2015年3月11日水曜日
憶測を交えたニュース
韓国ソウルで駐韓米大使が、刃物を持った男に襲われ、右頬に長さ10cm以上、深さ3cmの傷を負い、約80針を縫う手術をした。容疑者は、30年ほど前から様々な団体を設立して在野で活動している運動家で、20年ほど前には本籍を竹島に移して本格的な反日運動に乗り出したと韓国紙が伝えている。
容疑者は、韓国の大統領府の前で焼身を図ったり、ソウルプレスセンターで講演する駐韓日本大使にコンクリートの塊2つを投げたりするなど逮捕歴が多い前科6犯の“行動派”だ。北朝鮮にも8回行ったことがあり、反米思想にも傾倒していたというから、警察は厳重にマークしているはずだろうに、今回は会場にチェックされずに入ることを許され、駐韓米大使を襲った。
取り押さえられた容疑者は「テロをやった」「戦争訓練に反対」「南北朝鮮は統一しなければならない」などと叫び、動機について「南北和解の雰囲気を阻害する軍事演習への抗議」と供述したという。容疑者を知る人は「暴力的で偶発的な行動で物議をかもしながら他の活動家たちから遠ざかり始めた」と話していると韓国紙。
今回の襲撃は、孤立しつつも過激な活動を続けて中年になった男の単独犯行で、米韓合同軍事演習への反対をアピールするためだったらしいが、事件発生後の第1報(電子版)で朝日は「駐韓米大使、襲われる 米高官『日本寄り』発言と関連か」の見出しで伝えた。何の根拠があって、米高官の「日本寄り」発言との関連を指摘できたのだろうか。その後の記事では、事実に基づく内容に修正されたが。
襲撃直後に容疑者は軍事演習反対を叫んでいたそうだから、実際に起きていたことを知った人はまず、容疑者を北朝鮮シンパと疑うだろう。それを朝日は「日本寄り」発言と関連させて報じた。おそらく、「日本寄り」を付け加えたのは日本の編集サイドだろう。米高官の「日本寄り」発言が韓国内で物議をかもしていたことを強く意識していたから、つい関連させたのかもしれない。
結果として、朝日の第1報は誤報だ。事実だけを正確に伝えるという原則を軽んじ、根拠の無い憶測をニュースに付け加えた。過去の慰安婦報道を自ら検証した朝日は、事実に基づかない「角度」をつけた記事が大きな弊害を生み、新聞の信頼性を大きく損なうものであることを認識し、反省したはずなのに、事実だけを伝えるということが徹底されていない。
翌日の紙面の記事では、襲撃事件が米韓両国関係に与える影響を説明する部分で、米高官の「日本寄り」発言で韓国では対米不信感が高まっていたとしたが、襲撃事件との直接的な関係については触れていない。韓国から続報が続いたので、誤報は紙面化されなかったが、朝日にはまだ、根拠の無い憶測を付け加えたニュースが発信されるという構造がある。それが明らかになった。
「駐韓米大使が襲われた」との速報だけでは短すぎると、背景説明を付け加えたのだろうが、その背景説明を支えるものが記者の直感だけであってはプロとはいえない。直感は取材過程においては大切にすべきだが、記事の中には記者の直感は不要だ。事実だけを書けばよい。
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