累は「迷惑」の意の漢語的表現で、累が及ぶは「巻き添えを食う。とばっちりを受ける。他者の災いが自分に及ぶ」ことで、累を及ぼすは「巻き添えにする。他者に迷惑を掛ける。災いが他者にまで及ぶ」ことだ。累が家族に及ぶ可能性があれば多くの人は行動を自重したり、慎重になる(家族に累が及んでから後悔する人もいる)。
家族に累が及ぶことを強調して、人を操ろうとする犯罪組織があり、SNSや求人アプリや掲示板などで「高額収入」を掲げ、「簡単な仕事」「すぐに稼げる」「誰でも即日支払い」「リスクなし」「運ぶだけ」「引越しの手伝い」「荷物を受け取るだけ」「電話をかけるだけ」などの誘い文句を並べ、闇バイト(犯罪行為によって報酬を受け取るバイト)に応じる人を探している。
うっかり応募した人は、運転免許証や身分証などで個人情報を握られ、さらに親など家族の情報の提供を求められる。その後に仕事が犯罪がらみと知って断ると、「個人情報を晒す」「逃げられないぞ」「家に行くぞ」「家族に危害を加える」などと犯罪組織から脅され、やめられなくなる。また、最初は簡単な仕事を任されるが、やがて強盗グループなどに加えられ、逃げ出すことができなくなることもあるという。
闇バイトの求人は、▽「叩き」「運び屋」など隠語が求人情報に掲載されていることがある、▽具体的な仕事内容が書かれていない、▽報酬が異常に高い、▽募集対象の性別が限定されている、▽連絡手段を匿名性が高いSNSに限定するーなどと専門家。個人情報や家族の情報を犯罪組織に知られているので、闇バイトに応じた人は脅され、なかなか抜け出すことができなくなるという。
離れて暮らす親などにも危害が及ぶと犯罪組織から脅され怯えた人は、犯罪組織の指示に従わざるを得なくなるという。自分に向けられた暴力には立ち向かう覚悟が芽生えた人でも、遠く離れて暮らす親などに暴力が加えられる可能性が高いと心配すると犯罪組織に立ち向かうことは難しくなるだろう。
「累が親族にも及ぶ」ことを国家として利用しているのが中国だ。日本や米国など外国に居住する中国政府に批判的な評論家や活動家を黙らせるために、中国大陸に居住する親族に累が及ぶと日本や米国など現地駐在の公安関係者らが接触して警告すると報じられている。こうした警告が説得力を持つのは、中国大陸では中国政府に批判的な人物に対して容赦ない制圧が加えられるという現実がある。
中国政府は人民の個人情報を把握し、全国に張り巡らせた監視網で個人の行動情報の収集を続けていると見られ、中国大陸に親族が居住している人は、自分が外国に出たとしても親族を「人質」に取られ、中国政府の警告(脅し)から逃れることはできないのが現実だ。親などに累が及ぶことを心配するのは国籍に関係ない自然な心情だろうが、中国では政府が個人情報を握り、共産党の独裁統治の維持のために活用する。
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