2017年8月2日水曜日

実感としての脅威

 北朝鮮がロフテッド軌道で発射した弾道ミサイルが、日本海の積丹半島の西200km、奥尻島の北西150km付近の日本の排他的経済水域内に落下したことから、その周辺海域を漁場とする漁師らから不安の声が上がった。落下する弾頭らしき光が撮影されていたことは、北朝鮮のミサイルの脅威を可視化する効果があった。

 すでに日本全土を射程に収める中距離ミサイルを北朝鮮や中国が多数配備しているのだから、いつでも日本全土どこでも攻撃される可能性が現実に存在していたのだが、恐怖心や警戒心が一般に高いとは見えなかった。北海道の近くに北朝鮮のミサイルの弾頭が落下するらしき光の映像は、驚異の実感をもたらしたことは確かだろう。

 米国政府も現実の脅威として理解し始めた。今回の発射実験から、すでに北朝鮮のミサイルが米国本土の大半に到達可能だと見なしたと伝えられる。混乱が長引いて陣容固めが大幅に遅延しているトランプ政権が、内政が思うようにいかない時には外部に敵をつくって批判の矛先を逸らすという戦略で、北朝鮮をISに代わる第1の敵目標に設定する条件が整いつつあるように見える。

 米軍による北朝鮮攻撃に伴う想定被害が大きすぎて、軍事力の行使をトランプ政権は選択肢から外し、中国に北朝鮮の管理を委ねた。その狙いは、①米国外における軍事的負担の増加を避けるとともに、②中国に責任を負わせ、③中国と北朝鮮の「親密」な関係を国際的に周知させることだろう。

 トランプ政権は、中国が北朝鮮を抑えることができれば歓迎だろうが、中国が北朝鮮を抑えることができなければ、北朝鮮を批判し、北朝鮮を管理しない中国も批判できるようになる。だが、こうも北朝鮮が挑発を繰り返すと、中国の陰に隠れようとしたトランプ政権が引きずり出される。

 トランプ政権が北朝鮮を現実的な軍事的脅威であると認識しても、軍事力の行使は選択肢にはないだろうから、経済制裁を強めるしかない。その主な対象は、北朝鮮と取引がある中国企業であり、そうした中国企業と取引がある中国の銀行になるだろう。それらを国際金融から締め出す。

 問題は、第一に、そうした国際金融面からの中国締め付けが中国経済にダメージを与える可能性があり、小出しにしか実行できないことだ。中国経済が影響を受ければ米国経済にもダメージが波及する。第二に、北朝鮮も中国も政治的な目的のためには手段を選ばない体制であるため、米国の行動に対する予想外の反応をする可能性があること。外部から予測不可能な反応をする独裁国家は国際社会にとって常に脅威だ。

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