2017年11月29日水曜日

特権を得る英雄

 世界では何回もハイパーインフレが起きている。物価が大幅に上昇を続けるので高額紙幣が発行されるようになり、第一次大戦後のドイツでは100兆マルク紙幣、アルゼンチンでは100万ペソ券、ソ連崩壊後のロシアでは50万ルーブル紙幣、ユーゴスラビアでは5000億ディナール紙幣、近年では2009年にジンバブエで100兆ジンバブエ・ドル紙幣が発行された。

 当時、1枚の100兆 ジンバブエ・ドル紙幣で何を買うことができたのだろうか。金額だけみると国家予算並みで、ハイパーインフレとはいえ少なくとも広大な牧場なり豪邸なりを買えそうな気もするが、実際の価値は300兆ジンバブエ・ドルで日本円1円程度だったという。ただ、記念品としては人気があり、日本では数千円で販売されているとか。

 ジンバブエ経済について「1990年代後半以降,脆弱なガバナンスと経済政策の失敗により,インフレ,失業,貧困等が続いていたが,2008年の大統領選挙を巡る混乱と過度の紙幣発行によるハイパーインフレーションによって,経済は極度に混乱した」と日本の外務省サイト。

 1980年の独立直後のジンバブエは、白人の大規模農場と黒人の小規模農業の両輪で動く安定した農業国として近隣諸国に食料輸出するほどだったが、ムガベ大統領は90年代半ばから農業に見向きもしなくなり、さらに①元解放闘争ゲリラへの無計画な高額年金支給、②コンゴへの突然の派兵、③白人大規模農場の強行接収などの失政をおかした(松本仁一『アフリカは今』)。

 強行接収した白人大規模農場は元ゲリラたちに配分されたが、元ゲリラたちは農場経営のノウハウを持たず、農場は荒廃し、食料輸出ができずに外貨が入ってこなくなり、食料自給もできなくなり、農場労働者は流民化、失業率は80%を超えた(同)。農業中心の経済構造は完全に崩壊し、インフレが始まった。

 独立前のジンバブエは白人が支配するローデシアという国で、黒人はゲリラ戦を展開、ムガベ氏は抵抗運動を組織して戦った。80年の総選挙で黒人勢力が勝利してジンバブエが成立、ムガベ氏は初代首相に就任し、大統領制に移行して以降は大統領として次第に独裁色を強めた。

 植民地からの独立闘争の英雄が、権力を握ると独裁者になることは実は珍しいことではない。抑圧されていた人々が主権や人権を求めた闘争の結果が、指導者が特権を享受するだけになる現実。英雄を政治家にすることの危険性は、様々な特権が容認されやすい面があり、その特権が独裁へとつながっていくことだ。

 植民地の枠組みを引き継いで独立したジンバブエは二つの民族からなり、この二つの民族が一つの国を形成する必然性はない。多数派民族に支えられてムガベ氏は独裁を続けた。ジンバブエが独立後に分裂していたなら、ムガベ氏の独裁もハイパーインフレもなかったかもしれない。

2017年11月25日土曜日

準国家あるいは半国家

 EUは、参加した欧州の主権国家が、主権の一部をEUに譲り渡し、主権を共有して連邦を構成するという試みだ。新たに欧州に巨大化した主権国家を形成する試みであり、欧州を主権国家化する試みでもある。世界政府へ1歩前進と見えたが、そう簡単には既存の主権国家は全てを手放さない。

 スペイン北東部に位置するカタルーニャ州議会が独立を宣言したが、中央政府は認めず、カタルーニャ州の自治権を停止し、直接統治に乗り出した。EUができて参加国の主権国家としての役割は相対的に希薄になったので、EUの枠内に止まるなら、内部の州などが独立しても構わないように見えるのだが、スペインに限らず各国とも内部からの分離独立は拒否する。

 EUという枠組みでは、主権国家は主権を削減しても主権国家でいることができるのだが、分離独立を許したなら領土が減少する。分離独立した地域がEU内にとどまるなら、自由な通行や経済活動は保たれるはずだが、各国は分離独立を拒絶する。領土の縮小が明確化することは主権国家にとって譲ることができない一線か。

 主権国家を大雑把に定義すると、国境で確定された領土を有し、そこに国民が住み、統一された中央権力や統治機構によって統治され、外部からの支配を拒む能力を保持し、外交交渉を自由に行うことができる国家である。独立国とほぼ同じ意味合いだ。

 主権国家が内部からの分離独立を許さないとしても、そうした分離独立運動が消え去ることはないだろう。主権国家が領土の減少に寛容になれば、各国で分離独立の動きが活発化し、主権国家の領土は縮小に向かう。既存の主権国家の領土を維持しながら、分離独立運動を許容するとすれば、自治権の拡大を行うしかないだろう。

 ただ、自治州とか自治区としてとどまるなら、分離独立を目指す運動は満足しないかもしれない。そうなると、自治区や自治州よりも権限を持つが、主権国家の支配下にある新たな統治機構を考えるしかない。それは準国家あるいは半国家という位置づけになる。

 EU参加の主権国家の内部に、さらに主権を制限された国家として準国家あるいは半国家を認めるならば、分離独立運動との妥協(共存)の可能性があろう。参加した主権国家から主権の一部を獲得して成立したEUは、参加した主権国家内の分離独立運動も包含することができるはずだ。

2017年11月22日水曜日

中国のキャッシュレス化と毛沢東

 中国ではキャッシュレス化が進んで、日本のはるか先を行っているとの報道が増えた。キャッシュレスといっても、クレジットカードを皆が使うようになったのではなく、スマホを使ったモバイル決済。急速に普及し、5億〜8億人の中国人が利用しているという。

 よく記事に取り上げられるのは自転車シェアリングだが、ほかにもタクシー、食事宅配、鉄道など公共交通、ネットショッピングなどで利用が進み、飲食店など店舗での決済にも使われるようになり、ホテルやスーパー、コンビニなどでの利用も始まったという。屋台でもQRコードが貼られていて、モバイル決済ができるとか。

 急速にモバイル決済の普及が進んだのは、偽札が横行していることに加え、それまでの中国での各種サービスが、あまりに面倒で不便だったからモバイル決済の利便性が際立って利用者が急増したと指摘されている。

 キャッシュレス化とは交換価値を電子化することであり、紙幣の存在を希薄化させる。中国のキャッシュレス化については、中国人は毛沢東を本能的に忌避するから紙幣に愛着がないとの皮肉な見方もある。中国の紙幣は8種類(100元、50元、20元、10元、5元、1元、5角、1角)あるが、5角札と1角札以外には毛沢東の肖像画が描かれている。

 毛沢東は、歴史に残る中国革命を成し遂げた偉大な指導者の一人だが、その革命の過程では多くの中国人が死傷した。さらに毛沢東が革命後の中国で強大な権力を持つ指導者になった後の統治で、さらに多くの中国人が死傷した。例えば、大躍進や文化大革命。

 大躍進では大量の餓死者を出した。チベットだけで1500万人以上になり、全国では3000万〜4000万人が死亡したという(共産党の機関紙では最大250万人としているそうだ。250万人であっても大量の餓死者であるが)。文化大革命での死者数は公式資料には記載がないそうだが、6500万人以上とか7000万人以上、8000万人以上など諸説ある。

 大躍進にしても文化大革命にしても、実際の死者数が明らかになるのは中国共産党の1党独裁統治が崩壊した後になってからだろう。おそらく毛沢東は、中国の歴史において最も多数の中国人を死傷させた責任を負う。その肖像画がある紙幣を中国人が本能的に忌避するという見方は興味深い。

2017年11月18日土曜日

試される普遍性

 普遍的価値観を外務省は、自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済とする。いずれも欧米由来の価値観であるが、人類が共有するに値すると見なされたから世界で普遍的とされているのだろうし、普遍的だと教育されたことで人々は普遍性に疑いを持たなくなるという仕掛けだ。

 ただし、この普遍的価値観を欧米が都合よく使い分けてきたことを歴史が示している。普遍的価値観を欧米は植民地には適用せず、植民地主義が否定された現在では、政治的に対立する国に対する批判の道具として持ち出すが、例えば中国のように、関係を損ないたくない相手国に対しては普遍的価値観に基づく批判を抑止する。普遍的といっても、欧米は相手により簡単に引っ込める。

 弱体だった頃の中国に対して欧米は普遍的価値観を振りかざして厳しく批判したが、市場としての中国を無視できなくなると欧米の対中批判はトーンダウン。それでも、たまに普遍的価値観に基づく批判めいた発言が欧米からあると、中国は反発して即座に言い返す。

 市場経済を導入した現在の中国だが、自由、民主主義、基本的人権、法の支配は中国共産党の独裁統治を脅かすとして排除の対象で、権力への挑戦を許さない。中国には中国独自の価値観があるなどと普遍的価値観を拒否したりするが、中国独自の価値観の実態はぼやけ、国境を越えて共有されるような価値観を中国は提示できていない。

 例えば、「中華民族の偉大な復興」は中国国内向けのアピールでしかなく、中国モデルといっても外国からの投資主導による統制経済下の経済成長のことでしかない。結局、中国による中国のための「中国の夢」が中国の価値観か……などと他国はまともに中国の価値観に付き合ってはいられない。

 しかし、普遍的価値観とされるものが、台頭した中国によって挑戦を受け、試されている現実は興味深い。日本をはじめ経済成長した国は欧米主導の世界経済に組み込まれれるとともに普遍的価値観も受け入れてきたが、中国は共産党の独裁統治が続く限り、普遍的価値観に背を向ける様相だ。世界的に存在感を高めた中国に適用できないようでは「普遍的」の旗は降ろさなくてはならないだろう。

 かつて日本も独自の価値観をひねり出して欧米に対抗したことがある。そこには欧米のアジア侵略に立ち向かうとの「大義」はあったものの、普遍的価値観に格上げできるような何物も提示できなかった。かつての日本とは違って中国は、他の国や他の文化、他の文明から共有されるような価値観を提示できるだろうか。試されているのは中国だが、欧米も普遍的価値観が、外交の道具でしかないのか、確固とした理念なのか試されている。

2017年11月15日水曜日

「無宿」という精神

 竹中労さんが羽仁五郎さんから頂いた色紙には、「少々読みにくい達筆で『学問無宿』、それを見るたびに私はニヤリとする。--羽仁五郎くみし易し、むろん学問の方ではなく、無宿の精神においてである」(『アジア燃ゆ』)。無宿を自認するのは、自由な精神の証でもあるだろう。

 無宿を地域にとらわれないことと見ると、学問と無宿の精神は実は相性がいい。学問は本来、普遍を目指すものであり、特殊(地域)にとらわれる必要がない。例えば、水がH2Oであることや、ニュートン力学の適用などは世界に共通することであり、地域によって異なるわけではない。日本でだけ通用する学問的な真理などというものはない。

 現実の世界では、政府などが拠出する研究費を得るためには、学問の方向性などに「縛り」が生じたりして地域性を帯びることもある。紙とペンだけがあればいい学問ならともかく、大きな実験装置などを要する学問では獲得した予算に「紐」がついていることもあり、無宿を気取ることは簡単ではなかろう。

 無宿とは、文字通り「宿無し=住む家がないことや、住む家がない人」のことだが、江戸時代には「人別帳から名前を除かれること。また、その人。貧農や下層町人から無宿となるものが多く、江戸中期以降、大都市およびその周辺で多数出現した」(大辞林)。人別帳とは「江戸時代の人別改のための帳簿」で、人別改とは「江戸時代の戸籍調査。初め夫役賦課のための労働力調査が主眼で、のちにキリスト教禁圧のために宗門人別改が広く行われた」(同)。

 無宿者とは体制の秩序からはみ出し、こぼれ落ちた者のことであり、身分制による管理が厳しい社会では日陰者扱いされただろう。しかし、体制からはみ出したなら自力で生きるしかなく、結果として、自発的に生きることを選んだ人たちでもあった。

 現代において無宿の精神とは、体制に与せず縛られず、自由に生きようとすることであり、特殊(地域)にとらわれずに普遍性を志向することである。グローバル化した世界において無宿とは国家に拘束されない、自由な人間であろう。そのように無宿を読み替えたところに、羽仁五郎氏の精神の自由が現れている。

 国家や社会に依拠せず、自由に生きることを目指すなら、無宿の精神が必要だろう。ただし、無宿には無宿の掟があったりし、また、国家は無宿に生きる人も管理しようとするから、無宿の精神で生きるには相応の覚悟を要しよう。無宿の精神を支えるものは個としての強さか。

2017年11月10日金曜日

防衛目的のためにアピール

 核実験を繰り返す北朝鮮は、すでに数発の核爆弾を保有し、各種のミサイルに搭載できるように開発を進めていると見られている。国際社会は北朝鮮に核開発を断念するよう交渉し、過去に何度も合意に至ったが、北朝鮮は核開発をやめなかった。開発は相当進んでいるだろうから北朝鮮が今後、交渉によって核開発を断念する可能性は小さいだろう。
 
 そこで、現実となった北朝鮮の核兵器の脅威に対抗するために日本も核兵器を持つべきだという議論がある。北朝鮮が核兵器を手放すことはないと見、口汚く他国を罵る外交にプラスし、核兵器を振りかざして一方的な主張を押し通そうとするだろうから、同等の破壊力の裏付けを持って対抗すべきとの考え方だ。

 だが、日本や韓国が核兵器を持ったなら、北朝鮮がおとなしく国際社会に従うかどうか定かではない。さらに、日本や韓国が核兵器を持ったとして、北朝鮮との間で相互抑止(相互確証破壊)が機能するかどうかも定かではない。理性的な判断応力が相手側にあると見なければ、相互抑止は機能しない。

 通常兵器では北朝鮮も米韓も相手に対して多大な被害をもたらす能力があり、通常兵器においては相互抑止の状態だ。北朝鮮が少数の核兵器を持ったところで、米国の核兵器による圧倒的な破壊力の優位は揺るがず、北朝鮮が核搭載の長距離ミサイルで米国本土を攻撃できたとしても、すぐに北朝鮮全土が戦場になるだろうから、北朝鮮には圧倒的に不利だ。

 北朝鮮が米国本土への核攻撃能力を主張するほど米国の警戒心と敵愾心が高まるので、北朝鮮の核兵器保有が米国との交渉力を高めるとは見えない。核兵器を使用しての先制攻撃は北朝鮮にとって自殺行為であることも明らかであり、北朝鮮の核兵器保有の目的は防衛力(反撃力)を高めるためと解釈するしかない。

 防衛目的とすれば、北朝鮮が核兵器所有を米国や国際社会に対してアピールする必要性が理解できる。核兵器を保有していることを相手に意識してもらうことが、防衛目的のためには効果的だろう。「俺も死ぬけど、あんたも死ぬぞ」と思ってもらうことが有効なのだ。

 核兵器は、使うことができない武器である。1945年以来、多くの核兵器保有国が多くの戦争に関わったが、核兵器を使った国はない。核兵器を使ったなら、その戦争の終戦後に、核兵器の使用責任を問う声が世界で巻き起こるのは確実だろう。ただし、世界のどこにも逃げ場がなくなった独裁者が死に直面した時に、核兵器使用を命ずる可能性はある。

2017年11月8日水曜日

ツルを折ることができますか?

 知人の奥さんの知り合いが癌の闘病生活を続けていて、励ますとともに平癒を願うため皆で千羽鶴を折ることになり、知人も手伝いをさせられたという。ツルを折ることは子供の頃に覚えていたので、折ることは簡単だと知人は思っていたそうだが、いざ折り紙を手にとって折り始めようとしたものの、何から始めるか分からなかったという。

 奥さんが折っているのを見て真似ようとしたが、奥さんは手際よく折り進めていくので細かい部分が知人にはよく分からず、見かねた奥さんに手順を教えてもらったという。知人がすっかり忘れていたのは、最初に何本かの折り目をつけることだった。すぐに折り始めると思っていたので、あれこれ折ってみたものの、折り方を思い出すことができなかった。

 子供の頃に折り紙は割と気に入っていて、ツルのほかにも奴さんやカブト、風船、舟などを折って遊んでいたという知人は、ツルの折り方をすっかり忘れていたことがショックだったという。老化現象というわけではないだろうが、子供の頃に身につけたことのどれだけが今でも自分にできるのか懐疑的になったと知人。

 知人はツルを折ることができるようになり、数十羽も折ったという。ツルを何羽も折るうちにコツをつかみ、不恰好なツルは少なくなり、細い折り先が揃って、折り目が美しいツルに仕上げることができるようになり、折り紙の楽しさを知人は感じ始めたという。はっきりとした強めの折り目をつけることが美しく仕上げるコツだとする。皆が協力して完成した千羽鶴は病室に届けられた。

 仕事仲間の男が欧米に赴任している時に、パーティーなどでツルやペンギンなどを折って見せたところ、現地の人が驚き、賛辞を得たとの話を聞かされたことがある知人は、自分も海外赴任する時には折り紙を覚えて行こうと思ったことがある。ツルの折り方を覚えたことを機に、レパートリーを増やそうと知人は折り紙の教則本を買った。

 インコや鳩、キツネやタヌキ、馬やウサギ、ティラノザウルスや首長竜などの恐竜、亀、イルカやオットセイ、セミ、紅葉、内裏雛、スペースシャトルなど新しい折り方を覚えた知人は、ツルの首と尾の角度を水平に近づけ、飛んでいるツルに変えたり、下側に足を作って、着地するときのツルに変えたり、自己流のアレンジも楽しみ始めたそうだ。

 ツルを折ることは簡単だと思っていたのに、やってみると、できない……そんな大人は多いかもしれない。知人の話を聞いて当方も試してみたが、見事に折り方を忘れていた。知り合いの何人かに聞いても、「ツルなんて簡単に折れる」と言うものの実際には忘れていた人が多く、覚えていたのは、幼い子供を持つ人だけだった。

2017年11月4日土曜日

外国人の住宅購入規制

 ニュージーランドで政権を奪取した労働党政府は、外国人による中古住宅購入を禁止する。低金利と移住人口増加などにより上昇を続けている住宅価格を、外国人の投資を禁止することで抑制しようとするもの。国民の住宅購入を後押しするためとし、在留資格を持つ外国人は対象外という。

 背景にあるのは、非居住の外国人による不動産投資が増え、住宅価格の高騰を後押ししている現実だ。外国人の投機により同国内の不動産価格高騰を招いているのなら、対策を講じるのは当然に見える。政府は、7万人と大幅に増えた移民の受け入れ人数を最大3万人削減することも打ち出した。

 外国人による住宅など不動産の購入は日本でも増加している。北海道では森林202haのほか観光施設、ゴルフ場、土地などが中国資本に買収されていると報じられ、対馬では韓国人観光客が大幅に増加し、民宿やホテル、飲食店、民家など不動産が次々に韓国資本に買収されていると報じられた。

 外国人が土地など不動産を購入することを制限している国は世界に珍しくない。外国人の土地の取得が認められない国があり、土地の借地権の取引のみが許されている国、投資額の下限制限が設けられている国、外国人のみでは土地を所有できない国、外国人は土地は所有できないがコンドミニアムなら所有できる国、非居住者の購入を制限している国、軍事施設周辺や自然保護地域など外国人が取得可能な地域を制限している国、外国人の不動産購入に課税する国など様々だ。

 日本は外国人の不動産所有の制限がごく少なく、外国人がほぼ完全な所有権を持てる国だという。どこの国に住むかは個人の自由であると考えるなら、外国人の不動産取得は世界中で自由であるべきだろう。とはいえ、非居住者の投機の対象になったり、外国人の不動産購入で、そこに住む人々の生活に支障が生じているのなら、何らかの対策が求められるのは理解できる。

 偏狭な「愛国心」から外国人の不動産取得を批判・否定するのではなく、資本や個人の自由な移動を容認する世界になっていることを踏まえつつ、外国人の不動産取得に伴う問題を挙げるなら、①適切に納税がなされているか、②関連法規を遵守しているか、③治安や防衛面などでの阻害要素を含んでいないか、などだろう。

 日本が気に入り、日本に住むと決めた個人が各国から日本に移住するのは歓迎すべきことだろう。不安や懸念が生じるのは、不動産を取得した個人や企業の正体が不明であったり、居住の実態がなかったり、法規など日本のルールを無視している場合だ。外国人の不動産取得と排外主義を絡ませないためには、行政の適切な対応により処理可能だと示さなければならない。

2017年11月1日水曜日

自民は174議席?

 第48回衆議院選挙は自民党の圧勝だった。定数465のうち自民党が284議席(小選挙区218、比例代表66)で全体の6割を占めた。次に多かったのは立憲民主党の55議席(18、37)だったので、自民の獲得議席は立憲民主の5倍以上にもなる。第3位は希望の党で50議席(18、32)、第4位は公明党29議席(8、21)、第5位は共産党12議席(1、11)、第6位は維新の党11議席(3、8)などとなった。

 定数465議席のうち自民が61.1%を占め、立憲民主が11.8%、希望10.1%、公明6.2%、共産2.6%、維新2.4%と、自民の突出ぶりが際立つ。小選挙区(定数289)で見ると、自民の獲得議席数218は75.4%と他を圧倒し、4分の3を占める。立憲民主は6.2%、希望も6.2%、公明2.8%、共産0.3%、維新1.0%。

 政党名で投票する比例代表(定数176)で自民の獲得議席66は37.5%、立憲民主21.0%、希望18.2%、公明11.9%、共産6.3%、維新4.5%となる。比例代表での投票を政党に対する支持率だと見て、それで全議席(定数465)を配分すると、自民174議席、立憲民主98議席、希望85議席、公明55議席、共産29議席、維新21議席になる。

 174議席は、自民が実際に獲得した284議席より110議席少ない。174議席は定数465の37.5%になるが、選挙前の自民支持率が30%前半だったので、実態に近いものだろう。自民は3割台の支持率で、選挙では6割以上の議席を得ているが、自民の個別候補者の魅力や頑張りがこの結果になったのか、自民に有利な選挙制度なのか検証が必要だな。

 投票数で見ると、違った光景が見えてくる。全国合計の投票数は小選挙区が5542万2087票、比例代表が5575万7552票だったが、比例代表の政党別得票率を見ると、自民は1855万5717票で33.3%、立憲民主19.9%、希望17.4%、公明12.5%、共産7.9%、維新6.1%と、自民が全体の3分の1。

 この比例代表の得票率で全議席(定数465)を配分すると、自民155議席、立憲民主93議席、希望81議席、公明58議席、共産37議席、維新28議席となる。自民と公明を合わせても213議席で半数にも達せず、希望か維新を連立に引き込まないと過半数に達しない。

 さて、自民の圧勝に終わった総選挙だが、民意の反映という視点で見ると、自民の圧勝には疑問が生じる。比例代表の投票に示された政党別の得票が民意を正確に表していたとすると、今回の選挙で自民は過大に議席を得たことになる。政権交代可能な2大政党制が実現しない中で、小選挙区制は「1強」に有利すぎるのかもしれない。