2018年7月4日水曜日

難民の大量死と欧州

 地中海でリビア北岸から欧州に向かっていた密航船の沈没が相次ぎ、200人以上が溺死したと報じられた。海に落ちて行方不明になった人も多く、今年の地中海での死者と行方不明者の合計は1000人を超えたというから、減少傾向にあるとはいえ欧州を目指す移民・難民が過酷な状況にあることは変わっていない。

 リビア内戦に欧米を主とした多国籍軍が軍事介入してカダフィ体制を崩壊させたが、その後は3つの政治勢力が並立し、各地で武装勢力が活動するなど国家としては崩壊したままだ。欧州への渡航斡旋で稼ぐ密航業者が多く存在し、密航希望者はアフリカ諸国やアラブ諸国から次々と集まるのだろうから、リビアから欧州への移民・難民は減りそうにない。

 当時のカダフィ政権による反体制派デモ隊への攻撃を人道に対する罪だと批判して欧州は、リビアに対する軍事介入に踏み切った。人道を掲げて行動し、悪名高いカダフィ政権を崩壊させたのだから欧州は満足しただろうが、それが現在の地中海での移民・難民の大量死につながっている。

 「人道に対する罪を看過しない欧州」というのが本当なら、地中海での大量死という非人道的な状況に対応する方法は、無制限の受け入れしかない。欧州が崩壊させたリビアで治安が回復する見込みはなく、移民・難民の「供給」圧力は高まったままだ。過酷な状況に置かれた移民・難民を、人道を重視する欧州は放ってはおけないはずだ。

 だが、欧州は移民・難民を明確に拒否し始めた。EU加盟国が移民・難民を分担して受け入れると決めたが、拒否する国々が現れ、各国で反移民を掲げる政党が勢力を伸ばし、イタリアの新政権は移民・難民を乗せた船舶の寄港を拒否し始めた(イタリアには過去4年で移民60万人以上が流入)。

 EUは首脳会議を開いたものの、移民・難民を積極的に受け入れることはできず、全面的に拒否することもできなかった。合意したのは①EU加盟各国が自主的に新たな移民施設を設置、②北アフリカ諸国への金融支援拡大、③密入国の斡旋を行うギャングを壊滅、④EU域内での移民の移動制限、⑤アフリカ大陸への投資拡大などだ。

 欧州以外の他国に対しては人道を振りかざし、軍事介入して政権を倒し、国家を崩壊させることまで行うが、自国に影響が及ぶとなると人道を後回しにする。欧州のいつもの二重基準だと冷ややかに見ていればいいが、そうしている間にも地中海で死んだり、行方不明になる人々がいる。

0 件のコメント:

コメントを投稿