2015年10月14日水曜日

移民が変えるもの


 欧州への移民・難民の流入が止まらない。独メルケル首相が移民・難民の受け入れを表明してから、ドイツやEUを目指す流入圧力が一気に高まった。周辺国は悲鳴を上げ、ドイツも大量の移民・難民への対応に窮して受け入れを制限し始めたから、EU内外で、押し寄せる移民・難民とそれを制限しようとする各国当局がもめたりしている。

 ドイツやEUへの「入口」が開いたと一度アナウンスされたのだから、移民・難民が殺到するのは当然だ。これからも数の増減はあるだろうが、ドイツやEUへの定住を目指す移民・難民は存在し続ける。紛争や独裁、貧困、成長停滞は中東やアフリカなど欧州各国の旧植民地でこれからも続くだろうから、ドイツやEUに行けるチャンスを逃すはずがない。

 ドイツには今年、80万人とも100万人以上ともいわれる移民・難民が押し寄せるといわれている。全員が定住を認められるわけではなく、紛れ込んだ東欧諸国などからの経済移民は国に返される。シリア以外からの移民は大半が帰国させられるかもしれないが、それでも相当の人数をドイツは受け入れる。

 受け入れ側の経済的な負担はかなりのものだろう。移民・難民には仕事がなく、自活できないので、衣食住の世話が必要だし、言葉や生活習慣など、受け入れ国にとけ込むことができるように支援も必要だ。子供がいれば教育面の配慮も必要だし、国内には移民・難民の受け入れに強硬に反対する勢力もいるので、警備もしなければならない。

 受け入れ側も大きな負担を余儀なくされる移民・難民について人道主義や経済的観点から論じられることが多いが、移民・難民は受け入れ国に食文化などを持ち込み変化ももたらす。また、数十年後には、ドイツやEUで生まれた移民・難民の子供たちが大人になる。彼らはドイツやEUにとけ込んで暮らしながら、シリアなど親の出身国への関心も持ち続けるなら、世界市民的な感覚を持つかもしれない。

 ドイツやEUに定住した移民・難民は選挙権を持つだろうし、そうした人々の中から政治家が誕生するかもしれない。かつて欧州から米国に移民した人々の子孫から多くの政治家が出て米国の政治に影響を与えたと同様に、中東などから移住した子孫の政治家が欧州の政治に影響を与えるようになる可能性はある。

 先祖からずっと同じ国で生きてきた政治家と、生きる国を選んで移住した親などを持つ政治家とでは、世界観がおそらく異なるだろう。世界のどこに住むかは個人が決めることで、国家が関与すべきではないと考えるなら、移民・難民の受け入れを後者は当然視し、受け入れを制限する国に対しては批判的になるだろうし、移民・難民の受け入れに関する国際的な規範制定にも前向きになるだろう。

 ただ、数十年後にも移民・難民の出身国が現在と同様であるとは限らない。中東やアフリカの欧州各国の旧植民地が新たな民族自決により解体・分裂する可能性はあり、自分たちで新たな国づくりを始めたなら移民・難民は減り、他方で、様々な矛盾・歪みに耐えきれずに大国が分裂、新たな移民・難民の排出源になるかもしれない。受け入れたくなくても日本に移民・難民が押し寄せる可能性はある。

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