マルコ伝福音書によると、イエスは死後、墓に葬られ、安息日が終わった後、女性の信者たちが墓に行ってみると入口が開いており(当時の墓は洞窟状に掘った広いもので、入口を円盤状の石で塞いでいた)、天使がイエスの復活を告げたという(中村圭志著『聖書、コーラン、仏典』)。
キリストの墓と伝えられている場所に立つのがエルサレム旧市街にある聖墳墓教会だ。近ごろ行われた調査で、教会の中にある埋葬用の洞窟(横穴)から採取された残留物を科学分析した結果、墓は古代ローマ時代には存在していたことが確認されたという。イエスが埋葬された場所だとの証明は難しいが、否定することも難しい。
イスラム教徒にとってもエルサレム旧市街は大切な土地である。預言者ムハンマドが一夜のうちに天に昇って神の声を聞く旅を行った時に、天に昇るために足をかけたのが聖なる岩とされ、ドームで覆った。岩のドームと称される神殿は聖地とされている。
この岩はユダヤ教にとっても、信仰を試されたアブラハムが、息子のイサクを神のために捧げようとした場所として聖地とされている。また、旧約を受けつぐキリスト教にとっても聖地となっている。
岩のドームがある神殿の丘の西側の外壁が嘆きの壁で、ユダヤ教徒にとって大切な場所だ。紀元前10世紀にソロモン王が神殿を建て、破壊されては再建されたものの、紀元1世紀にローマ軍によって破壊されたエルサレム神殿の唯一の遺構だ。ユダヤ教徒の歴史と物語を実感させ、祖国の喪失を嘆き、その再建と復興を祈る場所だ。
聖墳墓教会はカトリック教会、東方正教会、コプト教会などが共同管理し、信者以外も入場できる。岩のドームはイスラム教徒が管理しており、ムスリム以外は建物の中に入ることは禁じられている。嘆きの壁はユダヤ教徒が管理しているが、神殿の丘はイスラム教徒が管理しているので、ユダヤ教徒は入ることができない。
2000年にイスラエルのタカ派政治家シャロン氏が神殿の丘を強行訪問して挑発、パレスチナ人の第二次インティファーダを引き起こした。3つの宗教の聖地が複雑に存在する東エルサレムを含めてエルサレムがイスラエルの首都であると認定した米トランプ氏。中立的な立場と見なされることを放棄した米国が、中東で失うものは多い。
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