2018年6月13日水曜日

報復合戦

 米国は6月1日、鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を上乗せする対象をEU、カナダ、メキシコにも拡大した。米国は3月23日に日本や中国などに輸入制限を発動したが、EU、カナダ、メキシコなどには適用を猶予し、通商交渉での圧力で譲歩を引き出すことを狙ったが、当てが外れたようだ(EU、カナダ、メキシコは米国の鉄鋼輸入全体の4割を占めるという)。

 一方的な輸入制限を課された側は黙ってはいない。カナダは6月1日、安全保障を口実にした保護主義的な政策はWTO協定の違反だとして米国をWTOに提訴した。また、米国産品に報復関税を7月1日から課す方針を既に表明している。

 メキシコは6月5日、米国の輸入制限に対する報復措置として追加関税を課す米国産品のリストを公表した。追加関税は、各種鉄鋼製品に最大25%、農畜産品では豚肉、ジャガイモ、リンゴに20%、バーボンやチーズに20~25%となる。また、米国の輸入制限は国際的な貿易ルールに違反しているとしてWTOに提訴する。

 EUは6月6日、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定し、7月から最大28億ユーロ(約3600億円)の報復関税を課す。課税対象は米国製のジーンズ、オレンジジュース、バーボン、オートバイ、ピーナツバター、モーターボート、煙草など。EUはまた、WTOで米国を相手に紛争処理手続きに入った(そこで解決の見通しが立たなければ、2段階目の関税措置を発動すると報じられている)。

 WTOのルールでは、自国産業の保護目的で高関税を導入した加盟国に、他の加盟国が影響を相殺するために追加関税を課すことが認められているというから、EU、カナダ、メキシコの米国産品に対する報復措置は「正しい」対応といえる。

 だが、EUなどの報復措置に対して米国が新たな対抗措置を講じるなら、報復合戦の本格的な開始だ。米国は乗用車への関税上乗せを検討していると報じられたが、それが実行されればEUなども更なる報復措置に動くだろう。まだ、おとなしく米国の輸入制限を見ているだけの日本も、乗用車への関税上乗せを米国が行うなら、今度は何か動かざるを得まい。

 各国がそれぞれ関税を高くする報復合戦は、自由貿易が終焉に向かう動きと見える。理念としての自由貿易が「退場」し、各国が関税障壁を高める時代に簡単に戻るとは考え難いが、米トランプ政権が続く間は自由貿易に対して逆風が強まりそうだ。

 各国が関税障壁を高める時代には、輸出主導で成長する国は打撃を受ける。日本も大きな影響を受けようが、「内向き」に経済運営をする時代に戻るとみるなら、まだ多くの分野で製造業企業が残っていて産業基盤は強固であり、石油などは自由貿易のままであるだろうから日本は「自給自足」でやっていけるかもしれない。高成長は無理だろうが。

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