんて言っているよりも、日本語そのものですから、わかり方が全然違う」

「明治維新のころ、中江兆民はフランスから帰ってきて仏学塾をつくったのですが、彼は塾生に漢学を必須科目にした。中江兆民の考え方は、日本人は考えるときに日本語で考える、日本語のかなりの部分は漢語なので、その自国語の能力をきちんとしなければ、文化的な自己の確立が揺らぐ」

「フランス語を訳そうとすると、どうしても日本語能力が問われる。明治の初期の日本は欧米文献の翻訳時代です。それには二つの能力、外国語を理解する能力と、それを自国語で表現する能力が必要だということを彼は見抜いた」

 漢語の省略性について「たとえば電算機と書けば、電は電気に関係があり、算は計算することに関係があり、機は機械だからと、はじめて見ても、およその見当はわかってしまう。コンピュータでは英語を知らない人にはわからない。カタカナにすると、類推のしようがなく、個別的に一々覚えなければならない」 

 強権国家では人々は、保身や身の安全のために権力に逆らうことを控える。そうした社会では人々は、権力に従ったり迎合するために権力の指示を受け入れるだけなので、権力が発する言葉を無批判に受け入れるだけだ。日本における外国語のカタカナ表記の氾濫はいささか事情を異にするが、人々の相互理解を軽んじていることでは似ている。