2015年3月4日水曜日
机上の空論
日本人人質が殺害された事件を受けて、自衛隊による在外邦人の救出が検討されているという。現在は、在外邦人の輸送だけは自衛隊に可能だが、法整備により、自衛隊が救出に出掛けることができるようにするのだという。安倍首相は「領域国の受け入れ同意があれば、自衛隊の持てる能力を生かし、救出に対して対応できるようにすることは国の責任だ」と前向きだ。
世界のどこかで日本人が人質になったなら、自衛隊が颯爽と救出に出掛ける……ようなイメージにも受け取られかねないが、現実に自衛隊が出動する可能性は低そうだ。自衛隊が人質救出のためと勝手に他国に入るなら、警察行動ではなく軍事行動と受け止められる危険性があるので、領域国の受け入れ同意が欠かせない。
しかし、国内で日本人が人質になったからと日本からの自衛隊出動を受け入れる国があったとすれば、その国は、自力では治安を保つことができず、解決もできませんと国際的に表明するに等しい。高額の資金援助や軍事援助などを組み合わせなければ、領域国は受け入れ同意に動かないだろう。
治安が崩壊して武装勢力が勢力を拡大している破綻国家なら、日本人の人質を救出するためには自衛隊が行くしかないようにも思いがちだが、弱体ではあっても名目上の政府は存在しているから無視することはできない。さらに、そんな弱体化した政府が受け入れに同意したとしても、その決定を武装勢力が尊重するはずがなく、出掛けた自衛隊は自力で防御しつつ行動せざるを得まい。
はるばる出掛けて行った外国で自衛隊が自力で行動するには、どれだけ正確な情報を持っているかがカギとなる。弱体化した政府の情報収集能力は限られたものであろうし、提供された情報の信頼性がどれほどかを見極める判断力も必要になる。人質をとられてから日本が情報を収集し始めても、量質ともに満足な情報を得ることは難しいだろう。
例えば、イラクの面積は日本よりも広く、シリアの面積は日本の半分ほどだが、イスラム国の支配地域は複雑に広がっている。どこに日本人人質がいるのかを知らなければ救出に動くことはできまい。さらに人質が常に移動させられているとすれば、人質の居場所とともに、そこに確実にいる日時を知らなければ、救出に動いたとしても空振りに終わる。
つまり、人質を救出するために自衛隊を派遣すべきという議論は机上の空論だ。行動する前に、知るべきことは多い。自衛隊派遣を持ち出す以前に、世界各地での外務省の情報収集体制を強化すべきなのだ。中東などはもちろん、米国など先進国でも外務省の情報収集が万全とも見受けられないのだから。
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