ベネズエラのカリブ海沿岸に住む先住民ワラオ族が1000キロの旅をして、ブラジルのマナウスに数百人規模で流入している。報道によると、食糧や物資の不足などによる困窮から国を捨て、家や食料、医薬品などの支援を得たり職探しができるマナウスに移った。その一人は「ベネズエラではすべてが終わっているが、ここなら働き、暮らすことができる」。
深刻な経済危機が続くベネズエラから出国しようとする人々は増えているが、パスポート申請は大半が却下されるという。その理由は、パスポートをラミネート加工する樹脂がなくなったためというから物資不足は深刻だ。周辺国に脱出することができない人々は、マドゥロ政権に怒りを向ける。
4月から全国で大規模な反政府デモが始まったが、治安部隊は強硬に抑え込む姿勢を続けている。2カ月弱でデモ参加者の死者は約50人となり、数百人が負傷し、二千人以上が拘束され、軍事裁判で有罪判決を受けた人が続出しているというが、物資不足に加えハイパーインフレ、治安悪化などに苦しむ人々の蓄積した怒りは簡単には収まらないだろう。
原油の確認埋蔵量で世界1とされるベネズエラは原油輸出で豊富な外貨収入を得て、医療や教育を無償にするなど手厚い福祉を進める豊かな国だったが、高値だった原油価格が低迷すると一転、全てが逆回転し始めた。バラマキではなく、人々が自立して生活できるような社会制度を構築し、広く産業を育成することに資金を向けていればと悔やんでも遅かった。
今年1~4月のインフレ率は93.8%、去年の幼児死亡率は30%で妊産婦死亡率は65%増加、殺人発生率は52.2人/日……これらのデータが示すのは、国家として破綻している現実だ。「経済危機と食料不足で略奪や動物狩りが横行」「食料品店を狙った略奪が日常茶飯事」「機能不全に陥った病院」「政府は節電目的で公務員の出勤を週2日に制限」などとも報じられている。
自由選挙が行われるなど民主主義の体裁は維持されているが、マドゥロ政権の権限が強く議会の機能は限定的。経済も治安も崩壊した社会で人々が行うべき「正しい」行動は、直接行動で政府を倒すことしかないようにも見えるが、「正しい」行動だからといって成功するとは限らない。
それに「正しい」行動を支えるのは社会・国家に対する信頼があることだが、経済や政治が破綻した中で人々が、システムを変えれば良くなると信頼できるのか怪しい。怒りに任せて政権を倒したとしても、すぐに物資不足が解消され、ハイパーインフレが止まり、治安が回復されるわけでもない。崩壊したシステムを再建することは至難の技だ。
国家や社会のシステムを信頼できなくなった人々は、毎日を生き抜いていくために自分の身は自分で守るしかない。破綻した国家で略奪が横行するのは、それが無法状態における「正しい」行動の一つであるからかもしれない。国を捨てて他国に逃れるという行動も、破綻した国家における合理的な判断であろう。
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