2018年4月18日水曜日

公表されている事実

 化学兵器禁止条約に基づいて設立された国際機関の化学兵器禁止機関(OPCW)は、英国のソールズベリーで起きたロシアの元情報部員の男性とその娘に対する暗殺未遂で、現場で採取されたサンプルを分析し、不純物がほとんど含まれない高純度の有毒な化学物質だったとの調査結果を発表した。

 この暗殺未遂で英国は、旧ソ連軍が開発した神経剤「ノビチョク」が使用されたと特定し、ロシアに対して事件の説明を求めた。ロシアは関与を否定したが、英国は納得せず、ロシア外交官23人を国外追放する対抗措置を実施した(ロシアも23人の英外交官を追放)。

 英国の主張を米仏独などは支持し、NATOやEUも英国との連帯を表明した。米国はロシア外交官ら60人を国外追放し、シアトルのロシア領事館を閉鎖した。欧米20カ国以上から国外退去命令を受けたロシア当局者は100人を超えた(ロシアも対抗措置として欧米各国の外交官に国外退去を命じた)。

 ノビチョクはソ連時代に対NATO用に開発された化学兵器で、毒性がVXガス(マレーシアで金正男氏殺害に使われた)より5~8倍高いとされる。既存の治療薬では効果がなく、ノビチョク用の解毒剤はないともされるが、重体だった元ロシア情報部員は急速に回復しているという(娘は既に退院)。治療の成果で回復したのか、接触したのが致死量ではなかったのかは詳らかになっていない。

 公表されている事実は、①英国内で元ロシア情報部員が重体に陥った、②自宅玄関のドアから高純度のノビチョクが検出された、の2点。英国政府は、ロシアが関与した可能性は非常に高いとしてロシア外交官を追放し、国際社会に同調を求めたわけだが、公表されている事実だけではロシアの関与を断定するには根拠が弱いとも見える。

 米国をはじめ各国がロシアに対する強硬な外交制裁に同調したのだから、おそらく英国はロシアが関与したという決定的な証拠をつかんでいて、相手国を限定して知らせたのだろう。決定的な証拠を公表すれば、国際社会からもっと広範な支持を得られたであろうに公表しない(できない)のは、情報提供者の安全に関わるか、英国の情報網が探知されるからか。

 旧ソ連が開発したノビチョクが使用されればロシアが真っ先に疑われる。もしロシアが関与したなら、多くの国が保有しているだろう他の神経剤を使用せずにノビチョクを使用したのはなぜか謎が残る。ノビチョクだと英国が特定できたのは、ノビチョクに関する詳細なデータを持っていたからだ。ノビチョクはロシアの専有物なのだろうか。

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