2018年3月3日土曜日

摘発される側と摘発する側

 2012年11月からの習近平指導部の1期目の5年間で、官級以上の高官で280人、局長級で8600人を汚職で摘発したという。大物幹部では周永康前政治局常務委員、薄熙来元重慶市党委書記、郭伯雄・徐才厚の両前中央軍事委副主席、令計画前党中央弁公庁主任らが摘発された。

 末端組織でも摘発が行われ、規律違反や違法行為で処分を受けた党員は5年間で130万人以上とも200万人以上ともいう。最近でも大物幹部の孫政才政治局員らが摘発され、楊晶国務委員(副首相級)が免職処分になるなど共青団関係にも容赦なくなり、「反腐敗闘争」は続いている。

 収賄や公費流用などが厳しく摘発されて中国が「クリーン」な国家になるのなら慶賀の至りだが、「虎もハエも一網打尽にする」との言葉を真に受ける人ばかりではない。習主席が政敵を失脚させるために腐敗摘発を利用しているとの批判があり、公平性については疑問が拭えない。

 大物幹部から末端組織まで、これほどの摘発が行われたということは、中国で腐敗が蔓延していたということだ。それは腐敗が特別の行為ではなかったことを意味し、摘発の公平性について疑問が出ているのは、摘発される腐敗と摘発されない腐敗が存在するからだろう。

 摘発されない腐敗とは、例えば、習近平氏の周辺だ。パナマ文書には習近平氏の親族に関する記載があるとされ、以前にも、習近平氏の親族が3億7600万ドルの資産を保有していると米メディアが報じた。また、摘発の指揮をとっていた王岐山氏の家族や親族が米国に財産を移しているとの疑惑も出ている。

 腐敗の摘発が公平に行われるとすれば、いつか習近平氏らの周辺にも摘発の矛先が向けられる可能性がある。それを避けたいと習近平氏が考えたなら、どうするか。中国では法も共産党の指導下にあるので、共産党のトップに座り続け、腐敗の摘発を指示する側に居続けることが最も確実な方法だろう。

 憲法にある国家主席の任期制限を削除することで、習近平氏の3期目以降の続投が正当化される(総書記の任期については共産党の規約に明文規定がない)。権力欲があったのかもしれないが現実として、腐敗を摘発する側に居続けることが習近平氏にとって必要だった。それに、大量の摘発で失脚し、蓄積した財産を失った多くの人々の恨みの的にもなっているだろうから、最高権力者であり続けることが最高の身の安全保障になる。

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