東京の上野動物園で2017年6月に生まれた子パンダ「シャンシャン」に関するニュースは妊娠から誕生、生育状況と細かく報じられ、一般公開以降も折に触れてニュースに登場する。日本に存在する唯一の子パンダだから関心が高く、ニュース価値がある……ようだが、事実は異なる。
和歌山県のアドベンチャーワールドは、2018年8月に誕生した子パンダの一般公開を始めた。アドベンチャーワールドではこれまでに15頭の繁殖に成功し、うち11頭を中国に送っている。日本での子パンダ誕生は珍しい出来事ではなかったのだが、それが上野動物園での出来事となると大きなニュースとなる。
大きなニュースに仕立て上げられるのは、第一にニュースの発信力が強大な大手メディアが東京に集中しているからだ。ニュースは圧倒的に東京から全国に流される。和歌山での子パンダ誕生は東京から見てローカルニュースの扱いだが、上野動物園での子パンダ誕生は東京発の全国ニュースになる。
第二に、東京の大手メディアが取材に動いたからだ。東京のメディアが取材した出来事は東京発のニュースとして全国に向けて流される。別の言い方をすれば、和歌山の子パンダ誕生を東京から取材に行っていれば大きな全国ニュースになっただろう。
東京に集中した大手メディアが取材し、報じることで大半の全国ニュースがつくられ、ニュース価値の軽重も提示される。そうやって、つくられ、流される全国ニュースによって大半の受け手は社会や世界の認識を形成する。上野動物園での子パンダの誕生が事実であるのと同様に、他のニュースも事実であると受け止める。
ニュースとして報じられることは全て事実である……と送り手も受け手も大半が信じるニュースの多くは東京の大手メディアによって取材され、つくられている。和歌山で誕生した15頭の子パンダより、上野動物園で誕生した1頭の子パンダに大騒ぎするように、人々の世界観は東京発のニュースによって形成される。
ニュースは消費されるものである。東京圏に人口が集中していることがニュース価値に影響を与え、東京圏で上野動物園での子パンダ誕生への関心が高いことで、東京の大手メディアが取材するたびに東京発の全国ニュースに仕立てられる。かくして東京圏以外に住む人々も、東京圏の価値判断を刷り込まれることになる。
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