トランプ氏がMAGA(Make America Great Again)を掲げたのは2016年だ。大統領選挙のスローガンとし、この文句が記された帽子などを支持者は着用したり、プラカードを掲げたりした。この文句はロナルド・レーガンが1980年の大統領選挙で使用したのが最初で、社会的には知られた文句だが、トランプ氏は商標出願しているという(ウィキペディア)。
「アメリカを再び偉大な国にする」というスローガンが支持されたのは、現在のアメリカが偉大な国ではなくなったという意識をアメリカ人の多くが共有していることを示す。アメリカは現在でも世界1の経済大国で、軍事力でも世界1であり、国際政治における影響力も世界1かもしれず、映画や音楽などでもアメリカの存在感は大きい。外からは偉大な国であり続けていると見えるが、アメリカに住む人たちには偉大な国だとの実感が薄れているようだ。
世界に突出した豊かな過去のアメリカではなくなり、厚い中産階層が解体されて、極めて少数のスーパーリッチと大多数の中低所得層に分離した現在のアメリカ。「再び偉大に」とは、世界1豊かだったアメリカを基準にした発想で、もう一度、偉大なアメリカになろうということだ。アメリカ人の多くが何らかの喪失感を持っているから、この文句が広く支持されたのだろう。
「偉大」が何を示すかが具体的には示されないのは、様々な解釈を許すことで多様な人々に共感させ、支持へとつなげるためだろう。国際的にアメリカは現在でも大きな存在であるから、「再び偉大にする」とは国内向けのメッセージであり、製造業の衰退などで働く場を失って貧しくなった中低所得層に受け入れられた。
豊かだった頃のアメリカは白人中心の社会であり、トランプ氏の支持者に白人が多いことと関係があるだろう。当時は保守的な宗教の規範が社会的に大きな影響力を持ち、LGBTQなどの主張が表面化することもなく、マイノリティーに対する配慮は限定的だった。そうしたアメリカに再びなることが「偉大だ」とする考えは、保守的な白人層以外では受け入れ難いだろう。
過去のアメリカで厚い中産階層が享受できていた豊かな生活とは、一軒家に住み、自動車を持ち、様々な電化製品を備え、食料に困ることなく、レジャーを楽しむ家族のイメージだ。そうした生活を世界各地で人々が享受できるようになった現在、アメリカ人が自分たちの生活を特別に豊かだと感じることが難しくなったことも「偉大さ」の喪失感に影響しているかもしれない。
アメリカ人が「偉大さ」を失ったと感じるアメリカに、中米など世界各地から人々が続々と押し寄せている。移民にとってアメリカには、ある種の希望があるのだろうが、トランプ氏は移民の流入規制を強化することが MAGAの重要事項だとする。既成権力批判に有効だったMAGAは現状を否定的にとらえる発想で、外からはアメリカはまだ「偉大」だと見られていても、その実感がない人々に受け入れられた。
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