2017年2月4日土曜日

安保理決議の空振り

 米トランプ大統領の誕生をイスラエルがさっそく利用している。就任式の2日後にエルサレム市が東エルサレムでのユダヤ人住宅566戸の建設計画を承認し、さらに2日後にイスラエル政府は、ヨルダン川西岸の入植地に住宅2500戸を建設することを承認、1月末日にもヨルダン川西岸に3000戸を建設する計画を承認した。

 日本政府は外務報道官談話で強い遺憾の意を表明し、「入植活動は国際法違反であり」「二国家解決の実現を損なうような入植地建設計画を実施しないよう改めて強く」求めた。国連安保理は1967年に、第3次中東戦争でのイスラエルの占領を無効とする決議を米国を含む全会一致で採択していた(日本も賛成)。

 国連安保理は昨年12月に、イスラエルの入植地建設を違法だと非難し、建設停止を求める決議案を採択した。当時の米オバマ政権が拒否権を行使せず棄権したので採択されたのだが、イスラエル非難決議で米国が拒否権を行使しないのは異例。イスラエルの入植地の拡大が加速していることに、オバマ政権が任期最後になってから懸念を明らかにした格好だ。 

 採択されたことにイスラエルは猛反発、ネタニヤフ首相は「国連のこの恥ずべき反イスラエル決議を拒否する」とし、国連機関への資金拠出停止をちらつかせた。決議の採択前にネタニヤフ首相は、トランプ氏を動かして決議採択を阻止しようとしたが、失敗していた。

 非難決議の採択を許した米オバマ大統領をネタニヤフ首相は公然と批判し、次期のトランプ大統領への期待を表明してみせた。そしてトランプ氏が大統領に就任、すぐにイスラエルはヨルダン川西岸の入植地でのユダヤ人住宅の建設を拡大させた。

 トランプ大統領の大統領令とツイートに米国内も世界も振り回されているが、今のところイスラエルだけが、トランプ大統領の誕生を「チャンス」として活用できている光景だ。敵と味方をはっきり区別する自尊感情が強い権力者をうまく前面に立たせ、国連も世界も押し切る構えに見える。

 国連安保理決議に従わず入植地の建設を続けてきたイスラエルは、シリアは内戦、エジプトは「アラブの春」後の混乱で疲弊するなど、国境を接する周辺国に抜きん出た軍事力を有し、「原則」を固持して世界に対して非妥協を貫く姿勢は米トランプ大統領と共通する。心配は、イスラエルが非妥協を強めるほどに、対抗勢力も非妥協を強めるであろうことだ。

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