2017年3月11日土曜日

形式的な議会にも役割

 共産党が1党独裁体制を続ける中国にも議会があり、全国から三千人近い代表を集めて年1回開催される。それが全国人民代表大会(全人代)で、唯一の立法機関(1院制)であり国家権力の最高機関とされるが、予算案や法案を承認するだけで否決することはしない。代表も人民の直接選挙で選んでいない。

 今年の全人代の政府活動報告では、①2017年のGDP成長率の目標を6.5%前後とし、成長鈍化を容認、②習近平総書記が中国共産党中央の「核心」だと強調、③過剰生産能力の解消を続ける、④環境汚染対策の強化、⑤領海・国境防衛などの管理強化、⑥香港・台湾の「独立」否定、⑥農村の貧困人口の減少などが掲げられた。

 報道によると、政府活動報告で大きな拍手が起きたのが、「携帯電話料金とデータ通信料のうち、長距離の上乗せ料金を年内に廃止する」とした時だった。ほかにも、都市部の新規就業者数は1100万人以上とし、農村部から1300万人以上を都市部へ転籍・定住させ、小規模企業の所得税優遇措置の適用枠を拡大するなど、生活の向上をアピールする施策を打ち出した。

 この程度でも、今年は人民の生活への配慮が目についたと報じられるのだから、1党独裁体制下における人民の生活は、独裁する権力側から見て優先順位が低いであろうことは想像に難くない。一方で、鉄道建設に8千億元、道路・水運へ1兆8千億元などインフラ投資で成長を支える構図は変わっていない。

 成長に陰りが見られる中国経済の懸念材料は、地方政府と企業の過剰債務だ。巨額に膨れ上がっているともされるが、実態は不透明。政府活動報告では、企業の保有資産の証券化を進め、債務の株式化で過剰債務を解消するとしたが、債務整理に道筋がついたのかどうかは不明。

 全人代は形式的な議会であるとはいえ、中国共産党の方針や具体的政策が公開される場であるから国際的にも注目される。といっても、中国の公的発表は鵜呑みにできるものではないことは知られているので、中国政治の動向を推察する目安程度にしかなるまい。

 肝心なことは中国共産党の内部で決まり、それを人民も外国メディアも知ることは困難だ。人治国家といわれる中国では共産党内の権力構造も人間関係に左右される。だから、全人代で習近平国家主席と李克強首相が握手しなかったとか、目も合わせなかったなどということが、今後の中国政治の動向を占うものとして熱心に報じられたりする。形式的な議会にも、それなりの役割はあるようだ。

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