2024年6月29日土曜日

味の評価

 タレントが地方を巡るテレビ番組が増え、各地の温泉に入ったり、名所を訪ねたりするが、欠かせないのは飲食店で名物料理などを食べることだ。どんな味かと視聴者は興味を持つだろうが、タレントは「うまい」「美味しい」「柔らかい」などと出された料理を単純な言葉で褒めるだけだ。美味しいとしても、どのような味わいなのかは伝えてくれない。

 まずかったり、好みに合わなかったとしてもタレントは正直に言うことはできない。テレビ取材を受け入れた飲食店に対して、その味をタレントが厳しく批評したり、けなしたりするのは「取材マナー」に反する行為だろうし、タレントが「正直」に味の感想を言う番組では、テレビ取材を受け入れる飲食店を見つけることは簡単ではなくなるだろう。

 平凡な味であっても、好みに合わない味であっても、まずくても、食べて感動したような顔つきで「うまい」「美味しい」「柔らかい」などと言えるのも旅番組に出演するタレントの芸なのだろう。できるのは「うまい」「美味しい」「柔らかい」などの声の大きさを場面によって変えたり、時には、しみじみと「うまい」「美味しい」「柔らかい」などと言うことか。

 タレントや番組スタッフが都内や地方の飲食店を訪ねて、料理を食べるという食べ歩き番組も増えた。こちらもタレントや番組スタッフは、甘みがあるとかピリ辛だとか塩味がいいなどと多少、味について説明するが、「美味しい」「うまい」と褒めることが基本であることは変わらない。こちらでも、まずかったり、好みに合わなかったとしてもタレントや番組スタッフは正直に言うことはできない。

 うまい・まずいは個人の感覚に左右されるから、タレントやスタッフの否定的で正直な感想を番組で伝えることは公平性に欠け、飲食店とのトラブルになる可能性がある。だから番組では、飲食店を紹介する範囲を超えないようにタレントやスタッフは基本的に味を褒めるしかない。つまり、旅番組や食べ歩き番組での飲食店の料理の紹介は、そこに料理が存在するという情報でしかない。

 テレビ番組では、紹介する飲食店の料理に対する批判は行わず、評価も行わない。どの料理も「うまい」「美味しい」「柔らかい」などと褒めるだけだ。SNSなどでは飲食店の料理に対する「正直」な批判が現れるが、それは客として入店した人にだけ許される行為であり、アポを取って取材するテレビ番組には取材先に対する配慮が求められるとともに、批判を遠慮するのは当然だろう。

 うまい・まずいは個人の感覚に左右されるので、個人の感覚を一般化できるのかという課題もテレビ番組には突きつけられる。タレントやスタッフが料理をまずいと思ったとしても、うまいと思う客がいるから、その料理は提供され続けている。味の評価は人それぞれだとすると、テレビ番組を見て興味を惹かれた視聴者は自分で食べに行くしかない。

0 件のコメント:

コメントを投稿