2017年9月9日土曜日

政権を崩壊させた後が大変

 米トランプ大統領は、アフガニスタンへの米国の関与を継続し、米軍部隊を増派することを発表した。増派の規模は明らかではない。最も多い時には約10万人の米兵が投入され、戦争終結を目指した前オバマ政権は5500人に減らすことを目指したものの実行できず、米史上最長とされるアフガニスタンでの戦闘は続く。

 2001年に米軍主体のNATOはアフガニスタンで戦闘を開始し、タリバン政権を崩壊させたが、タリバンなどの抵抗は続き、治安は回復していない。米兵の死者は2400人以上で2万人以上が負傷、戦費以外にアフガニスタンの治安維持などのために米国は1000億ドル以上を注ぎ込んだが、米国はアフガニスタンから「抜け出す」ことができない。

 アフガニスタンの次に米国はイラクで2003年に戦争を始め、サダム・フセイン政権を崩壊させたが、新政府が成立した後も様々な勢力による武力攻撃が各地で続き、米軍は撤兵するわけにいかず多国籍軍として駐留を続けざるを得なかった。米軍はイラクから2011年に完全撤退したが、米兵の死者は4000人以上になった。

 アフガニスタンでもイラクでも米国は圧倒的な武力により当時の政権を打倒することはできたが、同時に長期間の治安の崩壊をもたらした。欧州諸国の植民地支配の境界を国境として誕生した一種の人工的な国家だったこともあって、強権支配の政府が崩壊すると、残されたのは混乱であり、一つの国家としてまとまる必然性の希薄さが露呈した。

 さて、米軍の圧倒的な武力によって北朝鮮で金一族の支配が崩壊した後は、どのような状況になるのだろうか(どのような混乱がもたらされるのか)。低レベルではあっても自律的な経済が回っているのならともかく、配給がメインだったなら金一族政権の崩壊とともに配給システムは機能しなくなるだろうから、悲惨な状況になる可能性がある。

 金一族の支配が崩壊した後に治安はどうなるか。金一族への忠誠のほかに北朝鮮という国家を支える原理があるなら、新政権の成立とともに新たな道に踏み出すだろうが、金一族への忠誠(と強制)のみが北朝鮮をまとめていたなら、金一族の支配の崩壊は国家の崩壊になる。金一族への忠誠が米国への復讐心に変化して人々の抵抗が続く可能性もあるが、強制が解かれても忠誠が続くかどうかは疑わしい。

 金一族支配が崩壊すれば北朝鮮は韓国に併合されるという見方が有力だが、韓国だけで治安維持から復興まで全て成し遂げる能力があり、また意欲があるかは疑わしく、米軍の駐留は続けざるを得ないだろう。アフガニスタンやイラクで「抜ける」ことの難しさを痛感しただろう米国は、金一族支配を崩壊させた後の負担を考えると、北朝鮮に対する武力行使には慎重にならざるを得まい。

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