2015年7月25日土曜日
美か醜悪か
1961年の断交から54年ぶりに米国との国交を回復したキューバは、米国が経済制裁を続けていたため、断交以前に輸入された1950年代製の米国車が現役で走っていることで知られている。現役といっても“満身創痍”で、エンジンを始めパーツ類は交換され、外見だけが当時のオリジナルを保っている車が多いという。綺麗に塗装されているのはタクシーだそうで、今後は米国から押し寄せる観光客の人気になりそうだ。
1950年代の米国車は、長く塊感のあるボンネットを持つ4ドアセダンが多く、テールフィンをつけることが流行ったので、トランクが長くなった車もある。丸形のヘッドライトを持つフロントマスク下部にある頑丈そうなバンパーはシルバーに輝き、ラジエターグリルにも金属が多用されている。
人間の表情に例えると、歯を剥き出して笑ったようなフロントマスクもけっこう多く、全体の伸びやかさもあって1950年代の米国車のデザインは、当時の米国の豊かさとパワーを表現しているようにも見える。ただ、セミクラッシックカーとして見るから、そうしたデザインも抵抗なく受け入れるが、発表された新車のデザインが同様のものだったなら、受け止め方は違ってくるかもしれない。
これらの1950年代の米国車のデザインが、美しいかというと、意見が分かれるだろう。燃費など考慮しない時代だから、空力などはデザイナーの意識にはなかっただろうし、ジェット戦闘機からヒントを得たというテールフィンには実用的な機能はないだろうし、歯を剥き出して笑っているようなフロントマスクは過剰な装飾そのものだ。
もちろん、美醜の判断は主観による。さらに、美醜の判断と、好き嫌いは別物だ。美しいデザインだと多くの人が認めた車よりも、力強さを感じさせるデザインの車のほうが売れたりするし、高級そうに見えることも大切かもしれない(美醜や力強さ、高級のイメージも時代とともに変化する)。
最近発表された新型ミニバン「シエンタ」。メーカーは「魅力は、なんと言ってもその新鮮な見た目」「アクティブ感と使いやすさを両立したエクステリア」などと宣伝につとめるが、パッと見た印象は「ひでぇデザインだな」。フロントもサイドもリアも、意味のない線や面で構成されている。機能性を重視するだけではミニバンは皆同じような形になってしまうから、個性を演出したのだろうが、個性があればいいってものではないゾと忠告したくなる。
車のデザインには世界的な流行があり、意味のない線を多用する車種は各国に増えた。シエンタのデザインに刺激を受けて各国のメーカーも今後、意味のない面や色分けを新型車で試みるなら、「ひでぇデザイン」の車が珍しくなくなるかもしれない。50年以上も後の人は「あの時代には、奇妙なデザインが流行ったんだね」などと言うのかな。
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