2015年11月25日水曜日

流行語か頻出語か


 話題になった人物の発した言葉が評判になったり、お笑い芸人のギャグなどが広まって、多くの人々が真似て使うようになるのが流行語だろう。だが、何がその年の流行語なのかを正確に決めるのは簡単ではない。全国の人々の会話の中に現れた流行語を集計できれば、人々の実感に近い言葉が拾い上げられるのだろうが、それは不可能だ。

 年代や階層などが異なれば流行語も異なろうし、地方による違いもあるかもしれない。家族内や学校内など特定の集団だけの流行語もあるから、これが今年の流行語だと万人が納得する言葉を選ぶのは簡単ではない。だから、「今年の流行語」を選定しなければならないとすると、なにやら“公的”な装いが必要となり、選考委員なんて人達も準備される。

 「今年の流行語」を選ぶためには、とにかく目についた言葉を集めなければならない。街中や居酒屋などでの周囲の会話に耳をそばだて、テレビ番組などで視聴者にウケている言葉をチェックし、新聞・雑誌など印刷物における頻出する言葉をピックアップし、ネットに現れる流行言葉もキャッチしなければならず、大変そうだ。

 といっても、流行語の収集は出版社が「現代用語」を刊行するために行っていることの副産物でもあるので、特別な手間がかかっているわけではない。そうやって集まった流行語の中から候補が発表され、「今年の流行語」が決められるのだが、今年の候補の選定に批判が出ている。

 批判は、政治色が見られるという点に集まっている。候補には「I am not ABE/切れ目のない対応/存立危機事態/駆けつけ警護/国民の理解が深まっていない/レッテル貼り/テロに屈しない/早く質問しろよ/アベ政治を許さない/戦争法案/自民党、感じ悪いよね/シールズ(SEALDs)/とりま、廃案」といった言葉が含まれ、安全保障関連法案に反対する側の雰囲気が濃厚だ。

 安全保障関連法案の審議に関して新聞が連日、各面で大きく扱っていたので、頻出回数の多い言葉がピックアップされたのだろうと推察するが、さて、こんな言葉を日常で人々が口にしていたかと怪訝な気もする。選考する人達が毎日、安全保障法案反対で熱心に議論していたから、これらの言葉に強く反応して選んだのではないかと想像させるような候補選定でもある。

 民間で勝手に決めているのだから、どういう選び方をしようと自由ではあるが、世相を本当に反映しているのかと疑問を持たれたなら、この種の選定はもてはやされなくなる。新聞などで頻出回数が多い言葉が流行語なのか、人々が日常で面白がって使って広まる言葉が流行語なのか、流行語の再定義が必要だな。頻出語ではあっても、そのまま投げ出された言葉は、流行語というには無理がある。

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