2014年8月16日土曜日

批判される「正解」


 昨年夏に、シリアのアサド政権が反政府側に対して化学兵器を使用していたとの疑惑が浮上し、「邪悪」なアサド政権を倒すために米など西側の軍事介入を求める声が上がった。しかし、オバマ米政権はシリアに対する軍事介入を行わず、交渉によってシリアが保有する化学兵器を国際管理下に置くことにした。

 化学兵器はシリア国外に搬出されたもののシリア国内では内戦が続いている。それまでの反アサド派勢力に加え、様々な勢力がシリアに入り込んで戦闘に加わったが、政府軍を倒すほどの勢力にはならずにいる。一方、政府軍にも反政府武装勢力を圧倒して、国内から追い出すほどの力はなく、内戦が続いている。

 そのシリア内戦で「成長」したと見られるのがスンニ派の武装組織「イラクとシリアのイスラム国」(ISIS)だ。今年になってイラクにまで勢力を拡大し、イラク第2の都市モスルのほか、イラク西部やシリア東部の広い範囲を制圧し、「イスラム国家(IS)」の樹立を宣言、指導者を「カリフ」とした。

 米などがイラクに軍事介入してフセイン政権を倒したのは2003年。イラクの人々は圧政から「解放」されたはずなのに、イラクの人々は平和も民主主義も手にすることができずにいる。反対に、ISISが勢力を拡大して、イラクを分割統治するようになって混乱は拡大……米などの軍事介入の「成果」は失われた。

 西側メディアには例えば「シリア内戦への干渉を、化学兵器を使ったかどうかで片付け、軍事介入を控えた。それは事なかれ主義であり、内戦を放置してきたツケが今、ISISの伸長、イラク内戦、イランの台頭という形で現れてきた」などとの批判がある。オバマ政権など西側諸国に先見性が欠如していたとする批判だが、結果論でしかない。

 昨年、米など西側がシリア内戦に軍事介入していたならば、支援を受けた反政府武装勢力がアサド政権を倒していたかもしれないが、アサド後のシリアが、平和で民主的な国に変わる可能性がどれほどあったのか定かではない。むしろ、様々な武装勢力が入り込んでいたのだから、アサド後のシリアは、現在のリビアと同じような状況になっていた可能性が高いだろう。

 リビアも内戦状態になり、米などの軍事介入の支援を得た反政府武装勢力がカダフィ政権を倒したが、その後は武装した諸勢力が対立し、実質的に内戦状態は続いている。暫定政府は首都の治安さえ保つことができず、各国の大使館などが襲撃され、外交官が国外に退去した。

 シリア内戦の死者は15万人以上になるともいわれ、悲惨な状況であることは確かだが、米など西側が軍事介入しなかったのは「正解」だったかもしれない。軍事介入してアサド政権を倒しても、破綻国家を一つ増やし、諸勢力が争う暴力が支配する地域を広げる結果に終わった可能性が高い。人々の苦しみは終わらない。

 しかし、「正解」が、いつでも誰にでも歓迎されるとは限らない。特に、ISISの勢力拡張など新しい状況に対する解決策が見つからない場合には、過去の、行われなかった選択が「誤り」とされ、批判される。そういう批判は容易だからだが、架空の根拠に基づく批判でしかない。

0 件のコメント:

コメントを投稿