フグの卵巣には毒が含まれているので、食べることはできない。だが、北陸には、2年以上、塩漬けや糠漬けにすることで毒素をほぼ消失させ、食材としている地域がある。毒素がほぼ消えるメカニズムは解明されていないそうだが、江戸時代から食べられているという。
世界各地には昆虫食の文化があり、例えばタイの屋台では、素揚げしたり、茹でたり、炒めたりした様々な昆虫が売られている。バッタやセミ、ケラ、タガメ、ゲンゴロウなどのほか、サソリも食べられている。試した人によると、苦みや雑味の強いものが多いそうだ。
日本にも昆虫食の文化があり、ハチやイナゴ、ザザムシ、蚕のサナギなどを佃煮などにして食べてきた。ただ、昆虫には寄生虫がいることがあるので、火を使って調理することが世界の昆虫食では共通している。生で食べるのは危険だと長い歴史の中で人々は感知したのだろう。
昆虫ではないが、奇妙な食文化として有名なのはフランスでのエスカルゴ食だ。エスカルゴはカタツムリの1種で軟体動物門の陸貝。殻のあるものがカタツムリで、殻のないものがナメクジ。エスカルゴの調理は、内臓を取り除き、下味をつけるために長時間煮込むなど手間と時間がかかるそうだ。
日本にもカタツムリが生息しているので、フランス料理で食べられているのだから試してみるかと、そこらでカタツムリを捕まえて調理するのは危険だ。カタツムリやナメクジには広東住血線虫という有害な寄生虫を保有しているものがある。
この寄生虫により最近、男性が死亡したことがニュースになった。豪シドニーの自宅の庭でワインを飲んでいた男性が2010年、ふざけてナメクジを食べ、寄生虫に感染して420日間も昏睡状態に陥り、意識が回復した後も全身がまひして24時間介護が必要だったという。寄生虫が脳に入ると髄膜炎を引き起こすとされる。
ナメクジやカタツムリに素手で触ることで寄生虫に感染する可能性があり、ナメクジやカタツムリに触れた手はよく洗い、生野菜もよく洗うか加熱することで感染を防ぐことができるという。
長い歴史の中で人類は様々なものを食べて試して、何は食べることができるか、何は食べては危険かを見いだしてきた。火を使い加熱することの発見で食材の範囲は大きく広がっただろう。その延長に現在の世界各地の豊かな食文化があるのだが、新しい食材への挑戦者の歴史に埋れた「犠牲」も多かったに違いないと今回の男性の死亡が示唆している。
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