2019年4月24日水曜日

観光施設としての価値

 火災で大きなダメージを受けたパリのノートルダム寺院について仏マクロン大統領は「ノートルダム寺院をさらに美しく、再建する。5年以内に完成させたい。我々はできる」と語ったそうだ。再建費用は不明だが、企業などから既に8億ユーロ(約1千億円)以上の寄付の申し出があるという。

 ノートルダム寺院は壁など大部分が石造で今回の火災に耐えて残っているが、正面後方上部の屋根部分や尖塔が木造だったため、ほとんど全焼した。石造部分に対する火災の高熱の影響が心配されたが、崩壊の恐れはないと伝えられている。

 石造部分に大きな損傷がないなら、大量の木材の準備や設計などに相応の時間を有するとしても「5年以内に完成」は可能のように見える。耐火性や強度を高めるため鉄骨を使用するなら、再建に要する時間は短縮できるだろう。

 尖塔について①同じデザインで再建する、②新しいデザインにする、③再建しないの3案に分かれるように再建計画は固まっていないが、世界遺産に登録されているから、変更するにしても厳しい制約がある。日本の文化財なら耐震性と耐火性を強化しつつ外観は以前と同じにするだろうが、ノートルダム寺院がどうなるかは定かではない。

 ノートルダム寺院はパリの代表的な観光施設である。皮肉だが、火災で損傷した状態を見ることができる期間は限られるだろうから、ノートルダム寺院目当ての観光客は減らないかもしれない。さらには、再建の進捗状況を発信することで観光客の関心を引きつけておくこともできようし、再建なったならパリへの訪問を促す動機付けにもなる。

 ノートルダム寺院はパリの中心にあり、フランス革命やレジスタンスなど様々な歴史と結びついて人々に記憶されているという。観光客にとっては観光施設であるが、パリ市民やフランス人にとっては歴史を想起させる象徴ともなるだろう。

 一方で、ノートルダム寺院は宗教施設であり、信者にとっては祈りの場である。教団にとって宗教施設は大切だろうが、宗教施設は人間がつくったものであり、ノートルダム寺院を以前と同じデザインにしなければならないとの宗教的な理由は希薄だ。近代的なビルに立て替えても、神に祈る宗教施設としての価値が損なわれることはないだろう。

 「ノートルダム寺院をさらに美しく、再建する」というのは観光施設に当てはまる発想だろう。世界から観光客が訪れる観光名所だからこそ、従来のイメージを守りつつ美しく再建しなければならない(世界からの観光客の多くは、建物を見るためにノートルダム寺院を訪れるのであり、神に祈るためではない)。

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