2024年7月6日土曜日

現世と神

 パレスチナのガザでの戦闘でイスラエルの首相は「ハマスの壊滅が近づいている」とし、国防相はハマスが「壊滅しつつある」と発言したという。イスラエルはヨルダン川西岸でのユダヤ人入植地の建設を続けていて、約13km2の土地を国有地と宣言し、領土拡大に向け実効支配地の拡大をやめない。

 イスラエルはパレスチナを国家として認めていないので、今回のガザへの侵攻は国家間の戦争ではなく、テロ組織との戦闘との位置付けだろうが、イスラエルに敵対する相手に対して容赦なく圧倒的な武力で制圧するという姿勢は変わらない。イスラエルの軍事行動や入植地拡大には国際的な批判が高まっているが、国際社会がナチスドイツのユダヤ人の大量虐殺に無力だった歴史もあってかイスラエルは、そうした批判を無視する。

 シオンの地を追われて約1900年、ユーラシアの各地などで流浪の民として生きてきたユダヤ人がパレスチナの地にイスラエルを建国したのは第二次大戦後のことだった。ユダヤ人とはユダヤ教を信仰する人々のことで、人種や民族という概念で捉えることはできない。ユダヤ教の信者がユダヤ人だが、米国に住む約750万人のユダヤ人は政財界やメディアで大きな影響力を持つとされる。

 ユダヤ教は、唯一絶対で万物の創造主である神が存在するという宗教で、神から与えられた律法を守ることなどを信者に求め、この世の終わりには神が派遣したメシア(救世主)が来てユダヤ人だけが救われるとする。唯一絶対の神の存在を信じるユダヤ人は、離散して移り住んだ土地で迫害を受けたり、大量虐殺などの経験を経て生き延びたのだから、現世において神の救済はないと見極めたのかもしれない。

 ユダヤ教が現世での救いを約束する宗教であったなら、ナチスドイツによる大量虐殺などの苦難の歴史を体験した人々はユダヤ教を見捨てただろう。人間から神への一方的な信仰だけが存在するとし、現世は神が人間を試す場で、神の裁きが死後に待っているというのは検証不可能のストーリーだが、信じることしか人間にできることがないから信仰は保たれた。

 現在、パレスチナでは同じ神を信じるユダヤ教の信者たちとイスラム教の信者たちが殺し合っている。唯一絶対の神の存在を信じる人たちが無慈悲に殺し合っている光景は、現世には神が不在であり、神による救いはないと証明している。また、同じ唯一絶対の神を信じる人たちだから、神の正義は自己の側にあるとして妥協の余地がなくなっているようにも見える。

 現世に神が関与しないと身に染みて経験したユダヤ人は、自分ら人間の都合のいいように現世では行動する。神のためではなく、生存のために戦いを続け、無慈悲に対立する側の人々を殺し続ける。そうした行動を正当化するのは、ユダヤ人の歴史意識と宗教だろう。どちらもストーリー(物語)だが、そうしたストーリーの中に身を置いて生きる人々が殺し合っているのが現世だ。

0 件のコメント:

コメントを投稿