2014年7月30日水曜日
それぞれの脅威
ウクライナ東部で起きたマレーシア航空MH17便の撃墜事件により、欧州はロシアに対する批判を強めている。ウクライナ東部で行動する親ロシア派の武装勢力がミサイルを撃った“犯人”だと見られているが、民間機と知って狙ったのか、ウクライナ軍機と誤認して狙ったのかなど、墜落に至る事実関係はまだ不明だ。
この親ロシア派の武装勢力の正体にも諸説あって、ウクライナのロシア系に加えて、ロシアの諜報関係者が加わっているとの見方や、チェチェン紛争などに参戦していた連中が流れてきているとの見方など様々だが、ロシアが何らかの関与をしているとの認識は共通だ。一方のウクライナの「民主化」活動家にもネオナチ勢力のほかに、欧米の支援があるともいうので、ウクライナを舞台にした、欧米とロシアの代理戦争なのかもしれない。
ロシアのクリミア併合以来、欧州メディアはロシア批判のボルテージを上げていたが、それがマレーシア機撃墜でいっそう高まった。例えば、英Economist誌は「この事件は、プーチン氏がもたらしてきた害悪の大きさを示すものでもある」「プーチン氏の支配下でロシアは昔に逆戻りし、もはや真実と嘘の見分けがつかず、事実が政権の都合で利用される場所になってしまった。プーチン氏は愛国者を気どっているが、実際のところは危険人物だ」「欧米は、プーチン氏のロシアが根本的に敵意を抱いているという不愉快な真実を直視すべきだ」などと攻撃する。
欧米ではロシア批判の高まりで、プーチン憎しという感情を隠さない記事も受け入れられるようになったと見えるが、こうしたロシア批判が許容されるのは、ロシアに対する潜在的な恐怖心が欧州にあるからだろう。それは冷戦期の旧ソ連に対して培われたもので、クリミア併合という現実でロシアに対する欧州の恐怖心が“正当化”されたようでもある。
ロシアに対する欧州の恐怖心は日本では実感できないものだろう。ちょうど、中国に対する日本の警戒心が欧州では実感できないことと対応する。ロシアの領土拡張の動きに対して欧州は敏感に反応するが、中国が領土拡張に動いても、欧州にとってはヨソ事で、反対に中国との経済関係の強化を怠らない。経済関係が強まるにつれ、欧州は中国に対する政治的批判をしなくなった。
現実的な脅威とは、欧州にとってはロシアであり、日本にとっては中国である。世界的に大きな影響力を持っている欧州メディアが、ロシアの脅威を書き立てると世界もロシアに対する警戒感を高め、欧州メディアが日中の緊張について「中国も悪いが、日本も緊張緩和への努力不足だ」などと書くと、世界は日本にも中国にも距離を置いて見るようになったりする。
今回のロシアの一連の行動は批判されるべき部分が大きいものの、欧州のロシア観には恐怖心がベースにあるから欧州メディアは、“邪悪な”ロシアなどという方向に向かってしまう。欧州メディアが中国の領土拡張に伴うアジアの緊張の高まりについて、いわば“高みの見物”で御高説をたれるように、日本は欧州に対して「もっとロシアと話し合う努力をすべきだ」などとお説教をしてみるのもいいかもしれない。
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