米トランプ政権がイスラエル大使館を5月に、現在のテルアビブからエルサレムに移転すると発表した。とりあえずはエルサレムにある米国の総領事館の建物に大使館機能を移転し、最終的な移転先は未定だというから、イスラエル建国70周年に合わせ、エルサレムを首都と認めるという米国からのプレゼントだ。
エルサレムを永遠の首都とするイスラエルは大歓迎しているが、東エルサレムを将来の独立国家の首都とするパレスチナ側は強く反発している。昨年12月に国連総会の緊急特別会合は、米国がエルサレムをイスラエルの首都に認定した決定は無効とする決議を賛成多数で採択していた(安保理がエルサレム首都認定の撤回を求める決議案を採決したが、米国が拒否権を行使)。
国連総会の決議には拘束力はないが、9カ国が反対したものの圧倒的多数の128カ国が賛成したのだから、エルサレムがイスラエルの首都だと認めないのは国際社会の総意に近いものだろう(棄権35カ国)。これまでは、親イスラエルの米国政府もエルサレムの首都認定を先送りし続けてきた。
トランプ政権の決定は、現状変更なのか、現状追認なのか。エルサレムをイスラエルの首都とは認めないというのが現状だと認識する立場からは、現状変更だと解釈するだろう。一方、第三次中東戦争(1967年)でイスラエルがエルサレム全体を制圧し、エルサレムはイスラエル支配下にあるからとイスラエルの主張を認めるなら、現状追認の現実的な対応だと主張するだろう。
イスラエルとパレスチナが共存を目指すことで同意したオスロ合意(1993年)では、エルサレム問題は最終地位交渉でイスラエルとパレスチナが話し合って決めると先送り・棚上げした。しかし、共存を目指す和平プロセスは行き詰まり、オスロ合意は事実上、破綻している。
今回のトランプ政権の決定は、中東において米国が中立的な仲介者であると装うことを放棄した宣言でもある。イスラエル寄りであった米国が中立を装うことができたのは、イスラエルの主張に一定の距離を置く姿勢を保ったからだが、もう米国には中東における仲介役は務まらなくなる。
トランプ政権の決定は、中東の流動化を更に促すだろう。アフガニスタン、イラク、リビア、シリアと実質的な国家解体が続いてきたが、パレスチナ国家への道は保たれてきた。それが消えようとしている。理念も原則もなく、ただ現状を追認するだけでは中東におけるイスラエルの力の支配を無原則に肯定するだけになる。
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