2024年9月11日水曜日

需要と供給

 都会ではJRなどの駅前には必ずタクシー乗り場があり、地方都市では駅前でタクシーが客待ちしていたりするが、各駅列車しか停まらない過疎地の駅ではタクシーの姿はなく、利用者は電話でタクシーを呼ぶしかない。利用者がいない駅でタクシーが客待ちするのは、需要がないのに供給を続けている状態だ。

 JR北海道は、赤字だが国や自治体の支援を受けて存続をめざす8線区(黄色線区)の存続プランを発表した。観光列車を増やしたり、特急列車の利便性を向上させるなどで利用拡大を図るとともにコスト削減を進めるという。ただ、今回の目標を達成したとしても赤字は解消されず、年間100億円に赤字幅が短縮されるだけだ(8線区の23年度の赤字額は148億円だった)。

 JR北海道の2023年度決算は、グループ売上高は1477億円(うち鉄道事業売上高が698億円)だが営業経費が1977億円かかり、営業損益は499億円の赤字。営業外収益で経営安定基金の運用益315億円と国からの補助金249億円などがあり、最終的な当期純利益は33億円。鉄道事業単体の赤字額は563億円だが、小売業・不動産賃貸業・ホテル業などで64億円の利益を確保し、最終的にグループ全体の赤字額を499億円に圧縮した。線区別では全21区間が営業赤字だったが、9区間で赤字幅が縮小した。

 赤字体質のJR北海道は国鉄分割民営化以降は経営安定基金の運用益で赤字を補填する仕組みになっていたが、長く続く低金利により運用益は減少し、国から毎年、財政支援を受けている。純粋な民間企業なら、赤字を垂れ流している事業は撤退や売却など整理の対象にするだろうが、JRは公共交通の色彩を色濃く保っているので簡単には赤字路線を廃止するわけにはいかない(赤字路線を廃止するとJR北海道に路線が無くなってしまう?)。

 赤字路線はJR北海道以外にも多く存在する。赤字でも列車を走らせるのは地域の人々の移動手段を確保するためで、鉄道インフラは公共事業の側面を持つ。だが、旧国鉄の赤字路線には厳しい目が向けられ、赤字路線は順次廃止されてきた。一方、全国の道路を線区ごとに見るなら大半が赤字だろうし、地方空港の大半も赤字だろうが、そうした赤字は騒がれない。維持費などには税金が投入されている。

 鉄道だけが赤字路線が問題視される。だが鉄道の赤字路線を存続させる方法は簡単だ。それは利用者を増やすことで、利用者を増やすには、沿線に住む人数を増やしたり、沿線の駅周辺に学校や病院や企業の事務所や工場などを新設することなどが効果があるだろう。おそらく誰もが、そんなことは分かっているだろうが、現実には地方自治体は人口減少や過疎化に無力で、学校や病院や企業を沿線に誘致するインセンティブを提供する余力もない。

 JRの赤字路線の問題は、人口減少や過疎化に無力な地方自治体が多すぎ、地域の衰退に歯止めがかからず、地域経済が縮小を続けていることを示す。利用者がいなくなった路線は、需要が消えた路線だから供給(路線維持)が停止されるというのは民間企業としては合理的な判断だが、地方鉄道は公共インフラでもあるから地方自治体は路線廃止に難色を示す。鉄道会社にも地方自治体にも金がなく、名案も出てこず、ただ議論ばかりが続く。

0 件のコメント:

コメントを投稿