ドイツ連邦議会の総選挙で、与党CDUは得票率32.9%と前回の41.5%から大幅に減り、議席は246で63議席も減った。第1党は維持したものの退潮傾向は明確で、過半数(355議席)にはほど遠い。右翼政党AfDは躍進し、得票率13.0%で94議席を獲得し、初めて国政に参加することになった。
メルケル首相は第1党を維持したことで引き続き政権を担当するが、盤石の体制とはもはや見られず、一部では任期半ばの退任も取りざたされるようになった。連立を組んでいた第2党SPDも大幅に得票と議席を減らし、連立から離脱した。約百万票が両党から離れたという。
経済は順調で失業率も低いのに政権与党が大幅に議席を減らしたのは、2015年に約百万人の難民を受け入れたことに対する批判だと見られている。メルケル首相は人道主義に基づき寛容な難民受け入れ策を進めたが、約百万人という難民の殺到はドイツ社会に少なからぬ負担をもたらした。
戦火に追われた人々を受け入れ、助けるのは、戦乱を繰り返してきた歴史を持つ欧州では珍しいことではなく、むしろ、「明日は我が身」と人々は助け合って生きてきたといえよう。困窮する難民を受け入れて助けるのは崇高な行為であり、賞賛されこそすれ批判される行為ではない。
だが、資本が巨大化して世界を覆う現在、商品もマネーも簡単に国境を越え、人の移動もグローバル化し、難民の移動もグローバル化した。欧州が受け入れると知ったなら、戦乱に追われた中東の難民が周辺国の難民キャンプよりも欧州を選ぶのは当然だろうし、アフリカなどから経済難民が欧州を目指すのも当然だ。
欧州外から百万人以上の難民が押し寄せると、人道主義に基づく難民受け入れ策は綻び、変容を迫られる。それは第一に、受け入れ数を制限することであり、第二に、受け入れる人間を選別することになる。難民受け入れを歓迎したドイツ経済界の反応などから、おそらく、将来の労働力として適している人々が優先されるだろうことは想像に難くない。
難民問題といっても、例えばロヒンギャ難民と欧州に殺到する難民問題とでは、欧州の論調は微妙に異なる。ロヒンギャ難民を受け入れているのはバングラデシュであり、欧州ではないから、いくらでも人道主義を掲げて「正論」を説き、関係国の政治家らを批判できる。自分らが受け入れに関わらない他国の難民は、同情するだけの対象となり、「正論」の快楽を味わう対象ともなる。
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