冷戦が終結した後、世界は自由主義と民主主義、市場経済が主導するシステムに覆われ、政治体制をめぐる争いはなくなるとの楽観論があった。現実は、共産主義運動が衰退した一方、制約や規制が軽減されて資本主義が世界で人々を収奪することに容赦がなくなった。
楽観論やインターネット普及などにより当初、グローバリズムは世界を均一化し、相互の結びつきを強め、人類が共存する世界へ向かう道筋のように見えた。しかし、グローバリズムで最も恩恵を受けたのは巨大な資本であり、世界の市場に新しく参入した中国だった。
グローバリズムには、①世界を一つの共同体と見る、②世界を一つの市場と見る、の両面がある。①は国家や民族などにとらわれず、世界に個人が向き合って考え、行動することを促す。②は国境にとらわれずに巨大資本が経済活動することを正当化する。
巨大資本が、諸国家の制約をあまり受けずに世界各国で自由に活動した結果、各国で①少数の人々が更に莫大な富を得たが貧富の差が拡大、②中間層が減少、③巨大資本の「節税」などが生じた。また、人々の国境を超える流動性が高まり、受け入れ側の先進国では排斥感情が高まった。
巨大資本の活動や格差拡大、人々の流動性の高まりなどに対する批判や反感は各国で顕在化している。国家主権の回復や拡大、自国民・自民族の優先、異民族や異宗教者の排除など様々な主張が見られ、それは反グローバリズムと括られる。だが、各国の法人税軽減競争に見られるように、巨大資本の世界的な活動に制約を貸すことは難しいだろう。
世界を一つの市場とする現在のグローバリズムには様々な問題があるが、中国のように世界から自国を「閉ざし」て、内部では強圧的な支配を行うことが、グローバリズムに疲弊する世界よりマシだとはいえない。人々には、巨大資本か抑圧的な国家か、どちらかしか選択肢がないとすればグローバリズムには救いがない。
世界を一つの共同体と見るグローバリズムには希望は残っているのだろうか。各国で自国優先を唱える指導者が増えていることから、世界は分裂の方向に向かっているようにも見える。現在のグローバリズムの最も大きな害は、普遍的とされる理念が色あせたことかもしれない。
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