2016年12月28日水曜日

現実と過去に突き崩される理念

 独ベルリンで、人々で賑わうクリスマス市に大型の40トントラックが突っ込み、12人が死亡する惨劇となった。トラックはポーランドの運送会社のものだったが、運転手は殺されてトラックが乗っ取られ、無差別テロに用いられた。仏でも7月にニースで花火の見物をしていた人々にトラックが突っ込み、84人が死亡した。

 一度は23歳のパキスタン難民が容疑者として拘束されたが、アリバイがあったというので釈放になり、次に24歳のチュニジア人のアニス・アムリ容疑者が指名手配された。トラックの車内で指紋や身分証明書が見つかったという。物証があったのに、先に23歳のパキスタン難民を容疑者としたため、手配が遅れた。

 このアムリ容疑者は複数の名前を持ち、独国内を自由に動いていたという。強盗を計画している疑いがある過激派関与者として治安当局の監視対象になったが、証拠が得られず監視を外されたそうで、惨事を防ぐチャンスがあったのに治安当局は逃した格好だ。難民の大量入国で独では監視対象者が大幅に増え、その全員を常に監視できなくなっているという。

 アムリ容疑者はチュニジアで強盗で有罪、難民として入国したイタリアで放火などで有罪となり服役した後に、15年にドイツに入国して難民申請した。申請は却下されたが、強制送還は見送られて独に滞在していた。独でも一度逮捕されたことがあるが、チュニジアから書類が届かず釈放されたそうで、難民にまぎれて身元を隠す犯罪常習者が放置されている現実を示している。

 事件から4日後にアムリ容疑者はイタリア北部ミラノで、職務質問した警官に発砲して銃撃戦になり、射殺された。事件後にフランスを経由してイタリアに来ていたと見られ、EU内に存在するという過激派のネットワークの支援を得ていたのか、単独逃避だったのかは不明だ。

 パスポートなどを所持する難民は多くはないだろうから、受け入れ側が身元確認をするのは簡単ではなかろう。犯罪常習者などが紛れ込むのは容易だろうし、難民申請してEUに滞在を認められれば、国境を越えて自由に動いて行方をくらませることもできる。難民保護政策もシェンゲン協定も悪意ある者に対して脆弱だ。

 戦乱の国から逃れ困窮する難民に、安全と新しい生活を提供して社会の一員として受け入れるというのは素晴しい理念だ。だが、欧州諸国が植民地支配した地域で国家の破綻が相次ぎ、大量の難民が欧州を目指している現実は、過去の清算を欧州が求められているかのように見えなくもない。欧州の掲げる理念が、欧州の現実と過去に突き崩されたとすれば皮肉だ。

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