「あいつは寄生虫みたいな奴だ」と言われるより、「あいつはヒトカイチュウみたいな奴だ」と言われた方が具体的なイメージが惹起されるので、言われた側は嫌な気分が増すかもしれない。ただ、ヒトカイチュウが何かを知っている人は少ないだろうから、言われた側は「はあ?」と怪訝そうに聞き返すかな。
ヒトカイチュウには世界で10億人以上が感染しているといわれ、人間と最も「付き合い」が多い寄生虫だ。野菜などと一緒に回虫の卵を人間が食べることで感染する。体内に入った卵は小腸で孵化し、幼虫は小腸から血液やリンパ液の流れに乗って肝臓、肺、気管を経て小腸に戻り、成虫となって卵を産み始める。
かつて日本でもヒトカイチュウの感染率が高かったのは、農作物の肥料として下肥が使われていたからだ。都会でも感染率は高かったが農村では更に高かった。だが、化学肥料の普及と便所の衛生状況の改善、衛生知識の普及などにより、現在では感染率1%未満といわれ、学校での検便も廃止された。
日本ではほぼ「解決済み」のヒトカイチュウ感染だが、韓国への亡命を図って銃撃され、負傷した北朝鮮兵士の体内から、最大27cmの寄生虫が50匹以上も摘出されたというニュースが話題となった。北朝鮮では野菜などの肥料として人糞を用いているためとみられている。
負傷した北朝鮮兵士は栄養不良の状態にあり、ヒトカイチュウに栄養を吸い取られ過ぎたとも、兵士の腹中にはトウモロコシが少しだけあったことから、兵士でも厳しい食糧事情の中に置かれているともみられている。兵士はB型肝炎にかかっていて、犬に寄生する種類の寄生虫も見つかったとも報じられ、衛生環境が悪いことを示している。
東北や北海道の日本海沿岸に北朝鮮からとみられる木造船や遺体の漂着が続いている。生存していた乗員が1カ月も漂流していたと言い、白骨化して漂着した遺体もあり、古い木造船で出漁したものの冬の荒れる日本海で過酷な状況にさらされていたことがうかがわれる。背景には食糧確保が急務という国家事情があるとみられ、衛生環境などには手が回らない状況だろう。
さて、日本でヒトカイチュウ感染は根絶されたわけではなく、有機栽培野菜や輸入野菜の生食の増加で増えることが懸念されている。また、ガーデニングや家庭菜園などの作業で、土の中にいる回虫が手を介して口に入る可能性もあるといい、手洗いを徹底することが必要だという。
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