バックストップ(backstop)とは①野球場などのバックネット、②野球の捕手やアイスホッケーなどのゴールキーパー。そこから「最後の守り手」に喩えられる。この言葉が、EU離脱の日が迫る英国で、英国をEUに実質的につなぎとめておくことを意味するとしてEU離脱派などが反発、混乱を大きくしている。
英領の北アイルランドとEU加盟国のアイルランドの間に、英国のEU離脱により「国境」が復活し、人やモノなどの越境に対する管理も復活する。北アイルランド内には反英勢力が存在するので、対立抗争を再燃させないためには、北アイルランドとアイルランドの境界をオープンにしておくことが必要だ。
北アイルランドだけをEUに留めることは、EUを離脱した英国からの実質的な分離となるので英国は認めることができない。それで、EU離脱後の移行期間にEUと包括的な通商協定をまとめられなかった場合、アイルランド国境は開放されたままで、英国もEUの関税同盟に残る条項を離脱協定案に入れた。これがバックストップ。
この案は英国議会で否決された。反対した議員たちは、離脱後も英国がEUの関税同盟内にいつまでも閉じ込められるとする。英国政府もEUもバックストップは一時的な措置だと強調するが、北アイルランドとアイルランドの境界の管理をどうするのか具体策は出てこない。
英国政府はまた、EU離脱後の移行期間には従来の英・EU関係が維持されるし、その間に新たな通商協定がまとまればバックストップ条項は必要なくなると説明するが、新たな協定の内容はもちろん、協定がまとまるかどうかも確かではない。
英国とEUは協定なしのハード・ブレグジット(英国が統一市場と関税同盟から離脱し、EU諸国からの移民を制限)に突き進んでいるように見える。英国は国内が分裂し、共同体維持のためにEUは離脱する英国に甘い対応はできない。双方ともに妥協の余地がほとんどない気配だが、離脱予定日までまだ1カ月ある。
別れても縁を切ることができない関係というのは厄介だ。英国はEU離脱後もEUやEU諸国と政治や経済などの関係を断つことはできず、つき合って行かざるを得ない。EUと別れると決めたときに英国には高揚感があったように見えたが、具体的な条件交渉が進むにつれて徒労感が目立ってきたようだ。
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