2020年10月31日土曜日

事実と解釈と分析

 メディア・リテラシーとは、新聞やテレビ、インターネットなどのマスメディアに乗る情報を理解し、事実関係の真偽、見解の妥当性などをチェックしつつ必要な情報を引き出す能力。マスメディアが流す情報を受け入れるだけでは、多くの知識を持っていたとしてもメディア・リテラシーが高いとはいえない。

 マスメディアが大量の情報を流す現在、受け身でいるのはメディア・リテラシーが欠如している状態だ。大量の情報の中から自分が求める情報を選び出し、チェックするには、必要な情報を自ら探すという能動的態度を意識することが前提となる。

 能動的態度とは、自分の視点で検証・批判することであり、自分で価値判断することだ。「面倒くさい」「いちいち、そんなことを、やってられるか」との反論もあろうが、それは大量の情報に対して受け身でいることを自己正当化しているだけだ。もちろん、情報に流されていることを許容するのは個人の自由だが。

 メディア・リテラシーを高めるには、マスメディアに流れる情報をまず分類すること。情報は大別して、①事実を伝える、②事実を解釈する、③事実を分析する、に分けられる。①に対しては事実関係の真偽を主に検証し、②③に対しては事実関係の真偽とともに見解の妥当性を検証する。

 新聞やテレビなどのニュースは事実を伝えているだけとされるが、表現や取り上げ方によって受け手を誘導することが可能だ。出来事のある面を強調したり、逆にある面を伝えなかったりすることで、受け手の印象を操作することは簡単だ。事実の切り取り方次第で見せ方を変えることができる。

 解釈と分析は異なるものだ。事実の解釈は主観に偏って行うこともできるが、事実の分析には客観性が要求される。解釈と分析の混同はインターネットの言説に多く見られる。解釈には飛躍が含まれているものが珍しくなく、「妙なことを考える人がいる」と受け流せばいいが、分析と解釈を見分けることができなければ受け手は誘導される。

 だが、メディア・リテラシーが高ければ、偏らない事実認識を必ず得ることができる……とは限らない。自己の主張を正当化する情報や言説だけを選んで受容する人は珍しくなく、政治や外交が絡む世界では、そうした自己正当化の情報や言説が溢れている。メディア・リテラシーが高いことと、正確な世界観を得ることとは別問題だ。

2020年10月28日水曜日

感染者と反逆者

 中国は支配する新疆ウイグル自治区やチベット自治区で、出生率を抑制するため人々に不妊手術などを強いたり、移住で増えた漢民族との結婚を奨励して「中華民族」化を推進する施策を続けているとの指摘がある(独裁する中国共産党は全面否定)。この指摘が事実なら、大規模な民族浄化(エスニック・クレンジング)を国家が行っていることになる。

 急速な中国の経済成長の恩恵を享受している欧米は人権問題などにおける対中批判を控えていたが、中国が欧米による国際規範を揺り動かし始めたためか対中批判を始めた。100万人以上のウイグル人が政治的再教育収容所に拘束されているという新疆ウイグル自治区での調査を受け入れるように国連人権理事会で中国に要求したりするが、その国連人権理事会では中国が理事国に引き続き選ばれた。経済関係を優先しながらの欧米の対中批判の威力は限られていそうだ。

 北朝鮮では絶対的な独裁体制を敷く金正恩党委員長が恐怖政治を行っていると伝えられる。強制収容所には50万人以上の政治犯が収容されていて、餓死者が続出する環境だという。公開処刑は珍しくなく、幹部も対象となり、2013年にはナンバー2だった張成沢も反逆罪で処刑された。デノミ失敗で混乱した2010年には、反対する住民や警官と敵対した人々を公開で銃殺刑にし、労働党の経済政策責任者も処刑された。

 脱北者の証言をまとめた韓国NGOによると、北朝鮮では政治犯や反逆罪に問われた人々のほか、韓国のドラマを見た▽脱北しようとした▽家畜などを盗んだ▽聖書を所持した▽売春▽公金横領▽麻薬の所持や取引▽食糧の窃盗▽殺人、強盗、密輸などを罪状として死刑になる人々がいて公開処刑もされる。公開処刑には人々が暮らす日常空間も使われ、学校や広場、運動場などで行われ、千人以上が集まることもあるという(強制かどうかは不明)。

 中国でも北朝鮮では、独裁する権力に大半の人々は従順に従う。積極的に同調する人や政治的意識がなくて従う人もいれば、我慢して従う人もいるだろうが、批判は許されない。私的な空間での権力批判も密告されれば厳しく処罰され、軽犯罪を犯した人でも社会秩序を乱したとされれば処罰される。法より独裁権力が優先する体制なら、「犯罪者」を刑務所に収容するより処刑などで社会から排除することを選ぶかもしれない。

 仮定の話だが、一党独裁や個人独裁で、人々の異論を一切許さず、過酷な抑圧を続けている国で、独裁権力が疫病の流行を「我が国は感染を押さえ込んだ。大規模な感染再発は起こっていない」とか「我が国には感染者は存在しない」などと宣言したとすると、その宣言に人々は反することはできない。しかし、独裁権力が命令したとて疫病の流行を制御することは難しいだろう。

 そういう宣言の後に疫病に感染した人は、独裁権力の宣言に反したとみなすこともできる。最悪ならば、感染した人は独裁権力の意向に逆らった反逆者とされ、拘束されて強制収容所に送られたり処刑される。感染者ではなく反逆者であるとされて社会から排除され、感染者にはカウントされない。かくて独裁国家では感染拡大の抑制が政治的に可能になり、「我が国では感染拡大は起こっていない」との状態が保たれる。

2020年10月24日土曜日

体制側にも同志がいる

 中国の長編小説「水滸伝」の主役は首脳クラスの天罡星36人と、部門長クラスの地煞星72人の計108人の豪傑だ。彼らは、体制からはみ出したり弾き出されたりした人や、体制など見向きもせず自由に生きる人々だ。1人また1人と出会いを重ね、やがて強力な集団となり、時に中央政府と対峙し、戦闘を繰り返すようになる。

 体制の外で生きるということは、略奪など体制側からは犯罪とみなされる行為も辞さないことがある。だから、彼らの集団は盗賊団だとする見方がある一方、自由に生きようとする人々の体制に対する抵抗を描いた物語だの見方がある。さらに、体制からこぼれ落ちた人々による革命運動の一つを描いた物語だとの解釈もある。

 水滸伝の世界を「緑林の徒ー盗賊・ゴロツキ・侠客の革命であり、流民の革命だった」としたのは竹中労さん(『窮民革命の序説 水滸伝』。以下同)。時代は「塩田の窮囚のみならず、あらゆる階層にむしろ賊徒の自由を潔しとする思い、法と秩序から剥落を遂げて遊侠無頼の別天地に憧れる、流民への願望がびまんしていた。インテリ階級にも、官界や軍隊にさえもである」とする。

 36人プラス72人の出身経歴は様々で「あらゆる職種と、階層からのドロップ・アウターが網羅されている」のだが、官界や軍隊という体制側にいた人々も多い。例えば、宋江は小役人、魯智深は下級将校、戴宗は刑務所の典獄で李逵はその部下、関勝は地方役人、林冲は禁軍の棒術の教頭、楊志は禁軍の武官であり、花栄や秦明、呼延灼、黄信ら軍隊に属していた者は珍しくない。

 体制側に属していて敵対した人物でも「後に梁山泊に会盟して将星となる」のであり、「彼らもまた国家権力の窮囚であることを自覚して、その埒外に遁走した、魔界への転生を遂げたのである」。水滸伝は、体制側にも同志がいることを示し、闘いの中で連帯の戦線を拡充していく物語である。

 現代の硬直した考えの反体制派(リベラル)なら、体制側に与した経歴がある人との連帯などは拒否するかもしれない。それは自己の考えや主張にとらわれすぎて思考が硬直するとともに、人を見る目が曇っている結果であろう。体制からこぼれ落ちる人間はいつの時代でも数多く、その中にも真の同志がいる可能性はある。

 敵(体制側)の中にも同志を求めるのが水滸伝の世界だ。現実の中国や北朝鮮などでは、打倒された体制側にいた人間は排除され、汚れた血統などともされるとか。そんな硬直した見方が支配すると社会が歪むのだと、現実の中国や北朝鮮は示している。

2020年10月21日水曜日

自由と世論調査

 日本と韓国で民間団体が行った共同世論調査で、人々が互いに厳しく相手国を見ていることがまた示された。現在の日韓関係について、「非常に悪い」「どちらかといえば悪い」は日本54.7%で昨年比8.8ポイント減だったが、韓国88.4%で22.3ポイント増加した。現在の韓国政府に日韓関係の緊張を緩和しようとの姿勢が見られないので、関係が悪いと両国の人々が見るのは当然か。

 だから、相手国の印象が「良くない」「どちらかといえば良くない」は日本46.3%で3.6ポイント減だが、韓国71.6%で21.7ポイント増と、韓国で日本を一層厳しく見るようになっている。「良くない」理由は韓国では「韓国を侵略した歴史について正しく反省していない」61.3%、「独島をめぐる領土対立」45%、「日本の政治指導者の言動に好感を持っていない」24%。

 植民地支配は悪であり、韓国は侵略された被害者であるというのが韓国側の「公式」な歴史認識のようだ。そうした歴史認識に基づく教育を受け、そうした歴史認識による韓国内の報道にさらされている人々は、植民地支配を行った日本に対して基本的に否定的な感情を持つだろう。韓国で世論調査を行うと、日本に対する印象が「良くない」が多数になるのは当然か。

 日本側での「良くない」理由は、「歴史問題などで日本を批判し続ける」55.7%、「竹島をめぐる領土対立」29.4%、「慰安婦合意をめぐる対立」23.3%。韓国側の「公式」な歴史認識が人々の日本に対する否定的感情を刺激することで成り立つ構造だとすると、韓国の人々は日本に対して批判的であり続ける。だから「日本を批判し続ける」ことに対する日本側の反発も続く。

 互いに相手国に批判的なのだから、日本と韓国で世論調査を行うと互いに厳しく相手国を見ている結果になる。だから、厳しく見ているとの結果にニュース価値は乏しく、その回答パーセントの上下の動きを時々の外交状況と絡ませて報じるしかない。でも、「良くない」が増えた減ったと大きなニュースに仕立て上げることができるのだからマスコミにとっては便利な世論調査だ。

 世論調査で答える人々が、個人の考えよりも、社会で規範とされる認識に合わせて「正しく」答えるのなら、世論調査の結果には国家の意向が強く反映する。例えば、米中で共同世論調査を行ったとしても、自由な個人の意見の表明が制約され、反逆罪も控えている中国では、答える人々の多くは社会的に「正しい」とされる回答を選ぶだろう。つまり、結果は米国批判のオンパレードになる。

 個人の意見表明が自由であるから世論調査は成り立つ。植民地支配は悪=日本は悪との「公式」な歴史認識が韓国で定着しているならば、「公式」な歴史認識を批判する意見表明も自由で許容されていることが、この種の世論調査を実施する前提となる。世論調査が結果として韓国の「公式」な歴史認識の主張を伝えるだけなら、韓国政府の対日外交を助けているだけだ。

2020年10月17日土曜日

自由を求める自由

  強大な中央政府が人々を強権で抑圧し、思想や行動を統制、日常生活で中央政府が制定した規範からの逸脱を許さず、言論や表現、行動などの自由を人々から奪う国は現在も世界各地に存在するし、過去にも日本を含む多くの国が強権で人々を統制していた。そうした国で大半の人々は従順に従うが、少数の人々は自由を求めて行動する。

 自由を求めての行動が徹底的に弾圧されると、人々の自由は奪われたと見える。しかし、言論の自由や表現の自由、行動の自由などは弾圧されたとしても、自由な言論、自由な表現、自由な行動は人々の側に残っているのだ。もちろん、そうした国における自由な言論、自由な表現、自由な行動の行使は官憲に妨害され、逮捕されたり投獄されたりするだろう。逮捕や投獄などを恐れなければ、自由な言論、自由な表現、自由な行動は可能である。

 自由な言論、自由な表現、自由な行動の行使は、言論の自由や表現の自由、行動の自由を求める行為だ。強大な国家権力といえども人々から、自由な言論、自由な表現、自由な行動を奪うことはできない。人々が自由な言論、自由な表現、自由な行動を行使したときには、徹底的に弾圧することしか国家権力にはできない。

 竹中労さんは著書『竹中労の右翼との対話』中の白井為雄氏との対論で、「いちばん大切な自由は、『自由になろうとする』自由だ」と述べ、「格子があるから破ろうとする、檻があるから外へ出ようとする、つまりそのときの精神がいちばん自由なんで、どんな時代であろうと、どんな立場であろうと、どのような環境の中でも、いえば首が飛んでも、『自由になろうとする』自由はある」(引用は同著。以下同)。

 戦前や戦中は「きびしい時代だった、不自由だったといいますけれども、『自由になろうとする』自由を、戦前のほうがずっと日本人は持っていたんじゃないでしょうか」と、厳しい時代だからこそ、自由を獲得しようと人々は真剣に考え、自由になろうという自由を行使する人々がいたと指摘する。無事には済まないだろうと予想しながら、それでも自由を求める自由を行使した人々。そうした人々の精神は、国家権力に束縛されず、自由であった。

 人々が立ち上がって専制権力を打倒し、政治体制を変えて獲得した様々な権利と自由と、他国に占領されて政治体制を変えられ、人々に「与えられた」権利と自由。前者は「自由になろうとする」自由を人々が行使して獲得した権利や自由であり、後者で人々は「自由になろうとする」自由を行使しなかった。立ち上がらなくても「与えられた」権利や自由に人々が満足しているのなら、さらに「自由になろうとする」自由を行使するはずもない。

 人々から「自由になろうとする」自由を奪うことは、どんな強権国家であろうと不可能だ。だから専制国家にとって、人々は常に潜在的な反抗分子であり、人々が「自由になろうとする」自由をいつ行使するかと恐れ、警戒する。社会を変え、政治制度を変え、国家を変え、世界を変える力は人々にある。

2020年10月14日水曜日

嘘と大嘘

 マーク・トウェインが紹介した「世の中には3種類の嘘がある。それは嘘、大嘘、そして統計だ」との言葉は有名だ。統計も全てが客観的で信頼できるとは限らず、政府など発表する側に都合がいいように特定の方向に誘導されたり、不都合な状況を示すデータはぼやかされたり隠されたりすることを指摘した。大嘘とはdamned liesで、大ボラというより、真っ赤な嘘とか実にひどい嘘、全くけしからん嘘という感じか。

 嘘と大嘘の境界は曖昧だ。たわいがない嘘や笑って済ませられる嘘、気分を少し害する程度で済ませられる嘘などは大嘘ではないだろうが、実害が生じる嘘や人間関係を損ねる嘘、社会を混乱させる嘘、人々の怒りを巻き起こす嘘などは大嘘だろう。とはいえ、どこからが嘘で、どこからが大嘘か、その判断は人により分かれ、境界は揺れ動く。

 嘘と真実の境界も曖昧だ。地球を中心にして太陽も月も回っていると言うのは、現代では嘘になるが、それが真実だと人々が信じていた時代があった。観測の積み重ねにより客観的な事実が解明され、真実とされていたものが嘘になる。だが、科学が嘘だと暴いても、それを信じない人々は存在する。そうした人々にとっては、信じたいものが真実であり、信じたくないものは嘘となる。

 自説の主張と嘘の境界も曖昧だ。例えば、「新型コロナウイルスは、ただの風邪だ」との主張があり、世界で100万人を超す多数の死者が出ているのだから、それは誤った主張だとされる。だが、世界で感染者は3700万人を超えるが大半の感染者は軽症ですむとされ、風邪と同様だと見る人がいても、見解の相違と主張されれば嘘と断じることは簡単ではなかろう。

 自説が事実に反すると自覚していない人は、嘘だと指摘されると戸惑うか反発する。事実を尊重する思考を誰もが常に行っているわけではないだろうし、自説に好都合な事実は尊重し、自説に不都合な事実なら無視することは政治的な議論などでは珍しいことではない。嘘も真実も主観で判断しがちな人なら、自説に反する事実が嘘に見え、その事実なるものは嘘だと言いたてることもあろう。

 嘘は、当人が意識してつく嘘と当人が意識せずにつく嘘に分けることもできる。当人が嘘と意識しているなら、事実など示して嘘を暴くことができよう。だが、意識せずに話される嘘は当人の勘違いや知識不足、思い込みなどによるものだろうが、事実を示しても当人は嘘をついているとの自覚が皆無であるなら、嘘だと理解させるためには説得しなければならなくなる。

 マーク・トウェインが生きていた時代に比べ、世界中で個人の情報発信が日常化し、各国政府は情報戦に励み、流通する情報量が格段に増加した。おそらく嘘も大嘘も大量に出回っている。いちいち真贋を確かめることもなく嘘も大嘘もそのまま世界で人々に消費されている可能性が高い。「世の中には3種類の嘘がある。それは嘘、大嘘、そして情報だ」が現代か。

2020年10月10日土曜日

宗教という仮説

 仮説は、真理に到達するための1段階だという見方がある。一方、世界を合理的に説明するための推論が仮説であるとの考えがある。真理を確かめることが困難な状況は珍しくないが、ある仮説によって合理的な説明が可能であれば、その仮説を共有し、理論を発展させる。

 例えば、この宇宙が微小な点から始まり、ビッグバン以来、膨張を続けているという仮説は、実際の観測結果を合理的に説明するが、過去の宇宙の歴史を人は事実(真理)として知ったわけではない。科学は多くの、このような仮説で成り立っている。

 仮説が実際の観測結果を合理的に説明できなければ、新たな仮説が構築される。科学において仮説は客観的に検証されるものだが、仮説は科学者の占有物ではなく、一般の人々も頻繁に活用している。ただし、こちらの仮説は主観(思い込み)などで構築されたものが大半で、客観的な検証には耐えることができない。

 客観的な検証に耐えられない仮説でも、その仮説を人々が共有することによって大きな影響力を持つことがある。その代表が、宗教という仮説だ。神などの存在や啓示、死後の世界の存在、神などの裁きや救済などが真理として示されるが、それらが事実であるとの観測結果は皆無だ。

 宗教という仮説は、神などを信じる人々の主観によって構築され、体系化されてきた。客観的な検証を求めることは不信心の現れとされたであろうし、不合理ゆえに我信ずと理性による検証を否定し、神などの超越性を認めることで宗教という仮説は維持されてきた。神の超越性も仮説であるから、宗教という仮説は様々な仮説が組み合わされて構築されている。

 ある友人は宗教に関心を持って様々な宗教書を読んだが信仰には至らなかった。「そういう考えもあると読んでる分には興味深いが、真理だとは感じなかった」と友人、続けて「宗教の創世神話には恐竜が出てこない。数億年も栄えた生物について創世神話で語っていないのは、聖典を編纂した当時の人間の知見の範囲内で創世神話が創作されたことを示す」。

 科学において仮説は絶対ではないが、宗教という仮説は絶対的なものとされ、その絶対性を受け入れる人が信者になる。友人は宗教という仮説を受け入れることはできなかったが、科学の仮説は受け入れる。「論文を読んでも理解できないから科学の仮説も受け入れるしかないのだが、科学の仮説のほうが信用できそうだ」と友人。

2020年10月7日水曜日

嘘をつく

 ある女性(Aとする)が「女性は、いくらでも嘘をつける」と言った場合、その発言が真実であるなら、女性Aは嘘をついている可能性が高い。「女性は、いくらでも嘘をつける」のだから女性Aも嘘をつけるだろうし、女性Aだけは嘘をつかないと判断する根拠がないのだから、女性Aも嘘をついている可能性が高い。

 しかし、女性Aが嘘をついていて、その発言が嘘だったとすると、「女性は、いくらでも嘘をつける」は嘘で、反対の「女性は、嘘をつけない」が本当ということになる。だが、女性Aは「女性は、いくらでも嘘をつける」と発言したのであり、嘘をつけない女性が嘘をついたことになり、矛盾する。女性Aは、嘘をついたのか真実を述べたのか。

 女性Aの発言「女性は、いくらでも嘘をつける」が真実ではないなら、その発言を否定する「女性は、嘘をつけない」が真実になる。しかし、女性Aは真実ではないことを発言した=嘘をついた。女性は嘘つきだという嘘を女性Aは言ったのだが、女性は嘘をつけないことが真実だとすると、嘘をついた女性Aは真実を言わなかったことになる。女性Aは、真実を述べたのか嘘をついたのか。

 これは、クレタ人のパラドックスを想起させる。あるクレタ人が「クレタ人は嘘つきだ」と言ったが、その発言が真なら、そのクレタ人の言ったことは嘘でクレタ人は嘘つきではないことになり、発言「クレタ人は嘘つきだ」は真ではなく、矛盾する。その発言が嘘なら、クレタ人は嘘つきではないことになり、「クレタ人は嘘つきだ」との発言と矛盾する。

 女性Aはおそらく、自分以外の女性は「いくらでも嘘をつける」と言ったのだろう。自分を除いて女性は「いくらでも嘘をつける」との発言は、自分は嘘をつかないとの前提だ。あるクレタ人が「自分以外のクレタ人は嘘つきだ」と言ったのなら、そこに矛盾はない。女性Aは自分は女性の例外だとする。本当に女性Aが女性の例外であるかどうか、そこが検証されることで女性Aの発言が真か偽かの見極めがつくだろう。

 全ての「女性は、いくらでも嘘をつける」を否定するには、嘘をつかない女性が1人存在することが明らかになればいい。そうなれば、「女性は、いくらでも嘘をつける」との発言は誤りであり、女性が皆、嘘をつくのではないとなる。女性Aが嘘をつかない人間だとすれば、女性は皆「いくらでも嘘をつける」は否定される。それは女性Aの発言「女性は、いくらでも嘘をつける」を自ら否定することである。女性Aが嘘を言ったのか言わなかったのか、どっちか。

 自分以外の女性は「いくらでも嘘をつける」と女性Aが見ているのだとすれば、それは女性Aの体験や見聞に基づく判断だろう。持続化給付金の不正申請や銀行口座からの不正引き出しなど詐欺事件が日常的に起きているように「いくらでも嘘をつける」女も男も社会には蠢いているし、小さな嘘をついた経験は誰にもあるだろう。他人に対する批判意識や不信感が強い人には世の中は嘘つきだらけだと見えているのかもしれない。

2020年10月3日土曜日

感染拡大が続く都市

 日本における新型コロナウイルスの感染者は8万4千人台(10月1日現在、以下同)に乗り、中国本土の8万5千人台に近づいている。5月に中国政府は国内では感染拡大を押さえ込んだとし、その後に発表される感染者数は微増にとどまり、中国の公式発表の信憑性は低いとはいえ、中国国内から感染拡大の騒ぎは伝わってこないので、大幅な感染拡大は起きてはいないのだろう。

 日本国内で最も感染者数が多いのは東京都の2万5973人で、日本全体の30.8%。1日あたりの新規感染者が200人を下回ると、それが強調されたニュースになるなど東京都での毎日の感染者増加はもはや当然視されている気配だ。感染拡大に抵抗できないのか、感染の封じ込めを放棄したのか定かではないが、感染者増加と共存する状況になっている。

 東京に続くのは大阪の1万729人、神奈川6976人で、この3地域で日本全体の51.7%と半分を上回り、大都市での感染拡大が顕著だとわかる。さらに続く愛知5396人、福岡5044人、埼玉4700人、千葉3939人、兵庫2747人を加えると77.6%となり、日本全体の4分の3。人々が密になる都市環境と感染拡大に強い関連性があると見えてくる。

 感染拡大が始まった頃、「3蜜(密閉、密集、密接)を避けよう」とのキャンペーンが熱心に行われたが、経済・社会活動が再開した都市で3蜜を避けるには限界がある。人々が各地から集まって生活し、ビルが立ち並んで企業や商業施設が蝟集する都会の環境で、密集や密接を避けるのは簡単ではない。人々が密接になることで得ることができる楽しみの存在も都会の魅力だろうから、3蜜を避ける都会での生活は味気ないものだろう。

 兵庫2747人に続くのは沖縄2521人、北海道2126人、京都1771人で、この11都道府県で日本全体の85.2%を占める。京都の次は石川777人、群馬706人などと残りの県は1千人未満。沖縄、北海道、京都は人気の観光地でもあるだけに、国内移動の自粛が緩み、観光業支援のための観光奨励策も加わり、観光目的で都市から各地に出かける人々が増えるにつれて感染拡大が懸念される。無症状の感染者も観光旅行に出かけるだろう。

 感染者が最も少ないのは岩手の23人で、100人未満の県は鳥取36人、青森36人、秋田53人、山形78人、香川94人だけ。東北地方で感染者が少ない(仙台市がある宮城は413人、首都圏に近い福島は253人)。東北などと感染増加が続く東京都との比較検証を細かく行うと、感染拡大を抑止する条件が見えてくるかもしれない。

 首都圏1都3県合計の感染者数は4万1588人で日本全体の49.2%と半分を占め、関西2府1県は1万5247人で18.1%とほぼ2割。愛知5396人を加えると合計6万2231人で73.7%。人々が密集して暮らす都市より、人口密度が低い地方のほうが安心だと引っ越すことができる人は多くはない。感染したならしょうがないと「運」に任せて生きるのが、都市に住み続けるしかない人々の実情か。

2020年10月2日金曜日

ドキュメント「パンデミック9月」

 世界における新型コロナウイルスの感染者数は3300万人、死者数は100万人を超えた。4月末には感染者319万人、死者22万人だったので6カ月で感染者数は10倍以上、死者数は約5倍に増えた。9月は1日に感染者数2550万人、死者数85万人、それが30日には3351万人、100万5千人と感染拡大の勢いが弱まっていない。米国、インド、ブラジルでは大量の感染者増加が続き、欧州では感染の再拡大が始まった。

 <9月> 1日=世界の感染者が2550万人超す(米国で604万人、ブラジルで390万人、インドで362万人、ロシアで99万人、ペルーで65万人、南アフリカで62万人、コロンビアで61万人、スペインで48万人、アルゼンチンやチリで41万人、英国で36万人、トルコで27万人超す)。死者が世界で84万9千人超す(米国で18万3千人、ブラジルで12万1千人、インドで6万4千人、メキシコで6万4千人、フランスで3万人、ペルーで2万8千人、コロンビアで1万9千人、ロシアで1万7千人、南アフリカで1万4千人、チリで1万1千人超す)。インドはロックダウン措置をさらに緩和。香港は希望者全員に無料検査始める。日本の国内の感染者が6万9千人超す。

 2日=世界の感染者が2575万人超す(米国で608万人、ブラジルで395万人、インドで376万人超す)。死者が世界で85万7千人超す(米国で18万4千人、ブラジルで12万2千人、インドで6万6千人、メキシコで6万5千人超す)。

 3日=世界の感染者が2629万人超す(米国で612万人、ロシアで100万人、メキシコで60万人超す)。死者が世界で86万1千人超す(米国で18万5千人超す)。日本の国内の感染者が7万人超す。

 4日=世界の感染者が2614万人超す(米国で616万人、ブラジルで400万人、インドで385万人、メキシコで61万人超す)。死者が世界で86万7千人超す(米国で18万6千人、ブラジルで12万4千人、インドで6万7千人超す)。日本の国内の感染者が7万1千人超す。

 5日=世界の感染者が2641万人超す(米国で617万人、ブラジルで404万人、インドで393万人、ロシアで101万人、ペルーで67万人超す)。死者が世界で87万人超す(米国で18万7千人、インドで6万8千人、メキシコで6万6千人超す)。

 6日=世界の感染者が2688万人超す(米国で624万人、ブラジルで412万人、インドで411万人、メキシコで62万人超す)。死者が世界で87万9千人超す(米国で18万8千人、ブラジルで12万6千人、インドで7万人、メキシコで6万7千人超す)。豪メルボルンは外出制限などを延長。日本の国内の感染者が7万2千人超す。

 7日=世界の感染者が2709万人超す(米国で628万人、ロシアで102万人、ペルーで68万人、スペインで50万人超す)。死者が世界で88万5千人超す。

 8日=世界の感染者が2734万人超す(米国で631万人、インドで420万人、ブラジルで413万人、メキシコで63万人超す)。死者が世界で89万1千人超す(米国で18万9千人、インドで7万1千人超す)。

 9日=世界の感染者が2756万人超す(米国で632万人、インドで428万人、ブラジルで414万人、ロシアで103万人、ペルーで69万人、スペインで52万人、英国で38万人超す)。死者が世界で89万5千人超す(インドで7万2千人超す)。シンガポールは感染者と接触した人を追跡する携行端末を全住民に無料配布。日本の国内の感染者が7万3千人、死者が1400人超す。

 10日=世界の感染者が2785万人超す(米国で637万人、インドで437万人、ブラジルで419万人、ロシアで104万人、ペルーで70万人、メキシコで64万人、スペインで56万人、イタリアで28万人超す)。死者が世界で90万2千人超す(米国で19万人、ブラジルで12万8千人、インドで7万3千人、メキシコで6万9千人、ペルーで3万人、コロンビアで2万2千人超す)。

 11日=世界の感染者が2814万人超す(米国で641万人、インドで446万人超す)。死者が世界で90万8千人超す(米国で19万1千人、インドで7万5千人超す)。ミャンマーの航空会社は国内旅客便をすべて運休。日本の国内の感染者が7万4千人超す。

 12日=世界の感染者が2832万人超す(インドで456万人、ブラジルで423万人、ペルーで71万人、メキシコで65万人超す)。死者が世界で91万1千人超す(米国で19万2千人、ブラジルで12万9千人、インドで7万6千人超す)。インドネシアの首都ジャカルタは行動制限の緩和を取りやめ。日本の国内の感染者が7万5千人超す。

 13日=世界の感染者が2861万人超す(米国で646万人、インドで465万人、ブラジルで428万人、ロシアで105万人超す)。死者が世界で91万6千人超す(米国で19万3千人、ブラジルで13万人、インドで7万7千人、メキシコで7万人超す)。

 14日=世界の感染者が2898万人超す(米国で653万人、インドで475万人、ブラジルで431万人、ペルーで72万人、メキシコで66万人超す)。死者が世界で92万2千人超す(米国で19万4千人、ブラジルで13万1千人、インドで7万8千人超す)。インドネアの首都ジャカルタは大規模な行動制限の緩和措置を解消。日本の国内の感染者が7万6千人超す。

 15日=世界の感染者が2926万人超す(米国で657万人、インドで484万人、ブラジルで433万人、ロシアで106万人超す)。死者が世界で92万6千人超す(インドで7万9千人超す)。英イングランドは7人以上の集まりを禁止。ブラジルは貧困家庭向けの現金給付策の拡充を断念。

 16日=世界の感染者が2951万人超す(米国で660万人、インドで502万人、ブラジルで434万人、ペルーで73万人、メキシコで67万人超す)。死者が世界で93万1千人超す(米国で19万5千人、ブラジルで13万2千人、インドで8万2千人、メキシコで7万1千人超す)。日本の国内の感染者が7万7千人超す。

 17日=世界の感染者が2991万人超す(ブラジルで438万人、ロシアで107万人超す)。死者が世界で93万7千人超す(米国で19万6千人、ブラジルで13万3千人超す)。英国で局地的ロックダウンの動き。

 18日=世界の感染者が3003万人超す(米国で666万人、インドで511万人、ブラジルで441万人、ロシアで108万人、ペルーで74万人、メキシコで68万人、英国で41万人、イタリアで29万人超す)。死者が世界で94万2千人超す(米国で19万7千人、ブラジルで13万4千人、インドで8万3千人超す)。イスラエルは全土で3週間のロックダウン。フランス各地で感染防止策が強化。米疾病対策センター(CDC)は検査の方針を改め、感染者と接触した人には無症状でも検査を推奨。日本の国内の感染者が7万8千人、死者が1500人超す。

 19日=世界の感染者が3035万人超す(米国で669万人、インドで521万人、ブラジルで445万人、ロシアで109万人、ペルーで75万人、スペインで64万人、アルゼンチンで60万人、フランスで46万人超す)。死者が世界で94万7千人超す(米国で19万8千人、インドで8万4千人、メキシコで7万2千人、ペルーで3万1千人、スペインで3万人、ロシアで1万9千人超す)。

 20日=世界の感染者が3058万人超す(米国で674万人、インドで530万人、ブラジルで449万人超す)。死者が世界で95万3千人超す(ブラジルで13万5千人、インドで8万5千人人超す)。日本の国内の感染者が7万9千人超す。

 21日=世界の感染者が3095万人超す(米国で678万人、インドで540万人、ブラジルで452万人、ペルーで76万人、メキシコで69万人超す)。死者が世界で95万8千人超す(米国で19万9千人、ブラジルで13万6千人、インドで8万6千人、メキシコで7万3千人超す)。スペインで首都があるマドリード州が住民の移動を原則禁止。イタリアはフランスの複数の都市からの入国者に検査を義務付け。

 22日=世界の感染者が3116万人超す(米国で682万人、インドで548万人、ブラジルで454万人、ロシアで110万人超す)。死者が世界で96万2千人超す(インドで8万7千人超す)。日本の国内の感染者が8万人超す。

 23日=世界の感染者が3140万人超す(米国で687万人、インドで564万人、ブラジルで459万人、ロシアで111万人、コロンビアで77万人、メキシコで70万人超す)。死者が世界で96万6千人超す(米国で20万人、ブラジルで13万7千人、インドで8万8千人超す)。フランスはパリで集会の制限やスポーツジムの閉鎖。

 24日=世界の感染者が3179万人超す(米国で691万人、インドで556万人、ブラジルで455万人超す)。死者が世界で97万2千人超す(米国で20万1千人、ブラジルで13万8千人、インドで9万人、メキシコで7万4千人超す)。英国は飲食店の深夜営業禁止や在宅勤務の再推奨など規制を再強化。

 25日=世界の感染者が3199万人超す(米国で695万人、インドで573万人、ブラジルで462万人、ロシアで112万人、コロンビアで78万人、メキシコで71万人、ドイツで28万人超す)。死者が世界で97万8千人超す(米国で20万2千人、インドで9万1千人超す)。イスラエルは全土のロックダウンをさらに強化。日本の国内の感染者が8万1千人超す。

 26日=世界の感染者が3235万人超す(米国で700万人、インドで581万人、ブラジルで465万人、ロシアで113万人、コロンビアで79万人、フランスで53万人超す)。死者が世界で98万4千人超す(米国で20万3千人、ブラジルで13万9千人、インドで9万2千人、メキシコで7万5千人、英国で4万2千人、スペインで3万1千人、ロシアで2万人超す)。南仏マルセイユは飲食店を閉鎖、パリでは集会の人数の上限を1千人に下げた。

 27日=世界の感染者が3264万人超す(米国で705万人、インドで590万人、ブラジルで471万人、メキシコで72万人超す)。死者が世界で99万3千人超す(米国で20万4千人、ブラジルで14万人、インドで9万3千人超す)。日本の国内の感染者が8万2千人超す。

 28日=世界の感染者が3295万人超す(米国で709万人、インドで599万人、ブラジルで468万人、コロンビアで80万人超す)。死者が世界で99万8千人超す(ブラジルで14万1千人、インドで9万4千人、メキシコで7万6千人超す)。英国は自主隔離の義務に違反した感染者らに最大1万ポンド(約135万円)の罰金。

 29日=世界の感染者が3325万人超す(米国で712万人、インドで607万人、ブラジルで473万人、ロシアで115万人、コロンビアで81万人、メキシコで73万人超す)。死者が世界で100万人超す(インドで9万5千人超す)。オランダは飲食店の営業制限やスポーツの観戦禁止などの対策。ドイツはパーティーの参加人数制限などの新たな対策。日本の国内の感染者が8万3千人超す。

 30日=世界の感染者が3351万人超す(米国で717万人、インドで614万人、ブラジルで474万人、ロシアで116万人超す)。死者が世界で100万5千人超す(米国で20万5千人、ブラジルで14万2千人、インドで9万6千人超す)。タイは非常事態宣言を延長。米ニューヨーク市は飲食店の店内飲食再開。チェコとスロバキアは緊急事態宣言を再発令。