2015年12月2日水曜日
漂う木造船
遺体を乗せた木造船が海を漂っていても、海賊映画なら珍しくはないシーンだろうが、そんな船が日本海では現実に現れている。今年10月、11月の2カ月だけで漂流木造船は、北海道から福井県にかけての日本海側の沿岸や沖合で11隻が見つかり、計25人の遺体が確認されたという。
一昨年から今年にかけて合わせて170隻以上にもなるというから、日本に木造船が漂着することは特記する事件ではなくなり、「またか」と受け止められるだけか。しかし、沈没したものを含め、どれだけの木造船が日本海に漂っていたのか、どれだけの人が亡くなっていたのかと想像すると、大きな悲劇が起きているかもしれない。
船体や衣服などにはハングルが表記されていて、船内から釣り針や網などが見つかっていることから、朝鮮半島周辺の漁船が漂流してきたと海上保安部は見ているという。木造船はレーダーやGPSなどを搭載せず、船の構造や、「朝鮮人民軍」と表記された木造船も見つかっていることから、北朝鮮の漁船が遭難して漂流してきたとの見方が有力だ。
こうした漂流漁船が増えたのは、食糧の自給自足のために北朝鮮政府が水産事業に力を入れているからだと専門家は言う。日本海には暖流の対馬海流が流れ込み、北からは寒流のリマン海流が南下し、豊かな海の幸をもたらす。対馬海流は日本海の南側を西から東に流れるので、木造船は対馬海流に乗って漂流してきたのだろう。
日本海は栄養豊かで水産資源が豊富なので、北朝鮮が日本海側の沿岸や沖合などで水産事業を振興しようとするのは理解できるが、漁船の近代化が遅れている。以前は、亡命を阻止するために漁船の機能を低く抑え、航海能力を削いでいたともいうから、日本海で亡くなる人々は北朝鮮政府の政策の犠牲者であるともいえよう。
今年は地中海で、リビアから欧州を目指す難民・移民を満載した船が沈没したり、船から転落したりして数千人が亡くなったという。密航船には乗客名簿などないので、どれだけの人が亡くなったのか実数は不明だ。北朝鮮で政権崩壊などの混乱が生じると大量の難民が日本海経由で日本に押し寄せるともいわれるが、漂流木造船と同じような漁船に乗って来るとなると、かなりの遭難死もあり得る。
難民受け入れについて日本では現実感ある議論は希薄だが、国境も海も難民の移動を阻止することはできないことが、EUを見ると明らかだ。といって、北朝鮮からの難民流出を阻止するために、北朝鮮の現体制の維持を手助けすることはできまい。日本海を漂って日本に到着する木造船は、様々なことを示唆している。
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