毎年の健康診断のたびに血圧が高いことを指摘された友人は、減塩を意識するようになり、漬物には箸をつけず、お椀に半分ほどしか味噌汁を入れず、ラーメンなどのスープも残すようになった(以前は必ずスープを飲み干していた)。そうした食事作法が身につくには数年かかったというが、今では意識せずに自然に減塩の薄味の食事を楽しんでいるという。
醤油やソースを使わないように心掛けるようになったので、外食時にも醤油やソースを使わないことがあり、店主や周囲の客から怪訝な顔をされることもあるという。だが、すっかり薄味になれた友人は「例えば、とんかつにソースをドバドバかけて食べると、ソースを味わっているだけだ。揚げた肉の味なんか分からないだろう」とし、調味料を使うなら最低限にすべきだとする。
天ぷらなどを塩につけて食べることを推奨する飲食店は珍しくなくなったが、友人は「塩は人体に必要なものであり、外部から取り入れるしかないので、塩を美味しいと感じるのは人間の本性だ。だから、塩をつけて食べることで料理を美味しいと感じさせるマジックが働く」と言い、「平凡な料理でも、塩をつけて食べさせることで客に美味しいと錯覚させている」と厳しい。
塩辛いものが以前は好きだった友人だが、薄味に慣れてからは「味付けが濃すぎるから」と外食を好まなくなった。移動が多い仕事の関係で昼食は外食になるというが、「中華は濃い味付けで出される料理が多いので行かなくなった。和食かカフェで、卓上の調味料を使わず素材の味を楽しむことができるような店を探す」。
そうした店が見当たらない時に友人は見つけた飲食店に入るが、「我慢して、濃い味付けの料理を食べることもあるが、濃い味付けに塩辛さを感じることが多く、食べている間はずっと気になる。気になるのは、塩分量が多いことではなく、塩辛さという単調な味付けしかできていないことで、うまさや美味しさを提供しようという意欲が店側に欠如している」と厳しい。
濃い味付けやタレなどに頼った料理の全てを友人は否定はしない。「例えば、ウナギの蒲焼きは素材の味ではなく、タレの味を楽しむ料理だ。素材のウナギがどんな味なのか白焼きを食べたことがない人には分からないだろう。蒲焼きを楽しむことは濃厚なタレの味を楽しむことだから、たまには食べに行くよ」、続けて「山椒は好きだから、俺は多めに掛ける」と塩分を含まない調味料にはおおらかだ。
薄味になれたことで友人は、素材の味を楽しむことを発見した。刺身を醤油にどっぷり浸してから食べる人もいるが、「それでは魚の味が霞む。醤油の味のかなたに魚の味がぼんやり浮かんでいるようなもので、魚種による味の違いを楽しむには適さない」と友人は批判的だ。薄味になれて味覚が繊細になったらしい。
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