フォルクスワーゲン(VW)がドイツ国内での工場閉鎖を検討していて、工場閉鎖は創業以来初めてだと報じられた。VWはドイツ国内の12万人以上の従業員の雇用を保証する協定も破棄し、労働組合との交渉が続いている。稼ぎ頭だった中国市場で中国EVメーカーが台頭してVWはシェアを失いつつあり、コスト削減へ縮小せざるを得なくなった。
VWは以前、トヨタなどのハイブリッド車に対抗するためディーゼル車に注力したが、排気ガス不正が暴露されて好調だったディーゼル車販売は停滞し、自動車産業で主導権を握るとのEUの戦略もあってVWはEV一辺倒へと舵を切った。だが、割高なEVの販売は補助金頼みから脱することができず、さらに割安な中国製EVが大量に輸出されてきて欧州のEV市場は侵食され、VWのEV一辺倒の戦略は裏目に出た。
経営戦略のミスを繰り返したのだからVWの経営が揺らぎ、工場閉鎖に追い込まれたのは当然だ。「これからはEVだ」と欧州などのメーカーもEVの新車を続々投入したが、期待通りには売れず、戦略の再考を余儀なくされている。メルセデス・ベンツやボルボ、GM、フォードなどはEVへの投資見直しを表明し、売れているハイブリッド車を増やすそうだ。
売れない商品から売れている商品へと切り替えるのは当然の経営判断だが、市場動向に追随しているだけとも見える。VWはディーゼル車やEVなどを投入し、市場を自分たちの思うように塗り替えようとしたが、失敗した。自分らが考える「理想的」な商品を投入して、市場を操作しようという考えが破綻したのだが、内燃エンジン車の禁止とEV転換はEUの方針でもある。
構造的に新しい商品の投入により、既存市場に大きな需要が生まれるという代表例はテレビだ。液晶テレビの誕生でブラウン管テレビの陳腐化が明らかとなり、世界のテレビ市場で大きな買い替え需要が生まれたが、液晶テレビに注力した韓国や中国の家電メーカーが急成長することにもなった(日本などの家電メーカーは需要を取り込めず、衰退した)。
飽和市場でもメーカーはモデルチェンジなどで既存商品の陳腐化と新規需要の開拓を行うが、構造的に新しい商品の投入は市場の飽和性を消滅させるので、大きな需要を新しく発生させる。EUがEV転換を強制するのは、飽和した先進国の自動車市場で欧州メーカーに主導権を取らせようとの狙いがあったのかもしれないが、割高なEVは浸透せず、中国メーカーのEVが市場を席巻することを助けた。
EUは自動車市場を強制的に変えようとして失敗した(現時点では)。EV転換を正当化する根拠は気候変動論で、「CO2削減は正しい」という主張だ。EUは気候変動論を効果的に拡散させて世界で主導権を取ろうとしているようにも見えるが、市場(人々)はそっぽを向いて、EV転換は進まない。EUは中国製EVに高関税を課すが、それで欧州メーカーのEVが売れるようになるのか新たな実験が始まった。
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