北朝鮮が今年に入って11回目の弾道ミサイルの発射を行った。ミサイルは約40分間飛行し、約900キロ先の日本海の日本の排他的経済水域内に落下した。高度は約2800キロに達し、いわゆるロフテッド軌道で打ち上げられたといい、通常の角度で発射したなら飛行距離は5600キロ以上になるとみられ、米政権はICBMだったと確認した。
北朝鮮の弾道ミサイルの射程にアラスカが入り、このままのペースでミサイル技術の開発が続いていけば北朝鮮の弾道ミサイルが米国の西海岸などを射程に収める日は遠くないだろう。北朝鮮が核爆弾の開発も続けていることから、米国にとって現実の脅威に北朝鮮はなり始めた。
冷戦期にはソ連、冷戦後はイラクやイランなどと米国は常に仮想敵国を明示的に設定してきた。脅威となる外国の存在が産軍複合体にとって必要だったのだろうし、仮想敵国の存在で膨大な軍事費支出を正当化できた。9.11の後に米国はアフガニスタンやイラクの政権を敵視し、崩壊させたが、オバマ政権はイランやキューバと関係改善を図り、次の仮想敵国としてクローズアップされたのが北朝鮮だった。
米国にとって理想的な仮想敵国は、自国に対する脅威がほとんどない非民主主義の国家であろう。いくらでも批判できるが現実的な脅威がない仮想敵国の存在は、自国の内政や外交にとって利用できる存在だ。だが、北朝鮮の弾道ミサイルは現実的な脅威となりつつある。
アフガニスタンやイラクの政権を崩壊させた後に米国は混乱を収拾できず、米軍の駐留を続けざるを得ない状況が続いている。米国は軍事攻撃で北朝鮮の政権を崩壊させることはできるだろうが、北朝鮮軍の反撃に加え、崩壊した北朝鮮に対する責任も出てくるので、影響や負担の大きさを考慮すると米国の選択肢は限られる。理想的な仮想敵国だった北朝鮮は過去になった。
北朝鮮は中国、ロシアにとっては米国に対する格好の取引材料になりつつある。両国は報道によると、「対話と交渉による解決」を関係国に働きかけることで一致したそうで、北朝鮮の核開発と米韓軍事演習の同時凍結の実現を目指すそうだ。つまり、実現可能性は低いだろうから、北朝鮮の弾道ミサイル開発は続いていく。
北朝鮮を米国は仮想敵国として利用してきたが、ここにきて持て余しつつあるように見える。代わりに中国、ロシアが北朝鮮の利用価値を認めて、対米牽制に効果的に利用し始めた。北朝鮮が米国との緊張関係を続けることを中国、ロシアは歓迎しているのだから、中国やロシアが北朝鮮を説得したり、制裁することはない。
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