2014年7月19日土曜日
混乱が続くリビア
シリアやイラクでISISが制圧地を拡大し、実質的に国家の分裂が進行していることは連日大きく報じられていたが、さらにイスラエル軍が空陸からガザに対する攻撃をエスカレートさせるなど、中東の情勢は揺れ動いている。強権的な政権に対する民衆からの異議申し立てが各国で相次いだ「アラブの春」は、すっかり今では霞んでしまった印象だ。
独裁を続けていたカダフィ政権を倒してリビアにも「春」が来ると期待されたが、「春」の代わりに混乱が続いている。7月に入って首都トリポリの国際空港周辺で、空港を管理していた民兵勢力に対してイスラム系武装勢力が攻撃を加え、戦闘になった。イスラム系武装勢力と民兵勢力の衝突は以前から各地で続いており、日本の外務省は退避勧告を発している。
リビアでは2011年2月に反政府デモが始まり、治安部隊との衝突が続き、多数の死傷者が出る中で、暫定政権「リビア国民評議会」に次第に反政府勢力が結集した。軍事的にはカダフィ政府軍が圧倒的に優勢だったが、米英仏を中心としたNATO軍がカダフィ政府軍への空爆を開始したことなどで反政府側は持ち直し、やがて首都トリポリを反政府側が制圧、逃亡したカダフィは殺された。
カダフィという「重し」が外れてみると、リビアに国としての求心力よりも、遠心力のほうが強く作用した。もともと多くの部族が割拠して対立する構造があり、さらには石油の利益配分をめぐっても不満が内在していた。この地域は歴史的に様々な帝国に入れ替わり支配され、20世紀になってからはイタリアに植民地支配された。独立したのは1951年で、カダフィらがクーデターを起こしたのは1969年。
リビア内戦では多くの反体制勢力が武器を持って戦ったが、内戦が終わった後に大型兵器以外の武器は回収されていない。内戦終結後には議会選挙が実施され、憲法制定に向けて歩み始めているが、多くの部族が一つの国としてまとまらなければならないという“必然性”が乏しいリビアなので、治安状況は悪いままだ。内戦時にはイスラム過激派勢力も入り込んだ。
「アラブの春」は「アラブ世界の流動化」開始の号令であったのかもしれない。エジプトは軍政に逆戻りして強権で国としてのまとまりを維持しているが、シリア、イラクの内戦は国家分裂を予感させる。リビアでも内戦が始まると、やがて分裂に向かう公算が大きい。どこかの1国でも実際に分裂すれば、植民地の境界を国境としている他の国でも、内部分裂を促進させる懸念がある。
「独裁」の反対語は「民主」とつい考えやすいが、アラブ世界では「民主」ではなく「混乱」だった。これには、植民地支配された諸民族混住の地域が、そのまま独立したという歴史が大きく関連している。多くの民族が混在している旧植民地には、新たな民族自決が必要なのかもしれない。ただ、その先にあるものが「安定」であるのか、さらなる「混乱」であるのかは誰にも分からない。
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