欧州におけるディーゼルエンジン搭載車の不正は広く行われていたようだ。独VWから明らかになった不正で他社にも疑いの目が向けられ、次々に欧州メーカーはリコールを行っていたが、最近になりダイムラーも300万台以上を対象にした大規模なリコールを発表した。自主的としているが、不正を認めて事前に手を打ち、制裁金を回避するのが狙いとの見方もある。
一連の不正が明るみに出た発端は、2015年に米国で独VWのディーゼル車に、排ガス検査を検知して、その時だけ排ガス浄化装置を正常に作動させるという不正なソフトウェアが搭載されていると暴かれたことだった。通常走行中は規制値をはるかに上回るNOxを排出していたという悪質さで、環境汚染の確信犯だった。
「クリーン・ディーゼル」を謳い文句に独VWはじめ欧州メーカーは、ディーゼル車を欧州で売りまくり、米国や日本など世界でも拡販し始めていた。不正が明るみに出たので「クリーンディーゼル」という言葉は今では嘲笑や疑念の対象だが、不正が隠されていた当時は、それなりの訴求力を持っていた。
欧州メーカーがディーゼルに傾注したのは、トヨタが実用化したハイブリッド車(HV)対策だったという。HVの実用化で大きく遅れをとった独VWなど欧州メーカーは、ディーゼルのほうが低燃費で排出ガスもクリーンだと訴求し、環境保護に前向きであるとのイメージ戦略を展開した。日本でも自動車ジャーナリストの多くが、いつものように「欧州に見習え」とディーゼル車を称賛していたっけ。
初代プリウスが発売されたのは1997年。2010年代になってトヨタが保有する多くの特許が期限切れとなり、欧州メーカーはHVに背を向けていた態度を一変して続々とHVやプラグインHVを発売し始めた。皮肉なことに、不正が暴かれたことでディーゼル車に見切りをつけやすくなり、欧州メーカーはPHVやEVへと方向転換した(排出ガス規制が厳しくなるので、電動化以外の選択肢はないのが現実)。
さらに、VWやダイムラーなど独自動車メーカーが1990年代から、鋼材調達のほか部品メーカーの選定や部品価格、技術の仕様、ディーゼル車の排ガス技術などで業界ぐるみの常習的な談合を行っていた疑いが出てきた。ドイツ史上最大級のカルテル事件になると独誌が報じたが、事実であれば、独自動車業界が反社会的で環境汚染でも確信犯だったことになる。
ディーゼル車を欧州メーカーが売りまくった結果、欧州の都市部ではNOxやPM2.5など微小粒子状物質による大気汚染が深刻化し、例えば、仏パリでは市長が「2020年までにディーゼル車をパリから一掃する」考えを表明したり、ディーゼル車の市内走行を制限する独の自治体が現れたりしている。すでに欧州でディーゼル車の新車販売は低迷しているそうだが、今回のダイムラーの大規模リコールと独自動車メーカーの談合疑惑は、ディーゼル車の終焉を早めることになるだろう。
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