2014年10月8日水曜日

お得意様の批判は控える


 香港で、次期の行政長官を決める選挙を北京政府がコントロールしようとしたことに抗議し、普通選挙を求める民主派が街頭行動を続けていることに関して、米オバマ大統領は、訪米した中国外相に「米国は香港情勢を注視している」と述べ、暴力的な対応をとらないように中国政府を牽制した。

 中国外相は米国務長官との会談で「香港でのデモは内政問題」と述べたそうだ。内政問題だから余計な口出しは無用と中国は言いたいらしいが、香港は特殊な土地だ。チベットやウイグルなら外国人を閉め出し、中国外での報道を制限することもできようが、長らく英国の植民地だった香港は外国人にもオープンな土地で、いまさら外国人を皆追い出すわけにも行かない。

 中国が経済大国になり、経済での相互結びつきが強まるにつれて欧米諸国からの、人権や民主主義を振りかざしての中国批判は徐々にトーンダウンしていたので、今回の“懸念表明”には懐かしささえ漂う。が、北京政府が暴力を行使しない限り、欧米諸国は口先だけの批判に終始するだろうな。金儲けさせてくれる中国市場を失っても、人権や民主主義などで中国批判する余裕は欧米諸国にはない。

 独裁を続ける中国共産党政府は政治を何よりも優先させるので、例えば、政治的緊張が高まると、反日デモを組織して日本との経済関係を冷え込ませることを辞さなかった。中国経済にとって、日本の代わりを担う先進国は他にもあるからだ。欧米にも代替可能ではない国はないのだから、経済関係での主導権は中国が握っている。

 これまで欧米諸国は多くの国に対して、人権侵害や民主主義などに関わる問題が起きると批判してきた。その国の内政問題ではあっても、人権や民主主義を尊重するのは普遍的価値観(欧米中心で形成された価値観でもあるが)であり、1国の主権を超えたものとして位置づけ、批判を正当化した。ただ、今回のように、相手によっては言い方を変える。

 国家主権により、人権が踏みにじられ、民主主義が破壊されるのは悲劇だ。人権や民主主義が国家主権を超える普遍的価値観であることは、世界人類のためには結構なことだろうが、利害関係に左右されて欧米などの国家は、他国を批判したり批判しなかったりするのが現実。経済関係とは無関係に、普遍的価値観に基づく外交を貫き通す国はない。自国の利益を最大限にするのが外交だから。

 ところで北京政府は、長らく植民地だった香港に関して欧米がちょっかいを出してきていると、欧米からの批判を「歴史問題」にすり替えることもできた。過去の欧米の植民地主義を持ち出して批判すれば、欧米諸国に後ろめたさを感じさせつつ、国内の愛国心を煽ることもできたかもしれない。

 「歴史問題」化させなかったのは、1)欧米を反発させて“団結”させれば、経済関係での主導権を失う、2)欧米主導の世界で政治的にいっそう孤立する、3)租借期間が終わるまで、植民地・香港を中国共産党が自力で回復できなかったことが国内でもバレる恐れ、4)欧米に対する反発で中国国内での愛国心が高まると、暴走してコントロールできなくなる可能性がある等、北京政府にも弱みがあるからだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿