地中海を挟んで欧州とアフリカは向かい合う。最近は大量の難民・移民を乗せた多くの船がアフリカ側のリビアから地中海に出て、イタリアなど欧州を目指す。欧州は迷惑がっているが、豊かな欧州に行けば仕事があると期待する大量の難民・移民の「船出」は続いている。
陸路でも欧州を目指す大量の難民・移民の動きがあったが、経由地の諸国で規制が強化され、海路に比重が移った。難民・移民が乗った船の多くは粗末なもので沈没の危険があり、欧州側の警備船は救助せざるを得ないというから、生命の危険は大きいものの、陸路より海路のほうが難民・移民は欧州にたどり着ける可能性が大きい。
陸路で豊かな先進国を目指す動きがアメリカ大陸でも始まった。大量の麻薬が中南米から北米に流れ込んでいたので、そうしたルートで密入国などは従来から行われていたのだろうが、今回は日中、集団で行進してホンジュラスなどから米国を目指している。
彼らは何を求めているのか。治安が崩壊して日常的に暴力に晒されている環境から逃れるためには、治安がいい隣接国に移住するだろう。紛争国から難民が周辺国に溢れ出すのは珍しいことではない。今回の陸路で米国を目指している集団は、米国でなければ得られないものを求めている。それは職であり、安定した豊かな生活だろう。
これまで米国を目指す中米の人々は、合法的に入国するか密入国してきた。おそらく米国に合法的に入国することも密入国することもできない困窮した人々が今回、米国を目指して歩き始めた。何らかの衝動に突き動かされたとも見える動きだが、母国へレッドカードを突きつけた意思表示でもある。
米国に行けば何とかなると母国を捨てた人々。だが、米国は拒絶の姿勢を明らかにし、メキシコなどに対する圧力を強めている。母国を捨てた人々は、国家の支配から逃れたかに見えるが、国際社会における国家間の利害対立に巻き込まれ、別の国家の支配下に置かれる。
現在の人類(ホモ・サピエンス)はアフリカから出て世界に拡散したという。文明が発達した現在でも、生き延びるために移動する人々がいることを大量の難民・移民や今回の集団は示している。そうした移動を阻むのが、国家であり国境である。国境を超えて自由な移動を求める人々の動きは、国家による人間の支配に疑問を突きつけている。
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