韓国の国会が弾劾訴追した朴槿恵大統領に対して、憲法裁判所の裁判官8人全員が弾劾を妥当だと判断し、朴氏は罷免された。裁判官は「大統領の違憲・違法行為は国民の信任に反し、許し難い重大な行為だ」と厳しい。朴氏は不訴追特権を失うことになったので検察の捜査の対象になり、刑事罰に問われる可能性も出てきた。
次期大統領選の投票日は5月9日に決まったが、大統領代行を務める黄教安首相は不出馬を表明した。保守系の有力候補がいなくなったため、左派系の野党候補から次の大統領が誕生する可能性が高い。朴大統領を弾劾に追いこんだ世論の高まりを前に、保守系が闘わずして不戦敗に甘んじるしかない社会の状況かと見える。
多くの人々が街頭に出て抗議活動を続け、流血を伴わずに権力者の退場に追い込んだのだから「韓国の民主主義の素晴しい成果だ」と韓国内などでは称讃の声が多いという。街頭行動というと最近では「アラブの春」があったが、リビアは事実上の分裂状態、エジプトでは強権政治が復活し、シリアは内戦状態になるなど混迷しており、それに比べれば韓国の“成果”が輝いて見えるのかもしれない。
だが、民主的な選挙が行われていない国と、民主的な選挙が行われている国とでは、街頭行動の性格は異なる。どちらも人々の直接的な意思表示であるが、前者は、圧政に抗して立ち上がった人々が権力者の退陣を求めるというイメージだ。後者は、個別の問題について人々が賛否を主張するというイメージ。
民主的な選挙が行われている韓国で、権力者の退陣を人々が街頭行動で求めたのは、韓国流の民主主義の限界を示している。限界とは、人々が直接民主主義を指向し、議会など間接民主主義への信任が弱いことだ。それは、議会が機能していないことの反映であろうが、街頭などでの直接行動に対する圧倒的賛美が人々の意識の根底にあると見え、議会が軽視されるという堂々巡りにもなる。
韓国の現状は、民主主義の成熟の結果なのか、それとも民主主義の未熟さを示すものなのか。自由な選挙が実施されているのだから、制度としての民主主義が韓国に存在しているのは確かだが、揺れ動く民意は、間接民主主義の歩みの緩慢さに我慢できず時に爆発する。北朝鮮に融和的だという左派勢力が民意を煽っているともいい、政治の座標軸も民意につれて揺れ動く。
揺れ動き、時には爆発することを正しいとする民意を抑え込むことは不可能だろうから韓国は、民意を的確に反映させる民主主義の制度を新たに構築するしかないだろう。それは、住民投票を大幅に取り入れる直接民主主義を拡充し、民意が揺れ動くたびに、街頭行動による圧力ではなく住民投票で決着をつけることだ。
予想されることは、住民投票の結果で政治の方向性が変わったり外交方針が変わったりして、韓国の政治がより不安定化し、諸国との安定した外交も損なわれることだ。内政は混乱し、諸国からまともに相手にされなくなる可能性があるが、民意を政治に反映させた結果なのだから韓国民が責任を負うしかない。そうした結果責任を韓国民が直視することは、韓国の民主主義が前に進むために必要なステップだろう。
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